ヘルパンギーナ その症状や感染、登園の時期などについて説明します。

ヘルパンギーナは夏カゼの代表的な疾患として知られています。感染者の多くは5歳以下のお子さんです。高熱が出て、口の中の水疱に痛みが出ます。また、大人でも感染することはあり症状が重くなる場合もあるため、家族で感染予防に努めることが大切です。ヘルパンギーナの感染経路、予防方法、治療法などをまとめました。

  [夏かぜ, 感染症]

更新日:2017年05月23日

この記事について

監修:医師(小児科専門医)

執筆:看護師(当サイト編集部)

ヘルパンギーナとは

ヘルパンギーナとは

ヘルパンギーナとは、主に集団生活を開始し始めた乳幼児を対象として感染するウイルス感染症です。

感染者のほとんどが5歳以下の乳幼児となり、突然の高熱と、口の中に水疱性の発疹が生じる(口の中に水ぶくれのようなものができる)のが特徴で、毎年6月下旬あたりから8月にかけて流行し、10月頃までに流行は収束します神奈川県衛生研究所)。

いわゆる夏かぜの代表的な病気となります。

同じく乳幼児の夏風邪の代名詞である手足口病と症状は似ていますが、次の点で手足口病とは異なっています。

  • 突然の高熱を伴う。(手足口病は必ずしも高熱とならない。)
  • 発疹は基本的に口の中のみにできる。(手足口病は手足などにも発疹ができる。)

ただし、その違いは医師であっても判断が難しい場合があるようです。

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強い感染力、長い感染期間に注意

感染者の鼻水や唾液、感染者との接触、便の中に排泄されたウイルスが口に入ることなどによって感染します。

感染力が強いのは発熱時ですが、熱が下がった後でも2〜4週間程度の期間は便からウイルスが排出され、この間も感染力があるので注意が必要です。

したがって、熱が下がった後にもしっかりと手洗いをするようにして、他人へ移さないようにすることや、周囲の人も手洗いやうがいなどの感染予防を徹底することが大切です。

乳幼児がいる家庭では、おむつ交換の際に使い捨ての手袋を使うなどして、二次感染の予防対策を行うことが有効です。

無自覚の潜伏期間

潜伏期間

潜伏期間とは、ウイルスが体内に侵入してから症状が出るまでの期間のことです。

ヘルパンギーナの発症原因は、多くの場合はエンテロウイルス属のA群コクサッキーウイルスというもので、その潜伏期間は、2日~5日程度です(長くても1週間程度)

潜伏期間内は感染がわかるような自覚症状はほとんどなく、家族内などで感染の有無を確認することは難しく、発症後に感染がわかるケースがほとんどです。

また、前述のとおり、エンテロウイルスは症状が収まり回復期に入っても2~4週間以上の長期に渡り便からウイルスが検出されるケースもありますので、十分な注意が必要です。

高熱と水ぶくれの痛みが主な症状

主な症状

ウイルスの潜伏期間が経過した後、突然の発熱となり、続いて咽頭の粘膜に発疹があらわれます。

口内に直径1~2mm、場合によっては大きいものでは5mm程度の水ぶくれができます。

水ぶくれはやがて破れ、浅い潰瘍となり、痛みを伴うようになります。

発熱は2〜4日間程度で下がり、水ぶくれ発疹の方もそれに引き続き、徐々に落ち着いてきます。

発疹や発熱が落ち着いてくれば、その後は順調に回復していきます。

口内の水ぶくれの破裂・潰瘍により激しい痛みを伴うことから、食欲が減退することや、それによる脱水症などを引き起こすことがあります。

ヘルパンギーナは乳幼児を中心に発症する病気であり、脱水が重症化しやすい年齢であるため注意が必要です。また、突然の高熱を来す病気であることから、お子さんによっては熱性けいれんを伴うこともあります。

食べ物については、ゼリーやプリン、そうめんなど、喉越しのいいものを用意するといいでしょう。

口の痛みやそれに伴う脱水症状がひどい場合には、早めにかかりつけ医を受診して医師と相談するようにしましょう。けいれんを認める時には、夜間であっても医療機関を受診することを検討しましょう。

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合併症について

ヘルパンギーナの場合には稀に、無菌性髄膜炎、急性心筋炎などを合併することがあります。

無菌性髄膜炎の場合には発熱以外に頭痛や嘔吐などを伴うことがあるので、注意が必要です。また、急性心筋炎については、心不全徴候(ぐったり感が強い、顔色不良など)の出現に十分注意することが必要です。

これら合併症は親御さんでは判断が困難な場合もあると思いますので、医師の診断を受ける際に必ず症状を伝えて相談してください。

予防は一般的な感染症予防が基本

予防法

ヘルパンギーナのウイルスについては、ワクチンがなく予防接種がありません。

しかも、ヘルパンギーナのウイルスは感染力が強いため、普段の生活における予防が大切となりなす。感染症に共通の予防策として次のようなことに留意し、手足口病と同様の予防を行うことが大切です。

基本的な予防策

  • こまめに手洗いをする。
  • 特に帰宅時や食事の前には、必ずうがいと手洗いをする。
  • ヘルパンギーナの症状がある時には特に、タオルやはし等を共用しない。
  • おむつ交換に細心の注意を払う。(症状がおさまった後も2〜4週間、便などにウイルスが排泄されます。)
  • 喉の痛みから唾液を大量にたらすようになりますが、唾液中にもウイルスがいるため、唾液が周囲環境に広がらないように注意する。
  • 咳やくしゃみの際に、ティッシュなどで鼻や口を押さえる。
  • 咳が続くときにはマスクをする。

治療は安静と水分補給

治療・安静

ヘルパンギーナはエンテロウイルス群によるウイルス感染症ですが、予防接種やワクチンがないことに加え、特効薬のような薬もありません。

治療は対症療法のみで、発熱や喉の痛みなどに対してはアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬を用いることもあります。

また、口内の痛みで水分補給がうまくできない場合だと、脱水症状があらわれることもあり、脱水症状に対する治療が必要となることもあります。

したがって、治療としては、高熱がでるためまずは安静に過ごすことが重要です。そして、高熱に伴う脱水症状を防止するために水分補給をしっかり行うことが大切です。

また、ヘルパンギーナでは口内に多数の水ぶくれや咽頭部の炎症が発症しますので、酸味の強いもの、熱いもの、辛いものなどの刺激が強いものや、柑橘系の食べ物は避けて、牛乳やバナナジュースなど喉越しのいいもので栄養補給することが有効となります。脱水を避けるためにも経口補水液で補給するといいでしょう。

発熱に関しては、2~4日程度で徐々に熱が下がってきます。解熱剤を使って熱を一時的に下げたり、水分補給・適切な食事摂取を心がけ、脱水にならないように努めることが必要です。

ヘルパンギーナは夏に流行するので、熱中症対策も併せて、水分補給が大切になります。

熱が長期間にわたって下がらないケースでは無菌性髄膜炎等の合併症やヘルパンギーナ以外の病気を発症している可能性もあるので、必ず医師の診察を受けるようにしましょう。

保育園・幼稚園への登園、学校への登校はいつから?

登園

手足口病と同様に、感染した場合は保育園や幼稚園、学校などへは行かないということが好ましいのですが、ヘルパンギーナは、麻疹(はしか)や水疱瘡のように、基本的には学校保健安全法で定められている「出席停止」の対象とはなっていません。

ただし、文部科学省が定めた「学校において予防すべき感染症の解説」によると、ヘルパンギーナについては、次のような解説があります。

登校 ( 園 ) の目安
全身状態が安定している場合は登校(園)可能であるが、長期間、便からウイルスが排出されるので、手洗い(特に排便後、排泄せつ物の後始末後)の励行が重要。

この解説でも、日数が決まっているわけではありませんので、お子さんの状態を医師と相談して判断することとなります。

大人への感染

大人感染

大人へも感染しますので、お子さんが感染した場合には、自分が感染しないよう、十分な予防を心がけてください。

この場合、乳幼児の症状と同じく口内の痛みがかなり強くなります。

口中が痛い、固形物を飲み込むと激痛があるなどの症状に加えて、高熱も伴ってきます。

症状がひどく、重症化しやすいこともありますので、早めに病院を受診した方がいいでしょう。

妊婦さんへの感染、影響

妊娠中にヘルパンギーナに感染した場合、風疹や梅毒等のように直接的に胎児に対して影響があるという関連性は強くは言われていません。

しかしながら、中には出生体重が小さくなったり早産が増える可能性を指摘する研究報告もあります(American Journal of Obstetrics and Gynecology)。

余計な不安材料を排除するためにも、感染予防を講じるに越したことはありません。

また、出産の直前に妊婦さんが感染すると、出産した直後の赤ちゃんに感染する可能性が出てきます。

胎児への影響を過度に心配する必要はありませんが、妊婦さんは感染しないように十分注意するとともに、周囲の人も体調が悪いと思ったら、近くに行って感染させないように注意することが大切です。

妊婦さんは体調不良が見られた場合には、すぐに医師の診断を受けることが懸命です。

流行の確認を

お住まいの都道府県や市区町村において、注意喚起するお知らせが出ている場合があります。

ヘルパンギーナは毎年のように流行していますので、お住いの市町村のホームページなどをチェックしておくと流行の状況などがわかります。

看護師からひとこと

ヘルパンギーナは高熱が特徴ですが、専用治療薬があるものでもないので、反応が悪い・ぐったりしているといったような状況がなければ、焦って夜受診する必要はありません。

熱が出てしまったら水分補給につとめ、翌朝必ず医療機関を受診しましょう。朝になって下がっているからといってそのまま登園・登校してしまうと、感染を拡大させてしまいます。

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まとめ

  • 毎年6月下旬あたりから8月にかけて流行します(いわゆる夏かぜの代表的な疾患)。
  • 症状は、高熱と口の中の水疱性発疹になります。
  • 鼻水や唾液などの分泌物や、便を通じて感染します。
  • 予防には、うがい・手洗いをすること、タオルやはし等の共用を避けること、おむつ交換に注意を払うこと、マスクをすることなどが大切です。
  • 発熱については2〜4日間程度で下がり、発疹の方もそれに引き続き落ち着いてきます。
  • 食べ物については、ゼリーやプリン、そうめんなど、喉越しのいいものがよい。
  • 大人へも感染し、大人が感染した場合の症状は、口内の強い痛み、高熱などを伴うため注意が必要

主な参考文献・サイト

ヘルパンギーナに関するみなさんの質問や回答も参考にしてください。

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