蕁麻疹(じんましん)の原因、薬や治療法、症状、予防法などについて

蕁麻疹(じんましん)は、皮膚の一部が急に赤くなったり、ふくれあがったりする病気です。軽い症状で治まることもある反面、重症化することもありますので注意が必要です。蕁麻疹(じんましん)について、症状、原因、予防法などをまとめましたので、参考にしてください。

  [アレルギー, 感染症, 皮膚の病気]

更新日:2017年06月24日

この記事について

監修:大見貴秀医師

執筆:看護師(当サイト編集部)

蕁麻疹とは

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蕁麻疹は、皮膚の一部が急に赤くなったり、ふくれあがったりする病気です。通常はしばらくすると消えてしまいます。

イラクサ(=蕁麻(じんま))の葉に触れるとかゆみを伴う発疹が出ることから、「蕁麻疹(じんましん)」という名前がつきました。

蕁麻疹は子どもにみられる皮膚の病気の中でも非常に多いものです。子どもだけでなく、大人にもみられ、15~20%の人は一生のうちに一度は経験するといわれています。

食べ物や薬に対するアレルギー反応として起こることが多く、その他に感染、運動、暑さ、寒さといった刺激に対しても起こることがあります。

また、激しいかゆみを伴うことが多く、そのためにストレスを感じたり、掻き壊してしまうこともあり、適切な対処法を確認しておく必要があります。

蕁麻疹の症状が数日間で改善されれば「急性蕁麻疹」ですが、1か月以上続くと「慢性蕁麻疹」といいます。

慢性蕁麻疹はなかなか治らない状態となりますので、きちんとした治療が必要となります。

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蕁麻疹の原因

蕁麻疹には、主にアレルギー性のものと非アレルギー性のものがあります。

アレルギー性の蕁麻疹について

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アレルギー性の蕁麻疹は、食べ物、食品添加物、動植物、金属、薬剤性などを原因として生じます。

本来、私たちの体は、体に対して有害であったり、異物であると判断されたりするものを排除するという仕組み(抗体)が備わっています。

通常、抗体は体に対して害のあるものや異物に反応し、体の外部へ排出させるといった役割を果たすのですが、抗体が過剰に働いてしまい、人に害がないものに対しても反応し、かえって体に害を与えてしまうことがあります。これがアレルギーと呼ばれるものです。

アレルギー性の蕁麻疹では、食べ物、食品添加物、動植物などが、体の中で異物として認識されてしまい、アレルギー反応が起きます。

その際に細胞からさまざまな化学物質が放出されるのですが、その中のヒスタミンが原因となって皮膚が赤く腫れてしまいます。また、ヒスタミンはかゆみを感じる神経を刺激するため、かゆみも出現します。

アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、喘息、花粉症などがある人は、蕁麻疹が出やすく症状も悪化する傾向があります。

また、アレルギーを誘発しやすい食品を初めて食べる時は、一度にたくさん食べず、様子をみながら徐々に量を増やしていくといいでしょう。

アレルギー性の蕁麻疹を誘発しやすい食べ物など

卵・牛乳

食べ物

卵、乳製品(牛乳など)、果物、小麦、食品添加物など。

※小麦、ソバ、乳製品、卵、落花生は、五大アレルギー成分といわれます。

植物・昆虫など

蕁麻(じんま)、ゴム、ハチなど。花粉症の人の中で、花粉そのものが皮膚に接触することで接触性皮膚炎を起こすこともあります。

薬剤

抗生物質、解熱鎮痛剤、咳止めなど。あらゆる薬剤でアレルギーが起こり得ます。

非アレルギー性の蕁麻疹について

非アレルギー性蕁麻疹

非アレルギー性蕁麻疹については、摩擦、圧迫、熱さ、寒さなどが原因となって起こります。

また、非アレルギー性蕁麻疹は、かゆみが伴わないことも、まれにあります。

アレルギー以外で蕁麻疹が誘発される主なものとして、次のような蕁麻疹があります。

物理性蕁麻疹

下着などによる摩擦、バッグなどの持ち手による圧迫、熱さ、寒さ、マッサージ器などによる振動、日光など、物理的刺激によって蕁麻疹が生じてしまうものを、物理性蕁麻疹といいます。

コリン性蕁麻疹

入浴、運動、精神的緊張による汗などが原因となって蕁麻疹が現れます。

蕁麻疹の大きさはあまり大きいものではなく1ミリ〜4ミリほどで、子どもに多く見られます。腕などに蕁麻疹が現れることが多くありますが、人によっては背中や全身に広がってしまうこともあります。

その他、蕁麻疹の原因を特定できないものもあります。原因が特定できない蕁麻疹を、「特発性蕁麻疹」といいます。

特発性の蕁麻疹でも、疲労、ストレス、かぜなどが症状を悪化させることがわかっています。

なお、蕁麻疹は感染症ではありませんので、他人にうつることはありません。

蕁麻疹の症状

典型的な蕁麻疹の症状は、次のようになります。

  • 皮膚が赤く盛り上がること
  • 強いかゆみを伴うこと
  • 急に発症してしばらくすると完全に消えること

蕁麻疹が起きている状態とは

蕁麻疹が起きている状態とは、皮膚の中の毛細血管が一時的に膨らみ、血液の中の血漿(血液から白血球や赤血球などの細胞成分を除いた液体)が血管の外へ漏れ出している状態となります。

このことにより、赤く膨れたように見えます。

皮膚の表面には角層といわれる最も外側の層があり、外部から刺激物などが体内に侵入するのを防いでいます。

角層の下には、表皮と真皮といわれる部分があります。真皮にはヒスタミンなどを持つ肥満細胞(マスト細胞ともいいます)が存在します。

皮膚の血管の周りには、この肥満細胞(マスト細胞)がちらばっていて、この細胞が何らかの理由でヒスタミンを放出すると、血管がその成分に反応して蕁麻疹が起こります。

ヒスタミンは皮膚の血管に働くと血管を拡張し、血漿を血管の外に漏れ出しやすくします。その上、ヒスタミンは痒みの神経を刺激するため、蕁麻疹は痒みを伴うこととなります。

アナフィラキシーについて

蕁麻疹はアナフィラキシーの前触れとして発症することがありますので、注意しなければなりません。

アナフィラキシーとは、アレルギーの原因となるものが体内に入り、様々な臓器または全身にアレルギー症状が出てくることです。

さらには血圧の低下や意識がなくなり、アナフィラキシーショックといった状態になることもあります。

息苦しさや蒼白状態、意識混濁などのような状態はとても危険ですので、すぐに救急車を呼ぶようにしてください。クッキー1枚でも生死に関わる問題を起こすことがあるのです。

厚生労働省のHPではアナフィラキシーについて、以下のような記載で始まる説明があります。

医薬品(治療用アレルゲンなどもふくみます)などに対する急性の過敏反応により、医薬品投与後多くの場合は 30 分以内で、じんま疹などの皮膚症状や、腹痛や嘔吐などの消化器症状、そして息苦しさなどの呼吸器症状を呈します。
出典:重篤副作用疾患別対応マニュアル アナフィラキシー 平成20年3月 厚生労働省

蕁麻疹の予防

家族の食事

蕁麻疹の予防には、蕁麻疹の原因となるものを食べないことや、原因となる行動を取らないことが大切です。

アレルギー性の蕁麻疹の場合は、アレルギーの原因物質を取らないようにし、物質的な刺激が原因の場合は、皮膚の摩擦や圧迫、振動などの原因から遠ざかることが必要です。

特に子どもについては、アレルギーを起こす可能性がある食べ物に対して、保護者の慎重な配慮が必要です。

アレルギーの大きな原因といわれるソバ、落花生、ラテックス(ゴム)については、重篤な症状が出る危険性があります。厳重にその物質を避けることが重要です。

蕁麻疹の原因が特定できていない場合は、その原因を探すことが重要となります。

原因をつきとめるには、蕁麻疹が出る1時間ほど前に、食べたもの、飲んだもの、使用した薬、その他どのようなことがあったかなどを思い出すことが大切です。

何か思い当たれば、医療機関で血液検査などを行ってアレルギーなどを検査してもらうことが可能です。

原因が特定できない蕁麻疹については、日常生活において次のようなことに留意した方がいいでしょう。

  • ストレスや疲労をためないようにする。
  • 過度の飲酒を避ける。
  • かぜ、感染症に気をつける。

日頃から規則正しい生活を心がけ、バランスのよい食事を取ることも、蕁麻疹の予防においては大切なことです。

また、飲酒や激しい運動、熱い湯船に入ることなどは、血行がよくなりますので、控えめにした方がいいでしょう。疲労などにより免疫力が低下することも、蕁麻疹の原因になるといわれています。

蕁麻疹の治療

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蕁麻疹の治療には、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬などの内服薬を使用することとなります。通常は、薬を飲むことで症状はしだいに治まっていきます。

ただし、抗ヒスタミン薬は症状が消えても一定期間は飲むようにします。

薬を飲み続ける期間は、急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹で異なりますので、自分の判断で薬をのむのを止めずに、医師に相談するようにしましょう。

軽度の蕁麻疹であれば、抗ヒスタミン薬のみを使用し、かゆみを止めて回復していくのを待ちますが、かゆみがひどく我慢できない場合には、ステロイド外用剤などを使用することもありますが、かきむしった傷には使用することはできません。

ステロイド剤を使用することで、かゆみを早く抑えることができるので、ストレスも少なくなり、患部を掻き壊してしまうのを避けることができます。掻き壊してしまった場合は、抗菌薬のステロイドを用います。

ステロイド外用剤には副作用がありますので、1週間以上使わないことや、使用量を守るなど使用上のルールに従う必要があります。医師の指示に従って使用するようにしましょう。

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蕁麻疹が出たときに気をつけること

蕁麻疹になった時は、安静にして、蕁麻疹の部分を冷たいタオルで冷やしたり(寒冷蕁麻疹の場合は冷やさないでください)、摩擦や圧迫などの刺激を与えたりしないようにします。

刺激を与えたりして、血行がよくなると、蕁麻疹が悪化することがあります。

蕁麻疹が全身に出る場合や、呼吸困難のような症状が出る場合は、すぐに医療機関を受診してください。

また、蕁麻疹は強いかゆみを伴います。患部を引っ掻くと一次的にかゆみが軽減しますが、蕁麻疹の範囲が広がり、一層かゆみが増すことがあります。

その上、引っ掻くと皮膚を傷つけてしまい、化膿したり新たな湿疹ができたりすることがあります。できるだけ、引っ掻いたりしないことが大切です。

小さい子どもの場合、蕁麻疹が出ると、かゆみを我慢できず、かき壊してしまうことがあります。早めの対策を心がけて下さい。

蕁麻疹の症状が、口唇や目の周囲(眼瞼)に出てくる場合は、血管性浮腫(クインケ浮腫)となり、呼吸困難を伴うことがありますので、すぐに医療機関を受診してください。

入浴について

蕁麻疹のときに入浴していいかと思ったりしますが、入浴については原則として問題ありません。

熱いお湯に入ったり、ごしごしと肌をこすったりすると、皮膚が刺激されてしまって、蕁麻疹が出やすい状態になることがありますので、蕁麻疹の原因などを考慮して入浴するといいでしょう。

また、蕁麻疹の症状が出ているときは、湯船につからず、シャワーですますようにしましょう。

自分の蕁麻疹の状態、原因などと照らして、入浴について医師と相談するといいでしょう。

妊婦への影響

妊婦への影響

妊婦さんでも、蕁麻疹が出ることはあります。ただし、治療に抗ヒスタミン薬や、抗アレルギー薬を妊娠中に使用することについては、十分な安全性は確保されているわけではありません。(安全かどうか検証する術が無いということです。)

特に抗ヒスタミン薬については、妊娠初期の使用は推奨されません。治療の有益性があり、かつ抗ヒスタミン薬を使用することによる本人の同意がある場合に使用します。

このように記載すると、妊娠中に抗ヒスタミン薬を使用することが危険かのように思われてしまいますが、実際には、抗ヒスタミン薬の使用と胎児への影響については、危険なことが明らかになっているのではなく、十分な解明がされていないといった状況です。

これまで蓄積されたデータからは、ほぼ安全と考えられる状況ですが、証明されてない以上は、胎児に先天的な異常が生じる可能性がゼロとは言えません。こういった点を踏まえながら、医師の指示に従って、治療を受けてください。

また、授乳中に抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬を使用すると、乳中へ薬が移行しますので、使用は避けるようにします。ただし、移行する量は非常に少ないため、薬の有用性を考慮した上で、薬の使用を判断していきます。

授乳中の薬の使用についても、医師と相談の上、医師の指示に従うようにしてください。

看護師からひとこと

蕁麻疹と一言で言っても、一時的なものと命に関わる重症なものがあります。

もし蕁麻疹が全身に及ぶものや、息が苦しそうといった呼吸状態に関係するものであれば、すぐに病院に行くべきです。

また、アレルギーの原因に心当たりがある場合は、一度医療機関でアレルギー検査を受けるといいでしょう。

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まとめ

  • 蕁麻疹は、皮膚の一部が急に赤くなったり、ふくれあがったりする病気で、通常はしばらくすると消えていきます。
  • 蕁麻疹には、アレルギー性のものと非アレルギー性のものがあります。
  • アレルギー性の蕁麻疹は、食べ物、食品添加物、動植物、金属などを原因として生じます。
  • 非アレルギー性蕁麻疹については、摩擦、圧迫、熱さ、寒さなどが原因となって起こります。
  • 蕁麻疹の原因を特定できないものもあり、疲労、ストレス、かぜなどによって症状が悪化します。
  • 蕁麻疹の症状は、皮膚が赤く盛り上がり、強いかゆみが出ることです。また、通常は急に発症し、しばらくすると完全に消えてしまいます。
  • 子どもの蕁麻疹は大人の蕁麻疹と異なり、比較的短期間で治っていきます。
  • 蕁麻疹の予防には、蕁麻疹の原因となるものを食べないことや、原因となる行動を取らないことが大切です。
  • また、日頃から規則正しい生活を心がけ、バランスのよい食事を取ることも予防に繋がる大切なことです。
  • 蕁麻疹の治療には、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬などの内服薬を使用することとなります。通常は、薬を飲むことで症状はしだいに治まっていきます。
  • 蕁麻疹になった時は、安静にして、蕁麻疹の部分を冷たいタオルで冷やしたり(寒冷蕁麻疹以外)、摩擦や圧迫などの刺激を与えないようにしたりします。
  • 妊婦さん蕁麻疹になった際には、必ず医師の診断を受け、使用する薬などの説明を受けた上で適正な治療を受けてください。
蕁麻疹に関するQ&Aが寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

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