肺炎には様々なものがあります。細菌やウイルスによるもの、免疫反応が関与するもの、薬剤によるものなど。また、肺炎によって症状や治療法、予防法なども変わってきます。代表的な肺炎について説明しますので、参考にしてください。

更新日:2017年08月08日

この記事について

監修:大見貴秀医師

執筆:看護師(当サイト編集部)

肺炎とは

肺炎とは、肺に何らかの原因で炎症が起こった状態をいいます。一口に肺炎といっても、原因、感染経路、どの部位に炎症が起こったかなどで、分類や種類が異なってきます。

しかし、症状や検査に大きな違いはありません。それぞれの肺炎についての説明の前に、基本的な肺炎について説明します。

肺炎の分類

  • 原因微生物による分類(細菌か否か) - 細菌性肺炎、非定型肺炎
  • 形態学的分類(どこに炎症があるか) - 肺胞性肺炎、間質性肺炎、混合性肺炎
  • 発症の場による分類(病院の中か外か)- 市中肺炎、院内肺炎

肺炎の症状

  • 咳(咳嗽)、痰、悪寒、発熱が主な症状です。重症化すると、息切れや呼吸困難を起こします。
  • 胸のレントゲンやCTで、白い影(陰影)が写ります。
  • 採血検査では、白血球やCRPといった炎症反応が上昇します。

肺炎の治療

肺炎の治療

化学療法

感染による肺炎が疑わしい場合、肺炎の起こり方によって原因と思われる菌を想定し、それに合わせた抗菌薬を選択し、飲み薬の投与や点滴治療を行います。(例えば、飲み込みが下手な高齢者が肺炎を起こした場合は、口腔内にいる菌をターゲットとして想定する、など)

間質性肺炎など免疫反応が関与している場合には、ステロイドなど免疫を抑える薬を投与します。

対症療法

症状を緩和させる治療のことを対症療法といいます。安静にすることや、療養環境を整え、食事をとれない場合には点滴を行い、酸素が足りない場合には酸素を投与します。

肺炎の可能性があるときには何科を受診する?

肺炎は呼吸器内科が専門ですが、呼吸器内科を専門としている開業医はほとんどありません。

肺炎は内科の幅広い疾患の中の一つとして扱われることが多く、重症の肺炎や特殊な肺炎については呼吸器内科で治療するのが通常です。肺炎症状が出た場合は、内科の受診で問題ありません。


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代表的な肺炎について

「肺炎」といっても、いろいろな種類があります。治療法もただ一般的によく耳にする「抗生剤」ではなくて、たくさんある抗菌薬の中から原因に応じた抗菌薬が使用されます。

代表的な肺炎について、以下にポイントを説明します。

肺炎球菌感染症

寝込む女性

肺炎球菌は、もっともポピュラーな細菌といってもいいかもしれません。

原因による分類は細菌性肺炎です。肺炎球菌そのものはヒトの鼻やのどの粘膜に常にいる細菌です。

一般的に肺炎と言えば炎症を起こしている部位は肺胞を差します。肺炎球菌感染による肺炎は、肺胞性肺炎になります。

肺炎球菌感染症の症状

症状としては、悪寒・高熱、痰がらみの咳が出ます。痰は鉄のさびたような色を呈することが多いのが特徴です。

また、高齢者がかかると重症化することがあり、場合によっては菌血症・髄膜炎・関節炎などが併発することがあります。

肺炎球菌そのものは珍しい菌ではありませんが、これによって多くの高齢者が重症肺炎を起こし亡くなっています。

肺炎球菌感染症の予防について

予防として肺炎球菌ワクチンの接種が勧められるようになりました。自治体によっては、接種の金額を一部負担してくれるところもあります。

ワクチンは、現在23価肺炎球菌ワクチンというものがあり、5年に1度の接種で肺炎球菌感染症を予防できると言われています。

ちなみに、小児は生後2か月からの定期接種としてすでに肺炎球菌ワクチンが組み込まれています。

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

誤嚥性肺炎は、嚥下性肺炎とも言われます。口の中や、胃・食道から逆流してきたものが原因で肺に炎症が起こります。

誤嚥性肺炎の根本の原因は、「誤嚥(ごえん)」です。「誤嚥」とは、食物などが誤って喉頭と気管に入ってしまう状態です。

高齢者や脳梗塞・脳出血にかかった後の患者さんや、寝たきりの患者さんに起こりやすく、上手に食べ物や飲み物を嚥下(飲み込むこと)できないために起こるのです。

誤嚥性肺炎の治療

治療は一般的な肺炎治療と同じです。ただ、痰を自分で出せないような寝たきりに近い人がかかるので、機械で痰を頻繁に吸引しなくてはなりません。痰がある限り症状の改善はなく、呼吸状態も改善しません。また、必要に応じて酸素吸入も行います。

誤嚥性肺炎の予防

誤嚥性肺炎で大事なのは予防です。まず、嚥下機能が鈍っている人には普通の水は厳禁です。

水はさらっと気管支まで到達してしまうので、固形物よりも誤嚥しやすいのです。

水分にはとろみをつけ、食べ物も場合によっては刻んだり、ペースト状にしたりしたものを用意する必要があります。

食事形態に注意しても本人の嚥下機能に限界があり、何度も誤嚥性肺炎を繰り返す場合には、経管栄養といって、体外からチューブなどを使って影響を体内へ送り込むことが必要です。経管栄養では、普通のお白湯も薬も送ることができ、肺炎のリスクはかなり低下します。

また、口腔内の衛生を保つことも大切です。リスクの高い方は、普段から積極的に口腔ケアを行いましょう。

マイコプラズマ肺炎

親子

マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ・ニューモニエという微生物によって起こる肺炎で、細菌以外の原因によるものなので、非定型肺炎に分類されます。

マイコプラズマ肺炎の特徴は、高齢者や寝たきりの人ではなく、健康な若い世代に発症することです。好発年齢は5歳~25歳とされています。

熱はそんなにひどくないのに、痰のからまない乾いた咳が激しく続くときには、子どもの場合マイコプラズマ肺炎が強く疑われます。

マイコプラズマ肺炎は、肺胞性と間質性のどちらにも炎症を起こしうる肺炎です。

レントゲンやCTを撮ると、すりガラスのような白い影がみられますが、胸の音(聴診)ではあまり所見がないことも、この肺炎の特徴の一つです。

もともと健康な若い世代に発症する病気なので、一般的に予後(治癒の見込み)は良好とされていますが、重症化することもあります。

間質性肺炎

間質性肺炎は、肺胞の壁など、肺そのものの隙間(=間質)に起こる炎症の総称です。 

間質性肺炎は、炎症の修復過程において間質が厚くなったり(肥厚)線維化してしまったりするのがやっかいなところです。

線維化すると、肺胞の周りや隙間がガチガチに硬くなってしまうので、肺胞が膨らんで酸素と二酸化炭素のやりとりに障害が出てしまいます。

中でも原因不明の間質性肺炎を、特発性間質性肺炎といいます。これは50歳以上の男性喫煙者に多くみられ、原因不明で、乾いた咳をします。

そして最初は動いた時(労作時)のみの息切れや呼吸困難が、少し歩いただけで起こるようになります。

治療することはない

間質性肺炎は、困ったことに“治癒”することがありません。

一般の肺胞性肺炎は抗菌薬の投与や酸素吸入による呼吸管理で、多くの場合では治癒が可能です。(※細菌性肺炎で亡くなる方もいます)

しかし、間質性肺炎では、一度障害された部分はもとに戻ることができません。これを不可逆的変化と言います。

この不可逆的変化は非常にやっかいで、ステロイドも無効なので根治治療する方法がありません。あくまでも対象療法と、日常から炎症を起こさないように予防することが治療の主となります。

最終的には24時間酸素を吸入しなくてはならなくなり、在宅酸素療法を導入せざるを得なくなることもあります。

こうなると、どこへいくにも酸素ボンベを持ち歩き、鼻に管を付けて生活しなければなりません。

しかし、酸素を吸ったからと言って治ることはなく、対症療法にしか過ぎません。間質性肺炎は、急性期を過ぎたとしても、一生付き合って行かなければならない病気です。


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器質化肺炎

「器質化」というのは肺組織がダメージを受けた際に修復していく過程に起こるものです。

身体に入ってしまった異物を肉芽と呼ばれる塊で包み込んでしまうことです。この肉芽は時間とともに線維化し、硬くなります。
 
肉芽→線維化の経過は、気道だけでなく肺胞・間質にまで及びます。これを器質化肺炎と呼びます。

最終的に線維化してしまうので、肺胞が膨らむことができず、間質性肺炎と同じ、不可逆的な肺の広がらない病気=拘束性換気障害を起こします。

市中肺炎

市中肺炎

市中肺炎というのは、病院の外で発症した肺炎のことをいいます。

つまり、日常生活を送る中で、どこかで何かに感染してしまった結果起こる肺炎です。これは発症の場においての分類になりますので、原因はそれぞれ異なります。 

経路としては、鼻や喉から、風邪のように感染します。集団生活を送っていると感染するリスクは高くなりますから、学校や職場で流行ると一気に広がります。

原因となる微生物には、上であげた肺炎球菌やマイコプラズマもありますし、毎年冬に流行るインフルエンザ菌、クラミジアなどが挙げられます。

ですから、マイコプラズマ肺炎や肺炎球菌感染症は、市中肺炎の中の一つです。治療はそれぞれの原因に対して行います。

放射線性肺臓炎

めずらしい肺炎の中に、感染が原因ではなくて医療(治療)によって発症するものがあります。それが放射線性肺炎(放射線性肺臓炎)です。

これは、癌治療の一つ、放射線治療をしたことによって起こるものです。放射線治療は乳癌や肺癌などに起こし、胸に大量の放射線を照射することで、癌細胞を破壊することを目的として行います。

放射線治療後1~6か月の間に放射線を当てた部位と一致した場所に、炎症が起きることがあります。咳や発熱・呼吸苦などで発症しますが、自覚症状を感じることなく経過してしまうこともあります。

一般的には対症療法のみで対応できることが多いのですが、この肺炎は細菌やウイルスが原因ではありませんから、治療薬は抗菌薬ではなくてステロイド剤です。

肺炎のまとめ

肺炎の中でも主なものを説明してきました。

「肺炎」と言っても様々な分類があり、いろいろな年齢層の人に起こります。日常生活の中でも感染することもありますし、病院で感染することもあります。

私達はいつ、どこで、どんな病原菌に感染するかはわかりません。しかし、少なくとも喫煙によって起こるものについては個人の努力で防ぐことができると言えそうです。

毎年の健康診断と共に、今タバコを吸っている人、まずは禁煙を心がけてみましょう。この高齢化社会、元気で長く生きていくためにも。

肺炎に関する質問や回答が寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

[カテゴリ:気管・心臓・肺]

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