更新日:2017年06月16日
蜂窩織炎とは?

作者 cbinrva (投稿者自身による写真:蜂窩織炎) [CC BY-SA 4.0], ウィキメディア・コモンズ経由で
蜂窩織炎は、皮膚の深いところから皮下脂肪組織にかけて炎症を起こす化膿性の細菌感染症です。
傷口などから入り込んだ細菌の感染がその箇所にとどまらずに皮膚の深い部分にまで広がり、細胞の周りに存在するコラーゲンなどの細胞間質を溶かしながら、細胞自体を壊死させます。
全体の9割は膝下で発症すると言われています。
「蜂窩」とはハチの巣のことで、融解し切らずに残っている間質細胞と細胞内に浮遊している細菌が「ハチの巣と、巣の中にいるハチの幼虫」のように見えることからつけられた病名です。
蜂窩織炎を治療せずに放置すると、細胞壊死が広がってしまい、壊死性筋膜炎や菌血症を引き起こして生命に危険をもたらすことがあります。
丹毒(たんどく)
蜂窩織炎と症状が似ているものとして「丹毒」があります。
丹毒は皮下組織よりも浅い真皮部分で発症するもので、その原因菌は化膿連鎖球菌です。高齢者や免疫力の低下しているときに発症しやすいと言われています。
丹毒の症状として、高熱や悪寒、全身の倦怠感などが現れる点は蜂窩織炎と同じですが、下肢に多く発症する蜂窩織炎と比べて丹毒の発症箇所は顔面や上半身に多く、皮膚に境界がはっきりとした赤い腫れが現れ、疼痛(ずきずきするような痛み)はありません。
また、腫れた患部は熱があって触れると強い痛みがあります。
蜂窩織炎の原因
人の身の回りには様々な細菌が存在しており、皮膚も日常的に細菌に接触しています。
しかし、通常は細菌から細胞を防御するバリア機能によって守られているため、傷口などから細菌が体内に入り込んでも感染症を引き起こすことはありません。
蜂寓織炎は、免疫や抵抗力が弱っているときに、毛穴や汗腺、傷口などから細菌が入り込み、バリア機能を破って皮下組織の深い部分にまで侵入して発症します。
さらに、蜂寓織炎は子宮がんや乳がんなどの術後に多くみられるリンパ浮腫の合併症としても知られています。
リンパ浮腫はリンパ液の流れが悪くなり、一部に溜まってむくんできます。
浮腫を起こしている部分は非常にもろく、皮膚が薄く引き伸ばされていますので、ちょっとしたことで傷ついてしまいます。
リンパ液は栄養が豊富ですので、傷ついた部分から細菌が侵入すると、細菌の絶好の培養地となって足全体に炎症を起こします。
また、蜂寓織炎の原因となる細菌は主として黄色ブドウ球菌ですが、丹毒と同じ化膿連鎖球菌などのこともあります。
水虫やリンパ浮腫、高齢者は要注意
蜂寓織炎の発症箇所のほとんどは膝下部分です。細菌の入り口となりやすいのは、水虫の傷口や、その外には虫に刺された部位をひっかいた傷口や、皮膚炎の患部、リンパ浮腫の水分が溜まっている箇所などがあります。
このため、水虫の人や、子宮がんや乳がんの手術をしてリンパ浮腫がある人はなりやすいといえます。
また、細菌に対する抵抗力や免疫力が低下しているときに発症しやすいので、中年以降の高齢者に多いといえます。皮膚を不潔な状態にしている人も、感染を起こしやすいので要注意です。
蜂窩織炎は、1年間で10万人に200人程度発症すると言われています。
蜂窩織炎の症状

写真:蜂窩織炎(浮腫あり)Author: Author:ColmAnderson on en.wikipedia.org [CC BY-SA 3.0] Copied from http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Cellulitis_Left_Leg.JPG29th October 2006
蜂窩織炎の患部は広い範囲が赤く硬くなって腫れます。腫れは熱を持ち、痛みを伴います。また、発熱・関節痛・悪寒なども生じることがありますが、丹毒と比べると、発熱などの症状はゆっくりと出てきます。
![By Cabalari (投稿者自身による写真) [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons](http://cmedicalcenter.net/survey/wp-content/uploads/2014/09/houka_pic2.jpg)
写真:蜂窩織炎 By Cabalari (投稿者自身による作品) [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons
しばらくすると腫れがぶよぶよしてきて膿が出ることがあります。さらに、そこの皮膚が破れて膿が流れ出て、深い潰瘍になることもあります。
また、外陰部や足にリンパ小疱ができることがあります。これ自体は感染を起こさなければそれほど心配することはなく、多くは1か月程度で自然に体内へ吸収されて消えるとされています。
検査と診断
最初は医師が見た目から診断を行っていきます。発症している場所は赤くなり、熱をもっていますが、診断が困難な場合には、血液検査を行います。
血液検査では、白血球が増え、CRP(炎症検査項目)が上昇します。
また、丹毒の場合、皮下の浅いところで起こりますが、蜂窩織炎との区別は簡単ではありません。原因菌(丹毒では化膿連鎖球菌が原因)や発現箇所などを調べながら注意深く診察します。
壊死性筋膜炎の場合は注意が必要
蜂窩織炎と同様の症状がでていても、激しい筋肉痛や関節痛、血圧低下、高熱などがみられる場合は、壊死性筋膜炎の可能性もあります。
壊死性筋膜炎とは、皮膚のみならず筋膜などの組織まで壊死してしまいます。
溶連菌を原因とするものは「人喰いバクテリア」とも呼ばれ、急速に進行する上に、死亡率も高いため、そういった可能性がある場合は診断を待たずに治療を開始していきます。
治療の方法
蜂窩織炎を発症した場合、適切な抗生物質を服用すれば数日から2週間程度で治ります。ただし、炎症が重いと入院治療となる場合もあります。
治療が遅れてしまうと、敗血症、髄膜炎、腎炎などを合併して重篤になることがあります。
また、糖尿病にかかったことのある人の場合、蜂窩織炎から下肢切断となることもあるので、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
抗生物質を服用しても改善せず、病状が進行する場合は、蜂窩織炎ではなく壊死性筋膜炎の可能性がありますので、早急に再度医師に相談してください。
また、慢性リンパ浮腫などの基礎疾患を有している場合、同じ部位に習慣的に再発を繰り返すことがあります。
再発や腎炎の発症を予防するため、蜂窩織炎の症状が治まっても10日間ほど抗生物質の服用を続けます。医師の指示に従い、自分の判断で薬の服用を中止しないようにしてください。
自宅での処置など
自宅で何か処置をする場合は、自己判断をせずに必ず医師に相談してください。ここでは、一般的な方法をお知らせします。
蜂窩織炎により赤く熱を持って腫れてしまった患部は、安静にして冷やします。濡れタオルなどで一か所ではなく全体的に冷やしましょう。
蜂窩織炎の治療中は、家事や仕事を控えてできるだけ安静にしましょう。
入浴やマッサージといった血行を良くするようなことは、蜂窩織炎の症状が改善するまで控えます。また、飲酒もいけません。
就寝時には足を高くして、リンパの流れが滞らないようにしましょう。
また、予防や症状の悪化を防ぐためには、弾性ストッキングの着用なども効果的です。
ただし、炎症のひどい時期には使用できません。着用にあたっては、医師に確認してください。
蜂窩織炎の予防法
リンパ浮腫がある人は、虫刺されなどの小さな傷が原因となって蜂窩織炎にかかりやすいので十分に注意が必要です。
蜂窩織炎の主な予防方法は以下の2つです。
- 細菌が入り込まないようにすること
- 細菌が入り込んでも駆除できる免疫力を持つこと
細菌を侵入させないための予防法
- 虫刺されに注意し、刺された部分はひっかかず、患部をよく流水で洗い流して触らないようにしましょう。
- 弾性ストッキングの着用など、リンパ浮腫のケアをきちんと行う。リンパ液は細菌の繁殖に絶好の条件です。
- 水虫を治療する。細菌の侵入口の大部分が水虫の傷口になります水虫についてはこちら
免疫力をつけるためには
- バランスのとれた食事、十分な睡眠、規則正しい生活はすべての基本です。腸内環境を整えるヨーグルトや納豆、免疫細胞を刺激する成分を含んでいるキノコは免疫力UPに効果的です。
- 風邪などの感染症に注意する細菌やウイルスと闘う免疫の量は決まっています。ほかの感染症にかかってしまうと、本来は蜂窩織炎の原因菌と闘うべき免疫が少なくなってしまいます。
蜂窩織炎はうつる?
蜂窩織炎の原因菌は、通常、皮膚などに存在してる細菌がほとんどで、しかもその細菌は皮膚の深いところまで入り込んで、炎症を起こしています。
したがって、基本的に人から人へ感染することはありません。しかし、細菌が入り込む原因となる水虫は感染しますので、しっかりと予防することが大切です。
水虫ケア
現在、日本人の水虫患者は、国民の5人に1人となる2500万人。
ブーツの流行、働く女性のストッキング+革靴という高温多湿の足環境によって、水虫は女性の間でも大流行しています。
水虫は、白癬菌というカビの一種が原因となっています。
白癬菌は魚の目や足タコから侵入することが多いのですが、水虫の発症前であれば、白癬菌が付着しても24時間以内に洗い流せば大丈夫です。毎日、足の指の間まできれいに洗いましょう。
また、水虫を発症してしまった場合も、しっかりとケアすれば治ります。
- 水虫の薬は、見た目には治っていても最低1ヵ月は使用を続けること。患部だけではなく、足の裏全体にも薬をつけてください。
- 水虫の症状はかゆみだけではありません。足の裏がカサカサして硬い、爪が厚くなっているといった症状があれば、皮膚科を受診してください。