急性気管支炎と慢性気管支炎の症状や治療法、家庭での注意点など

気管支炎には急性気管支炎と慢性気管支炎があり、それぞれ特徴があります。小さなお子さんは急性気管支炎にかかりやすく、慢性気管支炎は40歳以上の大人に多く見られます。それぞれについて、重要な事項をまとめましたので、参考にしてください。

  [その他, 感染症, 肺・呼吸器の病気]

更新日:2017年07月01日

この記事について

監修:医師(小児科専門医)

執筆:当サイト編集部

気管支炎とは

作者 Nesnad (投稿者自身による作品) [Public domain], ウィキメディア・コモンズ経由で

気管支とは、喉から肺にかけての気管が肺へ左右に枝分かれした部分をいいます。

この部分が何かしらの原因(ウイルスや細菌、喫煙など)によって炎症を起こしていると、咳や痰などの呼吸器症状を引き起こします。この状態を気管支炎といいます。

気管支炎には大きく2種類あり、一つは急性気管支炎で、ほとんどがウイルスや細菌、マイコプラズマなどによる感染症となります。

もう一つは慢性気管支炎で、数週間から数か月にわたって咳や痰などの症状が続きます。

慢性気管支炎の原因にはウイルスや細菌からの感染、成人では喫煙などもあります。

また、慢性の咳や痰などの症状を引き起こす病気として、気管支炎以外にも喘息、肺がん、間質性肺炎などの病気があげられます。

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気管支炎の種類

急性気管支炎

急性気管支炎は、そのほとんどが感染(ウイルスが大部分)に伴うものです。

ウイルスや細菌が上気道(鼻から喉にかけての部分)へ感染すると、しだいに気管支へ感染が広がり、気管支炎が発症します。急性気管支炎は基本的に長期間に及ぶものではありません。

子どもから成人までが感染する呼吸器感染症のひとつです。

慢性気管支炎

慢性気管支炎は気管や気管支が慢性的に炎症を起こし、咳や痰の症状が長く続き、それがそれ以外の病気によって引き起こされているのではない状態をいいます。

長く続く状態とは、1年のうち3か月以上痰を伴う咳があり、こういった状態が2年以上続いていることをいいます。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)について

また、慢性気管支炎と密接に関連した病気の概念として、COPD(慢性閉塞性肺疾患)があります。

COPDとは、気管支や肺の中の細気管支の炎症などにより空気の流れが極端に悪くなる気流閉塞などが生じているものをいいます。

COPDはタバコや粉塵などの有毒な粒子が主な原因となり、近年では患者数の増加が問題とされ、世界の死亡原因の高位にランクされています。

日本でも40歳以上の人に多くみられます。(※子どもの健康についてのサイトですが、ここでは慢性気管支炎やCOPDの説明も併せてしていきます。)

気管支炎の症状

急性気管支炎

急性気管支炎はウイルスや細菌が原因となります。ウイルスや細菌に感染すると、上気道(鼻や喉)に急性の気道炎の症状(咳、鼻水など)があらわれます。

その後、感染は気管支へ広がり、上気道の症状から数日後に痰が絡んだような咳や発熱が伴って、気管支炎が発症します。咳が激しい場合などは腹部の筋肉痛が生じることもあります。

症状が緩和して熱が下がり、ウイルスや細菌がなくなった後も、気管支の炎症はすぐに治まらないため、その後も咳の症状が残り、長いときには咳が数週間程度続くことがあります。

場合によっては肺炎に進行したり、高熱を伴ったり、全身倦怠感、呼吸困難を引き起こすこともありますので、注意が必要です。

一度、熱が下がった後に再び発熱したり、長期にわたって発熱したり、症状が次第に悪化するなどの状態が認められる場合には、肺炎への進行やその他の合併症を併発している可能性が考えられます。

特に小さい子どもの場合、気管支が細いため、気管支の壁に炎症が生じると気管支の内部がさらに細くなり、喘鳴(ぜーぜーという呼吸)が生じることがあります(喘息のような呼吸となることから、喘鳴を引き起こした原因は判らない場合でも症状にあわせて「喘息様気管支炎」と診断されることもあります)。

また、アレルギーの免疫反応と絡んで喘鳴の発作が生じることもあり、注意が必要です。

乳児は細気管支に炎症が生じていることも

1才未満の乳児に呼吸困難がある場合には、肺の中にある「細気管支」という細い気管支に炎症が生じている可能性があります。

これを「急性細気管支炎」といいます。

RSウイルス感染症から生じることがあり、乳児の場合や心臓や肺に基礎疾患を持った子、さらには早産児等においては重症化しやすいので、咳がひどい場合は早期に医師の診察を受けた方がいいでしょう。

慢性気管支炎

慢性気管支炎では、気管や気管支が慢性的に炎症を起こしているため、咳や痰などの症状が長期にわたって続くこととなります。特にタバコとの関係性が強調されています。

階段の昇降などの軽い運動での息切れ、動悸、風邪でないのに咳や痰が出るなどの症状がある場合は、慢性気管支炎の可能性がありますので気をつけてください。

COPDの場合

また、COPDの場合はタバコなどにより気道や肺胞に破壊が生じ、肺の働きが低下し、正常な呼吸が困難になります。

中年以降の人は、起床時に咳をともなった痰が出たり、何かの感染が加わった場合、痰にうみが混ざったり、痰が増加します。

慢性気管支炎やCOPDにおいては、症状が進行すると呼吸 困難や息切れを生じることとなり、呼吸困難、咳、痰の症状が日常の生理的変動の範囲を超えて悪くなる状態(増悪といいます。)を繰り返すようになります。

特に呼吸器への感染症や大気汚染によって、増悪の状態が引き起こされるといわれています。症状が重い人は増悪も重症化しやすくなります。

また、肺炎などの合併症をおこしやすくなり、治療が難しくなることもあります。

気管支炎の原因

急性気管支炎

急性気管支炎は、ウイルスや細菌などの病原体により引き起こされることがほとんどです。

原因となる代表的なウイルス・細菌

  • ウイルス・・ライノウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルスなど
  • 細菌・・・肺炎球菌やインフルエンザ桿菌、百日咳菌、その他マイコプラズマ、クラミジアなど

また、最初にウイルスに感染し、後で他の細菌など(肺炎球菌やインフルエンザ桿菌など)に感染して急性気管支炎を引き起こす場合もあります。

まれに刺激性ガスや粉塵などの有害物質の吸引が原因でおこることもあります。

慢性気管支炎・COPD

慢性気管支炎やCOPDについては、慢性的な喫煙が原因となることが多いです。

本来、気管や気管支には、気管の粘膜などから分泌する粘液に、外部から入ってくるほこりや細菌を吸着させ、それを喉の方へ押し出す(痰を排出する。)作用があります。

慢性気管支炎の状態になると、気管や気管支が慢性的に炎症を起こしているため、痰が喉に押し出されにくくなり、咳や痰が続く状態となります。

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気管支援の治療

急性気管支炎

急性気管支炎の治療方法としては一般的に対症療法となります。正しく治療をしていれば、1週間~10日程度で回復します。

薬は感冒の薬や咳止め、痰を切れやすくするための薬が処方されます。また、細菌感染が疑われる場合には抗生物質が必要となります。

なお、咳の症状が重い場合にはリン酸コデインやリン酸ジヒドロコデインなどの強めの鎮咳薬を使用することもあります。

しかしながら、気管支の中にある痰が出にくくなることがあるますので、必ずしも処方をされる訳ではありません。医師の診断のもとで処方された薬を使用するようにしましょう。

マイコプラズマによる気管支炎では、咳が激しくなることがあります。小さい子どもの場合は早めに医師の診断を受けるようにしましょう。

この場合、使用する抗菌薬はマクロライド系、テトラサイクリン系などの抗菌薬が有効となりますが、テトラサイクリン系(ミノマイシンなど)の抗菌薬には副作用などがありますので、処方された時には医師と相談して使用してください。

気管支炎になってしまった場合の家庭内における注意事項

気温が変化すると咳が出やすくなります。また、湿度があることで痰を柔らかくして出しやすくします。

エアコンを使用している際には、空気が乾燥してしまいがちです。快適に過ごせる一定温度を保てるように温度調整をしつつ、洗面器に水を張る等して湿度にも気を配るようにしましょう。

体力を消耗すると症状が悪化しますので安静にします。発熱があると水分が不足しますので、水分補給も忘れないようにしましょう。水分補給は痰を出やすくする効果もあります。

なお、以前に風邪をひいたときに処方された薬などがあっても、症状にあわず、効果がない場合もあります。また、薬を飲むことによって、医師の診察を受けた時に病気の発見が遅れることもあるようですので、自身の判断で家に残っている薬を飲むことをせず、医師の診断のもとで適切な薬を処方してもらうようにしましょう。

慢性気管支炎

慢性気管支炎の原因はいくつかありますので、治療においてはその原因に対して行う必要があります。

特にCOPDの場合、禁煙がもっとも重要な治療となります。

禁煙の効果はすぐに表れるものではなく、禁煙後も長期にわたって咳や痰が治まらないといったことがあります。禁煙による効果は長期的に考えなければなりません。

COPDの状態にもよりますが、治療は年単位で考えることが必要となります。進行の度合いによって薬物療法(気管支拡張薬など)や運動療法が適宜選択されます。

なお、COPDになると、一度破壊された肺や気管支は元の状態には戻りません。

医師の診断のもとで禁煙、薬物療法、運動療法、食事療法を行い、症状を軽減させることや、病気の進行を遅らせることが大切です。

重症化すると自力での酸素供給が困難になるため在宅酸素療法の適用も行われます。欧米では肺移植や肺容量減少手術(肺の悪い部分を切除)も一部では行われています。

気管支炎の予防

急性気管支炎

急性気管支炎に対する特別な予防法というものはありません。急性気管支炎はウイルスや細菌によるものとなりますので、予防法は感染症の予防と同様になります。

人混みを避けることや、外から帰った際に手洗い、うがいなどを行うことが最も効果的です。また、小さい子どもは抵抗力も弱いので、食事などにも気を使うといいでしょう。

慢性気管支炎

慢性気管支炎の場合についても、慢性気管支炎のもととなる病気に対する予防が必要になりますが。ここでは生活習慣において気をつけるべき一般的なことを記載しておきます。簡単なことだけですが、気に留めておいてください。

生活習慣で気をつけること

  • 喫煙は慢性気管支炎を悪化させるため、禁煙する。
  • 感染症の予防(インフルエンザや肺炎球菌等の予防接種も含めて)に心がけ、発熱やかぜの症状が出たらすぐに医師に相談する。
  • 毎日の散歩など、症状にあわせた適度の運動をする。(過度な運動は病状を悪化させるため、医師と相談の上行ってください。)
  • 人混みを避ける。

学校、保育園、幼稚園などへの登校・登園について

急性気管支炎については、ウイルスや細菌によるものが多くなります。

例えばインフルエンザウイルスについては、幼稚園や学校などへ登園・登校してはいけない期間があります。

感染症を引き起こした原因に応じて、医師と相談の上、登校や登園の時期を決める必要があります。

ウイルスや細菌が原因でない場合でも、症状などにより安静が必要なこともありますので、医師と相談の上で登校・登園の時期を決めた方がいいでしょう。

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看護師からひとこと

ウイルスは寒さに強く、湿度に弱いという性質があります。また、自身が快適に過ごすためにも一定の温度と湿度を保てるように調整をして過ごすようにしてください。

家が乾燥しているときは、室内に洗濯物や濡れタオルを干したり、加湿器をおくと湿度が保たれます。

風邪の流行時期には人混みを避けるなどの注意も必要です。インフルエンザのワクチン接種も予防法のひとつになります。

また、COPDの人が呼吸器感染症をおこすと、急に症状が悪化して呼吸困難の発作を起こすことがあります。そのため自己判断で「かぜ」と決めつけず、変調があるときは、なるべく早く受診することをおすすめします。

まとめ

  • 気管支炎には大きく2種類あり、急性気管支炎と慢性気管支炎があります。
  • 急性気管支炎は、ウイルスや細菌が主な原因として引き起こされます。通常は1週間~10日程度で回復しますが、感染するウイルスや細菌によっては長期化することや重症化することもあります。
  • 急性気管支炎にかかってしまったら、家の中の温度を一定に保つなどして、咳があまりでないような環境を整えることが大切です。
  • 慢性気管支炎は長期にわたって咳が続くことをいい、また気流閉塞を伴うものはCOPDと呼ばれ、主に喫煙が原因となります。
  • COPDの場合、一度破壊された肺や気管支が元の状態に戻ることはありません。医師の治療のもとで症状の軽減や、病気の進行を遅らせることが大切です。また、禁煙するなどの生活習慣への配慮が大切です。

参考文献・サイト

気管支炎について、多くの質問や回答が寄せられています。こちらも参考にしてみてください。

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