川崎病の症状や治療、原因、後遺症などを説明します。

川崎病は原因不明の病気で、その症状が重くなると、中には冠動脈瘤などの心臓の異常まで生じることもあります。大事に至る可能性を少しでも下げるためには、早期に診断をつけ、観察していくことが大切です。川崎病の症状、治療、後遺症などについてまとめていますので参考にしてください。

  [感染症]

更新日:2017年05月30日

この記事について

監修:山浦真理子医師(上用賀世田谷通りクリニック)

執筆:看護師(当サイト編集部)

川崎病とは

川崎病とは

川崎病とは、1967年に東京都の日赤中央病院(現在の日赤医療センター)小児科の川崎富作博士が、手足の指先から皮膚がむけたりする症状の小児を「急性熱性皮膚粘膜リンパ腺症候群」として発表した病気です。

発表により新しい病気であることが判明し、博士の名前をとって川崎病という病名になりました(川崎市の公害病だと勘違いされる場合がありますが、全く関連はありません。)。

川崎病は世界共通の病名です(英語では「Kawasaki Disease」)。主に4歳以下の乳幼児がかかる病気で、日本以外にも川崎病の患者がいますが、特に日本人をはじめとするアジア系の人々に多くみられます。

また、川崎病の原因はいまだに不明です。したがって、根本的な予防策や効果の高い治療法については、未知な部分があります。

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川崎病の原因

川崎病の原因は明らかになっていません。現在、原因を究明すべく、さまざまな観点から研究が進んでいます。川崎病の原因に関しては、次のような研究が進んでいます。

体質について

体質の影響に関する調査が進んでいます。体質は遺伝と環境に影響されるため、遺伝子などを明らかにして、病気にかかりやすい体質であるかを判定できるよう研究が進められています。

免疫反応について

ウイルスや細菌に感染したことに対する免疫反応により、白血球が過剰に反応し、全身の中小の血管に炎症が生じるのではないか、ということについて研究が進められています。

国際チームによる近年の考察

日本で川崎病が流行した年の気流を解析すると、中国北東部の穀倉地帯付近から流れてきたものとの推計されることや、川崎病の発症が多い3月の日本上空の大気中の微生物に「カンジダ」と呼ばれる菌類が多く存在することなどから、気流やカンジタの関する研究・調査が進んでいます。(現在のところ、気流やカンジタと川崎病の因果関係などは分かっていません。)。

その他

上記の他にも、合成洗剤を原因とする節などあります。

川崎病の患者さんの数

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出典:第22回川崎病全国調査成績(特定非営利活動法人 日本川崎病研究センター川崎病全国調査担当グループ)

川崎病は、1982年、1986年に大流行しています。それ以外の年では、1980年代後半から90年代は毎年6千人ぐらいの子どもがかかっています。

それ以降はしだいに増加し、2005年以降は毎年1万人を超え、2012年には約1万4千人まで増加しました。(右図参照。横軸の単位は千人)(※純粋に増加している可能性だけではなく、診断名が周知されたことで統計的な数が増えた可能性もあります)

病気にかかる年齢は1歳がピークで、主に4歳以下の子どもがかかります。川崎病による死亡率は、0.05%(2千人に1人)程度となっています。

川崎病の症状(急性期の症状)

川崎病の症状は、大きく2つに分けて、急性期(病気にかかり急激に症状が出てくる時期)の症状と、後遺症(発症してしばらくたったときに見つかる病気。冠動脈の障害などの心疾患等)があります。

急性期の川崎病には特徴的な症状があらわれます。

次の6つの主な症状のうち、5つ以上にあてはまる場合や、4つ以下の症状にしかあてはまらなくても冠動脈瘤がみられた場合は川崎病(定型の川崎病)と診断されます。また、症状がそろっていなくても、「非定型の川崎病」と診断されることがあります。

主な6つの症状

  1. 38度以上の発熱が5日以上続く。
  2. 赤い発疹が全身に出る。
  3. 両方の目が充血して赤くなる。
  4. 唇が赤くなったり、荒れて出血したり、舌に苺のような赤いブツブツができる。
  5. 手足に腫れやむくみがあり、手のひらや足底が赤くなり、熱が下がってから手足の指先の皮膚の皮がむける。
  6. 首のリンパ節が腫れる。

川崎病は全身の血管が炎症を起こすことから、これらの症状のほかにも症状が出てくることがあります。

その他の症状としては、BCGの接種した部分が赤くなったり、腹部が膨満したり、関節痛、下痢などの症状があげられます。

小児期の急な発熱を症状とする他の病気と比べて、川崎病は重症で、ぐったりしてしまいます。

診断が難しいことも

それぞれの症状の程度には個人差があるため、診断が難しくなることがあります。

また、炎症があることから、血液中の白血球数の増加、血小板の増加がみられます。血小板は2週目くらいから増加してきます。

したがって、こういった血液中の異常については、継続的に医療機関で検査を行っていくことになります。

症例の写真は日本川崎病学会の写真を参考にしてください。

【参考】日本川崎病学会の症例写真

冠状動脈に瘤ができることもある

急性期の症状は通常1~2週間で回復しますが、場合によっては1か月以上続くことがあります。

ごくまれに敗血症のようになったり、心臓へ通じる冠状動脈に瘤ができたりする場合があり、炎症が強い時は脇の下や足の付け根の血管に瘤ができることもあります。

また、中には心不全になって死亡する場合もありますので注意をしなければなりません。

冠状動脈の疾患などについては、川崎病の後遺症といわれ、場合によっては長期に渡ってケアしていくことになります。後遺症については後の項目に記載します。

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川崎病の診断・検査

川崎病には特徴があるため難しい検査をしなくても診断がつきやすくなっています。検査には次のようなものがあります。

血液検査

血液検査では炎症反応の上昇や血中タンパク質の低下、肝機能の異常などを調べます。

レントゲン、心電図、エコー

心臓の異常を発見するために、胸部レントゲン、心電図、心超音波検査(心エコー)を行います。

心臓超音波検査(心エコー)は冠動脈瘤の大きさや病変の進行の様子を調べるために必要な検査です。

現在、心臓超音波検査(心エコー)により冠動脈瘤の早期発見に努めることで、突然死の割合が減っています。

川崎病の治療(急性期の治療)

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基本的には入院治療を行うこととなります。

川崎病の急性期の治療は、炎症を抑えて血液が固まらないようにするとともに、冠動脈瘤を作りにくくするといった治療が行われます。

ガンマグロブリンの投与が主流になり、加えて、アスピリンなどの血液凝固を防ぐ薬を使用します。

ガンバグロブリンとは、血液中にあるたんぱく質で、免疫に関わって多くのウイルスや細菌などを中和する働きがあります。

しかし、そのガンマグロブリンの投与によっても、発熱が治まらず、炎症反応が続くことがあり、こういった場合には、ガンマグロブリンの追加投与、ステロイドのパルス療法、ウリナスタチン(ミラクリッド)投与などを行います。

また、川崎病が重症化することを的確に判断し、初期からガンマグロブリンとステロイド剤を併用する治療法などもあります。

冠状動脈に瘤ができた場合は、発症から2〜3週間程度で瘤の大きさがピークになるため、入院期間は1か月程度になります。

また、川崎病にかかり冠状動脈に後遺症が残った場合はもちろん、後遺症がない場合でも退院後に定期的な検査を受けることが大切です。

川崎病の後遺症

後遺症

川崎病で問題となるのは、冠動脈(心臓の筋肉に酸素や栄養を送る血管)に後遺症が残るかという点です。

川崎病にかかった患者の約10%前後は冠動脈に障害を残し、冠動脈の拡張や、冠状動脈の瘤(こぶ)がみられます。

冠動脈の拡張や瘤は自然に小さくなる場合がほとんどですが、ごくまれに冠動脈が詰まってしまい、心筋梗塞の発作が生じて死亡するケースもあります。

しかし、冠動脈の瘤が原因で心筋梗塞を起こすケースは非常にまれですので、適切な治療を受けていればそれほど心配はありません。

また、瘤により血管が狭くなってしまった場合には、薬を飲み続ける必要があります。

心筋梗塞などの発作が生じないために、冠状動脈に障害が残った場合は、血液が固まって血管を詰まらせないように薬を飲み続けることや、検査を受けることなどが大切です。

それでも、血管が詰まってしまう場合があり、血管にカテールという管を入れて血管を広げたり、血管の内側の膜を削ったりする治療などが行われています。

その他に、バイパス手術(詰まっている冠状動脈に迂回路(バイパス)を作る外科手術)を行うこともあります。

川崎病は原因不明の病気ですが、治療方法や合併症の検査方法などが確立されていますので、医師から適切な治療を受けていれば、過度に不安となるような病気ではありません。

川崎病の再発

再発

川崎病の場合はかかった子の2~3%に再発がみられます。また、うつる病気ではありませんが、兄弟でかかる場合が1~2%程度あります。

また、川崎病の病歴や治療などに関する情報は、その後の病気の治療に有用となるため、医師にかかる際には過去の川崎病について伝えることが大切です。

川崎病急性期カード

川崎病急性期カードというものがあります。

このカードで川崎病経験者の健康管理や過去に受けた治療がわかるため、日常的に携帯し受診の際に提示できるようにしておきます。

【参考】川崎病学会

治療費の補助

川崎病の治療費については、「小児慢性特定疾患医療給付」などといった名称で都道府県において医療費を補助している場合があります。

お住まいの都道府県のホームページなどを確認して補助制度を有効に活用してください。

看護師からひとこと

心臓に合併症が生じた場合は、専門医による定期的な精密検査が必要になります。

集団生活や運動の制限については、病状の程度によって違ってきますので医師と相談するようにしてください。

心臓に合併症がない場合も、川崎病により冠動脈に炎症が起きる可能性があり、血管の老化や動脈硬化などにもつながることが考えられます。

また、再発しないためにも、生活習慣においてはバランスのとれた食生活、適度な運動などが大切です。

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まとめ

  • 川崎病は主に4歳以下の乳幼児がかかる病気で、特に日本人をはじめとするアジア系の人々に多くみられます。
  • 現在において川崎病の原因は不明です。様々な研究により原因の解明を行っています。
  • 川崎病の特徴的な症状として、高熱が5日以上続く、全身の赤い発疹、両目の充血、赤い唇・苺舌、手足の腫れ・むくみ、手足の赤み・指先の皮がむけ、首のリンパ節の腫れなどがあります。
  • 川崎病の後遺症として、冠動脈の拡張などが生じることがあり、ごくまれに冠状動脈が詰まり、心筋梗塞が生じるケースがあります。
  • 川崎病の治療方法や合併症の検査方法などは確立されていますので、医師から適切な治療を受けることが大切です。
  • 川崎病にかかったことのある人は、川崎病急性期カードを携帯し病院にかかるときには医師に提示できるようにしておきます。
  • 治療費は多くの都道府県などが補助をしていますので、お住まいの都道府県のホームページなどを確認してください。
川崎病に関する質問や回答が多く寄せられていますので、こちらも参考にしてください。


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