花粉症の検査や治療法、予防や対策、発症状況などを説明します。
更新日:2017年07月09日
目次
花粉症とは
花粉症とは、アレルギー性鼻炎の一種で、花粉に対してアレルギー反応を過剰に起こしてしまう病気です。
免疫が体に害のないものに対しても過剰に反応してしまい、かえって体に異変を与えてしまう反応が起こるというのがアレルギー性疾患です。
花粉症の場合は、花粉に対して免疫が過剰に反応して様々な症状がでてきます。くしゃみ、鼻水、涙などの症状は花粉を体の外部に出そうと、免疫が過剰に反応して起こります。
子どもの花粉症に関する近年の状況
子どもの花粉症は年々増加するとともに、低年齢化しています。花粉症に関する調査は数多くありますが、厚生労働省のHPによると、2002年から2008年にかけて、次のように増加していることが分かります。
2002年の調査
- 0〜2歳 0%
- 3歳〜5歳 4.5%
- 6歳〜9歳 10.5%
2008年の調査
- 0〜4歳 1.1%
- 5〜9歳 13.7%
また、ウェザーニューズが2013年にスマートフォンアプリ「ウェザーニュースタッチ」及び携帯サイト「ウェザーニュース」の利用者29,024人(男性52%、女性48%)に対して行った調査によると、花粉症のデビュー率は、子どもは大人の約2倍で、中でも4歳〜6歳の花粉症デビューが多いという調査結果が出ています。
なぜスギ花粉が多いのか
戦後に多くのスギの木が植えられました。現在はそれが成長して花粉を大量に生産しています。スギの花粉の飛散量を減少させる方法として、スギの木の伐採や花粉の少ないスギへの品種改良が進められています。
また、スギは日本特有の木です。外国にも一部存在していますが、大量のスギ花粉が存在し飛散する状況というのは、日本に特有だと言われています。
花粉の飛散時期など
関東地方では次のような飛散状況となります。
- 2月〜4月 スギ花粉
- 4月〜5月 ヒノキ花粉
- 6月〜8月 カモガヤなどのイネ科花粉
- 8月〜10月 ブタクサ、ヨモギなどの雑草類の花粉
また、北海道と本州の一部では4月から6月にかけてシラカバが飛散します。(シラカバは口の中にアレルギーをおこす口腔アレルギー症候群の原因になります。)
花粉症の症状
花粉症の主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、充血、涙目、喉のかゆみなどです。ひどい場合には、花粉が肌に触れることによる接触性皮膚炎も起こります。
その他、花粉症によって口の中にアレルギーが出ることがあります。これは、口腔アレルギー症候群といい、野菜や果物が原因で、食べることにより口の中にアレルギーが出ます。花粉ではシラカバに多くみられます。
また、花粉症の人は、アレルギーを原因とする喘息、通年性のアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などにもなりやすいことが分かってきています。
多くは水のようなさらさらとした鼻水となりますが、子どもの場合カゼのように粘り気のある鼻水や鼻づまりといった症状になることもあります。その他、鼻や口のかゆみや目の充血なども子どもによくみられる症状です。
花粉症の検査
花粉症と診断するには、症状や発症時期、家族のアレルギー状況などについて問診を行い、鼻の中の検査、抗体の検査などを行っていきます。
なお、花粉症の検査を行う場合は保険が適用されます。(初診の検査で自己負担6,000円程度。子どもの場合は市町村によっては医療費助成などを行っているため、安くなる場合が多いです。)
鼻鏡検査
鼻の粘膜の状態を医師が見て確認する検査です。健康な人の鼻の粘膜は薄いピンク色ですが、アレルギー性鼻炎の人は粘膜が青白く、粘膜が膨らんでいたり、鼻水が粘膜を覆っていたりします。
好酸球(こうさんきゅう)検査
鼻水を検査し、鼻水の中に「好酸球」というアレルギー特有の細胞が存在するかを検査します。この検査によりアレルギーが原因となっていることがわかります。
特異性IgE抗体検査
採血して、血液から花粉に対する抗体をしらべます。
皮内(皮膚)テスト(スクラッチテスト、プリックテスト)
花粉エキスを腕に1滴たらし、針で軽い傷をつけるか注射により、皮膚の膨疹や発赤の有無をみます。判定時間は15〜20分程度です。(針を刺して行うものですので、重度の食物アレルギーなどの場合や金属アレルギーなどで行います。一般的なお子さんの花粉症検査ではあまり行われません。)
鼻誘発テスト
花粉エキスを鼻の粘膜につけて、花粉症の症状が現れることを確認します。
花粉症の治療
花粉症の治療法としては、医療機関で行う薬物療法、特異的免疫療法、手術治療があります。また、治療のほか、花粉にさらされないよう、注意して生活してくことが必要となります。
また、治療は早期に開始することが大切です。初期であれば、鼻の粘膜の炎症がひどくなっていないため、早期に炎症を食い止めることができます。
薬による治療
薬による治療は、アレルギー性鼻炎の治療と大きく変わりません。なお、花粉症の薬は、風邪薬などと併用すると、飲み合わせが悪いものがあります。薬を飲む際には必ず医師と相談して、適切な治療を受けてください。
抗ヒスタミン薬
花粉症の治療に最も使用される薬で、くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどの原因となるヒスタミンの作用を止めます。現在は第2世代と呼ばれる抗ヒスタミン薬が主流で、眠気や口の乾きなどの副作用が少なくなっています。
ケミカルメディエーター遊離抑制薬
アレルギー症状を起こす体内物質が出るのを抑え、鼻づまりなどを改善します。効果が現れるまで2週間ほどかかりますので、使用開始を早めにする必要があります。
血管収縮薬
粘膜の血管を収縮させて粘膜の腫れを取り除き、鼻づまりを抑制します。鼻に噴霧する点鼻薬で、使い過ぎると、かえって鼻づまりが強くなるときもあるので、1日に1~2回程度使うようにします。医師の処方通りに使用しましょう。
ステロイド薬
鼻に噴霧するもの、飲み薬、目薬などがあります。粘膜の炎症を抑え、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど症状全般に効果があります。なお、ステロイド薬には副作用がありますので、医師の指示のもとで薬を使用するようにしてください。
薬による治療の治療費
花粉症の治療として薬のみを使用する場合、医療費の負担が3割だと、初診で検査を行って6,000円程度。2回目の診察と薬(飲み薬、点鼻薬、目薬などが2か月分くらい)で、さらに6,000円程度。症状にもよりますが、年間でおおよそ12,000円くらいかかると思っていいでしょう。
ただし、子どもの医療費については、多くの市町村で医療費の助成が行われています。市町村によって異なりますので、お住まいの市町村のHPで確認してください。
レーザーによる治療
鼻の粘膜をレーザーで少し焼灼し、鼻でのアレルギー反応を鈍くさせます。入院する必要もなく、短時間で終わります。
ただし、小さな子どもさんに対してレーザー治療を行うことはほとんどありません。かなり痛みがあり、じっとしていることが難しいからです。
花粉症の症状がひどく、成人で仕事などがツライ人や、妊娠中で花粉症の薬を飲めない人などに向いていると言えます。
レーザー治療は多くの場合、症状が改善していきますが、レーザーで焼かれた鼻の粘膜は再生してしまうため、効果は1年程度で薄れていくことがあります。再度レーザー治療を受けることで効果を継続することができます。
また、費用については、健康保険が適用されます。1回の手術で15,000円程度の費用がかかります。
その他の治療
平成26年から治療法として厚生労働省が承認した治療法として、舌下免疫療法というものがあります。口の中の舌の下に花粉のエキスを入れて治療することにより、徐々に体を慣れさせて花粉症を改善していくというものです。
ただし、治療にはリスクもあり、子どもの治療に適しているかなど、医師と相談する必要があります。詳しくは厚生労働省の通知をご覧ください。
花粉症に効果があるもの
花粉症の改善をうたい文句にしている商品は多数ありますが、その効果が証明されているものあまりないようです。その中でも効果がありそうなものをご紹介します。あくまで気休め程度の期待に留めておくようにしましょう。
ヨーグルト
腸内の環境を整えることで、アレルギー反応が抑えられると言われます。
鼻の穴に塗るクリーム
花粉症自体を治す効果はありませんが、鼻の粘膜に花粉がつく前にクリームでガードするので、アレルギーを抑える効果があります。
静電気防止スプレー
毛や綿のニットの衣類には花粉が付いてしまいますので、特に毛の衣類については静電気防止スプレーを使用すると効果があります。
花粉症の予防・花粉症対策
大量の花粉を吸い込んだりすることで体が反応して、花粉症が発症しやすくなる可能性が言われています。現在、花粉症を発症していない人は、なるべく花粉を吸い込まないように生活することが大切です。
また、花粉症の人も普段から花粉を避けるように生活することが大切です。花粉の回避方法として、次のことに気をつけてください。
マスクとメガネを着用する。
マスクを使用すると、吸い込む花粉の量が1/3〜1/6程度となり、メガネを着用すると、目に入る花粉の量を1/2〜1/3程度に減らしてくれます。また、マスクは保湿もされるため鼻の症状が軽減されます。
外出時の洋服は表面の生地がすべすべしたものにする。
毛などを使用した上着は花粉が付きやすいので避け、表面がすべすべした生地にするといいでしょう。また、髪の毛に花粉が付かないよう、帽子をかぶって外出するといいでしょう。
帰ったら洗顔とうがいをする。
外出すると顔や喉に多くの花粉が付着しています。帰宅したら、うがいと洗顔をすることを習慣しましょう。
妊婦への治療
花粉症の妊婦さんは多くいらっしゃると思います。しかし、妊娠4か月の半ばより前の段階では、花粉症の薬を使用すると胎児に影響が出ることがあるので、使用に際しては事前にかかりつけの医師と相談する必要があります。
看護師からひとこと
子どもさんの花粉症は、学力・集中力にも影響します。花粉症は花粉が飛び始めてからよりも、1〜2か月前からの治療が効果的。
その時期はまだ寒くてインフルエンザがにぎわっている時期ですが、花粉症の治療は早め早めにすると、症状を軽くコントロールすることができますよ。
まとめ
- 花粉症とは、アレルギー性鼻炎の一種で、花粉に対して人間の体が起こすアレルギー反応です。
- 子どもの花粉症は年々増加の傾向にあります。
- 花粉症の主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、充血、涙目、喉のかゆみなどです。
- 花粉症の診断は、問診、鼻の中の検査、アレルギーをもっていることの検査、原因となる花粉の特定の検査などを行っていきます。
- 花粉症の治療法としては、医療機関で行う薬物療法などがあります。
- 現在、花粉症でない人でも今後花粉症を発症する可能性はあります。発症しないためには、なるべく、花粉を吸い込まないように生活することが大切です。
- 花粉症対策としては、外出時にマスクやメガネを着用することや、帰宅時のうがい・洗顔を徹底することが大切です。