ダウン症の原因や確率とは?検査方法や費用、特徴などについて
更新日:2017年10月07日
目次
ダウン症の原因
ダウン症は染色体異常が原因で起こります。通常46本ある染色体のうち、21番目の染色体が1本多いことが原因です。染色体異常の中では最も多い疾患です。
加齢による卵子や精子の老化が原因と考えられています。
ダウン症の患者数とダウン症児が生まれる確率
ダウン症の患者さんは日本では5~6万人ほど存在し、新生児の1000人に1人の割合で生まれると言われています。母体が高齢化するほどダウン症の発症率は上がります。
また、ダウン症児の出生確率は、おおよそ次のようになることがわかっています。
- 20歳の母体 : 1,500人に1人
- 30歳の母体 : 1,000人に1人
- 40歳の母体 : 100人に1人
- 45歳の母体 : 30人に1人
【参考】不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会(厚生労働省)
胎児の診断、検査方法
胎児の診断にはいくつか方法がありますが、すべて保険の適用外となります。
スクリーニング検査(ダウン症の確率を調べる検査)
スクリーニング検査は、あくまでダウン症の「可能性」を調べるものです。
陽性と診断されてもダウン症ではないケースも非常に多く、また逆に陰性だったのにダウン症児が生まれることもあります。
スクリーニング検査で、ダウン症の可能性が高いとの結果が出た場合、より詳しい確定検査を受けることもできます。
超音波エコーによる検査
もっとも簡単な検査です。おなかの上にエコーを当て、胎児の各部位の厚みや骨の長さなどを計測して、ダウン症の可能性を判断します。
首の後ろに厚みがあり(概ね6mm以上)首の長さが短い、手足が短い、鼻の骨の形成が遅い、頭が大きい、後頭部にむくみがあるなどによって総合的に判断されます。
血清マーカー(クアトロテスト、トリプルテスト)
まず、血中の4つ、もしくは3つの成分を調べます。
そのうえで、妊婦の年齢や妊娠週数や持病などの条件を加え、総合判断をして陽性、陰性の結果を出します。
血清マーカー検査の時期や費用など
- 検査時期:妊娠15~21週
- 結果判明:10日程度
- 費用 :1~2万円程度
血清マーカー検査は、あくまで染色体異常が起こっている確率を調べる検査であるため、陽性の場合であっても、確定診断を得るには、羊水検査や絨毛検査を受ける必要があります。
新型出生前診断(NIPT)について
新型出生前診断では、母体の血液中のDNA(胎児由来の遺伝子)を調べるため、高い精度があります。
血清マーカーとは検査手法が異なることに加えて、以下の点に留意してください。
- NIPTは現在、臨床研究の一つとして行われていること
- 受けることができる妊婦さんの条件が決まっていること(下記参照)
- 検査に関して十分な説明を受けた上で、今後の研究などにデータが活用されることについて同意を求められること
- 遺伝カウンセリングを受けることが義務になっており、限られた施設でのみ行われていること
新型出生前診断(NIPT)は、次の要件に当てはまる人のみ、受けることができます。
NIPT検査を受けるための要件
- 出産予定日に35歳以上になっている。
- 以前にダウン症を含む染色体異常児を出産したことがある。
- 胎児の父か母が、染色体異常の胎児を妊娠する可能性の高くなる染色体転座保因者である。
- エコー検査や血清マーカー検査で染色体異常の可能性が高いと指摘されている。
新型出生前診断の時期や費用など
- 検査時期:妊娠10~22週
- 結果判明:2週間後
- 費用 :20万円程度
新型出生前診断(NIPT)の精度について
新型出生前診断は99.1%の陽性的中率がありますが、これは実際にNIPTで陽性であった場合に、生まれてくる子供の99.1%がダウン症だということです。逆に言えば、NIPTで陽性と出ても、1,000人に9人は誤った結果であるということです。
NIPTなどの検査では陽性反応であっても確定とは言えないため、この後に確定診断を受ける必要があります。
確定診断
ダウン症の確定診断には、羊水検査と絨毛(じゅうもう)検査があります。
羊水検査
おなかに注射針を刺し、羊水を採取し、その中にある胎児の細胞に遺伝子異常がないかを調べる検査です。
検査のリスクとして200人から300人に1人程度、流産の可能性があります。検査結果の精度は99%程度とされています。
羊水検査の時期や費用など
- 検査時期:妊娠15~18週
- 結果判明:2週間から4週間程度
- 費用 :15万円程度
絨毛(じゅうもう)検査
羊水検査と同じように、お腹に検査用の針をさして、赤ちゃんの胎盤になる絨毛(じゅうもう)を取り、検査します。
検査のリスクとして300人に1人程度(100人に一人程度という報告もあります。)の流産確率があります。検査結果の精度は99%程度とされています。
絨毛検査の時期や費用など
- 検査時期:妊娠9~13週
- 結果判明:2週間程度
- 費用 :15万円程度
最近の出生前診断
2014年の秋に登場した出生前診断で、新型出生前診断より新しいものです。
血清マーカー&エコーを組みわせた診断で、陽性反応が出る精度は8割程度と低めです。また、受ける人の条件はありません。
上記の血清マーカーが3種、4種のマーカーを調べるのに対し、このテストでは2種のマーカーを調べます。新しく登場した技術というよりは、ダウン症と18トリソミーという染色体異常の有無を知ることに特化した、新しい枠組みの検査といえるでしょう。
最近の出生前診断の時期や費用
- 検査時期:11~14週
- 費用 :2万5千円程度
新生児の診断
見た目である程度わかるため、その段階で診断されることも多いですが、血液検査(染色体を調べる)で確定診断をするかどうかは保護者の希望によることが多いようです。
生後すぐ~1か月あたりから診断可能です。費用は健康保険(乳幼児医療証)が適用されるため、基本的には無料です。
ダウン症児の特徴
身体的に特徴がある。
顔ではっきりわかるのが最大の特徴です。(丸顔、凹凸がない、目の間隔が広くつり目など、口唇裂・口蓋裂を伴う場合もある)
手足や指が短い筋肉が柔らかく、筋肉量が少ない(ぷにっとしたイメージ)そのため運動や、平衡姿勢を維持するのが難しく、転んでけがなどをしやすいです。
また、小柄で体重が増えにくいことが多いです。
知的発達の遅れ
IQ20~60以下が多く、多くの場合、療育手帳を取得することが可能です。
発達に健常者の倍程度の時間がかかります。(ただし個人差が大きいです。)
併発する病気について
心疾患について
心疾患が1番多く見られます。具体的には、心房中隔欠損、心室中隔欠損、心内膜床欠損 ファロー四徴症などの疾患がみられます。
心疾患がある場合の対策など
必要に応じて手術をします。心臓が弱く体力がないため、ミルクや食事を小分けに取ると良いでしょう。
消化器疾患について
主に、十二指腸閉鎖、腸狭窄(いずれも胎児期に解ります)、鎖肛(肛門がない、小さすぎる)、ヒルシュスプルング病(腸の神経が無い)などがみられます。
消化器疾患がある場合の対策など
緊急性が高く、すぐ手術をした方がいい場合もあります。運動をすることや、水分を多めに摂取するなど、日常生活で、腸機能を維持する工夫が必要となります。
また、トイレトレーニングにも工夫が必要になります。
目の疾患について
近視、遠視、乱視が多く見られます。また、斜視、先天性白内障なども見られることがあります。
目の疾患に対する対策など
知的障害を加速させないために、メガネなどで早目に視力矯正をするのが望ましいです。
耳の疾患について
難聴、中耳炎(耳の穴が小さく、感染症に弱いため)が見られます。
耳の疾患の対策など
難聴は知的障害を悪化させ、言語習得に支障が出るため、補聴器などで早目に矯正しましょう。
また、ダウン症児は耳の穴が小さいため、耳垢を小まめに取ることも大事です。耳鼻科でしてもらうと良いでしょう。
甲状腺機能低下症
気力や集中力の低下が見られます。
甲状腺機能低下症の対策など
ホルモン補充療法などの治療をします。
糖尿病など
糖尿病にかかった場合、糖尿病性網膜症や、神経障害、病腎症などの2次的な合併症を発症しやすくなります。
その他、てんかんや自閉症を持っていたり、中年以降、アルツハイマー型認知症を発症したりする確率が高くなります。
ダウン症児の性格
人懐っこく周囲に好かれる性格が多いです。他人に対して思いやりがあるなど、想像力を使うことは得意です。
抽象的なことを理解するのが苦手なことが多いため、具体的な言葉で説明をするとよいでしょう。
音で物を理解するのが苦手なことも多く、視覚情報は比較的得意なため、文字で説明する方が効果的なこともあります。美術や絵画が得意な子も多いです。
ダウン症児の教育について
知的レベルや感情の発達は個人差が大きく、普通学級、特別支援学級のどちらを選ぶかはケースバイケースです。
また日常生活が自分1人で出来ないことも多く、ケアが必要になります。
運動について
虚弱で、筋肉が少なく転んでけがをしやすいため、体育の授業には配慮が必要です。
食事について
ダウン症児には肥満が多いです。運動不足に加え、咀嚼力が弱く、一気に食べてしまうため、量を多く食べる傾向にあるためです。量を小分けにして、箸やスプーンなどを使えるようにする工夫も大切です。
生活指導
歯磨きをしっかりすることを、教えましょう。
衣服の脱ぎ着や、排せつのタイミング指導、トイレの使い方も大事です。ラベルを貼ったりする方法が効果的と言われます。
ダウン症児の支援制度など
ダウン症による心身の障害を金銭的、物理的に支援してくれる制度があります。障害の程度により、受けられる支援は変わります。
療育手帳の交付
知的障害がある人のための手帳です。制度自体は国で定められていますが、手帳の呼び名、判定やサポートは各地方自治体により異なります。
また、IQなどの程度に応じた段階があり、地方自治体によって多少異なるところがありますが、概ね4〜5段階程度に分かれています。
申請方法
お住まいの市区町村の窓口で申請を行います。その後、知的検査、保護者への聞き取り調査、本人との面接(1~2時間かかります)を経て、約1か月後に手帳が交付されます。
手当の給付など
特別児童扶養手当、障害児福祉手当が受けられます。また、成人以降になると、特別障害者手当を受けることもできます。
その他、地方自治体によって異なりますが、医療助成や税金の免除、交通機関の運賃免除などを受けられることがあります。(所得制限がある場合もあります。)
詳しくは、お住まいの市区町村へお問い合わせください。
特別児童扶養手当
心身に障害のある20歳未満の児童を扶養している場合に支給されます。1級で月額5万円程度、2級で月額3万5千円程度です。支給額は物価の変動などにより毎年見直されています。
診断書により級の判定がされますが、療育手帳を持っている場合は、診断書の提出が不要な場合もあります。
障害児福祉手当
特別児童扶養手当と同様、心身に障害のある児童を扶養している場合に受けることができます。月額1万5千円程度になります。
特別児童扶養手当と合わせて、両方の受給が出来ます。
身体障害者手帳
身体に障害がある場合に、交付される手帳です。税金免除や医療費助成が受けられます。
また、障害年金などの支給もあります。
教育支援
専門施設で乳児期から、いろいろな訓練が可能です。早期から行う方が効果的と言われています。
全国の児童相談所、自治体の保健福祉センターや小児科に療育施設やプログラムがあります。
その他、支援団体などのリンクを貼っておきます。
同じ病気の仲間に会うことで、育児の負担も軽減できますし、またダウン症の子供は、ダンスや絵画などの才能に秀でている子が多く見られます。
早期から、適切な療育を受けることで、将来、社会生活に適応しやすくなります。
看護師からひとこと
ダウン症というと、先天性障害=病気、というマイナスなイメージばかりが付きまといます。確かに、心臓の病気や、消化器の病気など、特に小さいころには本人やご家族に苦労が多い病気です。
けれど、厚生労働省が2015年にダウン症の方に行った大規模アンケートでは、「毎日幸せに思うことが多いか」という質問に対し、ダウン症の方の90%が「はい」ないし「ほとんどそう」、と答えたそうです。ダウン症を持つ方のほとんどが、ダウン症を持たない人以上の幸せを感じながら、日々生きています。
生まれる前に、または生まれてから、子供がダウン症だと分かったときに、ご家族のみ、または親御さんだけで抱え込まず、地域の福祉センターなど、身近な窓口に、早めにご相談ください。
まとめ
- ダウン症児は染色体異常が原因の病気で、高齢出産に多い傾向があります。
- スクリーニング検査は、胎児がダウン症である確率を調べるもので、確定診断ではありません。
- 新生児期の診断は、顔で概ね検討がつきます。ダウン症自体の治療方法はありません。
- 美術などの才能に秀でている子も多いです。
- 性格は温厚で人に好かれるタイプが多いです。
- 身体の病気を併発していることが多いです。
- 日常生活に様々な支障をきたすため、そのための生活指導が必要です。
- 行政的支援には、金銭的、物理的な施策が多くあります。
- 全国にダウン症児を持つ子の会などがあるので、積極的に活用しましょう。