インフルエンザでいつまで休む?出席停止期間や感染経路、予防接種などについて

インフルエンザは毎年冬頃、特に12月~3月頃に大流行しています。喉や気管などから感染を起こし発症しますが、年ごとに流行するインフルエンザは毎年少しずつ「型」が変わります。この「型」にはA型、B型、C型と種類がありますが、流行するのは通常はA型です。ここでは、インフルエンザの原因や症状、予防法などについて詳しく説明していきます。

  [感染症]

更新日:2018年06月14日

この記事について

監修:医師(小児科専門医)

執筆:当サイト編集部

インフルエンザの原因

インフルエンザは「インフルエンザウイルス」というウイルスが原因で発症します。インフルエンザには型がありA型が世界的な大流行を起こしえる型です。

「A型」が世界的な大流行の原因に

なぜA型が世界規模での大流行を引き起こすのかというと言うと、A型インフルエンザは人以外の動物にも感染することが一つの理由と考えられています。

A型インフルエンザウイルスの表面には「HA」と呼ばれる膜タンパクが存在していますが、種族を超えたインフルエンザの感染に大きく関与するタンパク質として知られています。

例えばスペイン風邪として流行した1918年のA型インフルエンザウイルスでは、それまで鳥にしか病原性のなかったA型インフルエンザウイルスが変異を起こし、人にも感染性を持ったと推定されています。

それまで出会ったことのないタイプのインフルエンザウイルスに対して、当時の人はすぐに対応しきれず多くの方が亡くなったと考えられています。こうした種族を超えた感染は、B型やC型のインフルエンザウイルスでは見られません。

ニュースでもたびたび「新型インフルエンザ」という言葉を聞くと思いますが、この「新型」とはA型ウイルスが形を変えて現れたことを示しています。

鳥インフルエンザ(H5N6型)の動向には注意が必要

A型インフルエンザは人間だけでなく、豚や鳥などにも感染することがあります。毎年鳥インフルエンザが流行したというニュースが流れますが、これはA型インフルエンザが鳥に感染したことになります。

最近話題に上ることの多い病原性の高い鳥インフルエンザ(H5N6型)は、現在は人から人への感染は確認されていませんが(一部濃厚接触者間で感染の報告あり)、今後はウイルスの変異などにより、人から人に感染することで広範囲に感染が広がることも考えられますので、動向には注意が必要です。

ウイルスは豚や人などに何度も感染を繰り返す過程で、人へも簡単にうつる形に変形する可能性があります。

また、インフルエンザウイルスは寒くて乾燥の強い場所を好みます。そのため日本の冬はインフルエンザが増殖しやすい環境であると言えます。

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インフルエンザの感染経路

インフルエンザの感染経路は主に2通りあります。「飛沫感染」と「接触感染」が主な経路です。

飛沫感染

くしゃみや咳などによって飛び散る飛沫に含まれるウイルスが、他人の鼻や喉の粘膜に付着し感染します。

接触感染

インフルエンザに感染した人が触れたドアノブや、吊皮などにウイルスが付着し、それを他の人が触ることにより感染します。

インフルエンザの潜伏期間と感染力

インフルエンザウイルスに感染してからインフルエンザが発症するまでの潜伏期間は、2〜3日程度が一般的ですが、長いと5日程度の場合もあります。

潜伏期間でも感染する可能性はありますが、潜伏期間の感染力はそれほど強くありません。インフルエンザの感染力は個人差もありますが、熱が出ている間に強い傾向があります。

学校や保育園はいつまで休めばいいのか?

インフルエンザは感染力が強いため、感染した際は学校や仕事を休まなければいけません。例え症状がなくなっても、ウイルスが体内に残っている可能性があるため、発症後3~7日間は外出を控えるように推奨されています。

学校保健安全法では、発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまでは出席停止期間としています。

この場合、出席停止になり欠席扱いにはなりません。職場の場合でも、診断書を持っていくと有給扱いになる場合があります。

期間が過ぎて通学・通勤する際も、咳などの症状がある場合はマスクなどをエチケットとして装着するようにしましょう。

インフルエンザの症状

インフルエンザの症状

インフルエンザの初期症状には以下のような症状が出現します。

  • 38度以上の急激な発熱
  • 関節痛
  • 筋肉痛
  • だるさ

これらの症状は発症後24時間以内にピークを迎え、3日くらい続きます。また、これらの症状に加えて1日~2日後に嘔気、下痢、咳、痰、くしゃみなどの症状がみられます。

風邪と症状が似ていますが、症状が急激に出現するのがインフルエンザの特徴です。

しかし、乳児や高齢者、予防接種を受けた人などの場合は高熱が出なかったり、症状がハッキリしない場合もあります。周りでインフルエンザが流行していたり、怪しいと感じた場合は病院を受診するようにしてください。

インフルエンザの検査・診断

インフルエンザの診断は病院で「簡易検査キット」を使って簡単に調べることができます。

鼻の奥を細い綿棒で拭い、粘膜から少量の粘液を採取し、ウイルスの有無を調べます。およそ10分~15分で結果がでます。

ただし、この検査キットはウイルスの数が少なすぎると、インフルエンザであっても陰性の結果が出ることがあります。インフルエンザウイルスが増殖するのは、発症して12時間後くらいからなので、注意が必要です。

また、インフルエンザの薬は48時間以内に飲まないと十分な効果が得られないため、発症後48時間以内に検査をするようにしてください。

インフルエンザの治療

薬

インフルエンザの治療では薬を服用することが中心となります。これにはウイルスの増殖を抑える原因療法と、発熱や咳など症状を和らげる対症療法があります。

原因療法

原因療法では、抗インフルエンザ薬を服用しますが、これにはタミフルやリレンザ、イナビルなどの薬があります。

これらの薬は、ウイルスが増殖のピークを迎える発症48時間以内までに使用することが重要です。それ以降に使用するとウイルスが増殖しきっているのであまり効果がないと言われています。

しかし症状の程度によっては、この時間を過ぎてからも抗インフルエンザ薬が適応になることもあります。

薬の副作用について

タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬は、副作用もよく問題視されています。

話題にあがるのが幻覚や興奮、異常行動などの精神症状です。これらの精神症状は、薬を服用しなくてもインフルエンザの症状としてみられることがあり、薬が原因であるということが明確になっていません。

子どもさんがインフルエンザになった場合、保護者は子どもさんの行動に注意するようにしてください。

対症療法

対症療法では、解熱剤や去痰薬、整腸剤などが処方されます。

ここで注意しなければならないのは「解熱剤」です。インフルエンザにかかると高熱が出ることが多く、自己判断で家にある解熱剤を飲む人がいます。この行動は非常に危険です。

解熱剤の中にはボルタレンやポンタールなどの薬がありますが、これらの薬は急激に熱を下げる作用があります。

強い解熱剤をインフルエンザの人が使うと「インフルエンザ脳症」という重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

インフルエンザの発熱に対してはアセトアミノフェンと呼ばれる成分が入っている解熱剤が有効で安全です。カロナールなどの薬がそうであり、緩やかに熱を下げてくれます。

また、インフルエンザは薬を飲まなくても自然治癒します。この場合は合併症に注意して過ごすようにしましょう。症状としては発症後2~3日がピークで、5日~1週間で治癒することが多いです

ただし、インフルエンザが疑われる場合には自己判断で薬を服用するなどの対症療法を実行するのは危険ですので、必ず医師の診断を受けるようにしてください。

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インフルエンザになった時の家での過ごし方

インフルエンザになった際はしっかり休養、栄養を取ることが大切です。十分な睡眠を取り安静に保つことが体力の消耗を防ぎます。

高熱が続くことも多いため脱水を予防することも重要です。特に子どもや高齢者は脱水を起こしやすいので特に意識して水分補給をしてください。

また、インフルエンザは感染力が非常に強いため、外出は極力控えるようにしましょう。家の中でも出来る限り家族の人との接触しないよう、個室で安静に過ごすようにしてください。

インフルエンザの合併症

インフルエンザになるとそれが原因で他の病気を引き起こすことがあり、中には重篤な症状を引き起こすものがあります。主な合併症を紹介します。

インフルエンザ気管支炎・肺炎

ウイルスが気管支や肺などの下気道に広がることでで発症します。

酷い咳が続くことで腹筋が筋肉痛を起こしたり、胸が痛くなったりします。痰も黄色や緑色など膿を持つようになります。

高齢者に最も多くみられる合併症で死亡するケースもあります。

インフルエンザ脳炎

ウイルスが脳内に浸潤して起こるもので大人と比較して子どもに起こりやすい合併症です。特に5歳以下の子に多く、死亡例もあります。

頭痛を伴う意識障害、痙攣発作、異常行動などが初期にみられます。インフルエンザではなくても5歳以下の子には熱性痙攣など痙攣はよくみられる症状です。

一概に全てがインフルエンザ脳症という訳ではありませんが、痙攣発作や異常があれば早急に病院に行くようにしてください。

その他の合併症

その他にも関節炎や胃腸炎、心不全や心筋症などの合併症があります。日にちが経過しても症状が軽快しない、悪化するなどのことがあれば早期に病院に行きましょう。

特に、糖尿病や呼吸器疾患などの病気を持っている人、高齢者、子ども、妊婦さんは合併症を起こす危険性が通常よりも高めなので特に注意してください。

家庭でできるインフルエンザの予防法

手洗い

インフルエンザは何より予防が大切です。ここでは予防法をご紹介します。

手洗い・うがい

外出から帰ったら必ず手洗い、うがいをするようにしましょう。アルコール消毒もインフルエンザウイルスには有効ですが、流水と石鹸での手洗いの方が効果は高いです。

マスクの装着

マスクを装着することでウイルスの侵入を防ぎ予防します。

環境調整

インフルエンザウイルスは乾燥した空気を好むので、部屋の中は50~60%の湿度を保つようにしましょう。

暖房機器を使う時は加湿器を一緒に併用することがお勧めです。また、空気が乾燥していると喉の防御機能も低下させてしまいます。

人ごみの中への外出は短時間にしましょう

特に妊婦さんや乳幼児など抵抗力の低い人は、人ごみへの外出は最低限にして、感染を予防するようにしましょう。

子どもの予防接種は2回

予防接種

毎年10月半ば頃から各医療機関で接種することが出来ます。大人は1回、子どもは2回接種します。1回の料金は約3,000円です。

接種して(子どもの場合は2回目)1ヵ月後くらいに注射の効果がピークになり、5ヵ月くらい免疫作用が続きます。これによってインフルエンザを100%防ぐことはできませんが、合併症など重篤化を防ぐことができます。

医師の中にはインフルエンザの予防接種は意味がないという人もいます。特に1歳未満の乳児が接種する場合は医師と相談して決めるようにしてください。

2015年から予防接種が4価ワクチンになりました。

インフルエンザはA型とB型が流行することから、この2つの型のワクチンを接種するのですが、A型もB型もさらに2種類に分類され、大きく全部で4つの型あります。

これまでは、A型については2種類のワクチンを接種していたのですが、B型については流行しそうな型を予想してワクチンを作っていました。

もちろん、これでは予想が外れてしまうと感染してしまいますので、B型についても2種類のワクチンを含めてA型、B型の全部で4種類のワクチンの接種が望まれていました。

2015年からは4種類のワクチン(4価ワクチン)を接種できるようになっています。

妊婦さんや胎児への影響

妊婦さんは免疫機能が低下しているため、インフルエンザに感染しやすいと言えます。合併症を起こす恐れもあるため、何より「予防」が大切になります。インフルエンザにかかった場合は早期に医師の診察をうけるようにしてください。

また、インフルエンザの薬であるタミフルやリレンザが胎児へ影響を与えるリスクは少ないとされています。むしろインフルエンザによるお母さん自体の重症化のリスクもあるため、治療が行われることも多いです。そのため、インフルエンザが疑われたら早期に病院に行き、治療を始めることが何より大切になります。

注意して貰いたいのが、インフルエンザが疑われる場合は産婦人科には行かないようにすることです。

産婦人科には新生児や他の妊婦さんなど免疫力の低い人たちがたくさんいます。感染を広げてはいけないので定期健診などは日にちをずらしましょう。

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まとめ

毎年流行するインフルエンザですが、予防が何より大切です。予防接種は感染予防だけでなく、感染しても症状が重くならないといった効果があります。

また、家庭でもうがいや手洗い、部屋の加湿などにより、予防に努めることが大切です。自己管理をしっかりとして、インフルエンザの流行時期を乗り切りましょう。

参考文献・サイト

インフルエンザに関するQ&Aが寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

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