腰から足にかけての症状が辛い坐骨神経痛ですが、原因は腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などにあり、妊婦さんも坐骨神経痛になることがあります。坐骨神経痛の治療法、痛みに対する対処法などを解説します。

更新日:2017年08月17日

この記事について

監修:大見貴秀医師

執筆:当サイト編集部

坐骨神経痛とは

坐骨神経痛とは、腰から足先まで続いている坐骨神経が、何らかの原因により圧迫されることで強い痛みや痺れを引き起こすものです。

坐骨神経は、皮膚表面から近い部分を通っているため、痛みが強く出やすいのが特徴で、放置すると歩行障害や排尿障害といった深刻な症状を引き起こす恐れがあります。

※図はイメージです。

なお、坐骨神経痛は坐骨神経の圧迫による痛みなどの症状を総称するものであり、病名ではありません。そのため、坐骨神経痛はそのものを治療するというよりは、坐骨神経痛を引き起こしている病気を突きとめて治療を行うというのが正しい考え方となります。


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坐骨神経痛の原因

発症原因は、年代によって異なります。主な原因としては以下の2つがあげられます。

  • 若い世代では腰椎椎間板ヘルニア
  • 高齢になると腰部脊柱管狭窄

この2つは一体どのような病気なのでしょうか。

腰椎椎間板ヘルニアとは

作者 BruceBlaus. When using this image in external sources it can be cited as:Blausen.com staff (2014). “Medical gallery of Blausen Medical 2014”. WikiJournal of Medicine 1 (2). DOI:10.15347/wjm/2014.010. ISSN 2002-4436. (投稿者自身による作品) 当サイトで和訳追加 [CC BY 3.0], ウィキメディア・コモンズ経由で

人の首から腰にかけての骨は、24個の椎骨と23個の椎間板が交互に積み重なった状態で形成されています。

椎間板には、薄い軟骨が層になって重なっている線維輪と、その中に含まれるゼラチン状の髄核があり、クッションのような役割を果たして椎骨に掛かる衝撃を吸収しています。

しかし、椎間板に強い圧迫が加わり続けるなどして繊維輪に亀裂が生じると、中の髄核が突出してしまい、付近の神経を圧迫して強い痛みや痺れといった症状を引き起こします。

これが、椎間板ヘルニアです。発症すると片側(両方のケースもあります)の腰から足に掛けて、激痛や痺れ、冷感、筋力の低下などが起こります。

なお、上から数えて7個目までの椎骨に含まれる椎間板に、このような症状が起こった場合は頚椎椎間板ヘルニア、それ以下の椎間板に起こった場合は、腰椎椎間板ヘルニアとして区別しています。

椎間板ヘルニアを発症する4つの原因

  1. 遺伝的要素
  2. 環境的要素
  3. 加齢
  4. 外傷性

それぞれ簡単に説明していきます。

1. 遺伝的要素

親が椎間板ヘルニアを発症している場合、その子どもも椎間板ヘルニアを起こしやすいと考えられています。

これは、脊柱管が狭い、骨が椎間板に寄っているなど、椎間板ヘルニアを発症しやすい骨格が似ることが原因と言われています。

2. 環境的要素

重い荷物の上げ下ろしやゴルフなどのスイング、姿勢の悪さなど日常の生活習慣が起因するもので、背骨に負担を掛ける動作を繰り返すことが主な原因となります。

3. 加齢

椎間板はその約8割が水分と言われており、20才をピークに徐々に水分が減っていき弾力性を失っていきます。そのため、年齢を重ねるごとに椎間板ヘルニアを発症する確率は高くなると考えられます。

4. 外傷性

怪我などの外傷に起因するものです。くしゃみや咳をしただけでも強い痛みが走り、症状が進行すると排尿障害が起こることもあります。

腰部脊柱管狭窄とは

坐骨神経痛の原因となるもう一つの腰部脊柱管狭窄です。

背骨を形成する椎骨は、椎体と椎弓によって成り立っており、その2つの間には椎孔と呼ばれる空間があります。この椎孔が積み重なってできるのが脊柱管で、脊柱管の中には神経(脊髄)が通っています。

腰部脊柱管狭窄とは、脊柱管が狭窄する(狭くなる)ことで、神経が圧迫され痛みや痺れを起こす病気です。では、どうして脊柱管が狭窄してしまうのでしょうか。それには、次のような原因が考えられています。

脊柱管狭窄の3つの原因

  1. 先天性
  2. 変性すべり症
  3. 老化

1. 先天性

生まれつき脊柱管が狭い、椎弓が変形しているなどの理由により、神経が圧迫されやすい状態であると言えます。

2. 変性すべり症

椎間板の老化によって、腰椎がずれてしまうことで神経を圧迫して痛みや痺れを引き起こすものです。第4腰椎と第5腰椎の間で起こりやすく、中年女性に多く発症すると言われています。

3. 老化

加齢によって脊柱管が狭窄することは、誰にでも起こりうるものです。

ただし、若い時に、重い荷物を運んだり、長時間車の運転をするような仕事をしていた人や、スポーツなどで腰への負担が大きかった人は、高齢になると狭窄の進行が早くなります。

腰部脊柱管狭窄の特徴

腰部脊柱管狭窄には、「間欠性跛行」と呼ばれる特徴があります。

これは、歩き始めには痛みを感じないものの、少し経つと痛みや痺れを感じて歩行がままならなくなり、座るなどして休むと痛みがとれ、再び歩くことができるようになることを指します。

症状が軽いうちは、少し休むと通常通り歩けるようになるため、それが間欠性跛行だとはなかなか気付けませんが、ひどくなると数10m歩いたところで痛みが出るようになり、やがて歩けなくなってしまうこともあります。

ストレスなどによる「梨状筋症候群」も原因に

坐骨神経痛の発症原因には、上記の2つの他に「梨状筋症候群」も考えられています。

梨状筋は骨盤の中心にある仙骨と大腿骨(ふともも)を繋ぐ筋肉で、文字通り梨のような形をしており、股関節が外旋(外に開く動き)する時に使用されますが、この筋肉が坐骨神経を圧迫することで坐骨神経痛が発症します。

梨状筋症候群は、スポーツや仕事などの理由で腰痛が慢性化している場合や、ぎっくり腰の後遺症、お尻の打撲などが原因で起こると言われていますが、ストレスを強く感じている時や、男性に比べて筋力の弱い女性が比較的発症しやすいことが分かっています。


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坐骨神経痛の症状

坐骨神経は、第4・第5腰痛の神経と、骨盤の中央に位置する仙骨の前面から出ている神経が束になり、お尻の中心部分にある梨状筋の下から太ももの後ろを通って、膝裏の上あたりで前後に分かれて足裏や足先まで伸びている神経です。

このため、坐骨神経が圧迫されると、広範囲に渡って痛みや痺れといった症状が起こります。

症状の出方には個人差があり、どこか一ヶ所だけに激しい痛みを感じることもあれば、腰から足全体に電気が走ったような痛みやビリビリとした痺れを感じることもあります。

また、痛みや痺れだけではなく、冷感や熱感、足に力が入らない、腰や足に強い張りやつっぱり感がある、触っても感覚が鈍い気がする、といったものもあります。

さらには、ある日突然強い痛みに襲われる場合もあれば、最初は違和感程度だったものが、少しずつ進行していくケースもあります。

坐骨神経痛の症状が進行すると、歩行が困難になるだけではなく、お尻周辺の痺れによって排尿障害が起きたり便秘しやすくなったりするなど、様々な二次的症状が現れるようになります。

治療・治し方

腰痛

坐骨神経痛の治療では、まず始めに痛みや痺れといった症状を緩和させる対症療法が行われます。

受診する科は整形外科になりますが、そこでの検査や問診などから坐骨神経痛と診断されると、次のような治療を行います。

整形外科・ペインクリニックでの治療

理学療法

血行を促進することで機能改善を図る「ホットパック」や、腰椎を引っ張る「牽引」などを行い、坐骨神経痛の症状を改善します。

薬物療法

非ステロイド性消炎鎮痛薬や末梢循環改善薬などの内服薬を始めとして、湿布、塗り薬などの薬物にて症状を抑え、改善を図ります。

装具療法

コルセットを装着することで、腰に掛かる負担を軽減し、坐骨神経痛が発生しやすい姿勢を回避します。

神経ブロック注射

強い痛みによって交感神経が優位な状況が長く続くと、筋肉の収縮が起こり痛みが慢性化してしまう恐れがあることから、痛みのある場所に近い神経に局所麻酔薬を注入することで、情報の伝達を遮断して、痛みを感じさせないようにします。

手術

上記のような治療を行っても症状が改善しない時や、坐骨神経痛が悪化し歩行障害や排尿障害など深刻な症状がある場合は、外科手術が行われます。

整体・鍼灸などによる治療

坐骨神経痛の治療は、病院の他の施設、いわゆる整体や鍼灸などで代替医療という形で受けることも可能です。ただし、病院で診察を受けてから受診するようにしましょう。

漢方

東洋医学においては、坐骨神経痛を発症する主な原因は「淤血(おけつ)」と考えられています。淤血とは、簡単に言うと血行障害のことを指します。

つまり坐骨神経痛は、炎症などによって筋肉が凝り固まり、血液の流れが悪くなることで、痛みや痺れといった症状を引き起こすとされているのです。

そのため漢方では、血行を促進することで坐骨神経痛の症状を改善するとしています。

坐骨神経痛に効果があると言われている漢方薬には、次のようなものがあります。

疎経活血湯(そけいかっけつとう)

血行を促進し、体内の循環を整える効果があります。

また、痛みを散らす効果もあることから、坐骨神経痛を始め、筋肉痛など下半身の痛みや痺れがある時に処方される漢方薬です。

竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)

下半身の炎症や、筋肉のこわばりなどを改善する効果があるとされています。

ただし、服用によって筋肉の痙攣を起こすこともあるため、そのような症状が現れた時はすぐに医師に相談して下さい。

牛車腎気丸(ごじゃじんきがん)

老化による下半身の衰えに効果があるとされています。

ただし、服用によって発疹や吐き気などが出る場合がありますので、そのような時はすぐに医師に相談して下さい。

リハビリ

坐骨神経痛は、発症の原因となる椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄を治療することで症状を改善することができますが、一方で老化が原因の場合は痛みの緩和などは見込めても、完治に近い状態にするのは難しいでしょう。

また、椎間板や脊柱管は負担の掛かりやすいところのため、一度は完治したように思えても、再び坐骨神経痛を発症してしまう可能性は低いとは言えません。そのため、症状の緩和や再発を防ぐためにもリハビリを続けることが大切です。

リハビリには治療として行われる理学療法の他に、ストレッチや体操、マッサージといった方法があります。これらの方法を用いて筋肉の緊張を緩和して、炎症や痛みの発生を防ぎます。

腰に負担をかけない寝方もリハビリに

また、日常生活において腰に負担を掛けない寝方をすることも、坐骨神経痛を改善するリハビリになります。

寝る時は、うつ伏せや仰向けを避け、横向きになって寝るようにしましょう。この時、お腹の中の赤ちゃんの姿を想像して、同じような姿勢をとるとよいでしょう。

これは、坐骨神経痛による痛みが強い場合も有効で、坐骨神経痛患者の多くが楽な姿勢と感じます。

妊婦さんについて

妊娠中の女性は、お腹の中で赤ちゃんを大きく育てているため、赤ちゃんの成長とともに骨盤が開いたり、子宮周辺の筋肉などを押し広げたりすることで、神経を刺激して坐骨神経痛を発症する場合があります。

特に、お腹が急激に大きくなる妊娠中期から後期に掛けて、腰やお尻に痛みや痺れなどが起こりますが、出産と共に症状が治まるのがほとんどのようです。

とは言え、妊娠中は何かと気持ちが不安定になりやすいことから、あらかじめ坐骨神経痛にならないように対策をしておくことが大切です。

坐骨神経痛は、腰の痛みから始まることが多いため、腰への負担を軽減するベルトを装着したり、股関節周りや下半身の筋肉の緊張を緩和させたりするストレッチなどを行うのもよいでしょう。

まとめ

坐骨神経痛は痛みなどつらい症状が出てきます。まずは、整形外科を受診して原因をしっかりと見極めてもらうことが大切です。

適切な治療を受けて、リハビリなどを根気よく続けていくことが大切です。

坐骨神経痛に関する質問や回答が寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

[カテゴリ:下半身, 中年以降に多い, ]

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