私も肋間神経痛になったことがあります。肋骨や背中のあたりに何か違和感があり、姿勢によってはピリッと痛みました。息苦しさもあり、肋骨が骨折しているのではと不安になり、何科を受診しようかと考えて整形外科に行ったところ、肋間神経痛と言われました。症状や原因、治療法などについてまとめています。

更新日:2017年05月31日

この記事について

監修:大見貴秀医師

執筆:看護師(当サイト編集部)

肋間神経痛とは?

BodyParts3D, Copyrightc 2008 ライフサイエンス統合データベースセンター  licensed by CC表示-継承2.1 日本”

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肋間神経痛(intercostal neuralgia)とは、肋骨に沿って走る肋間神経が何らかの原因で痛む症状のことです。

人間には、心臓や肺といった重要な臓器を守るために、背中から胸の前面を囲むように12本の肋骨が延びています。

肋間神経は、背骨の中を通る脊髄から出て、左右12対の肋骨に沿って延びる神経です。

肋間神経痛は「頭痛」「腹痛」と同じように症状の名称であり、病名ではありません。何らかの原因で肋間神経が激しく痛む症状をいいます。

一般的には、身体をねじる、深呼吸や咳をする、大声を出すといった肋骨の動きによって痛みがひどくなったりします。

肋間神経痛の症状

肋間神経痛の症状

肋間神経痛の代表的な症状は左右どちらかだけに起こる胸の痛みです。

突発的に肋骨の延びる方向に沿って突き刺すような激しい痛みが生じます。

痛みは長くても数分で治まりますが、人によっては肺や心臓の周辺に痛みを感じたり、背中に張りを感じたりすることもあります。

中でも、多くの人に共通して痛みが出る場所や、痛み方、痛みが出る姿勢がありますので、自分に症状がある人は、照らし合わせてみてください。

痛みの出る場所

胸の周辺

胸の痛みに関しては片側の痛みがほとんどですが、まれに両側が痛むこともあります。

両側が痛いからといって、肋間神経痛ではないといいきれません。

特に聞かれる声としては、次のような場所になります。

  • 首と胸の間あたり
  • 肋骨と肋骨の間
  • 胸とみぞおちの間
  • 横隔膜の周辺
  • アンダーバストの周辺

基本的に胸部の肋骨周辺になりますが、とても多く発生する場所です。

胸から脇腹を通って背中への痛み

そして、肋骨に沿って痛みが繋がっていきますので、以下のように胸、脇、背中の痛みを感じるようになります。

  • 脇腹や脇の下から背中にかけての痛み。
  • 胸の痛みが脇腹と背中まで繋がっていく。
  • 胸の痛みが脇腹から背中の方へと次第に広がっていく。

痛みの程度

痛みの程度も様々で強いものから弱いものまであります。具体的によく聞かれる痛みには次のようなものがあります。

強い痛み

  • 骨が胸に刺さったような痛み
  • ぎゅっと掴まれたような痛み
  • うずくまってしまう痛み
  • 歩けないほどの激痛

かなりひどい痛みが起こりうるということがお分かりいただけると思います。

そして、そこまでひどくない場合は、次のような痛みになります。痛みを感じたことのない人だとわかりづらい表現もありますが、痛みを感じたことのある人なら納得できるのではないでしょうか。

我慢ができる程度の痛み

  • 筋肉痛のような痛み
  • チクチクした痛み
  • キュキュっとした痛み
  • キーっと痛む

痛みが出る姿勢や動作

痛みが出る姿勢も様々です。多くの人が痛みを感じる姿勢・動作をご紹介します。

  • 話したり、笑ったりすると痛い。
  • 深呼吸や呼吸をすると痛い。
  • 背筋伸ばしたり、胸を広げる姿勢をとったりすると痛い。
  • 歩いたときの振動で痛い。
  • ものを拾う動作をすると痛い。
  • 重いものを持つと痛い。
  • 腕を上にあげたり、高いところのものを取ろうとすると痛む。
  • 咳・くしゃみ・鼻をかむと痛い。
  • 痛みで息苦しさを感じる。
  • 動悸を感じる。
  • ゴルフがきっかけで痛みが出る。
  • 体をひねると痛い。
  • 同じ姿勢でゲームやデスクワークを長時間行った。

痛みの出る期間

痛みの時間は数秒、2〜3分、5分などの短い期間の急な痛み、数十秒程度の痛みを繰り返すなどがあります。

また、数ヶ月の間、毎日そういった痛みが襲ってくることもあります。

長い人だと、痛みが出たり、出なかったりといった期間を含めて10年くらい痛みに悩んでいる人もいます。

痛みが楽になる姿勢

痛みが出ている人がよく口にする、楽になる姿勢もあります。ただし、痛みが出るときに誰もが緩和されるわけではありませんので、参考としてご覧ください。

  • 前屈みの姿勢をすると楽になる。
  • 背筋を丸めて猫背になると痛みが緩和される。

ただし、猫背の姿勢というのは、そもそも肋間神経痛を起こしやすいと言われていますので、注意が必要です。

私の経験した痛みは、「肋骨が心臓に刺さるように呼吸をすると痛くなる」「肋骨に何か挟まった感じ。その挟まったものが下に下にと移動していき、肋骨の下まで達すると痛みがなくなる感じ。」でした。

様々な症状・痛みがあることがお分かりいただけたと思います。

しかし、肋間神経痛と似た症状の病気もあります。痛みの場所が近いと勘違いをすることもありますので、必ず病院で診断してもらうことが大切です。

肋間神経痛はどのように診断されるのでしょうか

診察室

上記のような症状が出たら、整形外科か内科を受診してください。

もし痛みのほかに息苦しさや動悸を感じるならば、心臓の病気の可能性も考えて、内科か循環器科も考慮に入れるとよいでしょう。

近くに総合病院があるならば、総合診療科を頼ってもいいかもしれません。

病院で診断を行う場合には、まずは他の病気が原因となっている可能性を考えて検査などを行っていきます。

通常は、レントゲン、CT、MRIなどによる映像の診断や、血液検査、心電図などにより、他の病気の検査を行い、他の病気でないことがわかれば肋間神経痛と診断されます。

また、肋間神経痛を発生させている病気がわかれば、その病気の治療が開始されます。


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肋間神経痛の原因

肋間神経痛は原因によって次の2つに分けられます。

  • 原発性肋間神経痛・・・肋間神経には全く異常がなく原因が不明のもの
  • 続発性肋間神経痛・・・病気やケガなどが原因となっているもの

続発性肋間神経痛は、肋骨の骨折やヘルニア、胸椎の圧迫骨折といった外傷,ヘルペスウイルスによる帯状疱疹、内臓疾患、腫瘍などにより生ずると考えられています。

さらにはストレスによる冷えや肩こりのほか、不自然な姿勢をとったとき、運動不足や疲労によって神経が骨や筋肉に絞めつけられることなども原因となります。

また、肋骨を支える肋間筋は、息を吸い込む時に胸郭を大きく広げるための外肋間筋と、息を吐き出す時に胸郭を縮めるための内肋間筋とでできています。
デスクワークなどで同じ姿勢を続けて肋間筋が固くなってしまうと、肋間神経を圧迫して肋間神経痛を引き起こすことがあります。

帯状疱疹が原因となっている場合、発疹が治まった後に肋間神経に沿って痛みがでてくることがあります。通常は激しい痛みが2週間程度続いた後で治まりますが、肋間神経痛として残ってしまうこともあります。

また、咳や呼吸、姿勢を変えることによって痛みが出る場合、骨粗しょう症によって骨自体が弱っていたり、過度な運動によって肋骨が折れている可能性があります。

肋間神経痛になりやすい人

続発性肋間神経痛の場合、ケガなどが原因となっているため、激しい運動をしている人や、骨粗しょう症になりやすい中年以降の女性がかかりやすいと言われています。

帯状疱疹は免疫力が落ちているときに発症しやすいので、ストレスなどをためると肋間神経痛にもかかりやすくなると考えられます。

また、パソコン作業や、下を見ながらゲームやスマートフォンを操作する作業を続けると、肋間筋が凝り固まって肋間神経痛を発症する可能性が考えられます。適度に休憩を入れるようにしましょう。

肋間神経痛の予防

リラックス

肋間神経痛の原因の1つにストレスがあります。

ストレスを解消することで背中などにかかる緊張が解け、肋間神経痛の症状が軽減する効果がありますので、自分に合ったリラックス方法を見つけてみましょう。

また、胸や背中に負担がかかるような姿勢を長時間続けると、肋間筋が固まってしまいます。同じ姿勢を続けないようにしましょう。

ラジオ体操のように大きく胸を広げて深呼吸することも肋間神経痛の予防として有効です。

冷房のあたりすぎや冷たい飲み物などを取りすぎると、自律神経の乱れにつながったり、肩などが冷えて緊張したりすることで肋間神経痛を発症することがあります。

暑くても体を冷やしすぎないように注意しましょう。


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肋間神経痛の治療法

肋間神経痛と診断された場合、次のような治療が行われます。

  • 外傷などによらない原因不明の肋間神経痛の場合、まずは消炎鎮痛薬や湿布を用いて経過を観察します。
  • 肋間神経痛の原因が肋骨の骨折などといった外傷の場合、呼吸などによる肋骨の動きで痛みが強くなるため、幅広いベルトで肋骨を固定します。
  • 肋間神経に炎症が見られる場合には、ステロイドを使うこともあります。
  • ハリ治療や低周波治療などで体を温めることで痛みが軽減することがあります。
  • 肋間神経痛が長引き、痛みが耐えられないようであれば、局所麻酔を使った神経ブロックが有効です。
    ※ 神経ブロックはペインクリニックで行っていますので、相談してみましょう。

肋間神経痛に効く漢方薬

漢方薬

肋間神経痛のときに医師から処方されるものは主に鎮痛剤で、ロキソニンやボルタレンが主なものとなりますが、あまり効果がないという人も多いようです。

そういったときに、漢方薬が効果を発揮する場合があります。

代表的なものについて、概ねの説明を記載しておきますが、服用にあたっては自己判断せずに医師の診断をもとに使用してください。

柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)

柴胡桂枝湯は、痛みを軽減させたり、体の炎症をひいたりする効果があり、肋骨の周辺やみぞおち、胸のあたりの苦しさを軽減させます。

柴陥湯(さいかんとう)

柴陥湯は、胸や背中の痛みや炎症を軽くします。

また、咳や痰がひどく、呼吸時の胸の痛みなどにも効き目があります。

桂枝人参湯(けいしにんじんとう)

桂枝人参湯は、冷え性や、下痢しやすい人などに効果があり、体が冷えることによって肋間神経痛の痛みがひどくなる人に効き目があると言われています。

当帰湯(とうきとう)

当帰湯は、胸から腹部にかけての痛みや、体力の減退や冷え性にも効果があるものです。

また、みぞおちから胸の痛みがあり、さらに背中にかけて痛みが走る場合に大きな効果が見られることがあり、肋間神経痛のほか、狭心症などにも効果があると言われています。

桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)

桂枝加苓朮附湯は、皮膚にある毛穴が閉じないために汗をかきやすく、体から熱が放出されてしまい、水分の循環が悪くなってしまうような人に効果があります。

この漢方によって、体を温めると同時に体から熱が放出されることを防ぎます。水分の循環がよくなることで、痛みが和らいでいきます。

肋間神経痛のQ&A

肋間神経痛はどのくらいの期間で治る?

肋間神経痛がどの程度で治まるのか、期間は原因などによって異なるので一概には言えません。

外傷が原因となっている場合は、傷が治れば肋間神経痛も治まります。

帯状疱疹が原因となっている場合、通常は2週間から1ケ月程度で治まることが多いのですが、肋間神経痛が残ってしまうこともあります。

私はおそらく同じ姿勢が続いたことによるものだったと考えられますが、3か月程度は肋間神経痛が続きました。

気づいたら同じ姿勢をしても痛みがなくなっていました。炎症が治まったのかもしれません。

妊娠中に肋間神経痛になりやすい?

妊娠後期にお腹が大きくなってくると、内臓が圧迫されます。

内臓が肋間神経を圧迫することによって、妊娠中は特に背中側に肋間神経痛を起こしやすいと言われています。近年は細身の妊婦さんが増えたことにより、肋間神経痛を発症する方も増えてきています。

肋間神経痛は何科にいけばいい?

症状からは肋間神経痛かどうかわからないことが多いと思います。この場合は整形外科か内科を受診してください。

整形外科では、レントゲンやMRIなどでヘルニアや肋骨のヒビ、胸椎の骨折などがないか検査します。内科では内臓の病気や感染症など、可能性のある病気について、検査を行うことになります。

肋間神経痛だと診断された場合、治療も整形外科で行われますが、痛みがひどい場合などにはペインクリニックで神経ブロックを施します。

肋間神経痛の実体験

スマホ

私は肋間神経痛と診断されたのは1回だけですが、肋間神経痛らしきものを子供のころから数回は体験しています。

最近では、DS(ゲーム)にはまったときに猫背の姿勢で長時間いたことが原因ではないかと思われる痛みがありました。

コリも相当たまっていたみたいで、胸を広げると「ゴキッ」と骨がなることもありました。

私の場合は、胸を広げて深呼吸することを続けているうちに治ることが多いです。みなさんも猫背には気を付けてください。

私の実体験に基づく肋間神経痛になりやすい姿勢や予防法などは、こちらで説明していますので、あわせてご覧ください。

肋間神経痛のまとめ

原因

外傷によって肋間神経を刺激していたり、骨粗しょう症によって骨がもろくなっていたり、帯状疱疹などが原因となっている場合もあります。

また、ストレスや冷えも肋間神経痛の原因となります。

対処法

痛みが残ってしまう場合は、整形外科で消炎鎮痛薬や湿布を用いた治療をするほか、ハリ治療や漢方薬などが有効となる場合もあります。

看護師からひとこと

胸の痛みというと、心臓の問題なのか、それとも肺なのか・・・と心配になりますね。まずはこれらを除外診断してもらった上で、痛みのコントロールをしてもらいましょう。

肋間神経痛の悩みを多くの人がQ&Aに書き込んでいます。こちらも合わせてご覧ください。

[カテゴリ:上半身, 精神・神経]

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