あがり症の克服法は人それぞれです。病院で医師に相談することが克服への近道ではありますが、病院は抵抗がある人も多いと思います。まずは、いろいろな人の体験談を参考にしてはいかがでしょうか。ここでは、体験談をご紹介するとともに、自分で克服する方法、病院での治療法、市販薬、漢方薬についてご説明します。

更新日:2017年10月20日

この記事について

監修:大河内昌弘医師(おおこうち内科クリニック院長)

執筆:当サイト編集部

克服した人の体験談

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あがり症はその人にしか分からない悩みです。すぐにでも克服したいと思いますが、あがったらどうしようと考えるほど、あがってしまうもの。克服した人はどのようにしたのでしょうか。体験談を集めましたので、参考にしてください。

体験した人の声

  • 子どもの時からどもりのせいで、極度のあがり症でした。
    小・中・高と全く改善しないまま過ぎましたが、大学に入った時に友人から「話し方に少し癖はあるけど、全然どもっていないよ」と言われたのが切っ掛けで、もしかしたら気にしているのは自分だけなのか?と思うようになりました。
    そして、就職して社会人になってからも相変わらず自分のどもりが気になっていましたが、人に話す際に少しでもわかりやすく伝えようと、イメージトレーニングをしたり話す内容を何度も口に出して練習しました。
    そのおかげで、少しずつ話すことに慣れていき、緊張も薄れていきました。
  • あがり症を克服するために、とにかく場数を踏んで慣れようとしましたがダメでした。
    しかし最近、ひょんなことから症状が少しずつよくなってきたんです。
    それは、人前で話をしなければいけない時(特に大勢の場合)、「どうせこの中のほとんどの人はまともに話なんて聞いてないだろう」と思ったこと。
    自分もその他大勢で話を聞く時は、話していることの半分もきちんと聞いていなくて、もしかしたら自分が話している時もそうなのかもと思うようになりました。
  • あがり症を克服しようと考え、話し方講座などを受講しましたが、自分はそれにより前よりももっと「上手く話そう」と思ってしまい、結果としては症状が悪化してしまいました。
    結局、あがり症を克服できたのは、自分の中にある根本的な問題やトラウマを認識したことが切っ掛けです。
    砂の上にいくら城を建てようとしても、すぐに崩れてしまうもの。
    足場をしっかりと固めることが、あがり症を克服する一番の早道になります。
  • 私の場合は、人と接したい、話したいという気持ちは強くあるにも関わらずそれができないことで、もどかしさやジレンマをずっと感じて生きてきました。
    あがり症に効果があると言われる方法は色々やりましたが、最終的に効果があったのは、βブロッカーの服用でした。
    以前にも精神科へ行って別の薬を飲んだことがあったのですが、それでは効果がなかったもののβブロッカーを飲んだら心臓の動悸がピタリと治まり、元々話したいという気持ちがあったせいか人前でも気軽に話せるようになりました。
  • 私はあがり症を病院の治療で克服しました。
    治療といっても薬だけではなく、医師による訓練プログラムを制作してくれるため、私は薬ではなく訓練によって半年ほどで治すことができました。
  • あがり症を克服するために、病院で薬を処方してもらっています。
    副作用があるものの、人と話すことが苦通でしかたなかった自分が、大勢の人の前でスピーチをすることができました。
  • 人前で話すことを苦痛に感じていましたが、今では100人くらいの前でも話せるようになりました。
    そのためには、感情に意識を向けるのではなく話す内容に意識を向けるようにし、話す内容を簡潔にまとめたメモを用意するなど事前準備をしっかりと行い、自宅などで話す練習を繰り返し、当日は緊張することで力を発揮できるのだと思うようにしました。
  • 人は失敗すると、二度とその失敗をしたくないと思いますが、失敗しないために何度も練習をしたり準備をするのではなく、そこから逃げることがあがり症の発症に繋がるのではないかと思います。
    私の場合、ピアノの発表会でミスをしたことが切っ掛けであがり症になりましたが、克服するためには発表会を避けるのではなく、出て成功体験を積み重ねていくことを選びました。
    勿論、何度も失敗しましたが泣くのはその時だけと決めて続けたことで、今では人前に出るのが好きになりました。
  • 私は子どもの時の2度の苦い経験により、すっかり人に対して臆病な性格になってしまいました。
    今思えば、人に対して嫌われたくないと思うあまりに、自分の言動を先読みしすぎてしまっていたのだと思います。
    そんな私があがり症を克服したのは、自分が思っていることは結局は自分の解釈にすぎず、他人が必ずしも同じには思ってはいないということに気付いたからです。
    人と話すたびに緊張してしまう自分のことを、ダメな人間だと思うのは自分の解釈であって、周りからそう言われたわけではないと思った時、苦手な物事に対峙した時に緊張はしても、「まあいっか」と思えるようになったのです。
    ちなみに、あがり症を克服したといっても緊張や不安が完全になくなることはありません。
    でも、緊張して不安に思う自分を否定しなくなったことで随分と楽になりました。
  • 緊張をすると大量の汗をかくのが嫌だったのですが、汗をかきそうだと思う時の前に制汗剤を使ったり、胸の下辺りをきつく締めることで顔に汗をかきづらくなると聞き、実行していました。
    しかし、一番よく効いたのは「汗をかくのはしかたない」と諦めてしまうことでした。
    特に夏場は暑いですし、人前で話さなければいけない時は緊張して当たり前と思うと気持ちが楽になります。

以下、体験談を踏まえながら、あがり症について説明していきます。


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あがり症とは

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よく泣く子、よく笑う子、大人しい子、元気な子。

人がこの世に生まれてきた時、親から受け継いだ遺伝子によって、ある程度の性格はすでに規定されていますが、まだ社会性が身についていない赤ちゃんの時からあがりやすい子というのは存在しません。

つまり、「自分はあがりやすい」と自覚するには、成長過程において何らかのきっかけがあることが多いのです。

一概には言えないものの、たとえば多感な時期を迎える思春期に、周囲の視線に晒されて「恥ずかしい」などのネガティヴな感情を持ったことが、その後のあがりやすさに大きく影響することが知られています。

その上で、「また失敗したらどうしよう・・。同じ目に遭わないか心配・・。」などの不安を重ねることで、やがてあがり症を発症してしまうと考えられています。

人前での行動に症状が出てきます。

  • 人と話す時に手や足が震える
  • 会話の途中でどもったり、何を話しているのかわからなくなったりする
  • 相手の視線を感じると大量に汗が出たり、恐怖心を感じたりする
  • 人を交えて食事をするのが苦痛
  • 電話の応対を人に見られるのが嫌
  • ホテルのチェックインなど、人前で字を書くのが苦手

注意したいのは、上記のような症状に当てはまる、もしくは自分はあがりやすいと自覚しているからといって、全ての人があがり症というわけではない、ということです。

日常生活に支障があるかが判断基準

「大勢の人前で発表をしなければいけない状況になると、顔が真っ赤になったり、頭が真っ白になって何を話せばよいかわからなくなったりする・・。」

このような経験は、実は誰にだってあるもの。

そのため、あがり症は症状によって判断するのではなく、その症状によって日常生活に支障があるかどうかで判断します。

あがり症という病名はありません

あがり症は正式な病名ではなく通称のため、実際に病院を受診した場合には、あがり症ではなく、次のような診断がされます。

対人恐怖症

自分の存在が周囲の迷惑になっているのではないか?と強い自己否定感を持ってしまうことで、人と会うことに恐怖心を感じてしまうもの。

社交不安障害

人前で失敗したり恥をかくことを極端に恐れ、強い不安を感じるもの。

あがり症の原因とは

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こういう人がなりやすい

  • 真面目
  • 几帳面
  • 神経質
  • 責任感が強い
  • 自分の感情だけではなく、他人の気持ちにも敏感

このような性格の持ち主は、自己評価が極端に低かったり、他者評価を気にしすぎたりするあまりに自分の本心を隠すなど、常にストレスに晒された状態になりやすいと言えます。

発症のメカニズム

人は緊張によってストレスを感じると、そのストレスに耐えるためにノルアドレナリンという神経伝達物質が分泌されます。

ノルアドレナリンには自律神経の中の交換神経を刺激する作用があるため、適量が分泌される分には、集中力や意欲を高めるなどプラスに働く一方で、過剰に分泌されると恐怖心や不安感が強くなることがわかっています。

ストレスを感じやすい方の場合、ストレスを感じる頻度や度合いが強いことから、ノルアドレナリンの過剰分泌が起こりやすくなり、あがり症を発症すると考えられています。

自分でできる克服法

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あがることに意識を向けない

同じように緊張する場面であっても、手が震えたり声が上ずったりすることなく、事態をおさめられる人もいます。

その人と、すぐにあがってしまう自分との違いは「意識」にあります。

例えば、大勢の前でプレゼンをしなければいけない時。

極度にあがることのない人というのは、手渡す資料に不備はないか、これからスピーチする内容が聞き手にとって伝わりやすいだろうかなど、プレゼンの内容自体に意識を向けています。

しかし、あがり症の方というのは「頭が真っ白になって話すことを忘れたら・・」「声が震えてしまったら恥ずかしい・・」というように、気持ちに意識が向いてしまっています。

感情に意識がいくと、本来考えなくてはいけないことから反れてしまい、余計に失敗しやすくなってしまいます。

人前で話さなくてはいけない時は、話す内容に意識を集中させてみましょう。

そうすることで、やるべきことが見えてきて、少なくとも話さなくてはいけないことが飛んでしまった、ということは防ぐことができます。

脳を騙してプラスのイメージを持つ

私達の感情や思考をコントロールしている脳。

実はとても騙されやすいということをご存知でしょうか。

よく、辛い時ほど笑えと言いますが、実際にストレスを感じている時などに意識的に口角を上げると、口輪筋(口の周りの筋肉)が動くことで脳が「笑っている」と察知し、楽しいことをしていると錯覚するそうです。

逆を言うと、マイナスなことばかりを考えると、本当は大したことではないことでも強い恐怖心を持ってしまうのです。

プロスポーツ選手は、競技の練習と並んで、試合に勝った時の自分を想像するなどのイメージトレーニングを重視していますが、これも一種の脳を騙すための訓練と言えます。

他人から注目なんてされてない!開き直る

他人は、自分以外の人にそれほど注目しているわけではありません。

例えあなたが失敗したとしても、それは相手にとっては一瞬の出来事。

相手が気にもしていないことを、自分だけがクヨクヨと悩んでいる可能性があるのです。

あがり症を克服するには、「誰も自分のことなんて見ていない」と思えることが大切です。

深呼吸をする

交感神経が過敏になっていると、呼吸が浅くなり動悸がしてきますが、深呼吸を行うことで副交感神経が作用し、交感神経優位の状態を改善することができます。

この時、口から息を吐き出した後、鼻から空気を吸い込み、お腹を膨らませる腹式呼吸を行うとなおよいでしょう。

ウォーキングでノルアドレナリンを抑える

意識を変えたり、開き直ったりすることがあがり症の改善によいと言われても、すぐにその通りに行うのは難しいものです。

そのような時はまず、ウォーキングをすることから始めてみましょう。

ウォーキングは健康やダイエットによいものとして知られていますが、実はストレスを軽減することにも役立ちます。ウォーキングを20~30分続けて行うと、ノルアドレナリンと同じ神経伝達物質であるセロトニンの分泌が活発になります。

セロトニンにはノルアドレナリンの働きを抑える作用があることから、不安や恐怖心を改善する効果が期待できます。

なお、ウォーキングは早朝や夕方に行う方も多いですが、太陽の光を浴びることでもセロトニンの分泌が促されるため、あがり症克服のためには日中に行うのがよいでしょう。

病院での治療法

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あがりやすい性格は病気ではありませんが、あがりやすい性格が原因で日常生活に支障が生じている場合は、対人恐怖症や社交不安障害といった病気の可能性があります。これらを発症してしまうと、自力で回復するのは難しいと言えるでしょう。

だからといって放置してしまうと、症状が悪化してやがてパニック障害や鬱病を発症してしまうことがありますので、早めに病院を受診することが大切です。

薬物療法

薬物療法は、あがり症を根本から治す方法ではありませんが、苦痛に感じている症状を緩和することができます。

例えば、今までは人前に立つだけでも足が震えてしまっていたのが、薬によってその症状が抑えられることにより、人前に立つことに恐怖心が薄れてきます。

それにより、克服しようという意欲が出て、治療に前向きになることができます。

認知療法

認知療法とは、あがり症の方の思考の歪みを矯正していくものです。

現実と患者自身の思考のズレを少しずつ整えていくことで、症状を改善させていきます。

行動療法

人前で話すことが苦通でしかたないという時は、そのことを避けて通るようになりますが、行動療法ではあえてその困難に立ち向かうことで恐怖心を克服します。


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病院での薬・市販薬・漢方薬

あがり症に対する薬は病院で処方されるもの以外に、市販薬や漢方薬があります。市販薬や漢方薬も一定の効果がありますが、医師や薬剤師に相談の上で購入するようにしてください。

病院で処方される薬

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

神経細胞ニューロンから放出されたセロトニンは、通常はセロトニン受容体と結合することで作用します。

しかし、鬱病患者などはこのセロトニン受容体との結合が上手くいかないため、セロトニンに再びニューロンに戻ってしまうことがわかっています。

ニューロンにはセロトニンを再び取り込むためのセロトニントランスポーターがありますが、このトランスポーターの役割を阻害することで、セロトニンがニューロンに戻るのを防ぎ、結果としてセロトニン濃度を高め、症状を軽減する効果が期待できるとされています。

日本では現在、以下の4種類のSSRIが使用されています。

  • レクサプロ
  • ジェイゾロフト
  • パキシル
  • デプロメール

ベンゾジアゼピン系抗不安薬

脳内物質の一種であるGABAの働きを高めることで、リラックスを促し、緊張や不安を緩和する作用があります。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は依存性が高いことから、長期間の常用は望ましくなく、症状がある時にだけ頓服薬として使用します。

最近使用される主なベンゾジアゼピン系抗不安薬は以下の通りです。

  • デパス
  • リーゼ
  • コンスタン
  • ソラナックス
  • ワイパックス など

βブロッカー(β遮断薬)

緊張によって動悸や発汗、震えなどの症状が現れるのは、神経伝達物質のアドレナリンが交感神経を刺激するためです。

この時、アドレナリンは神経細胞のβ受容体と結合するため、β受容体との結合を遮断することで症状を緩和することができます。

なお、βブロッカーとして処方される薬には、インデラルやテノーミンなどがあります。

ちなみに、あがり症の治療薬についてインターネットで検索すると、βブロッカーの成分が入った薬を個人輸入して販売しているサイトも見つかりますが、βブロッカーは心臓にも大きく作用する薬であり、素人判断で飲むと危険な場合がありますので、必ず医師の処方のもと服用するようにしましょう。

市販薬

病院へ行く時間や余裕がないという方は、市販薬で対処してみるという方法もあります。市販薬はどれも、緊張を緩めたり、イライラを抑えて気持ちを穏やかにしたりする作用があります。

その際、購入に関しては必ず薬剤師に相談し、自分の症状や体質に合ったものを選ぶようにしましょう。

あがり症の市販薬には次のものがあります。(以下の3つの薬は、15歳未満の方は服用できませんので、注意してください。)

  • イララック(小林製薬)
    緊張を緩めたり、イライラなどの興奮を抑えたりする効果があります。
  • パンセダン(佐藤製薬)
    植物性で副作用が少ない薬です。ストレスによるイライラ、緊張感、興奮感を抑える効果があります。
  • メンテック(エーザイ)
    イライラや緊張感、ストレスなどによる不快な気持ちを和らげてくれます。

漢方薬

不安症状を治める漢方薬は数多くあります。

そのため、ここでご紹介する漢方薬は一例に過ぎず、体調や症状に合わせてきちんと選ぶことで効果が発揮されますので、購入の際には必ず漢方医や薬剤師に相談をするようにして下さい。

  • 加味帰脾湯(かみきひとう)
    睡眠を促すことや気持ちを落ち着かせる効果があります。
  • 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
    めまい、動悸、不安神経症などに効果があります。
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
    人前で緊張したり不安を感じるときに、心身を落ち着かせる効果があります。

まとめ

あがり症で悩んでいる人は多くいるのですが、周囲に相談することが難しいため、克服が難しいという状況もあります。

まずは、自分でできる克服法を試してみて、難しいようであれば、早めに医師に相談した方がいいでしょう。医師は専門家ですから必ず解決策を示してくれるでしょう。

あがり症に関する質問や回答が寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

[カテゴリ:精神・神経]

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