自閉症の特徴とは?症状や診断、原因や治療法などについて解説します。

自閉症は、先天的な脳の機能障害で、多くは生後30か月までに発症します。自閉症児は、一人で遊ぶことが多かったり、視線が合わなかったりするという特徴があります。また、大人になってから、自閉症と診断されることもあります。自閉症に関する正しい知識を持って生活していくことが大切です。自閉症についてまとめましたので、参考にしてください。

  [その他, 脳の病気]

更新日:2017年10月08日

この記事について

監修:豊田早苗医師(とよだクリニック院長)

執筆:当サイト編集部

自閉症と自閉症スペクトラム

自閉症

これまで自閉症やアスペルガー症候群などと別々の障害とされていたのを、社会性やコミュニケーションに困難を抱える1つの症状として捉え、現在では「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム」という診断名に統合されています。

自閉症スペクトラムには、高機能自閉症・アスペルガー症候群、カナー症候群、小児期崩壊性障害(精神発達の退行・言葉がなくなる「有意味語消失」が特徴的)などが含まれます。

これらの疾患には、症状として共通性があり、また、ここに症状が違う多様性、成長に伴って病態像が変化するなどの特徴を持つことから、1つ1つ別の障害として捉えず、連続体として捉え、支援を行っていこうということで、自閉症スペクトラムという診断名に統合されました。

以下、自閉症スペクトラムを自閉症として記載していきます。

自閉症とは

自閉症は、先天的な脳の機能障害で、生後30か月までに発症するのが通常です。自閉症を発症すると、一人で遊ぶことが多くなり、視線が合わなくなったりします。

また、関わりを持とうとすると、パニックを起こしたり、特定のものに強いこだわりを持つ性格になったりします。

自閉症は、先天的な脳の中枢機能の障害であり、自閉症という名称から、心の病気といった印象がありますが、心の病気ではありません。

自身の周りに起こる事象や状況が、脳へうまく伝わらないため、対人関係やコミュニケーションを困難なものとし、特定のものに執拗なこだわりを持つようになります。

スポンサードリンク

自閉症の子どもたちはどのくらいいるのでしょうか。

少し前まで、自閉症の子どもは珍しいと考えられていましたが、近年の医学的調査によると、自閉症は少なくない障害であることがわかってきました。

診断法が確立されてきたことに伴って、自閉症は増加傾向にあります。現在では1,000人に2~6人、軽症の場合は100人に1人くらいはいると考えられています。

また、男性の方が3〜4人:1人の割合で多いといわれています。

自閉症の診断・症状

子ども・コミュニケーション

自閉症の症状は多岐に渡り、人それぞれの症状となってきますが、根本的な症状として、三つの能力障害があります。これを自閉症の症状の「三つ組」といいます。

  • 対人相互反応の質的な問題
  • コミュニケーションの質的な問題
  • こだわり、想像力の問題

これらがそろうと、医学的に自閉症であるという診断がされることとなります。この3つを一つずつ見ていきましょう。

対人相互反応の質的な問題

自閉症は、そのイメージから、人との接触を避けて殻に閉じこもってしまうような印象がありますが、決してそういうことばかりではありません。

他人に突然、おかしな態度を示したりすることもあります。つまり、自身と相手の関係を理解できず、適切な対応ができないといった状態となります。

赤ちゃんの場合は、お母さんの後追いをあまりしなかったり、逆に人見知りを全然しないといった症状もあり、3歳くらいになると、通常は友達に関心を持っていくのですが、関心が極端に薄いことや、一方的な関心を寄せたりすることなどもあります。

その他、具体的に次のような症状があります。

  • 視線を合わせることや、表情や姿勢、身振りなど、言葉を伴わない行動がうまく使えない。(叱られているのに笑っているなど)
  • 年齢、発達にふさわしい友達関係が作れない。
  • 楽しいことや、興味のあることを、他人と共有しようとしない。
  • 対人関係において、関心を持たない。

コミュニケーションの質的な問題

自閉症の子どもの多くは、話し言葉がうまく使えないといった症状が見られますが、自閉症の子どもの全員がそうではありません。話し言葉をうまく使えないことも含めて、覚えていく言葉の偏りや誤用などが症状といえます。

通常、子どもはパパ、ママ、など、日頃多く使う日常の言葉から覚えていきます。そして、覚えた言葉を使用していくことで、言葉を次々と獲得していくこととなります。

しかし、自閉症の子どもは、自身の興味があるものの言葉は言えるようになるのに、「ママ」、「パパ」といった最も頻度の高い言葉を言えないことや、覚えた言葉もコミュニケーションの中で使用していくというより、独り言として使用していくということが多く見られます。

また、家に帰ってきたときに「ただいま」に対して「お帰り」というのではなく、相手が言うべき言葉を言ってしまったり、「バイバイ」と手を振るときに、相手の手を見えた通りにまねて、手のひらを自分のほうに向けて振ったりすることもあります。これは、自分と相手の関係性、言葉の意味をうまく捉え切れていないためと考えられます。

その他、具体的に次のような症状があります。

  • 言葉が話せない、うまく使えない。
  • 言葉の意味をきちんと理解していない。
  • 場面にあった言葉をうまく使えない。
  • 自分が好きな言葉を繰り返し使う。
  • 話しかけられた言葉に対して、適切な返事ができない。
  • 相手の手を使って何かをさせようとする。
  • だじゃれ、冗談が理解できない。

こだわり、想像力の問題

答えがどちらか分からない状態、例えば1かもしれないし2かもしれない、といった不確定な状態を楽しんだり、その場にあった行動をとったりするなど、臨機応変に対応する力が不足しています。

したがって、予想していない状況が起こるとパニックになってしまい、普段できていることができなくなることがあります。

そのため、不測の事態が起きないよう、いつも通りの状態に強く固執します。

例えば、いつもの道順や、物の置き場所などに強く固執したりします。また、遊ぶ際にも特徴があり、一列に並べることに没頭したり、3歳くらいになっても「穴に入れる」とか「押すと鳴る」といった単純な遊びに集中したりします。電車、文字、数字、キャラクターなどに偏った関心を示すこともあります。

こういったことが、特別な能力として開花することもあり、山下清も自閉症であったといわれています。

その他、具体的に次のような症状があります。

  • 手をヒラヒラさせる、ぴょんぴょんはねる、ぐるぐる回る、などの常同行動を繰り返す。
  • 体を前後に揺する。(ロッキング)
  • ミニカーのタイヤをくるくる回して眺めたりして、回転するものへ強い興味を示し、そのおもちゃ本来の遊び方をしない。
  • 水道の蛇口を何度も開け閉めする。

「三つ組」以外の症状

「三つ組」の症状以外にも、付随症状といわれるいくつかの症状があります。すべての自閉症の子どもさんに見られるものではありませんが、中でも特徴的なものを記載します。

睡眠の異常

睡眠のリズムが確率されず、3歳くらいになっても、夜中に2時間おきに目を覚ますなど、睡眠時間が極端に少なくなることがあります。

感覚の過敏性

触覚、聴覚、味覚など感覚が過敏であることがあります。

普通の人が気にならない音でも、嫌がって、耳を塞いだり、綿の生地をザラザラのように感じたり、味覚過敏のために好き嫌いが激しくなり、偏食になることもあります。

多動

自閉症であっても、手を放すとどこへ行くか分からないといった、多動の症状が現れることがあります。

自閉症の原因

子どもの自閉症

自閉症は先天性の脳機能障害であり、一卵性双生児の自閉症発症率は、他の兄弟に比べて25倍であることから、自閉症の鯨飲として遺伝的な要因が深く関与していると考えられています。

ただ特定の遺伝子は見つかっておらず、遺伝的な要因も含めた様々な要因が重なり合って脳機能の障害が発現すると言われています。

近年、アメリカで行われた研究の中に、父親が中高年のときに授かった子どもが自閉症になりやすいと報告しているものがあります。

この研究によると、父親が40歳以上のときの子どもは、30歳未満の父親の約6倍程度、自閉症や自閉症関連の症状があり、30歳代の父親と比較して1.5倍以上であったとされています。

一方、母親の影響については可能性は排除できないものの、優位な影響は認められなかったとしています。ただし、この研究において、精子の変異などその根本的な原因の特定については言及されておらず、解明もされていません。

また、自閉症は生まれる前の胎内で、中枢神経系の発育に問題が生じたことが大きな原因だとも考えられています。

様々な研究がなされ、様々な説がありますが、現時点では明確な病気発症のメカニズムは分かっていません。

なお、自閉症は先天性の障害ですので、育て方が原因となることはありません。

自閉症の分類(自閉症スペクトラムによる捉え方)

子どもとパソコン

自閉症は、知的障害を伴うことが多く、自閉症の中でも知的能力が低くない場合、高機能自閉症と呼ぶことがあります。

また、知的能力にかかわらず、ある特定のことに対して飛び抜けた能力を発揮することがあり(山下清の例のように)、こういった驚異的な能力がある者をサヴァン症候群と呼びます。

その他、言語障害がなく、一見自閉症に見えない「アスペルガー症候群」や、小児自閉症(カナー症候群)と呼ばれるものもあります。

自閉症にはこういった様々な状態があり、自閉症スペクトラムによると、IQが高く、自閉度も高い状態はアスペルガー症候群や高機能自閉症にあたり、IQが低く、自閉度が高い状態はカナー症候群となります。

高機能自閉症について

高機能自閉症は、IQが70以上であり、知的能力に低下がないと判断される場合で、自閉症全体の約20〜30%程度を占めています。知的能力が正常の場合、自閉症と気付くのが遅くなることがあります。

しかし、高機能自閉症の場合でも、通常生後18ヶ月〜2歳くらいまでに、特定の事に執拗にこだわるとか、他の子と上手く遊べない等、自閉症の症状が現れ、何らかの異変に気付くと思います。

高機能自閉症も他の病気と同様に、治療を早期に開始することが大切ですので、何らかの症状がある場合は、早めに医師の診断を受けるようにしてください。

自閉症の治療法

薬

自閉症は、その原因について、詳しいメカニズムが解明されていません。したがって、原因を取り除いて完治させるといった治療法がありません。そのため、環境整備を行ったり、伝え方や接し方などを工夫して、日常生活や社会生活を送る上での支障を減らしていくことが治療になります。

具体的には、

  • 図などを用いて状況を視覚化させることで物事を理解しやすいようにする。
  • 上手くできたことは誉める。
  • 静かな環境を整備する。

などを行い、適切な社会生活を送ることができるように、両親や周囲の大人が社会のルールや、コミュニケーションの方法などを根気よく教えていきます。

こういった自閉症の訓練については、専門家や医師から適切に指導を受けて行うことが大切です。

薬物による自閉症の治療法

自閉症の症状でよく見られる「多動性」「儀式的行為」「自傷行為」などについては、薬物療法によってその症状を緩和できることがあります。

ただし、自閉症の子どもは薬物過敏性を持っていることも多いですし、子供であるため、薬の作用が一般の場合とは異なる可能性もあるので、薬の使用は慎重に行うことが必要です。また、薬を投与する場合、その症状や効果によって、投与期間が数カ月〜数年間に及ぶこともあります。

薬物療法については、自閉症の症状に対する治療であり、自閉症そのものを治療するといったものではなく、あくまで補助的な手段です。

近年の薬物治療について

現在、投薬の研究も進んでおり、その内容を少し紹介します。

以前、イギリスの専門誌「Nature Communications」に発表された内容で、東京大学と東京都医学総合研究所、順天堂大学の共同研究チームが行ったものです。

自閉症は遺伝的要因によるところが大きく、根本的な原因が明確になっていないというのは、先に記載しましたが、その中で結節性硬化症という遺伝病と一緒に発病している人がいます。

結節性硬化症は6,000人に1人程度の割合で発症する遺伝病で、皮膚、脳神経、良性の腫瘍が現れるといった特徴があり、この結節性硬化症の半数以上の人が自閉症を併発しています。

結節性硬化症については原因となる遺伝子が特定されており、この遺伝子に対しては「ラパマイシン」という薬の効果が知られています。

結節性硬化症の原因となる遺伝子と自閉症の原因となる遺伝子が近いことなどから、この「ラパマイシン」や類似薬が自閉症にも効果があるのではないかというのです。こういった研究が進んで、自閉症が早期に解明されていくことがとても大切ですね。

参考:ダイヤモンドオンラインの記事

オーソモレキュラー療法

自閉症の治療法にオーソモレキュラー治療というものがあります。

これはノーベル化学賞を受賞したアメリカのポーリング博士が提唱した治療法です。体内に栄養を補うことを通して健康を維持するための補完代替医療であるといわれています。

この療法については、医師の間でも様々な見解があるようですが、自閉症の治療にオーソモレキュラー療法を用いている医療機関もありますので、参考にされるといいと思います。

参考:オーソモレキュラー療法のページ

スポンサードリンク

大人の自閉症

子どもの時期から自閉症と診断されている人以外にも、乳幼児診断で自閉症を見逃してしまい、大人になってから職場でうまく適応できないことなどから、自閉症だと診断される場合もあります。

大人の自閉症では、緊張する、コミュニケーション能力、社会性などに障害が出ることがあります。社会では、人との関わりも出てきますので、他の人よりも、些細なことで緊張したり、他人の態度などに対して神経質になってしまったりすることもあります。

また、一つのことに執着することや、何かに気になるとそれが頭から離れず、他のことに集中できなくなることもあります。その他、肥満、引きこもりなどになってしまう人もいます。

一方、自閉症であっても高学歴の人は大勢います。自閉症の人に大切なのは、他者との関係の発展や体の変化への対応など、自己意識を確立させることです。

様々な訓練で自己意識を確立させることなどによって、自閉症の症状を緩和し、自閉症だということを感じさせないようにすることができます。

看護師からひとこと

自閉症の特性には痛みや発作はなく急を要することはほとんどおきません。そのため医療機関を訪れるきっかけは少なく、家族で子供の様子を心配しながらも専門的な対応をとっていないことがあります。

悩み事を抱え込まず、ぜひ専門家に相談してください。

相談機関は医療機関をはじめ、地域の児童相談所や保健センター、日ごろからかかわりのある学校や幼稚園などの先生に相談することができます。

まとめ

  • 自閉症は、先天的な脳の中枢機能の障害です。心の病気といった印象がありますが、心の病気ではありません。
  • 自身の周りに起こる事象や状況が、脳へうまく伝わらず、対人関係に支障をきたしたり、特定のものに執拗なこだわりを持ったりするようになります。
  • 自閉症の症状には、「対人における対応の問題」「コミュニケーションの問題」「こだわり」の特徴的な3つの症状(三つ組)があります。
  • その他の症状として、睡眠異常、感覚異常、多動などの症状が生じることもあります。
  • 自閉症には、「アスペルガー症候群」や、小児自閉症(カナー症候群)、サヴァン症候群、高機能自閉症など、いくつかの分類があります。
  • 自閉症は、その原因となるメカニズムが解明されていません。
  • 自閉症の治療は、原因が解明されていないため、根本的に完治させるといった治療法がなく、社会性の訓練や薬物による補完的な治療を行うことや、オーソモレキュラー療法などの治療法があります。
自閉症に関する質問や回答が多く寄せられていますので、こちらも参考にしてください。


スポンサードリンク

このページの先頭へ