心臓マッサージは習ったことがあるけれど、実際にやってみたことがある人は少ないのではないでしょうか。倒れている人がいても、実際にできるかと心配です。逆に自分が倒れた時には周りの人がやってくれないと大変です。心臓マッサージは難しくありませんので、しっかりと覚えていざというときに対処できるようにしておきましょう。

更新日:2017年12月17日

この記事について

監修:豊田早苗医師(とよだクリニック院長)

執筆:当サイト編集部

心筋梗塞になってしまう人は多い

心筋梗塞

心筋梗塞とは、心臓を動かしている筋肉に血液が行かなくなってしまい、心臓が動かなくなってしまう病気です。

心筋梗塞の手前の状態である狭心症の段階で病院で治療を受けていれば、大事には至らないことも多いのですが、それでも急に心筋梗塞になってしまうこともあり、命に関わってきます。

日本では年間で10万人近くの人が心筋梗塞で死亡しています。

※心筋梗塞は、血流が止まり心臓を動かす筋肉に血液が流れなくなってしまいますが、狭心症の場合、血液は流れていますが、血管が狭くて血液が不足している状態で胸の痛みなどの症状が出るものです。

また、心筋梗塞で心肺停止状態になってしまうのは、ほとんどが家の中で起きています。全体の75%程度が家の中で倒れているというのです。この時に心臓マッサージをできるかどうかで、家族のその後が大きく変わってくるのです。


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心臓マッサージとは

心臓マッサージ

学校や職場、地域などの救命講習などで一度は体験したという人も多いのではないでしょうか。心肺停止の状態を確認して、救急車を呼んで、その間に心臓マッサージを行う。教わった直後には、できるような気がするのですが、1週間もすると、うろ覚えの状態になってしまい、実践することなく今に至っているという方が多いのではないでしょうか。

心臓マッサージは胸骨圧迫ともいいます。その正確な目的を正しく認識している人は少ないようです。

心臓マッサージといって思い浮かべるのは、「心臓に刺激を与えて、止まっている心臓を動くようにする。」といったことではないでしょうか。しかし、そのイメージは実際の目的と少し異なります。

まずは、なぜ心臓マッサージが必要なのか、その目的について説明します。

心臓マッサージの目的とは

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心臓マッサージが必要となるときは、心肺停止の状態です。これは心臓の動きが止まっていて、呼吸をしていない状態です。心臓の動きが止まっているということは、血流が止まっていることになります。この時に必要なことは、脳や臓器に血液を送り、血流を維持させることです。

この血流を維持させるということを、心臓マッサージをすることで他人が代わりに行うのです。心臓マッサージをするかしないかで、心筋梗塞になってしまった患者さんのその後の状況が大きく変わってくるのです。特に脳については、4〜5分の間、血が行き届かないと致命的なダメージをおってしまいます。

心臓マッサージの方法

心臓マッサージは血液を脳や臓器に送ってあげることが目的です。

心臓を押してあげることで、心臓の中にある血液を血管に押し出してあげる。
押した手を引くことで、心臓の中に血液を入れてあげる。

といった動作を繰り返すのが基本になります。心臓マッサージは決して難しくはありません。京都大学医学部付属病院の医師、山畑佳篤教授が紹介していた方法をご紹介します。

  1. 押す場所は胸の真ん中(心臓の上ではありません。)
  2. そこに手の付け根(手のひらの下で手首の少し上のあたり)を置きます。
  3. もう一方の手も重ねて置きます。
  4. 肘は伸ばします。
  5. 肩と肘と手の付け根が一直線になるようにします。
  6. 押す時には5cmほど押し込むイメージです。
  7. 押した後に引く(戻す)ことを意識します。

心臓を石油ポンプでイメージしてみてください

心臓マッサージは、ポンプのように血液を体へ送らなければなりません。心臓を押して血液を押し出したら、引いて(戻して)、心臓の中へ血液を入れてあげなければならないのです。

これは、石油ポンプのようなイメージです。石油ポンプは押すとポンプから石油が出ていきますが、その後に手を離してポンプの中に石油を入れてあげなければなりません。ポンプから中身を出したら、ポンプに中に再び入れることで、次に押したときにまたポンプから出ていくということです。これは心臓も同様だということになります。

子どもの場合は?

胸骨圧迫(心臓マッサージ)は、1歳から中学生くらいまでの場合、胸の厚みの1/3程度を目安に、胸が十分に沈み込むように胸の真ん中、胸骨の下半分をしっかりと圧迫します。

1歳未満の乳児(赤ちゃん)の場合は指2本(中指と薬指)を使って胸を圧迫します。大人と同様に押す場所は胸の真ん中となります。

【参考】小児・乳児の心肺蘇生(日本救急医学会)

こちらの動画も参考にしてください。

【参考】救急蘇生法(国立循環器研究センター)

プリンセスプリンセスのダイヤモンドのテンポが丁度いい

音楽

心臓マッサージのリズムをとるのに、プリンセスプリンセスのダイヤモンドのリズムがぴったりだといいます。

その理由は、この曲のテンポと、「裏打ち」を感じるリズムにあります。

この「裏打ち」というのは、「んたんたんた・・・」の「た」の部分のリズムのことで、ダイヤモンドを聞いてみるとわかるのですが、この裏側のリズムをとてもしっかりと感じることができるのです。

心臓マッサージではこの裏側のリズムを意識することで、押すだけでなく、引くときのことをイメージできるので、ポンプのように、押すだけでなく引くことも意識して心臓マッサージをすることができるのです。

そもそも心臓マッサージのテンポは1分間に100回から120回程度と言われています。ダイヤモンドは曲のテンポが1分に112回であって、裏打ちを感じることができるので、心臓マッサージに合わせるものとしてとてもいいのです。しかも誰もが知るヒット曲でもありますので、恐れを感じていた心臓マッサージも身近に感じることができるのではないでしょうか。

家でも練習できるので、聞きながらやってみてはいかがでしょうか。

家での練習方法

救命講習では心臓マッサージの練習用人形がありますが、家ではペットボトルや座布団が代わりになります。

座布団を使用する方法

座布団4枚程度重ねて置きます。そして、一番上の座布団は半分におります。その半分に折った座布団を上から心臓マッサージするのです。半分に折った座布団は反動がありますので、押した後に戻ってくるのを感じることができます。

ペットボトルを使用する方法

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中身が空の2リットルのペットボトルで側面が平らなものを用意します。ペットボトルの蓋は閉めた状態で、バスタオル程度のタオルを巻きます。下に辞書や箱などを置いて高さを調整します。そして、ペットボトルに対して心臓マッサージを行います。

人が倒れていたらどうすればいい?AEDを使えばいいんじゃないの?

それでは実際に人が倒れていた時にどのようにしたらいいのでしょうか。最近では周囲にAEDもよく見かけます。AEDを使えばいいのではと思いますが、実際はどうなのでしょうか。

AEDは心臓が心室細動という状態にあるときに、それを電気ショックで解消するものです。心室細動とは、心臓が痙攣しているような状態になることで、心臓のポンプ機能は失われた状態になっています。したがって、このままの状態が継続すれば命に関わることになります。

AEDはこういった状態を自動で判断してくれて、必要な場合に電気ショックを行ってくれます。一般の人でもAEDの指示に従えばすぐに使うことができます。このAEDがあることも踏まえて、人が倒れていた場合には次のように対応します。

  1. 人が倒れていて、呼吸をしていない
  2. 救急車を呼ぶ(分からないことがあれば指示を仰ぐ)
  3. 心臓マッサージを開始する
  4. 周囲の人にAEDを持ってきてもらう
  5. AEDがあればAEDの指示どおりに使用する
  6. AEDの処置が完了したら、心臓マッサージを再開する

なお、以前は心臓マッサージとセットで人工呼吸をするようにと言われていましたが、現在では一般の人は、人工呼吸は行わず、とにかく心臓マッサージをすることが推奨されています。(人工呼吸は難しく、素人が正しく人工呼吸をすることにこだわるより、血液中の酸素を循環させることの方が救命につながるためです。)


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迷ったらやる!

目の前で人が倒れたけどそうしていいかわからない。そんなときは、呼吸をしていないことを確認したら、迷わずに心臓マッサージを始めてください。

また、周りの人も一緒にこの知識を共有しておくことが大切です。自分が倒れたときに助けてくれるのは、家族や周囲の人だからです。いつ誰が心筋梗塞になってもおかしくないと思って行動することが必要ですね。

【参考】JRC蘇生ガイドラインオンライン版(日本蘇生協議会)

看護師からひとこと

心肺蘇生は、傷病者が動き出すか、または救急隊員や医師などの専門家に引き継ぐまで続けてください。長時間に及ぶこともありますので協力者がいれば交代で行ってください。

特に心臓病などの家族がいる人は、講習を受けられるとともに、AEDの設置場所を普段から確認しておくことも大事です。

まとめ

自分には関わりがないと考えがちな心臓マッサージですが、家族が倒れた時に家族を救えるかどうかは、その時にしっかりと実践できるかどうかにかかってきます。しっかりと理解して、いつでも実践できるように備えておくことが大切です。

[カテゴリ:気管・心臓・肺]

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