高齢になると白内障になる人が多くなりますが、実は若年性の白内障もあります。また、妊婦さんが風疹にかかると、赤ちゃんに先天性の白内障が生じることがあるなど、決して高齢者だけの病気ではありません。白内障の原因ははっきりしていませんが、危険因子を避けて生活することが重要です。白内障について重要なことをまとめました。

更新日:2017年09月05日

この記事について

監修:大見貴秀医師

執筆:当サイト編集部

白内障とは?

目の構造

白内障とは、眼の中の「水晶体」が濁ってしまう病気です。

水晶体は本来透明で、カメラで例えるならレンズの役割を担っています。カメラのレンズが曇っていると写真がぼやけてしまうように、水晶体が濁る事で視力が低下し視野がぼやけてしまうのです。

白内障は数年〜数十年かけてゆっくり進行していくため、50代以降の中高年に多く見られます。

年齢を重ねるごとに増加していき、80歳以上になるとほぼ全ての方に白内障による視力低下が認められます。

女性ホルモンの影響で男性より女性のほうが早期に発症する傾向があるため、医療保険の女性特約に含まれている場合があります。

白内障の原因

太陽

水晶体が濁ってしまう原因は解明されていませんが、白内障は80歳以上の高齢者のほとんどに症状が見られることから、病気ではなく白髪やシワと同じような「老化現象の一環である」という考え方もあります。

加齢が原因と思われる白内障を「老人性白内障(加齢性白内障)」と呼び、それ以外が原因の白内障とは区別します。

老人性白内障以外の原因

  • 喫煙
  • 肥満
  • 栄養不足
  • 被爆(放射線白内障)
  • 有害光線(紫外線、赤外線)
  • 薬物(ステロイド白内障)
  • 目の病気(眼内炎、ぶどう膜炎)
  • 目以外の病気(糖尿病、アトピー性皮膚炎)
  • 目のけがや異物混入(外傷性白内障)
  • 遺伝、妊娠中の母体の風疹感染(先天性白内障)


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白内障の症状

初期にはこれといった自覚症状がありませんが、症状が進むと見え方に影響が出てきます。

水晶体の濁り方には個人差がありますが、周辺部から混濁が始まることが多いのが特徴です。

周辺部から混濁が始まっても中心部が透明であれば視力の低下は起こりにくく、逆に中心部から混濁が始まると混濁部分が少なくても視力に影響がでます。

白内障の主な症状

  • 光が眩しい
  • 目がかすむ
  • 急に視力が低下する
  • 色が変質して見える
  • 暗い場所が見えにくい
  • 物がだぶって見える
  • 近視が進んだように感じる
  • メガネをかけても見えにくい
  • 目の前に霧がかかったように見える
  • 視野が黄白色・茶褐色に濁る(老人性白内障の場合)

白内障の予防法

ウォーキング

水晶体が濁る原因が不明なため、有効な予防法もはっきりしていませんが、原因として考えられることを避ければ、進行を遅らせることができるのではないかと考えられます。

誰にでも起きうる白内障ですが、生活習慣を見なおして進行を予防しましょう。

心がけたい予防法

  • 禁煙する
  • 眼を掻かない
  • 太り過ぎない
  • 適度に運動する
  • アルコールを控える
  • 眼の疲れをためない
  • バランスの良い食事を心がける
  • 放射線や赤外線の曝露を避ける
  • 糖尿病の人はきちんと血糖値をコントロールする
  • 紫外線を避ける(つばの広い帽子やサングラスを使用する)

白内障と合併症

疲れ目

成功率の高い白内障手術ですが、合併症が起こることもあります。確率は0.2%位と言われており、術中だけでなく術後に合併症が起きる場合もあります。

手術中に起きる可能性がある合併症

後嚢破損(こうのうはそん)

水晶体の後ろ側にある薄い袋が手術中に破れます。

駆逐性出血

手術中に眼圧が下がることで脈絡膜から出血します。術後の視力に影響する場合があります。

手術後に起きる可能性がある合併症

後発白内障

眼内レンズを入れるために残した水晶体の後ろ側(後嚢)が濁り、再び眼がかすんできます。

術後数ヶ月〜数年後に発症することが多く、この濁りはレーザーで簡単に除去できます(後発白内障手術)。

感染性術後眼内炎

細菌が眼内に感染し炎症を起こします。

感染すると入院による点滴や手術が必要になり、処置が遅れると失明する可能性もあります。

その他

網膜剥離、術後高眼圧、嚢胞性黄斑浮腫、眼内レンズ脱臼、水疱性角膜症、虹彩炎、硝子体出血など。

白内障と併発しやすい病気

白内障とともに発症しやすい病気には、次のような病気があります。

  • 緑内障
  • 糖尿病
  • ブドウ膜炎
  • アトピー性皮膚炎

白内障の検査

視力検査

白内障が疑われる場合の主な検査法は「視力検査」と「細隙灯顕微鏡検査」です。

その他必要に応じて、眼底検査・眼圧検査・角膜内皮細胞検査・屈折検査・視野検査などが行われます。

視力検査

裸眼・矯正両方を測定し、どの程度見えているかを調べます。矯正視力が落ちている場合は、白内障など目の病気が進行している可能性があります。

細隙灯顕微鏡検査(さいげきとうけんびきょうけんさ)

細隙灯顕微鏡を用い、水晶体の透明度を調べます。

暗い室内で目に細い光を当てて眼球内にある水晶体の状態を観察するので、眩しさは感じますが痛みのない検査法です。

眼底検査

網膜の状態を観察します。

白内障以外の眼の病気(緑内障や底出血など)がないかを確認するために行います。

眼圧検査

眼圧検査は緑内症が疑われる場合によく行われる検査法です。

白内障の症状が進むと緑内障を併発する場合もあるため、緑内障を発症していないかを確認するために行います。

白内障の治療法

白内障の治療は眼科で行われます。

治療内容は病状の進行具合によって異なりますが、一度混濁してしまった水晶体を元に戻す薬が開発されていないため、手術が治療の中心です。

日常生活にそれほど支障はない場合

経過観察

眼科で定期的に検査を受け、白内障の進行状態をチェックします。

薬物治療

完治を望める薬はありませんが、進行を遅らせる効果は期待できます。点眼薬や内服薬を毎日続ける必要があります。

食事療法

  • 脂質や糖分を控えた食事を心がける
  • 抗酸化作用のある食べ物を食べる(ポリフェノール、ビタミンC、ビタミンE、DHAなど)
  • 目に良いとされる食べ物やサプリを摂取する(ルテイン、ブルーベリーなど)
  • 肉や魚などを避け、野菜や海草などを多くとる

視力低下が進み日常生活に支障が生じている場合は手術療法

「超音波乳化吸引術+眼内レンズ挿入術」という手術療法があります。

混濁した水晶体を超音波で砕いて取り除き、代わりに眼内レンズ(人工の水晶体)を挿入し固定します。

麻酔は局所麻酔が基本ですが、じっとしていることが難しい子どもや認知症の方は、術中の事故を防ぐため全身麻酔で行われることもあります。

基本的に片目ずつ行い、手術時間は約10〜15分です。

日帰り手術が可能な施設も増えていますが、その場合は術後翌日から複数回の通院や、点眼などの自己管理が必要になります。

手術後の視力回復には個人差がありますが、大抵の場合、翌日には十分な視力が得られます。

まぶしさや色調に違和感がある場合もありますが、手術後のまぶしさ対策には遮光レンズ・カラーレンズ・サングラス・調光レンズなどの使用について医師と相談するといいでしょう。

手術の費用

手術の費用は「単焦点レンズ」か「多焦点レンズ」のどちらを選択するかで大きく異なります。

単焦点レンズ保険対象なので3割負担の方で約5万円(片目)ですが、多焦点レンズは先進医療となり保険適用ではないため約35万円(片目)と高額になります。

レーシック手術を受けた人でも手術可能

若い時にレーシック手術を受けた方が高齢になり白内障の手術をすることは可能です(手術する部位が異なるため)。

しかし、眼内レンズの度数のズレを少なくするためにはレーシックを受ける前の眼のデータが必要になります。

白内障と妊婦の関係

赤ちゃん

妊婦自体が白内障を起こすわけではありませんが、場合によって赤ちゃんが白内障を発症することがあることが知られています。

子どもが発症する白内障に「先天性白内障」がありますが、先天性白内障の主な原因は、遺伝と母親の風疹感染によるものです。

遺伝

先天性白内障の20〜30%は遺伝によるものと考えられています。

母親の風疹感染によるもの

妊娠3ヶ月までに風疹に感染すると、水晶体全体が白く濁ってしまう「全白内障」になる可能性が高いと言われています。

風疹ウイルスは白内障だけでなく、先天性心疾患や難聴などの障害を赤ちゃんに与える可能性もあります。
通常産婦人科では風疹についての案内はありますが、風疹の免疫がない妊婦さんは風疹患者に近づかない、又は妊娠を考えたら事前に風疹ワクチンの接種を受けるなど、自分でもできる対策を講じるようにしましょう。


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白内障と子どもの関係

子どもが発症する白内障には、「先天性白内障」と「若年性白内障」があります。

先天性白内障

生まれつき水晶体が濁っている場合を「先天性白内障」、成長に伴い進行する場合を「発達性白内障」と呼びます。

原因

遺伝 、子宮内感染(風疹、ヘルペスなど)。

症状

子ども自身が症状を訴えるというより、家族が眼の濁りに気付く場合が多い。

治療法

乳幼児の段階での強い白内障を放置すると弱視になり、手術しても視力の回復が見込めなくなる場合があるため、早期に発見し手術することが重要になります。

成長の過程で眼内レンズの度数が合わなくなる可能性があるため、水晶体を取り除いた後も眼内レンズは入れずコンタクトレンズや無水晶体用眼鏡で視力を矯正します。

若年性白内障

若年性白内障は10代でも発症する可能性があり、進行のスピードが早く多くの場合急激に水晶体が濁っていきます。

原因

外傷、目の病気(ぶどう膜炎、網膜剥離など)、アトピー性皮膚炎、糖尿病、放射線や赤外線の照射、薬の副作用、ストレス、喫煙など。

症状

目のかすみ、視界のぼやけ、まぶしさで明るい場所は見えにくいなど。

治療法

症状の進行具合により薬物療法か手術が選択されます。

白内障のまとめ

  • 子どもも白内障になります。
  • 白内障は水晶体が濁る病気です。
  • 手術以外に視力を改善する方法はありません。
  • 白内障を放置すると失明につながります。
  • 白内障で最も多いのは老人性白内障です。
  • 目が霞んだりぼやけたりしだしたら要注意。
  • 手術は比較的簡単ですが、その後の自己管理が重要です。
  • 検査の中心は水晶体の濁り具合を直接見る「細隙灯顕微鏡検査」です。
  • 妊婦さんが風疹になると、赤ちゃんが白内障になる危険性が高まります。
  • 手術をした場合、保険で治療費が返ってくる可能性があります。
白内障に関する質問や回答が寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

[カテゴリ:中年以降に多い, 生活習慣, 目・鼻]

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