溶連菌感染症の症状や潜伏期間、治療や予防、登校・登園の時期について

溶連菌感染症は喉などに感染して発症します。喉の痛みや高熱を伴い、全身に赤い発疹が出てきます。適切に治療を受ければ、重症化する病気ではありませんが、場合によっては合併症を伴い後遺症を残すこともあります。溶連菌感染症の潜伏期間や症状、治療や予防などについてまとめました。

  [感染症]

更新日:2017年07月16日

この記事について

監修:医師(小児科専門医)

執筆:当サイト編集部

溶連菌感染症とは

溶連菌感染症とは、溶連菌が喉に感染して起こる感染症のことをいいます。症状としては、高熱、喉の痛みで始まり、全身に赤い発疹が現れます。

カゼに似た症状となりますが、溶連菌は細菌なので、抗生物質を使用して治療をすることとなります。乳幼児にも見られますが、小学生から中学生にかけてよく見られる病気です。

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溶連菌感染症の原因・感染

溶連菌は、正式には「溶血性レンサ球菌」と呼ばれる細菌で、溶連菌感染症はその中でも「A群」の菌(主に「A群β溶血性レンサ球菌」)に感染することをいいます。

したがって、溶連菌感染症は「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」ということがあります。

感染経路は、主に飛沫感染、経口感染となります。溶連菌感染症に感染している人の咳、くしゃみなどによる感染(飛沫感染)や、細菌が手などを介して、口に入ることによる感染(経口感染)があります。

冬や春から初夏にかけて多く発生し、家庭や学校などの集団感染も多くなっています。感染力が強くなるのは、急性期(発症して症状が出始めた頃)で、その後は少しずつ弱まっていきます。兄弟間など、接触が多い間での感染が多くなります。

また、子どもから大人や妊婦さんへも感染することがありますので、注意が必要です。

なお、A群β溶血性レンサ球菌は「伝染性膿痂疹(とびひ)」の原因の一つともされています。

溶連菌感染症の潜伏期間、症状

溶連菌は主に喉に感染します。感染すると、2〜5日程度の潜伏期間を経て、突然に発熱します。

発熱と同時に喉の痛みや扁桃炎を起こします。また、嘔吐を伴うこともあります。カゼの症状と似ていますが、咳や鼻水はほとんどなく、熱は39度前後の高熱となり、喉の痛みが強くなります。あわせて首のリンパ節が腫れたりすることもあります。

その後に、赤い発疹が首、胸、手足などに出始め、全身に広がることもあります。

また、舌にも症状が現れてきます。まず舌が白くなり、3~4日経過すると、いちごのように赤いプツプツができます。口内炎とは異なり、「イチゴ舌」と呼ばれるもので、溶連菌感染症の特徴的な症状となります。

溶連菌は抗生物質による効きがとてもよく、医療機関を受診して抗生物質などを服用することにより、数日程度で熱が下がります。その後、発熱が治まったあとに手や足の皮膚がむけてくることがあります。

溶連菌感染症の検査・治療

検査・治療

溶連菌感染症の検査

医師は、患者さんの年齢、熱、喉の具合、体の発疹の程度などから溶連菌に感染しているかを診断していきます。

溶連菌感染症の疑いがあれば、確認のための検査を行います。通常、喉の菌を採取して検査を行います。検査キットを使用し、10分程度で結果が出ます。

また、喉などから菌を採取して培養する検査もありますが、検査結果が出るまでに数日かかりますが、迅速検査よりも感度がいいという考えもあります。

溶連菌感染症の治療

溶連菌に感染していることが判明した場合、溶連菌に対して効果のある抗生物質、熱や喉の痛みをやわらげる薬が処方されます。

薬を飲んでいるうちに、熱が下がり喉の痛みも軽くなってきますが、抗生物質は医師の指示どおりきちんと飲みきることが大切です。抗生物質を飲み切ることによって、溶連菌を退治することができ、後述するような一部合併症のリスクを減らすことができます。

また、薬を飲みきった後、2〜3週間後に尿検査で急性糸球体腎炎の検査を行います。ただし、この検査は必ず実施するというものではないようで、医療機関によって対応が異なっています。

なお、抗生物質を飲み切り一度は完治しても、溶連菌には様々な種類があるため、数回は再発することがあります。

家庭で看病する際に気をつけること(食べ物・入浴など)

食べ物

熱いもの、辛いもの、すっぱいものは、喉に強い刺激を与えますので避けるようにしましょう。食べ物は喉越しがよく、消化のよいものにします。食べるのがツラい場合は、水分補給をしっかりとして、医師に相談しましょう。

食べ物の例

喉越しのよいものとして、ゼリー、ヨーグルト、プリンなどがあります。また、消化のよいものとして、おかゆ、煮込みうどん、野菜スープ、豆腐などがあります。

入浴

入浴は熱が出ている間は避け、体力の消耗を防ぐようにします。ただし、熱が出て汗をかくのでキレイにすることも大切です。

熱が下がれば、お風呂に入っても問題はありません。ただし、長湯はしないようにしましょう。

発しんが出ている場合は、お湯を熱くするとかゆみが強くなりますので、温めすぎないようにします。

その他

発疹にかゆみを伴うことがありますので、爪を短めに切っておくことが大切です。

なかなか症状が改善しないときは、再び医療機関を受診して医師に相談してください。

溶連菌感染症の合併症

溶連菌感染症の症状がなくなったとしても、溶連菌を退治しておかないと重大な合併症を起こすことがあります。溶連菌感染症の合併症としては、肺炎、髄膜炎、敗血症、リウマチ熱、急性糸球体腎炎などがあります。

合併症には非常に重いものもあります。これら合併症のうち、いくつかの合併症は抗生物質で防ぐことができるものもあります。そのため、抗生物質を医師から指示された期間を飲み続けることが大切です。

症状が改善してから2〜3週間後に尿の検査を行い、合併症の確認をすることがあります。主な合併症について、以下に説明しておきます。

急性糸球体腎炎

急性糸球体腎炎は溶連菌感染症が治ってから数週間後に起きることがあります。発症がみられるのは、子どもから若い世代で、主な症状は、疲れやすさ、浮腫、尿量の減少、血圧の上昇などがあります。

尿検査を行うと血尿や蛋白尿がでてきます。入院治療を受けて安静にし、腎臓が回復するのを待ちます。通常、後遺症などは残りません。

なお、安静にすることが基本的な治療方針である病気であることから、症状が出現する際に(例えばむくみが出た、コーラみたいなおしっこが出たなど)病院を受診するように指示する医師もいます。

リウマチ熱

全身の関節が炎症を起こして痛みを伴います。さらに心臓の病気、弁膜症を発症することがあります。

弁膜症により心臓の弁の動きが悪くなると、心臓に負担がかかって心不全を起こすことがあり、外科手術を行う場合があります。

溶連菌感染症の予防

mask

溶連菌に対するワクチンはなく、予防接種はありません。溶連菌感染症の予防対策としては、主に次のことに気をつけることが大切です。

  • 手洗いやうがいを徹底する。
  • 家族に感染者がいる場合には、多く接触することは避けて、接触する際にはマスクを着用する。
  • 発熱、喉の痛み、扁桃炎などの症状がでたら、速やかに医療機関を受診して医師の診断を受ける。

ただし、溶連菌は健康な人でも、菌を持っている場合があります。菌を持っていても、そのことに気付かないため、他人へ感染させてしまうことがあります。こういった場合は、予防することは難しくなります。周りに感染者がいる場合は、上記の予防策が有効となってきます。

なお、「保育所における感染症対策ガイドライン」によると、「発病していない人に予防的に抗菌薬を内服させることは推奨されない。」(ガイドライン50ページ)と記載されています。

保育園、学校などへの登園、登校の時期について

溶連菌感染症になった場合に、学校や保育園に出席する際の基準については、特に法令による定めはありません。

ただし、厚生労働省の作成した「保育所における感染症対策ガイドライン」によると、溶連菌感染症になった人の登校・登園の時期は、抗生物質を飲み始めてから24時間が経過していることとされています(ガイドライン50ページ)。

したがって、薬を飲んで熱が下がれば登校できるようになります。

また、感染期間についても、抗菌薬内服後24時間が経過していれば、多くの場合は過ぎたことになります。

ただし、子どもさんによって、症状などが異なっていることがありますので、具体的な登園や登校の時期や、プールに入れていい時期などについては、医師と相談して決めてください。

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大人の感染

溶連菌感染症は大人も感染します。子どもと同様の症状となりますが、大人の場合、勝手な思い込みでインフルエンザやカゼと思い、医療機関への受診が遅れることがあります。

医療機関への受診が遅れることによって、重症化することや合併症を引き起こすこともあります。

特に身体の抵抗力が低くなっている高齢者は気をつけなければいけません。身体に異変を感じたら、必ず医療機関を受診して、医師の診察を受けてください。

看護師からひとこと

溶連菌は、薬を飲んで熱が下がれば登園・登校ができます。

ただし、除菌しきれなかった場合にはもう一度症状が出てくることがありますので、その際には最初にかかった小児科を受診するか、別の医療機関を受診する場合には、必ず一度除菌したことがわかるようにお薬手帳を持参しましょう。

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まとめ

  • 溶連菌感染症とは、溶連菌が喉に感染して起こる感染症のことをいいます。
  • 症状は、高熱、喉の痛みで始まり、全身に赤い発疹が現れます。
  • 主に小学生から中学生にかけてよく見られます。
  • 感染経路は、主に飛沫感染、経口感染となります。
  • 感染すると2〜5日程度の潜伏期間を経て、発熱し喉の痛みや扁桃炎を起こします。
  • 発熱などの後に、赤い発疹が首、胸、手、足などに出始め、全身に広がることもあります。
  • 治療には抗生物質を使用し、熱や喉の痛みに対しては症状をやわらげる薬が使用されます。
  • 重い合併症があります。合併症にならないためには、医師から処方された抗生物質を飲み切ることが必要です。
  • 溶連菌に対するワクチンはなく予防接種はありません。

参考文献・サイト

溶連菌について質問や回答が多く寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

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