プール熱(咽頭結膜熱)の症状や予防法、家庭での注意点、感染経路など
更新日:2017年05月23日
プール熱(咽頭結膜熱)とは
プール熱(咽頭結膜熱)は、高熱・咽頭炎・結膜炎などを主な症状とする急性ウイルス性感染症です。
ウイルスは数種のアデノウイルスによるもので、アデノウイルスは特に季節性がなく年間を通じて発生します。
プールに関連して水やタオル等を媒介して集団感染することもあることから、「プール熱」ともいわれています。
プール熱(咽頭結膜熱)の発生は、例年、6月頃から患者が増加し始めて、7~8月頃がピークとなります。
プールを介した感染が多くなるため、夏場に流行することが多く夏風邪の一種ととらえられていますが、アデノウイルスに季節性はなく、一年中感染するものと捉えられるようになってきています(国立感染症研究所)。
近年では夏以外の時期(特に冬季)でも患者が増える傾向にあり、病院や施設、デイケアセンターなどでの発生も報告されています。
感染者は幼児から学童にかけてかかりやすく、ワクチンはない
大人も感染しますが、感染者は幼児から学童にかけて多くなっています。(広島市衛生研究所)
感染するとアデノウイルスが人の体に寄生し、約5〜7日の潜伏期間を経て、喉の痛み、結膜炎、高熱などの症状が発生します。
プール熱もインフルエンザも同様に高熱を発しますが、プール熱とインフルエンザの違いの一つは、インフルエンザはワクチン(予防接種)がありますが、プール熱にはワクチン(予防接種)がないということです。したがって、予防が大切になります。
プール熱の感染・感染経路
アデノウイルスは、感染者の目や喉からの分泌物、便などから感染します。
それらは、主に保育園・幼稚園・学校等のプールの水を介して、口、鼻、喉、目の結膜から体内に入ってきます。
その他に、くしゃみなどの飛沫感染、感染者が使っていた食器やタオルを共用することによる接触感染があります。
アデノウイルスは感染力が非常に強く、家族に乳児がいる場合、他の子が感染すると乳児にもうつる可能性があります。 アデノウイルスの潜伏期間は5〜7日間程度です。
回復しても排泄物にはウイルスが
症状がなくなり、元気になっても、数週間は排泄物にウイルスが残っています。
ウイルスを持った子どもがトイレに行った際に十分に便をふき取らずにプールに入ってしまうと、そこから排出されるウイルスがプールの水を通じて体内に入り込み、感染してしまうこととなります。
したがって、感染者は回復後も、手洗いうがいをしっかりと行うことが大切です。
プール熱の症状
主な症状は喉の痛み、目の充血、高熱
感染後5~7日間の潜伏期間を経て、38~40度の高熱とともに、喉の腫れや結膜炎が出てきます。
喉の腫れがひどい場合は扁桃腺炎を発症することもあります。結膜炎を伴う場合は、目の痛みがあり、白目やまぶたの裏側が赤く充血し、涙や目やにが出ることがあります。
ただし、結膜は化膿したり、角膜がおかされることまではないと言われています。他には、頭痛、鼻水、咳などの風邪の症状や、全身の倦怠感、下痢や腹痛、嘔吐を伴うことがあります。
発熱、結膜炎、喉の腫れの3つの症状は、必ずしも同時に現れるとは限りません。目がショボショボしたり、眩しいといった症状と前後して、高熱が出てくるケースも多くあります。
新生児や乳児は重症化することも
典型例では、喉の痛み、目の充血、高熱といった3つの症状が出てくるので、診断がつきやすいといえますが、中にはこうした症状がはっきりしない場合もあります。
特に新生児や乳児の場合はもともと免疫力が弱いことから、ウイルスのタイプによっては重症化しやすいことも知られています。
脱水症状に注意
プール熱(咽頭結膜熱)の高熱は、普通の夏風邪と比較して、熱が下がりにくく長引きやすいのが特徴です。
熱が続く上に、喉の痛みがとても強く食欲が減退し、脱水症状を起こすこともあります。特に乳児が感染した場合は、幼児以上に脱水症状に陥りやすいので注意が必要です。
また、腸間膜リンパ節炎、脳炎、呼吸器症状(重症肺炎など)といった合併症を起こすことがあります。
腸間膜リンパ節炎は虫垂炎(盲腸炎)と同じような症状のため間違われることがあり、脳炎は命にかかわる疾病ですので、いずれにしても、早めに医療機関を受診する必要があります。
主な症状をまとめると・・・
- 高熱38~40度の高熱が4~7日間程度続きます。有熱期間が長いため、元気もなくなっていきます。
- 喉の痛み喉が赤く腫れ、食べ物の摂取が困難になります。咳が出て、扁桃腺炎を伴うことも多くなります。
- 結膜炎目が赤く充血し、痛み、涙や目やにが出て、目を開けているのがつらくなります。
プール熱に似た「はやり目」とは
ちなみに、プール熱(咽頭結膜熱)に似た症状で、「はやり目」と呼ばれる流行性角結膜炎という病気があります。
プール熱同様、感染力が強いため周囲に感染している人がいたら注意してください。
プールを介してや、タオルを共有することで感染します。
症状はプール熱よりも重く、白目が真っ赤に充血し、目が開かないほどにはれ、涙や目やにがたくさん出ます。
1才未満の子がかかると細菌感染を同時に併発し、角膜が破れる等の重篤な症状となることもあります。いずれにしても、早期に医師の診断を受けることが大切です。
プール熱の治療
プール熱(咽頭結膜熱)に特効薬はありません。
普通の風邪と同じように、出ている症状に対する対症療法が中心となります。
高熱、喉の痛みや頭痛に対しては解熱鎮痛剤、結膜炎に対しては目薬が処方されます。
細菌による二次感染を発症した場合には抗生物質が処方されることもあります。
医師の診察を受けて、指示通りに家庭で過ごすことが大切です。家庭での主な留意点をあげておきます。
家庭における留意点
- 免疫力が落ちないよう、安静と十分な睡眠を確保する。
- 脱水症状を避けるため、こまめに水分を補給する。
- 高熱でぐったりして元気がない時は水分補給を促し、医師から処方された解熱剤を使用する。(それでもグッタリしているようなら再度受診する。)
- 喉の痛みがひどい場合は、うがい薬やトローチ、鎮痛剤を服用する。
- 目やにがひどい時は清潔なガーゼで優しく拭き取り、目薬をさす。(清潔なガーゼはドラッグストアにもある「清浄綿」が良いでしょう。)
目薬のさし方
- 赤ちゃんを仰向けに寝かせて、頭の両横をひざで挟んで、やさしくしっかりと固定します。
- 手を伸ばしてくる時は、伸ばした足で腕も抑えるといいです。
- 手で目を開いて1~2滴目頭に落とします。
- 目薬の容器の先がまつげについてしまわないように気をつけてください。(中に細菌が入ってしまって薬の効果がなくなることがあります。)
プール熱(咽頭結膜熱)にかかった子どもは高熱のため、体力を消耗します。また喉の痛みのため充分な食事が取れないこともあります。
喉越しのよい物(プリンややわらかいうどんなど)を食べさせるようにしましょう。
食べられない時は無理に食べさせる必要はありませんが、水分をしっかりとって脱水症状を起こさないようにすることが大切です。
高熱が続きますので、保護者の方は不安になるかもしれませんが、ほとんどの場合は1~2週間程度で完治します。
病状が急変した際や、水分をとらない、高熱が下がらないなどの場合には、脱水症の評価や合併症の有無を検索する必要もあるため、速やかに医師に相談してください。
感染を広げないために
プール熱(咽頭結膜熱)は伝染病ですので発症後、主要な症状(高熱、目の充血、喉の痛み)がなくなってからも、2日間を過ぎるまでは登校・登園禁止です(学校安保健安全法の規定(後述))。
目やにが出ている間は他人に移す可能性があります。目やには、目頭から目じりに向かって濡らしたガーゼやティッシュを使用し、両目別々のガーゼで拭きとるようにしましょう。
また前述の通り数週間、便にウイルスが排泄されることも知られています。
症状のある本人はもちろん、プール熱にかかった子どもの世話をする人の手から、別の子どもに感染させてしまうこともあります。
よく手洗いをするよう留意が必要です。
顔を拭いたタオルや、目をこすった手などから感染するので、タオルや洗面用具などの共用は避けましょう。
プール熱(咽頭結膜熱)にかかった人が使ったタオルなどは、健康な人の洗濯物と別に洗うようにしましょう。
おもちゃや寝具等に明らかな汚染がある場合には、塩素系の漂白剤、90%アルコール、もしくは煮沸消毒するとよいでしょう。
プール熱の予防
現在、アメリカ合衆国では軍人を対象にしたワクチンが一部導入されているようですが、日本で認可されているワクチンはありません。(横浜市衛生研究所)
アデノウイルスは感染力が強く、体外でも数日生き延びることができるため、簡単に拡散することとなります。
したがって、次のことに気をつけて予防することが大切となります。
手洗いとうがいをする。
家族内に感染者がいる場合など、家族間で感染が起きないよう石けんや流水による手洗い、うがいを頻繁に行うことが大切です。
感染源はプールに限らないことに留意しましょう。
プールに入る前後には、シャワーをしっかりと浴びる。
プールに入る前後には、きちんとシャワーをしてプールの水を流します。
タオル、洗面器、食器は共有しない。
アデノウイルスは接触感染しますので、同じタオルや洗面器の共有を避け、洗濯も別にする必要があります。入浴の順番も感染者を最後にするなどの配慮が必要です。
目やになどを拭いたティッシュも感染源となりますので、ゴミや汚れものの取り扱いにも注意してください。
おむつ替えに気をつける。
感染者の症状が消えた後も2週間程度(場合によっては1か月以上)は便や唾液の中にウイルスがいます。
しばらくの間は、排便後の子どもの手洗いを徹底させることが必要です。
また、乳児が感染した場合は、おむつ替えの後には石けんでよく手を洗うなど、排泄物等の取扱いには十分に配慮をしましょう。
感染者の分泌物(鼻汁・唾液など)との接触を避ける
接触感染や飛沫感染がありますので、ウイルスの感染を防ぐには、接触を避けることが大切です。
ウイルスは鼻水、唾液等に多く含まれますので、手洗いうがいを徹底し口から侵入しないようにすることが必要です。
学校関係の注意
プール熱(咽頭結膜熱)は、学校保健安全法で第二種伝染病に指定されています。
このため、主要な症状(高熱、目の充血、喉の痛み)がなくなってから、2日間は原則として学校への出席は停止となります。
熱が下がってから後は、ウイルスの感染力は非常に弱くなるため、登校禁止の期間は2日間になっているようです。
しかし、症状が消えても約1か月程度は排便などによりウイルスが排出されるため、登校・登園許可が下りた後も感染予防対策を継続して講じることは必要です。
出席停止は、病院で感染が確認された時点からということになります。
主要な症状がなくなってから2日間を経過すれば登校可能ですが、一般的には熱が下がってから2日経過で登校可能の許可を出す医療機関が多いようです(登校時期については医師の指導に従ってください。)。
学校安全保健法施行規則第19条(出席停止の期間の基準)
第2号 令第六条第二項 の出席停止の期間の基準は、前条の感染症の種類に従い、次のとおりとする。
ト 咽頭結膜熱にあつては、主要症状が消退した後二日を経過するまで。
大人への感染
主に幼稚園児や学童がよくなる病気ですが、大人は感染しないということではありません。
アデノウイルスは感染力の強いウイルスです。症状は高熱が続いたり、喉にひどい痛みが生じることもあります。
子どもを看病していて、大人が感染してしまうこともあるので、看病している人は、手洗いうがいをしっかりと行うことや、タオルなどを共有しないことなどに気をつけてください(予防の項目を参照してください。)。
看護師からひとこと
小さな子どもは、鼻水が詰まるだけでも目やに(眼脂)が出て、目があけられなくなることもあります。
もしひどい目やにのある場合は、小児科だけでなく、眼科も併せて受診しましょう。
まとめ
- プール熱(咽頭結膜熱)急性ウイルス性感染症で、その名前から夏風邪の一種と思われていますが、通年、感染することもあるため常に注意が必要です。
- 目や喉からの分泌物、便などから感染するため、プールの水を媒介して感染しやすくなります。
- プール熱(咽頭結膜熱)の発生は、例年、6月頃から患者が増加し始めて、7~8月頃がピークとなります。冬季の流行もありえます。
- 感染者は幼児から学童にかけて多く、大人も感染します。
- 感染すると約5〜7日で発症します。
- 喉の痛み、結膜炎、高熱などが主な症状となります。
- 感染した場合、まれに重い合併症と伴うことがあるため、症状が出たら医療機関への受診が必要です。特に新生児や乳児には注意が必要となります。
- 特別な治療法はなく、風邪と同様に対症療法となります。
- ほとんどの場合は1~2週間程度で完治します。
- 感染予防には、手洗い・うがい、プールに入る前後のシャワー、おむつ替え時の注意、感染者との接触を避けることが重要です。
- 感染した場合は、学校保健安全法により、症状がなった後2日を経過するまで出席停止となります。