直腸脱は、その文字通り直腸が肛門から飛び出してくる疾患です。自分で気づきやすいものですが、なかなか病院に行くのがためらわれる病気ですよね。一般的には高齢の女性がなりやすいと言われていて、人によって脱出する腸の長さや度合いも異なるので、「ちょっと下着が汚れやすい」程度に考えていた患者さんが実は直腸脱だったということもあります。直腸脱の原因や治療法などについてまとめました。

直腸脱とは

直腸脱とは

直腸脱とは、肛門の周りで「肛門のしまり」を調整している肛門括約筋や肛門挙筋などの機能が低下し、肛門の少し奥に入り込んだところにある直腸の粘膜や、直腸壁が反転して肛門から脱出する疾患です。

痔核(いぼ痔)や粘膜脱は直腸脱と間違えられやすい疾患ですが、それらは粘膜の一部が脱出したものです。直腸脱は症状の程度が人によって大きく異なりますが、ひどくなると直腸が垂れ下がり、10cmから20cm程度、肛門から飛び出すことがあります。

直腸脱の症状

68d446fdc05b3bfd568c897bc8df518b_s

直腸脱の代表的な初期症状は、排便時に強くいきんだときなどに、肛門から直腸が脱出するものです。初期症状では、いきむのをやめたり、自分で指で押し戻すと直腸の脱出がなおります。また、肛門から脱出することによって残便感を感じる人が多いようです。

症状が進み、直腸が脱出してむくみが強くなってくると手で戻すことが難しくなり、直腸が大きく腫れて戻らなくなる「かんとん直腸脱」になります。かんとん直腸脱は強い痛みを伴うことが多く、下着にこすれて出血することもあります。

さらに症状が進行すると、歩行時にも脱出がみられたり、肛門挙筋や肛門括約筋などの衰えが進んで肛門のしまりがゆるくなり、便失禁や排便困難などを伴うようになります。

また、直腸の脱出によって下腹部に違和感を感じ、排尿困難などが見られることもあります。直腸脱の症状が見られたら、なるべく早めに専門医に相談しましょう。


 スポンサードリンク

直腸脱の原因

直腸脱の原因は、肛門のしまりを制御している肛門括約筋や肛門挙筋などの機能が低下し、骨盤底と直腸が正しく固定されなくなることが大きな原因です。

また、便秘などで排便時にいきむ習慣が直腸脱の原因となることもあります。

また、直腸脱は、完全直腸脱と不完全直腸脱に分けられ、一般的に直腸脱というと直腸の全層が裏返しになり肛門の外に脱出する完全直腸脱を指します。

直腸脱になりやすい人

直腸脱になりやすい人

直腸脱になりやすいのは、高齢の女性であり、全体の9割以上が70代、80代の女性です。また、直腸脱の症状は若い人ほど脱出の程度が10cm以下と軽く、高齢者ほど重くなっています。これは、加齢による直腸脱の原因が肛門括約筋や肛門挙筋などの衰えに起因しているためと考えられます。

また、直腸脱は高齢で女性であるほど患者数は多いのですが、若い男性にも生じることがあります。

若い男性の場合は、高齢の女性とは異なり、肛門挙筋や括約筋の機能低下が原因ではなく、「トイレなどで強くいきむ習慣」「S状結腸の長さ(S状結腸は直腸の奥にある部分で、この部分が長いと直腸脱になりやすい。)」「直腸の角度」が原因となっていることが多いようです。

この場合、直腸が重なりあってアコーディオン状に大きく脱出することが多く、20cm以上にもなることがあります。

小児でもまれに直腸脱が起こることがあります。小児の場合、肛門括約筋や肛門挙筋などの筋肉の発育不全が原因であることが多いようです。

検査と診断

直腸脱は、実際に脱出しているものを確認することができれば診察は容易です。

直腸脱と痔核(いぼ痔)のどちらかまぎらわしい場合には、腹圧をかけて脱出させて診断することがあります。

女性の場合、直腸脱だと思っていても、実は子宮が膣から脱出する子宮脱や膀胱脱である場合もあります。

実際の診察では、まずは触診と肛門鏡を入れての直腸診を行います。その後、必要に応じて、肛門括約筋の収縮力の低下などを確認するため、肛門内圧検査・排便造影検査・怒責診断・骨盤MRIのほか、大腸がんを見分けるために大腸内視鏡検査などが行われます。

直腸脱の治療

直腸脱の治療

小児の直腸脱では、便秘の予防や排便時に腹圧をかけさせないといったことを注意し、手術しないで治療することが一般的です。

若い世代の成人では、外科的治療法(手術)が最も有効といわれています。

高齢者にとっても比較的安全な手術であると言われていますが、肛門括約筋などがもともと弱っているため、有効性や再発率などを考慮して医師と十分に話し合って治療法を決めることになります。

直腸脱の手術は、肛門側から行う「経肛門的手術」と、おなか側から行う「経腹的手術」があります。

経肛門的手術

直腸脱の経肛門的手術は、比較的体への負担が少ない腰椎麻酔や局所麻酔で行うことができ、開腹する必要がないため術後の回復が早いという特徴があります。

高齢者の場合は、まずは体へのダメージが少ない経肛門的手術が選択されることが多いようです。

脱出している直腸の粘膜をはがして筋肉を縫い縮める「デロルメ法」や、脱出した直腸の表面粘膜をつまみ、つり上げた粘膜に糸を通してしばる「三輪-Gant法」などがあります。「デロルメ法」の方が「三輪-Gant法」よりも再発率が低いようです。


 スポンサードリンク

経腹的手術

経腹的手術は、開腹しておなか側から施術するため、全身麻酔が必要です。

近年では、小型のカメラ機械を用いた腹腔鏡手術という手法があり、小さい傷で手術を行うことができるようになっています。

若い患者さんや、大きく脱出する直腸脱の患者さんで全身麻酔に耐えられると判断された場合に選択される手術です。

脱出してぶらぶらになった直腸をおなか側からひっぱりあげて正常の位置に戻し、特殊な医療用メッシュを腰の骨に固定し、さらにメッシュの左右を、ひっぱり上げた直腸の壁に固定します。

手術後に肛門括約筋の筋力トレーニングを行うことがあります。手術が成功して腸が脱出しなくなると、肛門括約筋の機能もある程度改善してくることが多いと言われています。

手術後の再発について

高齢者の場合、もともと肛門括約筋が衰えており、肛門のしまりがゆるくなって直腸の支持力が弱まっているため、手術をしても直腸脱を再発してしまう方もいます。

再発程度は手術方法によって異なりますので、手術の際には医師の説明を十分に聞くことが必要です。

一般的には、経肛門的手術よりも経腹的手術の方が再発率は低くなります。

若い人の直腸脱に、直腸固定術(経腹的手術)を行った場合、再発率は数%と低くなっています。

どこに行けばいい?

直腸脱の症状がでた場合、受診する診療科は「肛門科」や「肛門外科」となります。

「肛門」とついていると、病院の入り口を入る時の他人の目が気になったりしますが、肛門科を専門としている病院は外に看板を大きく掲げていないなど、他の人に分かりにくいよう配慮されていることが多いようです。

また、肛門を専門とする診療科が近くの病院にない場合は、外科的治療を必要とするため、外科を受診することになります。

直腸脱のまとめ

原因と症状

直腸脱の原因は、加齢や発育不全などにより肛門括約筋や肛門挙筋などが弱り、直腸が正しい位置に固定されずに肛門から脱出します。

初期の段階では、自分で脱出を戻すことができますが、直腸の腫れがひどくなると戻らなくなってしまう「かんとん直腸脱」になる恐れがあります。

早めに専門医を受診しましょう。

治療法

手術が有効的ですが、体力などを考慮して治療法を選択します。手術法としては、肛門側から施術する経肛門的手術と、開腹しておなか側から施術する経腹的手術があります。

小児の場合は、今後、肛門括約筋などの発達が見込まれるため、手術しないで治療することが一般的です。

[カテゴリ:下半身, 中年以降に多い, 胃腸]

 スポンサードリンク


このページの先頭へ