やけど虫はコブラより強い毒素!皮膚炎の症状や治療法、対策法など

皮膚にやけどのような発疹を引き起こす「やけど虫」と呼ばれる害虫をご存知でしょうか?あのコブラよりも強力な毒素を持っているとも言われており、近年の温暖化も相まって日本全国各地で被害が報告されています。今回は、そんな「やけど虫」について説明していきます。

  [虫刺され]

更新日:2017年07月27日

この記事について

執筆:医師(小児科専門医)

やけど虫とは?その生態的特徴

やけど虫は、正式には「アオバアリガタハネカクシ」と呼ばれるPaederus属に属する昆虫を指します。成虫の大きさは約7mm前後であり、頭が黒く身体が赤黄色と黒の縞模様を呈します。

7月から8月が発生のピーク

日本全国に生息していることが知られており、特に暑くてジメジメした時期を好みます。

そのため、主に4月から活動を開始し、7月から8月をピークとして発生することが知られています。

穀物や他の昆虫類などを餌にしており、また壊れた家屋を巣にすることもあることから、日本の中でも田舎に多く見られる傾向にあります。

やけど虫は日本だけではなくアマゾン川流域やアフガニスタン、パキスタンを含めて全世界でその生息が確認されています。

やけど虫により引き起こされる被害

やけど虫は「ペデリン」と呼ばれる毒素を有しています。この毒素に接触することでやけどのような皮膚炎(水疱や発赤など)が引き起こされることがあります。(画像を参照)

作者 US Army Public Health Command (US Army Center for Health Promotion and Preventive Medicine USACHPPM [Public domain], ウィキメディア・コモンズ経由で

ここで注目すべき点として、やけどのような皮膚症状はやけど虫に噛まれることで生じるのではなく、やけど虫を潰したりやけど虫の体液に触れることがきっかけになる、と言う点です。

このことはやけど虫に遭遇した時に、皮膚炎を生じないように対処するに当たり重要な観点であるため、後に詳しく記載します。

やけど虫の毒素はコブラ毒よりも強力!

なおペデリンは、あのコブラ毒よりも強力であると言われています。

毒素に触れると、皮膚の細胞におけるタンパク質及びDNA合成が障害され、結果として細胞の分裂に影響が及ぶと考えられています。

その一方で手のひらや足の裏等、皮膚の厚い部分に対しての影響力は少なく、これらの部位に毒素が触れても皮膚炎の症状は生じにくいと言われています。

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やけど虫による皮膚炎の症状とは?

やけど虫による皮膚炎は、「線状皮膚炎」とも呼ばれています。

その名前が示唆するように、一本線を引いたように皮膚に炎症が起きることが見た目の特徴になります。(皮膚炎の画像は日本臨床皮膚科医会のHPをご覧ください。)

やけどのような皮膚の症状

作者 Katya from Moscow, Russia (Paederus littoralis) [CC BY-SA 2.0], ウィキメディア・コモンズ経由で

毒素に触れてから数時間経ってから、毒素の接触部位に沿って皮膚にヒリヒリとした痛みや発赤が生じるようになります。

時間が経つにつれて水ぶくれが生じることもあり、その様相はまさにやけどを起こしたように見えます。

さらに数日経過すると、治療や清潔がうまくいっていない場合においては特に、細菌による二次感染を起こし完治まで時間がかかったり、傷跡が残ってしまうこともあります。

そのため、早期のうちから治療をしっかり行うことが大切です。

以上のような皮膚症状は毒素に触れることで引き起こされることから、やけど虫に接触をしていなくとも、毒素の付着したタオルやドアノブなどでも症状が引き起こされることもあるため注意が必要です。

また毒素は粘膜からも吸収されることがあります。そのため、毒素の付いた手で目をこすることは避けなければなりません。

医療期間を受診する際には生活環境の情報を伝える

またヘルペスを始めとして類似症状を呈する疾患もあります。

やけど虫による皮膚炎を診断するに際しては、周囲の生活環境や発症時に何をしていたかなどの情報(例えば、畑のそばに住んでいる、山に行っていた、など)が非常に大切になります。

医療機関を受診する際には、ご自身の判断で皮膚症状とは関係がないと思うことなく、これらの情報を積極的に提供することが大切です。

やけど虫による皮膚炎の治療

また毒素が触れた部位は経時的に刻一刻と症状が変化します。

初期においては毒素が触れた部位を冷やすことも適応になります。また、後々の瘢痕形成を予防するためにも、局所的にステロイド軟膏を塗布することも有効です。

痒みがある場合や感染が疑われる場合にはそれぞれ、内服の抗ヒスタミン薬や抗生物質も適応になります。

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やけど虫による被害を予防するには?

1. 見た目を知る!

やけど虫による皮膚症状を避けるためには、何よりもまずやけど虫の外見を知ることが大切です。

やけど虫は1cmに満たない虫です。そうした小さな虫が自分の身体にいる状況を想像していただくと判ると思いますが、突発的に虫を潰してしまうのではないかと思います。

しかしながらこうした行動により、やけど虫がもつ毒素と皮膚が接触することになってしまい、結果として皮膚炎が引き起こされてしまいます。

なによりもまず、やけど虫の知識を持つことがとても大切です。

2. 皮膚の上で潰さずに、優しく払いどける

突発的にやけど虫を潰したくなることもあるかと思いますが、絶対に潰すことはさけましょう。

皮膚との接触を避けるよう虫を誘導しましょう。

3. やけど虫の死骸の取り扱いにも注意

前述の通り、やけど虫の伴う皮膚炎は噛まれることで引き起こされるのではなく、毒素に触れることで生じます。

そのため、やけど虫の死骸を見つけても無造作に掴んではいけません。ゴミとして捨てる際も、不意に潰してしまわないように瓶や硬い箱等の中に入れる配慮が必要です。

4. できるだけ毒素を洗い流す

やけど虫の毒素に触れたことが疑われる場合には、出来るだけ早く手洗いやシャワーをして毒素を洗い流すことが有効です。

5. 皮膚の露出を避ける

やけど虫は主に田舎に多く生息しています。山へのトラッキングや生息地域に足を踏み入れる場合においては特に、皮膚の露出を避けるような格好をすることが望まれます。

6. 就寝時にはしっかりと電気を消す

やけど虫は他の昆虫と同様、光に集まる習性があります。

また、とても小さい昆虫であることから、ふとした隙間から光を頼りに家の中に容易に侵入してくることがあります。

屋外でキャンプをする時にはもちろん、家の中においても就寝時等には出来るだけ電気を消すようにして、少しでもやけど虫と接触する機会を避けるようにしましょう。

7. やけど虫の駆除も検討

やけど虫による健康被害が多い場合においては特に、やけど虫の駆除を検討することも一つの方法です。

いくつかの害虫駆除業者がやけど虫駆除を請け負っていることもありますので、状況に応じて適宜相談されるのもいいでしょう。

まとめ

以上、やけど虫の生態的な特徴から引き起こされる健康被害について概説をしてきました。

やけど虫の名前はあまりなじみがないかもしれませんが、実はどこにでもいる非常に怖い虫です。

今回の記事を通して少しでもその特徴を理解いただき、健康被害を未然に防ぐようにお役立ていただけたら幸いです。

参考

やけど虫に関するQ&Aが寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

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