急性糸球体腎炎(急性腎炎)の原因や症状、治療法や食事について

更新日:2017年08月31日

この記事について

監修:医師(小児科専門医)

執筆:看護師(当サイト編集部)

急性糸球体腎炎(急性腎炎)は、主に溶連菌などの細菌感染症から引き起こされるもので、血尿、尿のたんぱくなど尿所見があらわれ、むくみや高血圧などを起こします。病状の経過は良好なことが多く、数週間の経過で肉眼的に明らかな血尿や血圧、むくみなどは回復していき、病気に伴う自覚症状はなくなります。

しかしながら、腎臓の病変が完全に消失するには数ヶ月(半年以上)かかるとも言われており、尿検査を始めた結果を踏まえて生活に制限がかかることもあります。急性糸球体腎炎(急性腎炎)の原因、治療法、食生活ことなどをまとめましたので、参考にしてください。

急性糸球体腎炎(急性腎炎)とは

急性腎炎とは

急性糸球体腎炎は急性腎炎ともいいます。糸球体とは腎臓の中に存在する一部を指し、細い血管が集まってできたもので尿を作る働きをします。

糸球体は濾過装置のようなものであり、血液中の老廃物を濾しとる働きがあります。糸球体で濾された尿は、さらに腎臓内で調整を受けた後に尿として排泄されます。

急性糸球体腎炎(急性腎炎)になると、この糸球体の血管に異常が起きて、血尿、尿のたんぱくなどの尿所見が出てきます。その結果、浮腫や高血圧などを起こします。

3歳から10歳までの子どもに多くみられるもので、秋から冬にかけて多く発生します。A群β溶連菌に感染することから続発することが多い病気であり、小児期における腎臓病としては代表的な疾患の一つです。

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急性糸球体腎炎(急性腎炎)の原因

急性糸球体腎炎(急性腎炎)は細菌やウイルスの感染症が起こった後に生じてきます。

その中でも最も多いのが、溶連菌に感染した後の急性糸球体腎炎(急性腎炎)です。溶連菌とはA群β溶連性連鎖球菌のことで、咽頭炎、扁桃炎(扁桃腺炎)、リウマチ熱などの原因となる細菌です。

溶連菌による扁桃腺炎は4~10歳の子どもに多く感染します。これに伴って、急性糸球体腎炎(急性腎炎)も4〜10歳の子どもに多くみられます。

また、男子に多い傾向があり、溶連菌による咽頭炎などの感染症にかかった2〜3週間後に発症することが多くみられます。

三つの主な症状

主な症状

数週間の潜伏期間の後に症状が出現します。

主な症状は血尿、むくみ、高血圧の三つです。しかしながら、必ずこの三つの症状が揃う訳ではなく、血尿だけの場合もしばしばです。

急性糸球体腎炎(急性腎炎)になると2~3日で尿の量が減ってきます。尿は濃い茶色のような色となり、目で見てはっきりと普段と尿の色が違うことがわかるようになります。

その後、まぶたや脚にむくみが現われ、むくみが強くなると胸やお腹に水がたまってくることもあります。むくみなどの症状が出てから、7〜10日間ほどは、腎機能の低下による高カリウム血症と高血圧が起きやすく、注意深い経過観察が必要な時期です。

まれに急激な高血圧によって、頭痛や嘔吐の症状が現れることがあります。重症の場合には、高血圧による急性心不全や高血圧性脳症を起こすことがあります。

急性心不全は脈拍促進、多呼吸、呼吸困難などの症状を伴い、高血圧性脳症は、けいれんや意識障害などの症状が起こります。こうした症状が出現することが原因で、稀ながら亡くなるお子さんもいらっしゃいます。

むくみや高血圧は、おしっこの排泄が少なくなることに関連して生じます。すなわち、本来身体の外に排泄されるべき水分や電解質が腎臓障害と共に体外に排泄されなくなり、身体に余分な水分が溜まることからむくみや高血圧が発症します。

急性糸球体腎炎(急性腎炎)から発症する主な病気について、参考までに記載しておきます。

高カリウム血症

高カリウム血症は、嘔吐などの胃腸の症状や、しびれ、知覚過敏、脱力感などの神経症状、不整脈などが主な症状となります。カリウム値が一定の値を超えると危険な不整脈が現れ、心停止となる可能性があります。

急性心不全

急性心不全は、激しい呼吸困難で発症します。同時に咳と痰が出ます。脈が速くなり、多呼吸や動悸を伴うこともあります。また、血液を送る力が低下するため、チアノーゼが起こることがあります。

高血圧性脳症

高血圧性脳症は、血圧の上昇に伴い、頭痛、視力障害、けいれん、意識障害などの症状が起こります。脳の血管には、脳の血流を一定に保つ機能がありますが、この調整の範囲を超えて血圧が著しく上昇すると、脳にむくみを起こすなどの異常が生じます。

症状は、頭痛、嘔吐などとなります。悪化するとけいれん、意識障害などを起こし、放置すると脳出血や心不全、腎不全により死亡します。

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急性糸球体腎炎(急性腎炎)の検査

治療の前に、全身の症状や状態、血液検査や尿検査を通して腎機能障害の程度を確認します。

また、血液中の免疫物質の測定や、溶連菌の感染に関する項目の検査を行います。

治療は対症療法が基本 入院もありえる

安静

急性糸球体腎炎(急性腎炎)に対する特別な治療法はなく、対症療法(症状を緩和する治療)が基本となります。

食事や薬による治療

安静にしながら、腎臓に負担をかけないよう、水、塩分、たんぱく質などの食事の管理を行います。血圧や尿の量に応じて血圧降下薬や利尿薬を使用することもあります。急性糸球体腎炎を発症し溶連菌の存在が確認された場合は、感染拡大を予防する目的で溶連菌に対して抗生物質を使用します。

むくみに対しては利尿薬を使用します。利尿により、むくみが軽くなれば、塩分の制限を軽くしていきます。通常、食塩制限は1~2週間となります。また、高カリウム血症がみられる間は、タンパク質の摂取を必要量の8割程度に制限します。

入院治療

むくみ、高血圧、尿のタンパクがあるときは、入院治療を要することがあります。入院治療においては、食事制限により塩分の摂取を制限していきます。入院の当初は、小学校入学前の年長児で1日に3グラム程度の制限が必要となります。

病状の経過は良い

急性糸球体腎炎(急性腎炎)は通常は経過がよく、治療を続けていくことによって、2週間ぐらいでむくみや高血圧の症状はなくなっていきます。急性糸球体腎炎(急性腎炎)が完全に治癒して、尿のタンパクが消えるまでには、多少時間がかかります。

継続的に診察を受ける必要があります。

血尿は目に見える程度のものは、治療を開始してから1週間程度で消えていきますが、尿検査で確認されるほどの軽い血尿が消えるまでには、数か月から1年くらいかかることもあります。医師の指示に従い定期的な検査を受けることが大切です。

なお、子どもの急性糸球体腎炎(急性腎炎)は慢性腎炎に移行したり、腎機能の低下などの後遺症を残すことはまれです。ただし、小学校高学年以上の子どもの場合、腎機能障害が残ることがあります。

学校、保育園などへの登校、登園について

尿のタンパクがなくなるまでは、体育などの運動は制限されます。

尿のタンパクがなくなれば、たとえ血尿が残っていても、登校、登園して他の子どもと同じ生活ができて、運動も可能と判断されることが多くなります。

具体的な登校や登園、学校での生活については、医師と相談して決めるようにしてください。

看護師からひとこと

急性腎炎は、運動や食事の制限がかけられることもありますので、子どもさんやご両親にとって、ストレスを感じると思います。

時間はかかりますが日常生活に気をつけながら治療を続けることが大切です。

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まとめ

  • 急性糸球体腎炎(急性腎炎)になると、糸球体に異常が起きて、血尿、蛋白尿などの尿所見が現れ、むくみや高血圧などを起こします。
  • 3歳から10歳までの子どもに発症することが多くなります。
  • 細菌やウイルスの感染症、中でも溶連菌に感染した後に発症することがあります。
  • 症状は急激に発症し、血尿、むくみ、高血圧などが現れます。
  • 尿は濃い茶色のような色となり、目で見てはっきりその色がわかります。
  • むくみなどの症状が出てから、7〜10日間ほどは、高カリウム血症などが起こることもあり、発症した場合には適切な対応が必要になります。
  • 治療は対症療法が基本となります。腎臓に負担をかけないよう、水、塩分、たんぱく質などの食事の管理を行います。
  • 治療により、2週間ぐらいでむくみや高血圧の症状はなくなっていきます。
  • ただし、顕微鏡レベルで血尿が消えるまでには、数か月から1年くらいかかることもあり、定期的な検査が必要です。

参考文献・サイト

急性腎炎に関する質問や回答が多く寄せられていますので、こちらも参考にしてください。


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