アレルギー性鼻炎とは?症状や治療法、日常生活の注意点など

アレルギー性鼻炎は多くの日本人が悩んでいる病気のひとつです。命に関わる病気ではありませんが、多くの場合は長期に渡って付き合うことになります。治療法は主に対症療法で、抗原(アレルゲン)を避けて生活することが最も大切です。アレルギー性鼻炎についてまとめましたので、参考にしてください。

  [その他, アレルギー]

更新日:2017年07月30日

この記事について

監修:大見貴秀医師

執筆:看護師(当サイト編集部)

アレルギー性鼻炎とは

アレルギー性鼻炎は、家のホコリやダニの糞や死骸、カビやペットの毛などのハウスダスト、花粉などに対する過剰な免疫反応が原因となって起こるものです。子どもにも多くみられます。

アレルギー性鼻炎は基本的に重い病気ではありませんが、くしゃみ、鼻のかゆみ、鼻水、鼻づまりなどが続きますので、日常生活を快適に過ごせないといった状態になります。

日本では人口の半分が何らかのアレルギーの病気にかかっていて、花粉症も含めると40%以上の人はアレルギー性鼻炎であるといわれています。

アレルギーに対する研究は進んでいますが、発症のメカニズムや悪化の原因などは十分に解明されていないため、予防法や治療法もまだまだ十分ではありません。

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アレルギー性鼻炎の原因など

アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患を起こす物質のことを「抗原(アレルゲン)」といいます。

本来、私たちの体は、体に対して有害であったり異物であると判断されたりするものを排除する仕組み(これを「免疫」といいます)が備わっています。

通常、抗体は体に対して害のあるものや異物に反応し、体の外部へ排出させるといった役割を果たします。しかし、抗体が過剰に働いてしまうと、害がないものに対しても反応してしまい、かえって体に害を与えてしまうことがあります。これがアレルギーと呼ばれるものです。

アレルギー性鼻炎も抗原(アレルゲン)に対して抗体が過剰に反応することによって起きています。

抗原(アレルゲン)となりえるものは、家のホコリやダニの糞や死骸、カビやペットの毛などのハウスダストや花粉などになります。抗原(アレルゲン)が鼻や目に触れることによって、さまざまな症状を引き起こすことになります。

アレルギー性鼻炎には、ハウスダストなどによって季節に関係なく症状が出るものや、花粉症のように季節性のものがあります。

アレルギー性鼻炎の症状

原因

アレルギー性鼻炎の主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりとなります。朝の起き掛けに症状が強く現れることが多いのが特徴です。寝ている間に鼻水が詰まったり、下に落ちてきたホコリなどを一気に吸い込んでしまったりするからです。

乳幼児においては、鼻づまりでミルクが飲めないなどの症状が出ることもあります。乳幼児は症状を言葉で伝えられませんので、様子をよくみてあげることが大切です。

花粉症について

花粉症は季節性のアレルギー性鼻炎です。その症状は目のかゆみ、充血、涙目、喉のかゆみなどです。複数の花粉に対してアレルギーがある場合は、長期にわたって症状が現れることになります。

アレルギー性鼻炎の診断・検査

診断や検査では、症状の出る時期や、家族のアレルギーの状況の問診、鼻の粘膜や鼻水の確認、採血による検査などを行っていきます。

鼻鏡検査

鼻の粘膜の状態を医師が見て確認する検査です。健康な人の鼻の粘膜は透明や薄いピンク色ですが、アレルギー性鼻炎の人は粘膜が青白く、粘膜が膨らんでいたり、鼻水が粘膜を覆っていたりします。

特異的IgE抗体検査

採血して、血液から抗原(アレルゲン)に対する抗体をしらべます。一度に複数の抗原(アレルゲン)を調べることができる比較的簡単な検査です。事前に抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬を中止する必要がありません。

好酸球(こうさんきゅう)検査

鼻水を検査し、鼻水の中に「好酸球」というアレルギー性疾患に特有の細胞が存在するかを確認します。

アレルギー性鼻炎の治療

アレルギー性鼻炎が自然治癒する人は全体の数%といわれています。

そもそもアレルギーの病気については、十分な解明が行われていない状態ですので、確実に治る方法というのはありませんが、最近では減感作療法といって、徐々に体をアレルゲンに慣らしていくという方法もあります。

その他、抗原(アレルゲン)を避ける生活環境を確保することや、アレルギー性鼻炎の症状に対する長期的な対症療法(症状をやわらげるための治療)を行います。

薬による治療

アレルギーに対する飲み薬(内服薬)や、鼻のスプレー(点鼻薬)で症状をやわらげます。ただし、市販の薬は成人用のものが多く、子どもには適していないものもあります。子どもに対しては、耳鼻科もしくは小児科を受診して医師に薬を処方してもらいましょう。

また、症状は時期や季節によって変化しますので、状態にあわせて薬の量を調整していきます。使用する主な薬は次のものです。なお、薬には飲み合わせが悪いものがありますので、必ず現在飲んでいる薬のことを医師に話した上で、処方を受けてください。

抗アレルギー薬

アレルギーの薬には眠くなる作用のあるものが多いので、車の運転等、高度な集中力が必要な方は、服用にあたって医師とよく相談してください。

抗ヒスタミン薬

アレルギー症状には「ヒスタミン」という物質が関わっています。このヒスタミンの働きを阻害することで、アレルギー症状を緩和します。点眼薬や点鼻薬は比較的即効性があります。飲み合わせの悪い薬があり、注意が必要です。

トロンボキサンA2拮抗薬

鼻づまり、くしゃみ、鼻水に効果があります。血小板が固まる効果があるため、他の病気の薬との併用に注意が必要です。

ロイコトリエン拮抗薬

鼻づまりに効果があります。穏やかな効き目で効果が現れるまでに時間がかかりますが、第二世代抗ヒスタミン拮抗薬よりも早く効果が現れます。

ステロイド薬

鼻粘膜の炎症を抑え、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど症状全般に効果があります。

抗アレルギー薬などと併用することで症状が早く抑えられます。

なお、ステロイド薬には副作用がありますので、医師の指示を守って薬を使用するよう注意してください。

減感作療法

減感作療法は、注射や経口投与により抗原(アレルゲン)を少しずつ、繰り返し体内に注入し、抗原(アレルゲン)に対する体の反応を弱めていく治療法です。

ごくまれにアナフィラキシーショック(抗原が体内に入ることにより、血圧低下や呼吸困難などが現れる状態)などの副作用が起こります。副作用は15分以内に起こるため、投与後はしっかりと経過観察を行う必要があります。

この治療法については、すべての医療機関で行っているものではないため、治療の詳細については治療を行っている病院などで確認してください。

レーザーによる治療

アレルギー性鼻炎の原因となっている鼻の粘膜をレーザーで少し焼灼する方法です。入院する必要もなく短時間で終わります。

薬があまり効かない人や、症状が強い人に対しては、医師から勧められることもあります。

レーザー治療は、症状の改善に効果的ですが、レーザーで焼かれた鼻の粘膜は再生してしまうため、その効果は1年程度で薄れていきます。

再度レーザー治療を受けることで効果を継続することができますが、アレルギーに対する体質自体を改善するものではないので、あくまでも対症療法の一つということになります。

重度の花粉症の場合は、毎年1回受けるようにするとよいでしょう。

その他の治療

上記の治療で改善が見られない場合は、鼻の粘膜の切除、鼻水を分泌する神経を切除して鼻水を止めるという手術による治療があります。

これらは大がかりな手術であり入院を要します。また、子どもに対してはあまり行われません。

日常生活における抗原(アレルゲン)の回避方法

ハウスダストの除去方法

日常生活における抗原(アレルゲン)の回避は、最も重要なことです。ハウスダストの取り方など、抗原(アレルゲン)の回避に重要なことを記載しておきます。

  • リビングや寝室は毎日掃除してハウスダストを取り除きます。
  • 掃除機は1㎡ごとに20秒以上かけてゆっくりと行います。
  • ファブリックのソファ、カーペット、畳の使用は避けます。
  • 布団は最低でも週に2回は干します(花粉症の時期は花粉がつきますので外に干してはいけません。)
  • 布団を干せない時は布団乾燥機を使用します。また、週に1度は掃除機をかけます。
  • 布団は防ダニのものを使い、寝具にはダニを通さないよう、カバーをかけます。
  • シーツ、布団カバーは週に一度は洗濯します。
  • 部屋の湿度は50%程度、温度は20度から25度くらいに保ち、ダニの好む環境を作らないようにします。
  • フローリングなどはホコリが舞わないよう、ふきそうじの後に掃除機をかけます。
  • アレルギー性鼻炎の人はカゼが長引く傾向があります。毎日の健康管理に気を配って、カゼが流行る季節にはマスクなどをして、カゼの予防に努めることが大切です。
  • ペットがいる場合は家の外で飼うようにすることや、飼育環境を清潔にするようにします。

花粉の回避方法

  • 花粉の多い日は窓を閉め、家の中に花粉を入れないようにします。
  • 花粉の多い日は外出を避け、外出する際には眼鏡、マスクを着用します。衣服はニットなどの花粉が付着しやすいものは避けます。
  • 帰宅した際には、部屋に入る前に服や髪についた花粉を落とします。
  • 洗濯した衣類は外に干さず、室内に干すか乾燥機を使用します。

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民間療法、自然療法について

民間療法や自然療法とは、通常の医療ではなく、健康食品や一般の食品などにより、アレルギー性鼻炎を軽減、軽快させていこうというものです。

具体的には、漢方、鼻スチーム療法、紅花、パパイア、アロマテラピー、一般食品では、ヨーグルトなどの乳製品、乳酸菌、ニンニク、生姜、シナモンなど、非常に多岐に渡るものが、様々なところでいいといわれています。

こういった、民間療法や自然療法については、その効果の検証はあまりされていないため、実際の効果は不明確なものが多くなります。ただ、使用した人に対するアンケートなどによると、漢方や鼻スチーム療法などは効果が高いようです。

民間療法や自然療法については、良いものは少し使ってみようかという気になりますが、できるだけ効果の検証されているものを使用していく方がいいでしょう。

まず、医師と治療について十分に相談して、通常の医療の中で、ご自身の症状にあったで治療法を探ることが大切です。

日常生活の注意点

アレルギー性鼻炎は完治することが大変難しい病気です。日常生活の環境を改善することによって、症状を緩和したり、症状が出ることを抑えたりするようにしましょう。

周囲の人は禁煙する

たばこの煙は鼻粘膜を刺激しますので、アレルギー性鼻炎の症状が悪化することがあります。自身はもちろん、お子さんがアレルギー性鼻炎の場合は、家族の人は禁煙することをお勧めします。

ペットを飼わない

ペットの体にはダニやハウスダストが付着しています。アレルギー性鼻炎の人がいる家庭ではペットは飼わない方がいいでしょう。

ペットを飼う場合は外で飼うことや、ペットのいる場所・育てる環境を清潔にすることも大切です。

抵抗力をつける

抵抗力は十分な睡眠によって確保されていきます。十分な睡眠ができる環境を確保することが大切です。逆に睡眠不足は抵抗力を低下させるだけでなく、ストレスにも繋がります。

バランスのよい食事をとる

脂肪、タンパク質、食品添加物の多い食事は避けて、ビタミンやミネラルを多く含む野菜を取り入れ、バランスのよい食事を心がけましょう。

室内は適度な湿度を保つ

鼻の粘膜にはある程度の湿度が必要です。乾燥する季節には加湿器などを使用するといいでしょう。

適度に運動する

適度な運動は健康維持に重要なだけでなく、ストレス解消や体の調子を整える効果があります。

継続して運動を楽しめるよう、家族で取り組める運動をしてみるといいでしょう。

なお、水泳は鼻の粘膜に悪い影響を与えることがありますので、気をつけてください。

妊婦の治療について

アレルギー性鼻炎の妊婦さんは多くいらっしゃると思いますが、妊娠中は悪化することがあります。

しかし、妊娠4か月の半ばより前の段階でアレルギー性鼻炎の薬は使用すると、胎児に影響が出ることもあるため注意が必要です。

薬物を使用せず、入浴、蒸しタオル、マスクなどを用いる方法を試みてください。ただし、症状がひどい場合には医師に相談してください。胎児の安全を考慮した量の薬を処方されることもあります。

看護師からひとこと

アレルギー性鼻炎は、ハウスダストやペットが関与していることもあります。まずは生活環境を整えることが必須です。その上で内服や点鼻薬などで、1年を通してコントロールをつけましょう。

子どもさんの場合は体重で薬の量も違いますから、安易に市販薬に手をつけず、必ず病院で処方してもらいましょう。

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まとめ

  • アレルギー性鼻炎は、家のホコリやダニの糞や死骸などのハウスダストや花粉などが原因となります。
  • 体の抗体が抗原(アレルゲン)に対して過剰反応し、かえって体に害を与えてしまうことをアレルギーといいます。
  • 日本人の半分はアレルギーを持っていて、40%以上の人はアレルギー性鼻炎(花粉症を含む)だといわれています。
  • 検査では、何らかのアレルギーを保持していることを検査し、アレルギーがある場合は、その抗原(アレルゲン)の特定を行います。
  • 治療方法は抗原(アレルゲン)を避けることと、薬による対症療法が中心となります。
  • 症状がひどい場合は、レーザーによって鼻の粘膜を焼く手術などを行うことがあります。
  • 抗原(アレルゲン)を避けて生活するには、布団の手入れ、掃除方法などに気を配る必要があります。
  • 妊婦さんがアレルギー性鼻炎の場合、妊娠4か月半ばくらいまでは、アレルギー性鼻炎の薬を使用せず、入浴、蒸しタオル、マスクなどを用いてしのいでください。
アレルギー性鼻炎について、質問や回答が多く寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

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