摂食障害(拒食症・過食症)は命の危険も!症状や原因、治療などについて

摂食障害は精神的なものによって起きてしまうことが多く、病気が完治するまでには周囲の協力と多くの時間を要します。摂食障害(過食症・拒食症)について、原因や症状、治療法などについてまとめましたので、参考にしてください。

  [精神の病気]

更新日:2017年12月18日

この記事について

監修:豊田早苗医師(とよだクリニック院長)

執筆:当サイト編集部

摂食障害とは

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摂食障害とは食欲不振や食べ過ぎなどの単なる食行動の異常ではなく、重篤な障害を起こす精神疾患です。

摂食障害は、行動依存症であり難病の1つにもなっています。

摂食障害は大きく分けて「拒食症」と「過食症」に分けられます。

これらはストレスなどの精神的なものが要因で起こっているとされており、10代の子にも増えてきています。

正しい治療を行えば多くは治りますが、治療には相当の根気が要り、家族や周囲の人の協力が不可欠となります。病気についてみんなが正しく理解することが重要です。

ここでは摂食障害の症状や治療法などについて説明していきます。

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拒食症、過食症とは

拒食症

拒食症は別名「食欲不振症」とも言われています。

名前の通り、食べ物を摂取することを拒否することです。割合としては思春期の女子に多いです。

何らかの原因によって食べることを拒否したり、食欲がなくなったりします。

自分では異常だという自覚症状を感じにくいうえ、他人に拒食していることを隠している場合も多いため、周囲が気付きにくいのが特徴です。そのため拒食症だと気付くのに時間がかかる場合があります。

過食症

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過食症は別名「神経性大食症」と言われています。過食症とは拒食症とは逆で食べ物を食べ過ぎてしまう病気です。

ただし単なる食べ過ぎではなく、自分で食べるのを止めようと思っても食べ物に手を伸ばしてしまって食べてしまったり、出来る限り口の中に食べ物を押し込んだりします。

しかし食べた後は自己嫌悪で全て吐いてしまったり、下剤を多量に飲んで下痢として排出してしまったりすることも多くあります。

過食症は思春期を少し過ぎた若い女性に多いです。体型は普通であることも多く、人前では食べないことがほとんどなので拒食症と同じように発見しにくい病気です。

何が原因で起こるの?

摂食障害は様々な原因が考えられますが、ほとんどが精神的なものです。主な原因として以下のようなものが挙げられます。

ダイエット

モデルのような痩せ体型に憧れて無理なダイエットを行い、それが拒食症に繋がることがあります。

特に10代の頃は「痩せ」に対しての願望が特に強い時期です。太ってないのに太っていると思い込み、「太っている=評価されない」という考えから過剰なダイエットを行い、拒食症になってしまいます。

ストレス

学校や職場でのストレスで拒食症や過食症になることがあります。人間関係などが原因になっていることが多く、近年では小学生など小さい子供にもみられます。

愛情不安

家庭環境、家族関係も原因になることがあります。もちろんこれが原因で絶対病気になるという訳ではありませんが、特に母親からの愛情不足は摂食障害に繋がりやすいとされています。

また、子供への期待が大き過ぎること、両親の不仲、父親の育児放棄、暴力なども要因の1つとなります。

以上のようなことが主な原因として挙げられますが、性格として真面目で完璧主義の子に多いです。

また、周りに意見を合わせてしまう子、自信のない子、聞き分けの良い子、他人からの評価を気にする人も注意が必要です。

摂食障害の症状

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摂食障害になると以下のような症状が出現します。

拒食症

  • 低体重
    拒食症では適正体重より15%以上体重が少ない状態になります。
  • 精神的高揚
    「痩せる=自己評価UP」と考えて気分が高揚します。
  • 思考力の低下
    食事量が減り脳への栄養が減るため脳の機能も落ちてきます。
  • 無気力
    栄養が十分でないため身体に力が入らず、思うように動けなくなることがあります。周りから見ると怠け者に見えてしまうこともあり、人と会ったり話すことに億劫さを感じ、避けるようになってしまいます。
  • 毛深くなる
    栄養が低下することにより筋肉量が減ります。その結果身体の体温が下がるので自らを守るため毛が濃くなります。
  • 冷え性や低血圧
    体脂肪や代謝が低下するため体温が下がることにより血圧も下がります。
  • むくみやすくなる
    栄養低下で身体のタンパク質が減少すると身体がむくみやすくなります。これを太ったと勘違いする場合もあるので注意が必要です。
  • 生理不順
    栄養低下により女性ホルモンが正常に分泌されなくなり月経が来なくなります。
  • 強迫概念
    太ることへ強い恐怖感を持っており、これにより治療を受け入れない場合も多くあります。

この他にも、脱水、低体温、骨粗鬆症、低血圧、便秘などの症状がみられることがあります。

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過食症

  • 過食嘔吐
    食べ過ぎた自己嫌悪により、吐いて食べたことを無かったことにしようとします。
  • 唾液腺の腫れ
    嘔吐を繰り返すことにより唾液の分泌が増加し、唾液腺がおたふく風邪のように腫れます。痛みも強く治るのにも時間を要します。
  • 吐きだこ
    嘔吐する時に手の甲が前歯に当たって皮膚がただれてしまうことです。
  • 体臭が強くなる
    嘔吐を繰り返すうちに胃液の匂いが身体中に染みついてしまいます。
  • 体重の増減が激しい
    「過食嘔吐→拒食→過食嘔吐→拒食」を繰り返すため体重が増えたり減ったりします。
  • 虫歯が出来やすい
    嘔吐による胃酸によって歯のエナメル質という成分を溶かしてしまうため虫歯が出来やすくなります。
  • 生理不順
    拒食症同様にホルモンバランスが崩れることが原因です。
  • 低カリウム血症
    血液中に含まれるカリウムが下剤の乱用によって低下します。カリウムが低下することにより筋肉が麻痺したり、心臓の筋力が低下したりして、重篤な場合は心不全を起こすなど生命に関わることもあります。
  • うつ症状
    拒食症の場合でもみられることがあります。摂食障害の人は自信を持てない人が多く、自己嫌悪に陥りやすいです。そのため食べ過ぎてしまったり、自分の思っている以上に体重があると自分を責め、うつ状態になってしまったりすることがあります。

摂食障害はどうやって診断するの?

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摂食障害は通常の病気のように血液検査やレントゲンなどの検査では確定診断出来ません。

アメリカの精神医学会で作成された「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-IV)」というマニュアルの中に診断基準が定められています。

以下は診断基準を抜粋したものです。

拒食症に関する診断基準

  1. 年齢と身長に対する正常体重の最低限またはそれ以上の体重を維持することを拒否する。
  2. 体重が不足している場合でも、体重が増えることまたは肥満になることに対する強い恐怖がある。
  3. 自分の体重または体型の感じ方に障害がある。自己評価に対する体重や体型の過剰な影響、または現在の低体重の重大さの否認。
  4. 無月経(連続して3回以上月経が飛ぶ)

過食症に関する診断基準

  1. 他の人が同じような環境で食べる量よりも明らかに多い食べ物を食べること。
  2. 食べることを自分で制御出来ない。
  3. 体重の増加を防ぐため不適切な代償行為を繰り返す。(下剤や利尿剤の乱用、過剰な運動など)
  4. むちゃ食いと代償行為を少なくとも3ヵ月の間に2回/週以上している。
  5. 自己評価は体型及び体重の影響を過剰に受けている。

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治療法

摂食障害の治療は非常に時間を要します。

本人に大きなプレッシャーが掛かる場合も多いので、家族の人は「何とかなる」というゆったりした気持ちで見守ってあげることが大切です。

治療は内科や心療内科、精神科で主に行います。

また、治療をいざ開始してもスムーズにいかないことが多いです。本人の気分などで治療にも当然ながら波がありますので焦らず見守ってあげて下さい。

治療では次のようなことを行います。

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カウンセリング

臨床心理士などのプロのカウンセラーと一緒に問題解決の解決口を見つける方法です。悩み事を聞いてもらったり、家族など周囲の人との関わり方などをカウンセラーと一緒に考えていきます。病院だけでなく民間でもカウンセリングしてくれる場所があります。

薬物療法

うつ状態を和らげる抗うつ剤や抗不安薬の処方、夜間の睡眠を促す睡眠薬の処方などがあります。

ただしこれらは、あくまで症状を和らげることを目的としており摂食障害そのものの治療ではありません。副作用もあるので医師と相談しながら服用して下さい。

認知行動療法

摂食障害の人は「やせることへの強い願望」や「食事することへの恐怖」といった極端な思考や自分に自信がなくネガティブな思考パターンを持っていることが多いので、そういった思考を修正することを目的にしています。

また拒食、嘔吐、過食などをなくし正しく食事をすることを訓練します。正しいダイエット方法についても学習することが出来ます。

対人関係療法

摂食障害の人の多くは、周囲に気を使うあまり、自己主張が上手くできず、ストレスを溜めこみやすい傾向があります。

そして、症状悪化の要因の1つにストレスがあります。対人療法では、過食や拒食の症状を抑えるのではなく、症状が起こったときの自分自身の気持ちの変化や家族や周囲の人の関係に焦点を当てて、整理していきます。

過食や拒食を起こしている自分自身の気持ちや行動、周囲との関係を認識することで、ストレスを軽減させ、症状を緩和させていく治療方法です。

入院治療について

行動を制限し専門家の下で治療に専念する治療です。主に生活リズムを掴むことを目的としています。

以下のような人が入院治療の対象になります。

  • 体重が標準体重の60%以下の痩せ体型の人
  • 衰弱が激しい人
  • 重篤な合併症がみられる人(低血糖・低カリウム血症など)
  • 意識が朦朧としている人
  • 自傷行為や問題行為(自殺企図など)がみられる人
  • 精神状態が不安定で家族がサポートしきれない場合

摂食障害を予防するために

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摂食障害を絶対的に予防する方法は残念ながらありません。

しかし、以下のように環境を整えるだけでも摂食障害を防ぐことに繋がるかもしれません。

自分に合った正しいストレス解消法を見つける

趣味や他人とのおしゃべり、運動などの気分転換

食事は出来るだけみんなと一緒に摂る

家でも学校でも職場でもみんなで会話をしながら食事をすることはストレスの軽減に繋がります。また、他人が異変にも気付きやすくなります。

無理なダイエットはしないようにする

特に成長期の食事は身体を作る上で非常に大切です。健康的な食事を摂取するようにしましょう。

家族や周囲の人からの配慮

家族や周囲の人が見た目などを批判しないようにすることや、からかわないようにすること。特に女性や子供への言葉掛けは注意するようにして下さい。

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