水いぼ(伝染性軟属腫)の原因、治療法、プールの時期や登校について
更新日:2017年06月20日
水いぼとは
水いぼとは、正式な病名を「伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)」といい、ポックスウイルス科に属する伝染性軟属腫ウイルスによる感染症です。
水いぼは、水が中に入ったような湿疹で、体のどこにでもできます。また、接触することにより、感染が広がっていきます。
水いぼの原因・感染経路
感染経路は接触感染となり、水いぼに触ると感染します。水いぼに直接触れなくても、水いぼに触れたタオルや衣服、水いぼに触った手で何かに触れると、それを介して感染が広がることとなります。
プールで感染することが多く(プールの水ではうつりません)、皮膚が接触しなくてもビート板などを介して感染します。
ほかにもレスリングなど、皮膚と皮膚が接触することの多いスポーツなどで感染しやすい病気です。また、成人では性行為でも感染します。
水いぼの潜伏期間、症状
感染してから発症するまでの潜伏期間は、2~7週間となり、場合によっては6か月の長期となる場合があります。
水いぼは、顔、体、手、足など様々な場所にできて広がっていきます。特に子どもに多くみられ、症状が出る場所も広範囲に渡ります。
また、水いぼができること以外に症状はほとんどありません。
水いぼが脇の下や、上腕の内側など、皮膚どうしが擦れる部分だと自ら感染箇所を増やしてしまい、多発してしまいます。また、かゆみを伴うこともあり、引っ掻くことにより、膿をもつ発疹を作ってしまうこともあります。
特徴は白やピンク色の湿疹となります。見た目に光沢があり、大きさは2~5mm程度で、大人が感染すると陰部にできることが多くなります。
水いぼの予防
水いぼにはワクチンはありません。
予防法としては、肌の乾燥状態をなくすことや、皮膚病により肌のバリア機能が失われないようにすることが大切です。
肌を保湿し、アトピーの場合はステロイド剤を使用するなどして病勢のコントロールをつけることが一番の予防です。
また、プールは消毒のために塩素を使用していますが、塩素により皮膚表面が乾燥しやすくなり、水いぼに感染しやすくなっています。したがって、プール後には保湿することが必要となります。
家族が感染した場合は、入浴やタオルを別にし、直接肌が接触しないよう注意しましょう。
水いぼの治療
水いぼは治療しなくても、半年~2年程度の間に自然治癒していきます。
したがって、必ず病院で治療しなければならないというものではありませんが、見た目の問題や、他人への感染も心配になりますので、医療機関を受診して治療を受けることをお勧めします。
確実なのは感染した皮膚の除去
治療にはいくつか方法がありますが、最も確実な方法はウイルスに感染した皮膚の細胞を除去することです。
主な方法は次のようになります。
- 「鑷子(せっし)」(ピンセットのような専用器具)でつぶす
- 液体窒素を使用して水イボを凍結する
- レーザーを使用して除去する
- 電気を使用して水イボを焼く
この治療法には痛みが伴いますので、治療の際にはペンレスやリドカインテープなどの局所麻酔剤を使用することもあります。
治療により患部を完全に取り除かないと、ウイルスが残っていて他の場所へ広がってしまいますので、全体をカバーするよう、きちんと除去します。
この治療法は確実な方法ですが、子どもが嫌がりますので、処置がスムーズにいかないことがあります。
少しずつ除去していくなどの方法も
また、見た目の問題からイジメなどへ発展することも心配になるところです。
水いぼの数が少ないうちに、さっと取ってしまえるといいのですが、数が多くなってしまった場合は、1日に10個ずつ除去していくなど、治療法について医師と相談するといいと思います。
また、サリチル酸絆創膏をはったり、抗ウイルス薬(ビダラビン)を使用したりすることもあります。
サリチル酸は魚の目にも使うのですが、軟属腫以外の正常な皮膚にはってしまうと、ふやけてしまいます。1個や2個といった少数の間に使用することがあります。
その他の治療法としては、「ヨクイニン」という漢方薬を服用することもあります。ただし、1回に飲む量が多い上、治癒するまでに時間がかかります。
アトピーとは治療法が逆
なお、ステロイドを塗ると水いぼは悪化してしまいます。(基本的に感染症にステロイドを用いると悪化します。)
アトピー性皮膚炎では炎症をとる目的でステロイドを使用しますので、治療が逆になってしまいます。
アトピーをお持ちのお子さんが水いぼにかかってしまった場合は、医師に相談することが必要でしょう。
学校などへの登校について
水いぼは、学校保健安全法で指定される伝染病ではありません。したがって、学校への出席停止措置の必要はないと考えられています。
また、日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会・日本皮膚科学会・日本小児感染症学会が、平成22年7月に「皮膚の学校感染症について」という文書を公開しています。
その中に、水いぼの記載があります。ここでも、学校を休む必要はないと記載されています。以下に抜粋を引用します。
伝染性軟属腫(みずいぼ)
幼児・小児によく生じ、放っておいても自然に治ることもありますが、それまでには長期間を要するため、周囲の小児に感染することを考慮して治療します。プールなどの肌の触れ合う場ではタオルや水着、ビート板や浮き輪の共用を控えるなどの配慮が必要です。この疾患のために、学校を休む必要はありません。日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会・日本皮膚科学会・日本小児感染症学会の統一見解「皮膚の学校感染症について」より抜粋
プールについて
水いぼに感染しているときに、プールに入ってもいいか。という疑問については、これまでいろいろな考え方があり、統一的な方針が決まっていませんでした。
それが、平成27年5月に日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会・日本皮膚科学会の統一見解として、「皮膚の学校感染症について」という文書を公開しました。
この文書の中に水いぼの記載があります。プールでは感染しないが、タオル、浮き輪、ビート板などでうつるので、共用しないようにというものです。
小さな子どもだと、裸でお友達とくっついたりしますから、そういったところも気をつける必要があります。
伝染性軟属腫(みずいぼ)
プールの水ではうつりませんので、プールに入っても構いません。ただし、タオル、浮輪、ビート板などを介してうつることがありますから、これらを共用することはできるだけ避けて下さい。プールの後はシャワーで肌をきれいに洗いましょう。
妊婦への影響
妊婦さんが水いぼに感染しても、胎児には影響はないと言われています。ただし、出産の際に産道を通じての感染する可能性はあります。
仮に赤ちゃんに感染した場合でも、赤ちゃんが生まれた後に重い症状を起こすことはほとんどありません。
妊娠中に水いぼができた場合は、出産までに治療しておく方がいいでしょう。
また、配偶者や周囲の人に水いぼに感染している人がいないか確認しておきましょう。
看護師からひとこと
伝染性軟属腫は、早くに発見すれば除去するのも簡単ですが、全身に広がった場合には除去するのも大変になります。
また、潜伏期間が長いため、一度取り除いてもその時点で感染していた他の場所から新たに発生することもあります。
最近では自然治癒を待つという方針をとる医師も多いですが、その場合は数か月から年単位の期間を覚悟する必要があります。
また、伝染性軟属腫と思ったら別の病気だった・・・という場合もあります。見つけたら早めに、皮膚科もしくは小児科を受診しましょう。
まとめ
- 水いぼは、正式には「伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)」という病名で、ポックスウイルス科に属する伝染性軟属腫ウイルスによる感染症です。
- 水いぼに触ると感染します。
- 直接触れなくても、水いぼに触れたタオルや衣服、水いぼに触った手で何かに触れると、それを介して感染します。
- 特徴は白やピンク色の湿疹で、見た目に光沢があり、大きさは2~5mm程度です。
- 水いぼにはワクチンはありません。
- 予防法としては、肌の乾燥状態をなくし、皮膚病などの治療をしっかりと行い、肌のバリア機能を維持することが大切です。
- ウイルスに感染した皮膚の細胞を除去することが最も確実な治療方法です。
- 細胞の除去には局所麻酔用のテープを使用しますが、鑷子(ピンセットのような専用器具)でつぶす、電気で焼くなど、子どもにとっては恐怖をいだくような治療となります。
- 水いぼになった際にプールに入ることについては、日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会が統一見解を出していて、プールに入ってもいいが、タオル等の共用を避けるよう注意しています。
- 妊婦さんが水いぼの感染しても、胎児に影響を与えることはほとんどありませんが、出産時に赤ちゃんへ感染することも考えられますので、出産前に治療した方がいいでしょう。