立ちくらみは脳の酸素が一時的に不足する状態ですが、その原因には様々なものがあります。吐き気や頭痛などの症状も一緒に現れる場合や、大きな病気が潜んでいることもあります。立ちくらみの原因や症状、病気などについてまとめました。

更新日:2017年09月18日

この記事について

監修:大見貴秀医師

執筆:当サイト編集部

立ちくらみの原因

立ちくらみの原因

突然、目の前が真っ白(もしくは真っ暗)になる立ちくらみ。

朝、ベッドや布団から起き上がる時や、電車に乗っていて椅子から立ち上がった時、またはお風呂でつい長湯をして湯船から出ようとした時などに、このような症状が起こりやすいと言われていますが、立ちくらみはどのようなことが原因で起こるのでしょうか。

立ちくらみを簡単に説明すると、脳が一時的に酸素不足の状態になっていると言えます。

体を横にしたり、座っている状態から急に立ち上がったりすると、重力によって体の下の方への血流が一気に増え、逆に体の高い位置にある脳への血流が悪くなってしまいます。

こうなると、脳に必要な酸素が送られなくなり、酸素不足が起こります。

これを「起立性低血圧」と言います。

起立性低血圧は、立ちくらみが起こる原因としてもっとも多いことがわかっています。

しかしこの時、通常であれば自律神経の働きによって、下半身の血管を収縮させることで下に流れようとする血液を上に押し上げ、脳の血圧が下がることが無いように維持されます。

それが、自律神経に乱れが生じていると、この機能が上手く行われなくなり、立ちくらみが起こってしまいます。

さらにもともと低血圧の方も、立ちくらみを起こしやすいので気を付けましょう。

脳貧血とも呼ばれる

脳貧血

学生時代に朝礼や全校集会などで、急に倒れたりその場にしゃがみこんだりする生徒の姿を見掛けたことがないでしょうか。

この場合、座ったり立ったりしているわけではなく、立ちっぱなしの状態にも関わらず体がふらついたり意識が遠のくなど立ちくらみの症状が現れますが、立っている時間が長くなると、やはり重力によって足の方へ血液が溜まり脳への血流が滞ってしまいやすくなります。

頭がクラクラして急に倒れる症状と言えば貧血が思い浮かびますが、このような症状は一般的に「脳貧血」と呼ばれています。一見すると貧血の一種のようにも思えますが、医学的な呼び方ではなく、医学的な貧血とは全く違うものです。


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立ちくらみの原因となる病気

体がフラフラする・・。頭がボーッとする・・。

このような立ちくらみの症状は、割りと多くの方が経験していると言われています。しかしそれが故に、立ちくらみはありきたりな症状で大したことではない、と軽く捉えて放っておくのはとても危険です。

立ちくらみは多くの場合、血圧の低下が原因のため、しゃがんだり寝たりと頭を低くすることで血圧が安定して症状が治まるのが一般的ですが、中には対処する前に失神してしまい、頭や首などを床や地面に打って大けがに繋がることもあります。

また、立ちくらみが頻繁に起こる場合は、単に一時的な脳の酸素不足ではなく、他の病気の可能性が考えられます。では、立ちくらみが原因となる病気には、どのようなものがあるのでしょうか。

脳梗塞や脳卒中

脳梗塞や脳卒中は、脳の血流障害が原因で発症します。

脳の中で血液が上手く流れない、または血管が詰まってしまうと、手足の運動障害や、バランスを保つ機構が働かなくなり、初期症状として立ちくらみを起こしやすくなります。

自律神経失調症

自律神経失調症とは、本来バランスを保ちながら働いている交感神経と副交感神経が乱れることで、心身に様々な影響を及ぼす病気のことを言います。先述した通り、自律神経は血圧の急な低下を防ぐために働いていますが、その働きが乱れることによって血圧の調整が上手くいかなくなり、立ちくらみを起こしやすくなります。

起立性調節障害(OD)

同じく自律神経がうまく機能しないことで生じるものに、起立性調整障害(OD)というものがあります。10代の前半に発症することが多く、立っているときに血圧が低下して立ちくらみがしたり、朝の血圧が低く動けないなどの症状があり、場合によっては不登校になったり保健室登校になったりするお子さんもいます。

心疾患

不整脈や狭心症、心筋梗塞、心不全など、心臓に何かしらの病気があると、血液を全身に送るポンプの役割が上手く働かなくなり、脳への血流量が減り低血圧から立ちくらみを起こしやすくなります。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍

胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、粘膜が傷付くことで、痛みや吐き気、食欲不振といった症状が起こるものです。症状が進行すると潰瘍部分から出血し、貧血による立ちくらみが起こることがあります。

高血圧

立ちくらみは低血圧の方が起こしやすいと言われていますが、実は高血圧の方でも立ちくらみが起こります。

また、血圧を下げる降圧剤を服用している方が、飲む量を間違えることで血圧が下がり過ぎてしまい、立ちくらみを起こすことも多いようです。

男性の立ちくらみの原因

男性の立ちくらみ

立ちくらみは、男女の性差によっても違いがあります。では、男性の立ちくらみにはどのような原因があるのでしょうか。

夜中に頻繁にトイレに起きる

55才以上の男性のうち5人に1人は〝前立腺肥大症〟と言われ、トイレに関する悩みを抱えている方が多くいます。

特に、睡眠を妨害される夜中のトイレに困っている方も多いと思いますが、夜中のトイレは寝ている途中に起きる煩わしさだけではなく、夜中に急に起き上がることで起立性低血圧を起こしやすく、なおかつ男性の場合は立ったまま用を足す人が多いため、低血圧による立ちくらみを起こしやすいのです。

仕事や人間関係のストレス

男性の多くが会社員として働いていることから、仕事や人間関係のストレスを感じやすく、それが原因で自律神経が乱れてしまうと立ちくらみを起こしやすくなります。

飲酒後の入浴

仕事帰りに同僚と一杯飲んだり、帰宅後に晩酌をしたりするのが何よりの楽しみ、というお父さん方は多いのではないでしょうか。

そして、アルコールを摂取した後に一日の疲れを流すために熱いお風呂に浸かるのが日課という方もいらっしゃると思いますが、この場合アルコールによって血管が拡張された上に、さらに入浴によって血管が広がるため、低血圧になりやすく、場合によっては失神してしまう可能性もあります。

胃や腸からの出血

女性に比べて男性は貧血になりにくいと言われていますが、男性で貧血がある場合は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、大腸ポリープ、胃ガン、大腸ガンなどによる出血の可能性があります

女性の立ちくらみの原因

女性の立ちくらみ

学校や職場で、いきなりふらっと倒れてしまう方には、圧倒的に女性が多い印象があります。では、女性が立ちくらみを起こす原因には、どのようなものがあるのでしょうか。

低血圧

低血圧は立ちくらみの主な原因ですが、男性に比べて女性の方が多いのが特徴です。

その理由としては、女性の方が体の筋肉量が少ないため、血流が滞りやすいことや、女性ホルモンによる血管拡張作用によって血圧が下がりやすくなるためです。特に、20~30代の若い女性に多いですが、最近は小学生から低血圧で悩む子どもが増えています。

生理

女性は毎月、生理によって大量の血液が失われています。血液量が減るとそれだけ脳に流れる血液も減るため、立ちくらみが起こりやすくなります。

女性ホルモンの変化

女性ホルモンは、自律神経と深い関わりがあり、生理や出産、授乳、閉経などで女性ホルモンの変化が起こると、自律神経が乱れて血流が悪くなってしまいます。

特に、更年期に入ると多くの方が立ちくらみやめまいといった症状を訴えやすくなります。

子宮筋腫や子宮内膜症

子宮に良性の腫瘍ができる子宮筋腫は、腫瘍によって出血量が増えることがあるため、それにより立ちくらみが起きやすくなります。また、本来は子宮内にしかないはずの子宮内膜が、子宮内以外にも増殖してしまう子宮内膜症も、出血量が増えるため貧血による立ちくらみが起こります。

ダイエット

多くの女性はモデルのような体型に憧れ、日々ダイエットに励んでいます。しかし、無理な食事制限など体に負担の大きいダイエットを行うと、本来必要な栄養分の摂取ができなくなるため、血液が薄くなり脳へ届く酸素量も減ってしまいます。

また、空腹によるストレスが長く続くと自律神経が乱れてしまい、立ちくらみを起こしやすくなります。

立ちくらみと吐き気が起こる病気

吐き気

立ちくらみに加えて、吐き気もあるという場合は、次のような病気の可能性があります。

脳神経の異常

立ちくらみと同時に吐き気がある場合、特にろれつが回らない、手足がしびれているなどもある時は、脳神経に異常が起こっていると考えられます。

自律神経失調症

自律神経失調症の主な症状の中に、吐き気があります。

自律神経が乱れてくると、胃腸の働きに関係している副交感神経が弱まることから、胃腸の機能が低下して吐き気を始めとして、消化不良や食欲低下、便秘が下痢、腹痛などの症状が現れます。

そのため、立ちくらみだけではなく吐き気を伴う時は、自律神経失調症の可能性があります。

血管迷走神経反射性失神

人の体には頭から臓器に至るまで迷走神経という神経が分布しています。この迷走神経の活動が活発になり神経が高ぶってくると、血管が拡張して、血圧が低下したり、冷汗が出たり、顔面蒼白、脈が遅くなるどのことが起こり、失神してしまいます。

これは、精神的もしくは身体的なストレスなどが原因となって起こるものです。例えば、注射が苦手な方が予防接種で過度の緊張をした時や、湿度や気温の高い場所で激しい運動を行った時などに起こると言われています。血管迷走神経反射性失神が起こる時は、自律神経の乱れによる前兆があることが多く、吐き気やあくび、冷や汗などがあります。

メニエール病

メニエール病とは、耳の三半規管で内リンパ水腫が起こり、内圧が上がってしまう病気です。なぜ内リンパ水腫が起こるのかは、現段階ではわかっていませんが、ストレスが原因ではないかという見方がされています。

三半規管は、体の平衡感覚を司っている場所のため、ここが乱れてしまうと立ちくらみや吐き気の症状が現れます。

立ちくらみと頭痛が起こる病気

頭痛

立ちくらみと一緒に頭痛が起こる場合には、次のような病気の可能性があります。

貧血

立ちくらみの主な原因である脳貧血(起立性低血圧)と、貧血は全く違うものです。しかし、貧血が立ちくらみの原因になることはあります。

貧血とは、血液中の赤血球が減った状態を指します。赤血球は、血液内で酸素を運ぶ役割を担っているため、貧血によって酸素の運搬量が減ってしまうと、体の中で最も酸素を使う脳(全体の25%)が一番影響を受けやすくなり、酸欠による頭痛を引き起こします。

頚椎椎間板ヘルニア

頚椎とは、首にある椎骨と椎間板のことを言います。頚椎椎間板ヘルニアになると、骨と骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板が飛び出してしまい、頭の重さを支えることができなくなります。

すると、立ち上がった時などに頭が揺さぶられて立ちくらみがしたり、首や肩の筋肉疲労が強くなって頭痛を引き起こします。


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立ちくらみと抜け毛が関係していることも

一見すると結び付かない立ちくらみと抜け毛ですが、実はこの2つには共通する病気が隠されています。

それは、自律神経失調症です。

自律神経失調症とは、その名の通り自律神経が失調(調和を失う)してしまう病気です。私達の体には、自分の意思で動かすことができる体性神経と、自分の意思では動かすことができない自律神経があります。

自律神経は、活動時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経に分かれており、心臓の拍動、食べ物の消化や排泄、体温の調節など、私達が生きる上で欠かせない働きをコントロールしています。

しかし、自律神経はストレスや不規則な生活習慣などによって乱れやすく、交感神経と副交感神経のバランスを保てなくなると、様々な症状を引き起こします。その中に、抜け毛があるのです。

自律神経失調症による抜け毛は、交感神経が優位に立ち過ぎてしまうことで起こることがあると言われています。

交感神経には、血管を収縮させる働きがあることから、交感神経ばかりが優位になってしまうと髪に必要な栄養が届きにくくなります。

また、交感神経は発汗を促す作用があるため、頭皮の状態が不衛生になりやすくなることも抜け毛を促してしまう要因になります。

まとめ

原因

立ちくらみは脳への血流が一時的に滞ってしまうことによって起こります。その原因となる病気には、脳卒中などの大きなものから、自律神経がうまく機能しないことによるものなどが考えられます。

男女による原因の違い

男性に多いのは、仕事によるストレス、胃などの内臓疾患による出血などが考えられます。女性は低血圧、整理、女性ホルモンによる影響などが考えられます。

頭痛や吐き気がする場合

この場合は、他の病気が原因となっていることがあります。吐き気とともに手足にしびれがある場合は脳神経の異常、頭痛がある場合には、貧血などが潜んでいることもあります。

最後に

立ちくらみといっても、その根本の原因は様々です。症状が治まらない、頻繁に起こる、といった人はきちんと医療機関を受診して原因を突き止めることをお勧めします。

立ちくらみに関する質問や回答が寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

[カテゴリ:, 貧血]

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