くる病の原因、症状、確認法や治療法について

現在、くる病になる子どもさんが増加しています。これは主にビタミンDの不足が原因といわれており、母乳育児にこだわることがかえってビタミンDの不足へ繋がっているというのです。では、どのようにしてビタミンDを補給すればよいのでしょうか。くる病について、大切な事項をまとめましたので、参考にしてください。

  [骨の病気]

更新日:2017年05月29日

この記事について

監修:大見貴秀医師

執筆:看護師(当サイト編集部)

くる病とは

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くる病とは、小児の発育期(特に骨の発育期)にカルシウムが骨に沈着せず、しっかりとした骨の組織が形成されない状態をいいます。症状としては、骨の成長障害や骨格や軟骨部分の変形が生じます。

主な原因はビタミンD、リン、カルシウムの不足などといわれています。以前、NHKなどでも報道がありましたが、日本におけるくる病は戦後の食料事情が悪い時期に多くみられましたが、その後は生活環境、食料事情などの改善とともに見られなくなっていました。

しかし、再び現在、くる病が増加しているというのです。

クララはくる病?

有名なアニメ「アルプスの少女ハイジ」に登場する車いすの女の子「クララ」。クララはくる病という設定だったようです。

都市での生活で日光を浴びずに生活していたことで、ビタミンDなどが不足することで歩くことができずにいましたが、ハイジと一緒にアルプスへ行って、日光を浴びることによって、立ってあるくことができるようになった。ということのようです。

現代における「くる病」の状況

では、どうして「くる病」は増加傾向にあるのでしょうか。

くる病の原因は、ビタミンDの不足や低カルシウムなどが主なもので、十分に栄養が行き届いている現代では心配する必要はないのではと考えてしまいます。

しかし、実際病院ではビタミンD欠乏症の患者さんが増加しています。

くる病の患者数の具体的な統計はありませんが、乳幼児の3割程度は、血中のビタミンDが推奨されている値よりも下回ってるというデータもあり、現代病として、くる病についての認識をあらためる必要があります。

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くる病の原因

くる病の原因には大きく三つあります。

  • カルシウムの不足
  • リンの不足
  • ビタミンDの不足

骨を作るには、カルシウムとリンが不可欠です。骨は常に古いものを壊し、新しい骨を作るということを繰り返しています。

骨を作る際に、カルシウムとリンがその材料となります。また、カルシウムとリンを身体へしっかりと吸着させるためには、ビタミンDが必要になります。ビタミンDが不足すると骨が柔らかくなってしまいます。

カルシウム、リン、ビタミンDがそろって初めて正常に骨を作ることができるのです。

では、どうして、カルシウム、リン、ビタミンDは不足してしまうのでしょうか。

カルシウムの不足について

カルシウムは日本人全体に不足しているといわれています。妊娠と出産を経験した人であれば、わかると思いますが、妊娠中は赤ちゃんのために多くのカルシウムが必要となります。出産後の授乳期もも同様です。

自身の身体のためにも、お子さんのためにもカルシウムをきちんと摂取しないといけません。

また、通常時でも身体の筋肉や神経の働きを保つためにカルシウムは必要です。

血液が腎臓を通って浄化される際に一定のカルシウムが尿へ排出されます。排出された分のカルシウムを血液中に再び補給するため、骨に蓄えられているカルシウムが利用されます。

つまり、カルシウムが不足すると骨が強くならないということだけでなく、次第に弱くなっていくことになります。

カルシウムは食べ物からうまく摂取していきましょう。カルシウムを多く含む食べ物など、カルシウムについて骨粗鬆症財団のホームページに解説がありますので、参考にしてください。

骨粗鬆症財団カルシウムの説明ページ

リンの不足について

リンは様々な食べ物に入っていることから、通常の食事をしていればリンが不足することはないと言われています。

リン不足となるのは、リンが過剰に排出されてしまう遺伝性の低リン血性などの場合で、特にこの場合を低リン血性くる病といっています。

ビタミンDの不足について

ビタミンDは脂溶性のビタミンで、食べ物から摂取するほか、日光浴によって体内で生成することができます。

くる病の原因としては、このビタミンDの不足が大きな原因となっています。

近年では母乳によって子育てをすることが推奨されていますが、母乳にはビタミンDの含有量が少ないため、完全母乳にこだわり過ぎてしまうと、ビタミンDの量が不足してしまうことがあるのです。

もちろん、母乳による子育ては、成長や感染予防、母子関係の確立によい影響を及ぼします。いいだけでなく、エストロゲン分泌抑制により乳がん、卵巣がん、子宮体がんも減る可能性すら示唆されています。

また母乳を摂取することを通じて母親が摂取した食事の味を学習するなど、食育にも繋がっていくそうです。しかし、母乳にはこうしたメリットがある一方で、ビタミンDが少ないといったデメリットもあるのです。

そして、ビタミンD不足のもう一つの理由が日光浴の不足です。ビタミンDは日光が皮膚に当たると合成されます。

近年は、紫外線による老化や発ガンリスクなどを過度に気にかける傾向があり、乳幼児についても日光浴が不足している状況にあります。

ビタミンDの不足によるくる病については、以前、毎日新聞でも報道がありましたので、抜粋を引用しておきます。

ビタミンDが欠乏している乳幼児の増加の3大要因は、母乳栄養の推進▽日光浴不足▽偏った食事--という。母乳は赤ちゃんに大切な免疫物質が含まれるなど利点が多いものの、ビタミンDは人工乳に比べて極めて少ない。また、ビタミンDは太陽の光にあたると体内で作られるが、皮膚がんやしみ・しわ予防の観点から紫外線対策が普及したことも影響している。

重度のO脚でくる病と診断された男児

重度のO脚でくる病と診断された男児=北中幸子准教授提供

毎日新聞5月2日から抜粋

くる病の予防

くる病の原因としては、ビタミンDの不足が大きな原因となることは理解できたと思います。

乳幼児がビタミンD不足に陥らないためには、食事からもビタミンDを摂取する必要があります。では、どのようにしてビタミンDを捕捉すればよいのでしょうか。

食事によるビタミンDの摂取

食事による摂取

母乳育児にこだわり過ぎるとビタミンDを十分に摂取できないことがありますが、必ずミルクをあげることが必要かというと、そういう訳ではありません。

母乳を与えている間はお母さんがビタミンDを十分にとるように心がけて、食事や適度な日光浴を行うことが大切です。赤ちゃんにも同様に日光浴が必要になります。

離乳食については、アレルギーなどの心配もあるので、うまくビタミンDを摂取できないこともあります。特に卵はビタミンDが豊富な食べ物ですが、アレルゲンでもあり心配なところです。

また、アレルギーを心配して離乳食の時期を遅らせることがあると思いますが、その結果ビタミンDの摂取量が不足しがちです。

アレルギーが心配な場合は、離乳食にしらすなどのビタミンDを多く含む魚を取り入れましょう。

なお、離乳食をあげた時に赤ちゃんの具合が悪くなったり、アレルギーが気になったりした場合はすぐに医師に相談してください。

日光浴によるビタミンDの摂取

日光浴による摂取

現在の地球では以前に比べてオゾン層の破壊などによって、日光から降り注ぐ有害な紫外線の量が以前より増加しています。有害な紫外線を避けながらうまく日光浴をすることが大切です。

過度な日焼けが気になる場合は、ガラス越しに日差しの弱い時間帯(朝や夕方)に日光浴をするといいでしょう。

日差しの最も強い正午前後は避け、時間は3分くらいからスタートして、徐々に増やしていきます。また、赤ちゃんの場合は、両手の甲くらいの大きさを15分間くらい日にあてたり、30分くらい日陰で過ごしたりするなどするといいでしょう。

外に出ることも大切です。過度に直射日光に当たらないよう、うまく日陰を利用することや、UVカットの服を着せるなどして外気浴をするようにしましょう。

赤ちゃんの日光浴の方法などのビタミンDの補給などを記載しているホームページがありますので、参考にしてください。

独立行政法人国立健康・栄養研究所のビタミンDの解説

くる病予防のためのビタミンDの補給について、東邦大学名誉教授の多田先生が記載したQAがありますので、こちらもあわせて参考にしてください。

赤ちゃん&子育てインフォ 完全母乳の6か月の子に対するくる病予防のためのビタミンDの補給

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くる病の症状

くる病は、主に骨に異常が出てきます。また、成長においても悪影響を及ぼすことになります。主な症状は次のとおりです。

  • 足の変形、曲がって成長する。重度のO脚やX脚。
  • 頭蓋骨が柔らかくなる(手で押すとへこむ程)
  • 肋骨の一部がコブのように膨らむ
  • 低身長
  • 虫歯になりやすい。
  • カルシウム不足による痙攣など
  • 筋肉痛がおこる、筋力が低下する
  • 身長が伸びない、体重が増加しない

くる病の検査

くる病の検査方法は、主に血液検査、X線検査、CT、MRIになります。

X線、CT、MRIの検査では、背中、脚、場合によっては膝などの関節部について骨の変形などの異常がないか調べます。

血液検査では、血中に含まれるビタミンD、カルシウム、リンの量について、ALPと呼ばれる酵素を調べます。

くる病の治療

治療

くる病の治療法としては、医師の診断のもとで日光浴や食事療法により、自然治癒することを目指すのが基本です。

ただし、治療が遅れると後遺症を残すこともあり注意が必要です。アレルギーなどによってビタミンDを食事から摂取できない場合や、日光浴が難しい場合は、医師の診断のもとでビタミンDを投与するということもあります。

ビタミンDは脂溶性ですので、過剰摂取した場合に尿と一緒に体外に排出されないため、他の病気を引き起こすことがありますので、必ず医師の指導に従い投与することが重要です。

また、低リン血性くる病の場合、医師の治療が必要となります。

この場合、医療費助成制度の適用が受けられる場合もありあります。低リン性くる病のことについては、大阪大学大学院学系研究科学小児科学の大薗先生が監修しているゼリア新薬さんのページで詳しく説明していますので、参考にしてください。

低リン性くる病ナビ

未熟児くる病について

妊娠後期は胎児の骨を形成するため、カルシウムが母体から胎児へ循環していきます。そのため、それ以前に生まれた早産児はカルシウム、リン、ビタミンDが不足するため、くる病を起こす危険性があります。

カルシウムは小腸から吸収され、その吸収量を増加させるのは、ビタミンDです。超早産児、超低出生体重児の多くは、腸管機能が未熟のため、栄養を吸収する能力も弱くなります。

看護師からひとこと

くる病は、骨の成長障害や骨格や軟骨部の変形が起こる病気です。

カルシウムの摂取が重要ですが、吸収を助けるために、ビタミンDは不可欠です。紫外線に注意しながら、日光浴をしたり、食品からビタミンDを摂取したりすることをお勧めします。

ビタミンDが含まれているものは、主に、きのこ類、魚介類と言われています。例えば、さんま、かつお、鮭、めかじきなどがあります。医師の指導のもと、自然治癒力を大事にしていきましょう。

くる病に関するみなさんの質問や回答も参考にしてください。

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