起立性調節障害の食事療法や運動、病院での治療法や体験談など

起立性調整障害とは

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起立性調整障害とは、脳に十分な血液が送られずに、脳貧血や低血圧などを招いてしまうもので、思春期のお子さんに多いと言われています。

「夜は元気なのにも関わらず、毎日朝になると具合が悪いと言って子どもがベッドから起きてこない。怠けているのかしら・・。」

思春期のお子さんをお持ちの保護者の方の中には、このような悩みを抱えている場合もあると思いますが、学校に行くのが面倒でサボりたいと仮病を使うケースもある一方で、本当に深刻な体調不良によって朝起きられないこともあり得るのです。

小学生の5%、中学生の10%

この数字は、起立性調整障害の発症の割合を示したものです。

起立性調整障害は、10~16才の思春期に発症することが多く、前述した通り夜は体調がよいにも関わらず朝になると調子が悪くなるため、「怠けているだけだ」「甘えている」などと誤解をされやすいと言われています。

本人にしてみると、症状に苦しめられるだけではなく、周囲からの偏見によって、さらに辛い思いを強いられることになり、不登校へと繋がりやすくなると言われています。

春に発症しやすい

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起立性調整障害は、一年の中で春から夏にかけての暖かい時期に発症しやすいと言われています。

人の血圧は気候によって左右されやすく、春から夏は気温が高くなることで血管が拡張して血圧が下がりやすくなると言われています。

また、春は進学や進級など、環境が大きく変わるタイミングのため、体調不良で学校を休みがちになると本人にとっては大きなプレッシャーになりやすいと言われています。

日常生活・運動・食事療法

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起立性調整障害は、本人の甘えでも根性が足りないわけでもなく、もちろん心の病気でもありません。

自律神経の乱れによる身体機能の異常が原因のため、日常生活では症状を引き起こす血圧の低下を防ぐことが大切になります。

水分補給をする

体内の水分が不足すると、血液量が減るため低血圧になりやすいことから、意識的に水分を摂取することが必要になります。

目安としては体重が30kgの子どもなら一日1.5ℓ、45kgなら2ℓとなりますが、気温や発汗の状態によっては、さらに多めに摂るようにしましょう。

なお、水分なら何でもよいと思ってジュースを飲む方がいらっしゃいますが、オレンジジュースやトマトジュースなどは血圧を下げる効果があることから、起立性調整障害の方が摂取するのは避けた方がよいでしょう。

塩分を摂取する

高血圧の方が塩分を控えた食生活を送る必要があるのは、塩分を摂取することで体内の浸透圧によって血液中の水分量が増え、血管の壁にかかる抵抗を上げてしまい、血圧を上げてしまうからです。

そのため、起立性調整障害の場合は、塩分の多い食事によって血液量を増やすことで血圧を上げ、症状を緩和・改善することができると言われています。

日本小児心身医学会によると、一日の塩分摂取は10~12gが目安となります。

サプリメントの摂取

起立性調整障害の治療では、昇圧剤(血圧を上げる薬)が用いられますが、いきなり、お子さんに薬を飲ませることに抵抗がある方もいらっしゃるでしょう。

そのような場合に覚えておきたいのが、サプリメントの存在です。

サプリメントはあくまでも健康食品のため、医薬品のように明確な作用を謳うことはできませんが、朝起きられるようになるサプリメントもあり、多くの人が利用しています。

健康管理の一環として、サプリメントを摂取することを考えてみてもよいでしょう。

ゆっくりと動作をする

立ち上がる時や起き上がる時などは、いきなり動作を行わずに30秒ほどかけてゆっくりと動くようにしましょう。

また、歩く時は前屈みになる、立っている時はその場で足踏みをしたり足を交差させると、脳の血流低下を防ぐことができます。

暑い場所は避ける

気温が高い日は血管が拡張しやすくなるため、低血圧になりやすくなります。

できるだけ涼しい場所で過ごすようにしましょう。

また、汗をかくと体内の水分が減って低血圧を招く恐れがあるため、体育の授業や校外での活動は控え、教室や保健室などで座って待機するようにしましょう。

散歩をする

起立性調整障害の方は、運動を避け体を横にしがちな傾向にあると言われますが、下半身の筋肉量が減ってしまうと、血液を心臓へと送り返す力が小さくなり、さらに低血圧を悪化させてしまうと言われています。

とは言え、スクワットのような激しい運動をすると、心拍数が上がって動悸や息切れがしやすいためお勧めできません。

そこで、体への負担が少なく下半身を強化できる運動として、散歩が推奨されています。

また、一定のリズムで歩くことで、自律神経が整う効果もあると言われています。

下半身圧迫装具の利用

弾性ストッキングや加圧式腹部バンドなどを利用することで、下半身に血液が溜まるのを防ぎ、症状の緩和や改善に効果があると言われています。

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病院で処方される薬

起立性調整障害と診断されたら、治療の第一選択は非薬物療法となります。

非薬物療法とはその名の通り、薬物を使用せずに上記でご紹介した食事や運動、日常生活の改善などを行うものです。

非薬物療法を行っても改善が見られない場合や、一日中体を横にしていないと体調が悪く日常生活を送るのが困難などの重症と診断された時には、続いて薬物療法を行います。

塩酸ミドドリン

起立性調整障害では最もメジャーな薬で、交感神経のα1受容体を刺激することで、血管を収縮して血圧を上げます。

副作用が少ないと言われていますが、場合によっては頭痛や吐き気、動悸などが起こることもあります。

メシル酸ジヒドロエルゴタミン

血管の拡張を抑え、血圧の低下を防ぎます。

塩酸ミドドリンを服用して、効果がない場合に処方されます。

副作用には吐き気や嘔吐、食欲不振などがあります。

メチル硫酸アメジニウム

交感神経の働きを亢進するノルアドレナリンの分泌を高めることで、血圧を上げる効果が期待できます。

動悸や頻脈などの副作用が出やすいため、塩酸ミドドリンを服用しても効果が得られなかった場合に使用されることが多いです。

プロプラノロール

起立性調整障害の中でも、血圧低下が認められず、起立時の頻脈がある場合に用いられます。

交感神経のβ受容体を遮断することで、心臓の拍動を抑えて頻脈を緩和します。

なお、喘息の場合は使用できないことと、注意すべき副作用として徐脈があります。

息苦しさや脈が飛ぶなどの症状が現れた場合は、心不全を発症している恐れがあるため早急に病院へ掛かるようにして下さい。

※子どもの場合、1分間の脈拍数は小学生なら70~110、中学生・高校生は50~100が正常値と言われていますが、この値よりも低いと徐脈、高いと頻脈と判断されます。

完治するのでしょうか?

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ある研究報告によると、子どもの時に起立性調整障害と診断された方のその後を調べてみると、男性で24%女性で49%の方が、大人になった現在も症状が残っていると答えているそうです。

しかし、症状があるからといって会社勤めができないわけではなく、ましてや治療を続けているわけではないようで、多くの方は自分の体調を向き合いながらも社会生活を営んでいることがわかりました。

また、起立性調整障害が自律神経の乱れに起因する症状のため、年齢が上がるに従い、自律神経が整ってくることで症状が改善したという方も多くいらっしゃいます。

完治という言葉から、一度治ってしまえばもう一生同じ症状に悩むことがないというイメージを持ってしまいがちですが、起立性調整障害においては症状が多少あっても薬の服用などの治療を行わずに日常生活が送れる場合は、それを完治としている場合が多いようです。

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整体などでの治療

整体での治療

自律神経が乱れると、首や肩、背中などの筋肉が凝りやすくなることがわかっています。

また、背中や肩の筋肉が固まってしまうことで、ストレートネック(通常は骨の並びが湾曲しているのに対し、まっすぐになってしまっている症状)を併発し、それによってさらに自律神経が乱れるという悪循環に陥りやすくなってしまいます。

そのため、整体によって体の歪みや筋肉の疲労を取り除くことで自律神経が整い、起立性調整障害の症状が改善することがあります。

ツボ押しによる治療

病院での薬物療法は、あくまでも症状に対する対処療法なのに対し、整体やツボは起立性調整障害の根本原因である自律神経の作用にアプローチします。

もちろん、全ての方に改善が見られるわけではありませんが、ツボ押しや鍼を施術してもらったことにより、体調に変化が現れ、「治るかも知れない」という希望を抱くようになり、積極的に治療に関わるようになったお子さんも多くいるようです。

体験談

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起立性調節障害は長期に渡って対策・治療を続けていくことが必要になります。中でも改善が見られた人の話を少し掲載しますので、参考にしてください。

  • 小学生の子どもを持つ父親です。娘が起立性調整障害を診断されてから、学校の先生と相談をして、学校には無理に通わせず、基本的には本人の体調に任せることにしました。また、学校に遅れて行く時は授業の最中に教室に入るのはプレッシャーに感じるようだったので、保健室で待機して休憩時間中にクラスに合流するなど配慮を頂きました。さらに自宅では夕食の時間を早めたり、食事の味を濃い目にすることで水分補給を意識的に行うようにし、散歩やサイクリング、水泳など軽めの運動を行うようにした結果、症状が改善していきました。
  • 中学3年の息子が、朝起きると頭痛や吐き気、体のふらつきなどを訴えるようになり、病院へ行くと起立性調整障害と診断されました。血圧を上げる薬を処方されましたが、息子には合わなかったみたいで「余計に吐き気がひどくなる」との理由で服用を断念。学校に行きたいのに行けない自分に対して罪悪感のようなものを抱き始めていた息子に対し、食事を高たんぱく・高脂質のものに変えることを行ってみました。お肉や卵、チーズをたっぷりと食べさせるようにしたところ、症状に改善が見られました。
  • 息子が起立性調整障害になり、主治医にはアレルギーの症状を抑える感じで、上手く付き合うことを目標にしましょうと言われ、生活改善を主体としました。主な内容は、適度な運動、水分を多く摂る、テレビやパソコン、スマホの長時間使用の禁止、早くに布団に入る、朝は日の光を見る(起き上がれない時は電気を点けて光を浴びる)などを行ったところ、現在は遅刻もせずに学校に通うことができています。

症状や原因

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ここまで、治療法を中心に説明してきましたが、最後に症状や原因についても触れておきます。詳しくは以下のページでも説明していますので、ご覧ください。

主な症状

  • 朝起きられない
  • 朝ご飯が食べられない
  • 夜寝られない
  • 立ちくらみやめまい
  • 吐き気
  • 立っていると気分が悪くなる
  • お風呂に入ると気分が悪くなる
  • 倦怠感
  • 頭痛や肩こり
  • 動悸や息切れ
  • 疲れやすい
  • 冷や汗
  • 思考力や集中力の低下
  • イライラや不安

原因

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人が立ち上がると、重力の関係で下半身に血液が集中してしまいますが、通常はそれを防ぐために自律神経の中の交感神経が働き、下半身の血管を収縮させて脳へと送られる血液量を保っています。

しかし、起立性調整障害になると、本来であれば早朝から働いているはずの交感神経が活性化されないため、起床時に脳への血液が足りなくなり脳貧血や低血圧の症状が現れてしまいます。

動悸が起こる仕組み

私達の体には、血圧が下がると代償機構(機能を維持するために臓器が協力して補うこと)によって、血圧を一定に保つように働くシステムが備わっています。

特に心臓による代償機構は、血圧低下では最も早くに働き始めると言われており、脈拍の回数を増やすことで血液量を増やそうとするため、頻脈になり動悸や息切れが起こると言われています。

夜は元気で朝は調子が悪い理由

交感神経は、通常早朝から昼にかけて活動がピークになり、夕方に向けて副交感神経と入れ替わるように活動量を減らしていきますが、起立性調整障害では正常な時と比べて交感神経の活動のピークが5~6時間ほど遅れてしまうと言われています。

そのため、早朝になっても起きられないだけではなく、本来であれば夕方から夜間に向かうに従って副交感神経の作用によって、リラックスして眠気が生じる時間帯であるにも関わらず、交感神経が優位になったままなので眠気が起こらないなどの症状が現れます。

つまり、起立性調整障害とは、夜更かしなどの不摂生が原因で朝起きられないのではなく、自律神経の働きが崩れてしまうことで、夜は眠れなくなり朝は起きられなくなっているのです。

ただし、夜に眠れないからといって、スマホやゲームを使用して夜更かしを続けてしまっては、悪循環となり、さらに自律神経の働きが乱れてしまいます。

起立性調節障害の質問や回答が多く寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

看護師からのアドバイス

適切な治療を受ければ、起立性調節障害の症状は軽くなります。生活習慣の改善も、立派な治療です。

特に早寝早起きや運動、ゲームの制限などは、子どもまかせにするのではなく、保護者を始め周囲の大人が正しい知識を持ち、一緒に改善するように取り組みましょう。

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主な参考文献・サイト

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