扁桃炎(扁桃腺炎)・急性扁桃炎の原因や感染、登校などについて

扁桃炎(扁桃腺炎)は、細菌やウイルスによって扁桃に炎症を起こす病気です。扁桃は成長とともに小さくなるので、扁桃が大きく、抵抗力が小さい子どもに発症しやすい病気です。慢性扁桃炎や扁桃周囲炎となることがありので、重症化する前に適切な治療を行うことが大切です。また、扁桃炎は口臭の原因となることもあります。扁桃炎(扁桃腺炎)について、原因、予防、治療法などをまとめましたので、参考にしてください。

  [その他, 感染症, 肺・呼吸器の病気]

更新日:2017年11月21日

この記事について

監修:大河内昌弘医師(おおこうち内科クリニック院長)

執筆:当サイト編集部

扁桃炎(扁桃腺炎)とは

扁桃(口蓋扁桃)の図

出典:Goo辞書家庭医学館「のどのしくみとはたらき」の図

扁桃(扁桃腺)は、喉の手前の左右の少し盛り上がった場所をいいます(医療用語として正しくは「口蓋扁桃」といいます。図の「口蓋扁桃」が扁桃(扁桃腺)です。)。

なお、扁桃は扁桃腺と呼ばれていましたが、正しくは「腺」ではないため、「扁桃」と呼びます。ここでは「扁桃」ということにします。

扁桃炎(急性扁桃炎)とは、その扁桃の周辺に存在する常在菌(多くの人に共通して存在する細菌)が活動を起こして、扁桃に炎症を起こす病気です。常在菌には、溶連菌、ブドウ球菌、肺炎球菌などがあります。常在菌の他にウイルスでも炎症を起こします。

主に小さい子どもに起こる病気ですが、大人でも起こりえる病気です。

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扁桃炎の原因・感染

人の口の中には、生後数か月たつと様々な菌が存在するようになります。扁桃にはそれらの菌と、免疫細胞(病気や予防接種などで獲得してきた免疫など)が存在し、外から入ってくる菌の侵入を防いでいます。

その一方で、扁桃は外から細菌が入りやすく、細菌がたまりやすい場所でもあります。

免疫力を十分に備えていない子ども(特に乳幼児)では、病原菌やウイルスが侵入して増殖し、扁桃に炎症が起こります。

炎症を起こすと扁桃は赤く腫れ、白い膿を持つことがあります。原因となる細菌には溶連菌、ブドウ球菌、肺炎球菌などがあります。

扁桃炎の潜伏期間、症状

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扁桃炎の主な症状には、次のようなものがあります。

  • 発熱(38度以上の高熱)
  • 喉の痛み(食べものを飲み込むときなどの痛み)
  • 顎や首のリンパ節の腫れによる耳の痛み
  • 悪寒(寒気や震えなど)
  • 倦怠感(全身のだるさ)
  • 頭痛
  • 関節痛

扁桃炎がひどくなると

扁桃炎の症状がひどくなっていくと、扁桃周囲炎(扁桃周囲膿瘍)や慢性扁桃炎を引き起こすことがあります。

扁桃周囲炎(扁桃周囲膿瘍)や慢性扁桃炎を引き起こすと、のどがふさがるように腫れていくため、のどの奥のはれぼったい違和感や食べ物がのどを通りにくくなります。ひどくなると呼吸困難や窒息を起こすこともあります。

それぞれの症状などは次のとおりになります。

慢性扁桃炎

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急性扁桃炎を繰り返すようになると、慢性扁桃炎となります。小学校に入学する前の時期に最も多くみられます。

症状は急性扁桃炎と同様ですが、繰り返して炎症を起こしているうちに扁桃が病巣となり、他の大きな病気を引き起こすことがあります。

溶連菌が原因になると、腎炎、リウマチ熱、心内膜炎などの合併症を引き起こすことがあるので注意が必要です。

扁桃炎を繰り返す場合、扁桃の摘出も考えます。扁桃の摘出はむやみに行うものではありませんが、摘出の基準があり、医師と相談しながら摘出を決めることとなります。

扁桃周囲炎(扁桃周囲膿瘍)

扁桃周囲炎は2歳以下の子どもに見られることもありますが、多くは30代の男性に見られます。

扁桃周囲炎は、急性扁桃炎の原因となる菌に加えて、嫌気性菌(酸素の少ない場所で繁殖する菌)が原因となります。扁桃周囲炎は急性扁桃炎に続いて発症し、扁桃の周囲に炎症が及びます。炎症を起こす細菌は、扁桃の周りの膜を破って奥深くまで入りこみ、膿を持つようになります。

さらに症状が進行すると、喉の奥に入った膿が血管や神経に影響を及ぼし、胸部にまで広がることもあり、場合によっては命に関わる状態になることもあり非常に危険です。特に糖尿病を持っている場合は容易に命に危険が及びます。

扁桃周囲炎になると、激しい喉の痛みがあり、高熱も伴います。腫れが強くなると口を開くのもつらくなり、水を飲むのも厳しい状態となります。

扁桃炎の予防

扁桃炎は、ウイルスや細菌が原因となるため、身体の免疫力を保てるよう、健康的な日常生活を送ることが大切です。主に次の点に留意しましょう。

食事

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まずは、バランスの良い食生活をおくることが大切です。中でも免疫力を高めるものはお勧めです。

にんにくにはビタミンB1の吸収を高めてくれるアリシンなどの成分が含まれています。

納豆、バナナなども免疫力を高めるものです。その他、レバー、うなぎ、ホタテなどに多く含まれる亜鉛は免疫力を効果的に高めることができます。

また、抵抗力をつけるためにビタミン、ビタミンC、ビタミンEなどを取ることも大切です。

日常生活における予防策

うがい、手洗いを習慣にすることが大切です。また、喉の乾燥を防ぐためには保湿を心がけましょう。外出の際は、マスクをして、少しでもウイルスや細菌を体内に取り込まないことも大切です。

その他、ストレスは免疫力を低下させる大きな原因となります。不規則な生活をしていると、子どもでも知らずのうちにストレスを溜め込んでしまうことがあります。十分な睡眠とバランスの取れた食生活がとても大切です。

扁桃炎の治療

扁桃炎については、自分で治そうとせず、医療機関を受診し、処方された薬できちんと治療をしていくことが効果的です。また、自然治癒に任せると、扁桃周囲炎や慢性扁桃炎になることも考えられますので、早めに医療機関を受診することが大切です。

扁桃炎の治療方法は主に薬による治療となります。軽度の場合はうがい薬や、トローチなどの薬で回復していきますが、症状がひどい場合は解熱剤、消炎鎮痛薬などを服用します。また、扁桃炎の原因が溶連菌などの場合は、抗生物質などが処方されます。喉の痛みが激しく、食事がとれないようであれば、点滴で薬の投与や栄養分を補給することもあります。

生活においては、規則正しい生活を心がけます。水分を十分に補給し、口の中を清潔にするため定期的にうがいをして、安静にすることが大切です。喉の痛みがひどい場合は、入浴、飲酒、喫煙は避けた方がいいでしょう。

扁桃周囲炎の場合

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扁桃炎を治療しないでいると、症状が悪化して膿がたまり、扁桃の奥へと膿が進行して扁桃周囲炎に発展することがあります。

扁桃周囲炎の治療は、扁桃に膿が溜まってしまっている状態ですので、治療としては、その膿を排出させることとなります。軽度の場合は口の中の膿の溜まっているところへ針をさすなどして膿を出すようです。さらに症状が進行してしまうと、入院治療が必要となります。また、薬としては抗生物質などの投与を行うことになります。

なお、一度扁桃周囲炎になると、繰り返して発症するようになるので、医師から扁桃の摘出手術を勧められることもあります。

扁桃の摘出について

扁桃周囲炎や慢性扁桃炎を繰り返すことは、非常につらいものです。この場合、扁桃炎のもととなる扁桃を摘出することにより扁桃炎、扁桃周囲炎、慢性扁桃炎にならないようにするという手段があります。

ただし、扁桃には、細菌やウイルスなどが体内に侵入するのを阻止する役割があるので、扁桃を摘出することによって、ウイルスや細菌が体内に侵入しやすくなるのではと気になります。しかし、扁桃摘出術後の感染症の有無に関して、扁桃を摘出しても免疫力はしだいに回復していくという結果が出ている研究もあります。

扁桃の摘出手術を行うかどうかについては、扁桃炎に年間どの程度かかるかなど、一定程度の基準があるようです。主な基準は次のようになります。摘出手術を行う際には、医師と十分に相談してください。

  • 扁桃炎を繰り返している。(年間の扁桃炎の回数と、それが何年続いているかなどで判断するようです。)
  • 扁桃炎の肥大がある。(扁桃炎の肥大で睡眠時無呼吸などが起こります。)
  • 扁桃炎が原因で他の疾患が生じている。

扁桃炎の市販薬について

扁桃炎になった場合は、医師の診断を受けることが必要です。喉の痛みがツライのに、どうしても病院へ行けないなどの場合は、薬局で相談するなどして、市販薬の注意事項を良く読み、適切に市販薬を使用するようにしましょう。

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学校などへの登校について

扁桃炎は、法令などで登校の停止期間が決められているものではありません。ただし、感染した細菌やウイルスによっては、学校安全保健法などに出席の停止期間が定められています。

扁桃炎は高熱を伴いますので、一般的には熱などの症状が回復するまでは出席しないことが必要です。具体的なことは、医師と相談の上で決めるといいでしょう。

大人の扁桃炎

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扁桃は4歳から8歳くらいの時期に最も大きくなり、活動も活発になりますが、成人になるにつれて小さくなっていきます。しかし、大人になっても扁桃の大きさが変わらず、炎症がたびたび起こる人もいます。大人の場合、こうして扁桃炎が慢性化してしまう人が多くいます。

扁桃炎の症状は高熱を伴う上に、喉の痛みが強いので、大人にとってかなりつらいものとなります。抵抗力や免疫力が落ちている時に発症しますので、自力で治そうとせず、なるべく早く医療機関を受診しましょう。

その他、受診の際に処方された抗生物質などのお薬は症状が改善しても中断せずに、最後まで飲むようにしましょう。中断することで再発する場合があります。

なお、扁桃炎は放置しておくと症状が進んで扁桃周囲炎となることがありますので、注意が必要です。

扁桃の膿栓(のうせん)による口臭について

扁桃の表面には陰窩(いんか)と呼ばれる小さい穴が開いています。小さな穴が開いていることによって扁桃の表面積が大きくなり、多くの細菌を退治できるようになっているのですが、この小さな穴の部分には細胞の死骸や食べ物のカスがたまり、それが口臭の原因となることがあります。

慢性扁桃炎の人などに見られるようですが、そうでない人にもみられることがあるようです。身体に影響を与えるものではないようですが、口臭が気になる人は医師に相談した方がいいでしょう。

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看護師からひとこと

扁桃炎になると、食事がのどを通りにくく、食べるのを諦めてしまうと、体力も低下していく一方で、免疫も低下し、悪循環となります。

少しずつでも良いので、水分(経口補水液など)を摂取しましょう。また、食べ物は、のどへの刺激が少ない、柔らかく、飲み込みやすいトロッとした形状のもので、また熱すぎず、冷たすぎないものを食べるようにしましょう。

まとめ

  • 扁桃は、正しくは「口蓋扁桃」といい、喉の左右の部分をいいます。
  • 扁桃炎(急性扁桃炎)とは、扁桃の周辺にある常在菌が活動して炎症を起こす病気です。
  • 主に小さい子どもに起こる病気ですが、大人でも起こりえる病気です。
  • 症状には、発熱、喉の痛み、顎や首のリンパ節の腫れ、耳の痛み、悪寒、倦怠感、頭痛などがあります。
  • 症状がひどくなっていくと、扁桃周囲炎(扁桃周囲膿瘍)や慢性扁桃炎を引き起こすことがあります。
  • 扁桃周囲炎は、扁桃の膿が深くまで侵入してしまうもので、ひどくなると入院治療を要することとなり、命にかかわることもあります。
  • 扁桃炎が慢性化して慢性扁桃炎になったり、扁桃周囲炎にたびたびなってしまう人は、扁桃の摘出を行うことができます。
  • 扁桃の摘出には扁桃炎の程度などの基準がありますので、医師と相談して決めることとなります。
  • 大人の扁桃炎では、慢性扁桃炎や扁桃周囲炎へと進行することも多いので、注意が必要です。
  • 扁桃炎になりやすい人は、扁桃に細胞の死骸や食べ物のカスがたまり、それが口臭となることがあります。口臭が気になる人は医師に相談するといいでしょう。
扁桃炎に関するQ&Aが寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

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