長引く咳は咳喘息かもしれません。風邪やアレルギーなど多くのことが原因となりますが、すぐに治るというものではなく、ある程度の治療期間が必要で、完治するものではありません。市販薬や漢方でも効果があると言われますが、病院で早期に治療して、日々の生活に気をつけることが大切です。

更新日:2017年10月02日

この記事について

監修:豊田早苗医師(とよだクリニック院長)

執筆:当サイト編集部

咳喘息とは

咳喘息とは

風邪による鼻水や熱などはすっかりよくなったにも関わらず、なぜか咳だけがなかなか治まってくれない。

このような症状に思い当たるところがあれば、それは咳喘息かも知れません。

咳喘息は、喘息特有の喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューなどの呼吸音)や、呼吸が苦しくなるといった症状はないものの、喘息に似た発作的な咳を繰り返すのが特徴です。

なお、喘息と名が付いているものの、上記の理由から医学的には一般的な喘息とは異なるものとして捉えられています。

ただし、咳喘息を放っておくと、30~40%の割合で気管支喘息に移行してしまう とも言われており、咳喘息は気管支喘息の一歩手前 の状態と言っても過言ではありません。

原因は細菌やストレス、大気汚染など多くのものが考えられる

咳喘息の発症原因については、現在まで詳しいことは解明されていないのですが、気道が炎症を起こすことで過敏になり、咳が出やすくなる ということはわかっています。

そのため、気道にウイルスや細菌、埃、カビ、化学物質などが付着することや、乾燥によって喉粘膜の水分が減ると、それらがきっかけで咳喘息を発症しやすいと言われています。

咳喘息が起こりやすくなるもの

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  • 風邪やインフルエンザ
  • アレルギー(カビ、ペットの毛、ハウスダスト、花粉、食品など)
  • 気温の変化
  • 冷たい風
  • 会話
  • 口呼吸
  • 運動
  • 汚染された大気(PM2.5や黄砂など)
  • たばこの煙
  • アルコール
  • ストレス
  • 防虫剤など


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症状は咳だけが続く

空咳が続く

風邪を引いた時は、痰を絡んでいることが多いことから、少し湿り気のある咳が出ますが、咳喘息の場合は痰が出ないことがほとんどで、咳もコンコンといった乾いた咳が出ます。

なお、咳は常時出ているわけではなく、気道が刺激を受けると、それをきっかけに連続して咳き込むようになります。

さらに、日中よりも夜間から早朝の、寝ている時間に咳が出やすくなるという特徴もあります。

その他にも、

  • 喉がイガイガする
  • 聴診器を当てても、肺から異常な音がしない
  • ひどい咳き込みが続くことで、胸の痛みや嘔吐などを訴える

などの症状が現れます。

診断・検査

診断

咳喘息の診断基準は複数ありますが、その中でも次の2つが該当する場合は咳喘息の疑いが強いと判断されます。

  • 喘鳴を伴わない咳が8週間以上続いている
  • 気管支拡張薬が治療として有効

また、咳喘息が疑われる場合は、以下の検査が行われます。

  • 血液検査
  • 呼気NO検査
  • 気道過敏性試験
  • 胸部X線

気管支喘息の方がX線を撮影すると、ひどい場合、肺の過膨張によって心臓が圧迫されて細長い形(滴状心)に映ることがあります。また、肺炎も同様にレントゲンで異常を確認することができますが、咳喘息の場合は肺や気管支に異常がないため、このような所見が見られません。

つまり、肺などに異常がなければ、咳喘息の可能性が高くなると判断されます。(喘息でもレントゲンで異常を確認できないことが多くありますので、咳喘息の確定の診断にはなりません。)

治療薬は主に3つ。吸入ステロイド・気管支拡張薬・抗アレルギー薬

咳喘息の治療には、主に次の3種類の薬を使用します。

吸入ステロイド

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抗炎症作用のあるステロイドを用いて、気道の炎症を鎮め症状を緩和させます。

吸入ステロイドには、吸入器や吸入薬の種類によって複数のタイプがあり、それぞれに特徴が異なるため正しく吸入することが必要になります。

吸入ステロイドを使用すると、喉の痛みや声枯れ、口腔カンジダ(口の中に常在するカンジダ菌が繁殖し、白っぽい苔のようなものが付着する)などが副作用として起こることがありますが、これらは吸入ステロイド使用後にすぐうがいをするか、食事をして口の中に付いたステロイド薬を胃腸へと落とし込むことで軽減されます。

また、吸入ステロイドは肺以外で吸収されても、肝臓で代謝され、全身に影響を及ぼすことはあまりありません。

気管支拡張薬

文字通り、気管支を広げて空気の通りをよくする薬剤です。

気管支拡張剤は現在、吸入薬と貼付薬が主流となっており、次の3種類が処方されています。

β2刺激薬(交感神経刺激薬)

私達の体のあらゆる機能を司る自律神経は、交感神経と副交感神経の2つが拮抗的(お互いの効果を消し合うように作用すること)に働いています。

その中でも、活動時や緊張状態にある時に優位に働くのが交感神経で、スポーツをする時などは交感神経が優位になることで、エネルギーの代謝が促進されます。

その際、交感神経の中のβ受容体が活性化することで気管支が拡張され、酸素の取り込みが多くなるため、β2刺激薬によって気管支を拡張して症状を改善します。

なお、β2刺激薬には長期管理薬(コントローラー)と発作治療薬(リリーバー)の2種類があり、症状によって処方されます。

テオフィリン製剤

テオフィリン製剤は、気管支を広げる作用だけではなく、炎症を抑える作用を持っていることから、かつては喘息治療の中心として使用されていましたが、年齢や体型、体質などの個人差によって薬の効き目にムラがあることや、副作用が起こりやすいというデメリットも存在しました。

そこで現在は、徐放性テオフィリン製剤として、咳を予防する薬として使用されています。

※徐放性とは、徐々に成分が溶け出して吸収されることで、効き目が長く続くという意味があります。

抗コリン薬

気管支を拡張してたくさんの酸素を取り込む働きがある交感神経に対し、副交感神経は気管支を収縮させる働きがあります。

このため、副交感神経が興奮状態になると、気道が狭くなってしまい、少しの刺激でも過敏に反応するようになってしまいます。

このような副交感神経の作用を促すのが、神経伝達物質の一種のアセチルコリンです。

抗コリン薬には、アセチルコリンの働きを阻害する作用があることから、気管支の収縮を抑える効果が期待できます。

抗アレルギー薬

咳喘息の発症には、アレルゲン(アレルギー発症の原因となるもの)やアレルギー体質であることが関わっていると言われています。

そのため、抗アレルギー薬を使用することで症状の緩和や改善が期待できます。

ロイコトリエン受容体拮抗薬

気管支を収縮させる働きのあるロイコトリエンという化学物質の作用を抑えることで、症状が出るのを防ぐ効果があります。

なお、薬の効果が現れるまでには、2日~数週間を必要とし、中には効き目のない方もいるようです。

治療期間は半年以上になることも

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咳喘息で病院を受診する方の中には、「咳が出なくなったから治った」と自己判断し、治療を勝手に中断する方も多いようです。

しかし、咳が止まったとしても気道の炎症が続いていれば、刺激によって再び咳が出てしまうこともあり得ます。

実際に、咳喘息は再発するケースも多く、再発を繰り返すことで重症化したり、気管支喘息へと移行してしまう可能性も高くなってしまいます。

そのため、自己判断で治療を止めずに、必ず医師の指示に従うようにして下さい。

なお、治療期間の目安としては3ヶ月~半年程度、再発の場合は半年~となります。

完治するの?

完治とは、病気や怪我などが完全に治ることを言います。しかし、何を以て完治とするべきなのかは、病気の発症原因などによって微妙なところと言えるでしょう。

咳喘息の場合、薬によって症状を抑えることや、咳が出ないようにコントロールすることは可能です。

これを医学的には「寛解(かんかい)」と呼んでいます。寛解は、症状が軽減ないし消失して、落ち着いた状態であることを言います。

咳喘息は数年症状が現れていなくても、何かのきっかけで再発することがあるため、完治よりも「寛解」という方が正しいのかもしれません。

なお、気管支喘息の治療では、完治ではなく寛解という言葉を使用します。

早期治療で症状の悪化を防ぎましょう

以上のことを踏まえると、咳喘息は放っておかない方がいいと言えます。

咳喘息が疑われる症状が現れたら、早めに病院を受診し治療を開始することで、症状の悪化を防ぐことができますし、予防や対策を講じることもできます。

市販薬や漢方薬の効果は?

市販薬や漢方薬にも、咳喘息に効果があるものがあります。ここでは代表的なものをご紹介しますが、薬の使用については、薬剤師などと相談の上、十分に注意し自己の責任において使用してください。当サイトとしては、早期に医師の治療を受けることが最善の方法だと考えておりますので、それを十分に踏まえてください。

市販薬の効果

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一般的に市販薬として販売されている咳き止めには、咳喘息の症状を抑える効果はありません。ただし、市販薬の中にも、気管支拡張の作用を持つ成分が含まれているものもあります。

アスクロン(大正製薬)

β2刺激薬であるメトキシフェナミン塩酸塩が配合されています。

アストフィリンS

気管支拡張作用のあるジプロフィリン、dl-メチルエフェドリンが配合されています。

ミルコデ錠A

テオフィリン、dl-メチルエフェドリン塩酸塩配合により、気管支を拡張して咳の症状を鎮めます。

効果的な漢方薬

  • 小青龍湯(しょうせいりゅうとう)
  • 麻黄湯(まおうとう)
  • 麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)

これらの漢方薬には、麻黄と呼ばれる生薬が含まれています。

麻黄には、エフェドリン系の成分が含まれており、交感神経を刺激する作用があることから、昔から咳止めとして使われています。また、最近はインフルエンザの予防や初期治療で用いられることも多い漢方薬です。

気管支喘息にも効果があるため、咳喘息でも同様の効果が期待できるのですが、胃腸が弱い・汗をかきやすいなどの虚弱体質の方や心臓や血管系の病気(心臓病、高血圧、脳卒中の既往歴など)のある方には、効果が強すぎて副作用を起こす可能性があり注意が必要です。

なお、麻黄が含まれない漢方薬には、麦門冬湯(ばくもんどうとう)があります。麦門冬湯は、強く咳き込んでしまう、乾いた咳が出る、喉の乾燥感があるなどの場合にお勧めの漢方薬です。


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生活習慣の見直しなどで、自宅でも改善・予防をしよう

掃除や洗濯は丁寧に行う

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咳喘息は、アレルギーの発症と深い関わりがあると言われているため、カビやダニ、ペットの毛、埃、ハウスダスト、花粉などアレルギーの原因となるものをできるだけ吸い込まないようにすることが大切です。

それには、アレルゲンを減らす掃除や洗濯の仕方を行うのがよいでしょう。

  • 掃除機をかけるのは朝か、外出から帰宅した直後がよい。
  • 床だけではなく、家具などの上やベッドの下などに積もった埃もしっかりと取り除く。埃は上から下へ順番に落とすのがよい。
  • 布製のソファーはブラシタイプのノズルを付けて、隅々まで掃除機を掛ける。
  • 掃除中は必ず換気をする。
  • 押し入れやクローゼットを開け換気を行う。
  • フローリングは水拭きをする。
  • 布団は日干しする。
  • 毛布や枕カバーなどは洗濯した後に乾燥機を使用する。

マスクを着用する

マスク

気温差や冷たい風、乾燥などは気道を刺激するため、咳喘息が起こりやすくなります。

外出をする時はマスクを着用し、外気をできるだけダイレクトに吸わないようにしましょう。

マスクを使用することで、自分の呼気によって湿度を保つことになりますので、特にオススメの方法です。

また、マスクの着用はウイルスや細菌、花粉などを防ぐという点でも効果が高いです。

手洗い、うがいをする

咳喘息の発症原因の多くは、風邪やインフルエンザといった感染症が引き金になります。

帰宅後は、手洗い・うがいを行い、病原菌を体内に入れないように注意しましょう。また、感染症が流行している時期は、できるだけ人の多いところを避けるようにしましょう。

ストレスを解消する

ストレスが溜まると、疲れやすくなったり、十分な睡眠がとれなかったりするなど、体の抵抗力が落ちて感染症にかかりやすくなります。

また、ストレスによって自律神経の働きが乱れ、副交感神経が優位になりすぎると、気道が収縮して咳が出やすくなってしまいます。

ストレスを解消するには運動を行うのが効果的ですが、ハードな運動は返って体の疲労を高めてしまうため、軽く体を動かす程度の運動を行うとよいです。

中でも、ウォーキングは体への負担が少ない上に、βエンドルフィンやドーパミン、セロトニンといった幸福感や爽快感をもたらすホルモンが分泌され、ストレスの軽減や解消に繋がります。

禁煙をする

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たばこの煙は気管支を刺激しやすい最たるもの。

喫煙者の多くは咳が出やすいと言いますが、慢性的に咳をすることで気道が敏感になり、咳喘息を起こしやすくなると言われています。

このようなことから、咳喘息を予防・改善するためには禁煙することは必要不可欠と言えます。

さらに、たばこの煙は本人だけの問題ではなく、周囲を巻き込むものです。

家族や同僚、友人などに咳喘息が疑われる症状がある場合は、禁煙を徹底しましょう。

食生活の改善

咳喘息の発症原因にアレルギーがありますが、それには食品に由来するものも数多くあります。

そのため、以前食べた時にじんましんが出たなど、アレルギーが起こる可能性があるものは摂取しないようにしましょう。

また、香辛料やアルコールといった刺激物も、咳喘息の発症を促す恐れがあります。

反対に、咳喘息の時に積極的に摂取したいのが、はちみつです

はちみつの効果

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はちみつには強い抗炎症作用や殺菌作用があることから、昔から風邪や喉の炎症に民間療法として用いられています。

看護師からのアドバイス

咳喘息は、治そうと思うと辛いものです。体質を変えよう・咳喘息を治そうと思うと、それ自体がストレスになってしまうことがあります。

うまく付き合うことをゴールにして、日頃からの体調管理に注意しましょう。コントロールさえうまく付けば、日常生活に支障をきたすことはありませんからね。

咳喘息に関する質問や回答が寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

[カテゴリ:健康習慣, 気管・心臓・肺]

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