マイコプラズマ肺炎は予防が大切!症状や治療法、妊婦の感染などについて
更新日:2017年07月27日
目次
マイコプラズマ肺炎とは
マイコプラズマ肺炎は、細菌である「肺炎マイコプラズマ」に感染することによって起こる呼吸器系の感染症です。感染すると免疫が反応して肺に炎症が起き、様々な症状が出てきます。
子どもや若い人がかかる肺炎の中では、比較的多くみられます。感染者のうち80%程度が14歳以下で、8歳から9歳が最も多いとされ、成人も感染します。
感染者は冬に増加する傾向がありますが、 近年では夏にも増え、1年を通じてみられます。
1984年と1988年に大流行したため、4年おきに大流行する感染症として「オリンピック熱」と呼ばれていましたが、現在はオリンピックの開催と関係なく流行がみられるようになりました。例年、秋から春先にかけて小流行が確認されています。
通常の細菌とは違う特徴がある
原因となる肺炎マイコプラズマは細菌ですが、その大きさは通常の細菌よりかなり小さく、通常細菌が保持している体の外側の壁がありません。
ペニシリン、セフェム系などの代表的な抗生物質は、細菌の壁を壊して細菌を殺すという作用がありますが、これらの抗菌薬では、細菌の外側に壁のない肺炎マイコプラズマに対して全く効果がないのが特徴です。
マイコプラズマ肺炎の症状
初期症状は風邪に似ていて高熱もある
初期症状は、風邪のような症状で、いわゆる感冒症状が出ます。具体的には以下のような症状になります。
- 発熱(37度くらいの微熱から39度くらいの高熱)
- 疲労感
- 頭痛
- のどの痛み
- 咳
- 喘息があると喘鳴(ゼーゼーする呼吸)
幼児の場合は鼻炎の症状も出てきます。
乾いた咳から重い咳へ
最初は乾いた感じの咳が出ますが、徐々に重くなっていきます。特に5歳くらいを過ぎてから感染した場合は、タンが絡むような咳が出てきます。また、熱が下がってからも咳が1か月程度続くこともあります。
下痢や胸の痛み、湿疹が出ることも
マイコプラズマ肺炎は感染しても気管支炎程度の症状ですみます。特に乳幼児の場合は軽い症状で済むことが多いですが、乳幼児より年齢が上(大人も含めて)の場合は肺炎の症状を伴うことがあります。
感染者の1/4程度は咳がひどくなると胸の痛みも出てきます。また、消化器に症状が出ることもあり、下痢や嘔吐などの症状も出てきます。その他、湿疹が出ることもあり、広い範囲に盛り上がったように現れることがあります。
さらには、重症になると肺に水がたまること(胸水貯留)もありますので、注意が必要です。
マイコプラズマ肺炎の検査・診断
検査や診断にはいくつか方法がありますので、一つずつポイントを説明します。
喉のぬぐい液で行う迅速検査(抗原キットを使用)
喉のぬぐい液とは、口を開けた時に見える一番奥の喉を、専用の器具(綿棒のようなもの)でこすって採取したものです。
プライムチェックやリボテストなどの検査キットがあり、病院で検査して20分程度で結果が出てきます。精度は他の検査と比較すると高くはないようですが、簡易な検査でその場で判明することから、主流の検査方法になりつつあります。
ただし、インフルエンザキットほどの普及していないこともあり、どの医療機関でも採用しているわけではありません。(2016年12月現在)
なお、この検査キットについては、平成25年8月に厚生労働省から保険適用が認められています。
喉のぬぐい液で行うもう一つの検査法(LAMP法)
プライムチェックなどと同様に喉のぬぐい液を使用した検査です。この検査は抗原キットよりも以前からある検査方法で、マイコプラズマの遺伝子を検出するので、精度が高い検査です。ただし、検査の結果が出るまでに時間がかかります。
血液検査で抗体を調べる方法
マイコプラズマに感染すると、IgG抗体やIgM抗体などの抗体が、血液中に現れます。これを2回に渡って検査して診断を行うというものです。2回の検査タイミングは以下のとおりです。
- 感染して少し経ってから
- 2週間ほど経ってから(回復している頃)
この2回の抗体の量を調べて、その変化をみるのです。検査は正確なものとなりますが、2回目の検査の時はすでに回復していることもあり、しっかりと2回採血して診断することは難しい実態があります。
なお、白血球の値などは正常な値を示すことが多いため、診断には使用しません。
レントゲンの検査
レントゲンでは、薄い影が現れるのが特徴となりますが、他の肺炎との区別が難しいこともあって、あくまで補助診断として使用されるにとどまることが多いです。
マイコプラズマ肺炎の感染・潜伏期間
咳や唾液、接触で感染するが、感染力は弱い
咳や唾液などの飛沫感染、または接触により感染します。感染には密な接触が必要なため、感染拡大の速度は比較的遅く、短期間に爆発的に拡大するようなことはありません。
保育園や家庭では感染に注意
保育園、幼稚園、学校、家庭などの小さな範囲では、周りの人と近くで接触することが多くなりますので、流行することがあります。また、友人、恋人など間柄でも感染する可能性が高いといえます。
感染期間は2か月以上になることも
マイコプラズマ肺炎は気管支から肺にかけての気道に感染します。感染からは以下のように推移していきます。
- 潜伏から発症までの潜伏期間は通常1週間から3週間程度(長いときで4週間程度)
- 発症している期間は、通常1週間から2週間程度
- 回復期は咳だけが続くようになります。長い時は1か月程度かかる場合があります。
この発症から回復期は、他人に感染する可能性があり、その期間はトータルで2か月以上になることもあります。
マイコプラズマ肺炎の感染力は一般的に弱いですが、感染期間が長期に渡るため、小規模ながらも流行がみられることがあります。また、感染して一度免疫を獲得しても、免疫が長く続きません。大人であれば何回か感染することで抵抗力がつき、感染しにくくなりますが、子どもの場合は繰り返し発症する可能性があります。
マイコプラズマ肺炎の治療
抗生物質での治療が基本
マイコプラズマ肺炎の治療は抗生物質による治療が基本となります。ただし、薬によっては副作用があり、子どもに対して使用すると永久歯に影響するようなものもありますので、医師の管理のもとで治療を受けるようにしましょう。
ワクチン・予防接種について
マイコプラズマ肺炎には予防接種やワクチンはありません。
予防法は一般的な感染症予防
マイコプラズマ肺炎は予防が重要ですが、特別な予防方法はありません。他の感染症と同様に流行期には一般的な感染症予防を行い、感染している人との密な接触は避けることなどが大切です。以下にポイントを記載しておきます。
うがい、手洗いをする。
保育園や学校などでは、友達と遊ぶ際に近くで接触することも多く、咳やくしゃみによって感染することも考えられます。小さい子だと鼻に指を入れることもあるでしょう。帰宅したらしっかりと手洗い、うがいを行う習慣をつけておくことが大切です。また、流行期などには、学校などで日に何回かうがいや手洗いをすることも大切です。
身の回りの消毒、手洗いにはアルコール消毒
マイコプラズマには、ノロウイルスと違いアルコール消毒が有効です。家族に感染している人がいる場合には、ドアノブなどを消毒しておくといいでしょう。また、アルコール消毒できるものを洗面所においておけば、手洗いの際に簡単に消毒することができます。
マスクをつける
小さいお子さんだとマスクをつけるのは難しいかもしれませんが、感染する可能性のある場所、電車や人混みの中に行く時だけでも着用するといいでしょう。
マスクは顔との間に隙間ができないように着用するように注意して、一度使ったマスクはいろいろな菌がついている可能性がありますので、捨てるようにしましょう。
密な接触はさける
感染している人と同じ部屋で寝ることで感染する可能性があると言われています。家族に感染者がいる場合は十分に気をつけてください。
また、十分な睡眠をとって体力を回復させることも重要です。
学校や保育園・幼稚園への登校・登園の時期について
マイコプラズマ肺炎は、学校保健安全法においては感染症の第三種「その他の感染症」に含まれます。第三種のその他の感染症については、法令上は具体的な病名が記載されているものではありません。また、何日間は出席停止しなければいけないといった期間は決められていません。
学校保健安全法施行規則(抜粋)
第十八条 学校において予防すべき感染症の種類は、次のとおりとする。
一、二 略
三 第三種 コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス、流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎その他の感染症
マイコプラズマ肺炎は、第18条第1項第3号の「その他の感染症」に含まれます。
ガイドラインの基準
法令の定めはありませんが、厚生労働省は「保育所のおける感染症ガイドライン」において、保育園への登園について次のようい記述しています。
発熱や激しい咳が治まっていること(症状が改善し全身状態が良い)
急性期を過ぎて症状が改善して、熱が下がり、激しい咳などの症状が治れば登園できるということです。心配な場合は、医師と相談して登校や登園の時期を決めるといいでしょう。
なお、ガイドラインでは、登園の目安として、市町村や病院とともに「登園届」を作成し、医師や保護者が意見などを記入して登園の基準とすることもできるとしています。ただし、これは保育園が単独で決めるものではありませんので、市町村などと連携して地域で決めるものとしています。
マイコプラズマ肺炎の合併症など
マイコプラズマ肺炎の合併症としては、通常の気管支炎、肺炎、気管支喘息(もともと喘息がある人などは咳が多くなり、喘息発作が引き起こされることがあります。)を併発することや、発疹、中耳炎、副鼻腔炎などがみられます。
まれに心臓に心筋炎や心外膜炎もみられます。その他には、関節炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎、寒冷凝集素症による溶血性貧血、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群などがあります。
大人への感染
前述のとおり、マイコプラズマ肺炎は大人も感染します。大人が感染しても子どもと同じような症状が生じますが、重い症状になりやすいです。
特に若い人の場合、免疫がしっかりとできている分、マイコプラズマに対する免疫反応が大きくなり、症状が重くなりやすいと言われています。
また、高齢者の感染も増えていて、合併症などで重傷化する可能性もありますので、すぐに医師に診察してもらうようにしてください。
咳は湿った咳となり、呼吸も苦しい
咳は大人の方が子どもよりも湿ったものになり、タンが絡むような感じで続きます。また、さらにひどい咳になったり、呼吸も苦しくなったりすることがあり、眠れないほどひどくなることもあります。
熱は高熱も微熱もある
発熱の症状もあり、1週間ほど高熱が出る人もいれば、微熱が2週間ほど続くこともあります。
入院治療になる人も結構います
気管支炎などを併発する人もいて、大人の場合は特に入院治療が必要となることがあります。抗生物質ですぐによくなる人もいますが、1週間程度の入院になってしまう人もいます。
会社への出勤について
子どもの保育園や学校と同様に、出勤が停止になる期間について法令による定めはありません。ただし、大人の場合は症状もきついと思いますので、医師とよく相談し、場合によっては会社の規定なども確認した上で、出勤する日を判断するようにしましょう。
二次感染に注意
感染期間が長いため、二次感染を起こすことが多いので、小さなお子さんがいる家庭、職場などにおいて流行しないよう、手洗い・うがい、マスクの着用などを心がけてください。
妊婦さんへの感染
妊娠している人がマイコプラズマ肺炎に感染すると、抗生物質などの薬の影響が気になるところです。また、高熱が続くこともあり、自然治癒に頼っていいものかというのも難しいところ。これは、授乳中のお母さんにも言えることです。
いずれにしても、個人で何か判断できるものではありませんので、病院へいくことが重要です。抗生物質でも、妊婦さんに使用できるものがあり、場合によっては入院しながら治療を受けることもあります。医師ときちんと相談して治療を受けるようにしましょう。
看護師からひとこと
最初はただの風邪かも・・・と思っていたら長引く咳で、あとから「あれはマイプラズマ肺炎だった」とわかることも多いです。
たかが風邪でも早期の受診をお勧めしますが、特に咳が出だしたら「こじらせてきた証拠」ととらえ、必ず受診しましょう。
まとめ
重要な部分について、ポイントを説明してきました。感染者の8割は14歳以下とはいえ、大人になって感染している人も多く、私のまわりでも入院までした人がします。
1年を通じて発症しますが、感染する期間も長いため、冬の流行時期は特に注意が必要になります。
冬は他の感染症も気になりますので、基本となる予防法(うがい、手洗い、マスクの着用など)を、家族でしっかりと行うようにしましょう。