子どもの胃腸炎(機能性胃腸症・ストレス性胃腸炎)の原因や症状、治療法など
更新日:2017年10月09日
目次
機能性・ストレス性胃腸炎について
胃の組織や粘膜などに異常がみられないにもかかわらず、様々な胃腸炎の症状が出てきます。胃、そのものに異常がないことから、「機能性胃腸炎」とはいわず、「機能性胃腸症」という言い方をします。
機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)、過敏性腸症候群などの種類があり、いずれの場合も消化器自体に問題はなく、主にストレスなどの精神的な理由で機能が低下していることが原因です。
急性症状より慢性的な腹痛などを訴えることが多く、不登校の子どもによく見られます。日本人の4~8人に1人程度はかかっているとも言われています。
子どもの場合は症状を適切に伝えられず「毎日、何となくおなかが痛い」というような訴えも多くあります。
機能性・ストレス性胃腸炎の原因
主にストレスが原因で自律神経の働きが狂い、胃酸が過剰に分泌されたり、胃の痙攣が起きたり、胃腸の機能が低下して消化不良が起きたりします。
また、こういった症状自体がストレスになり、さらに症状を悪化させ、栄養吸収がうまくいかなくなり、免疫力が低下して二次感染を起こすことがあります。
機能性・ストレス性胃腸炎の症状
週に数回、胃が差し込むようにいたんだり、吐き気やムカツキを感じたり、また胃もたれや食欲不振、食べてもすぐにおなかがいっぱいになったり、酸味がのどまでこみ上げるなど、症状は多彩です。
過敏性腸症候群の場合、腹痛や腹部膨満感、下痢や便秘が長く続くか、もしくは交互に訪れるなど、腸の症状が起こります。
いずれの場合も症状が、ある程度の期間続くこととなります。
合併症
症状が繰り返し起こるため、子どもの場合は学校でおなかが痛くなったり、トイレが近くなったりすることが嫌で、不登校になることもあります。
不眠、抑うつなど精神疾患を起こすこともありますし、また胃腸症状が強い場合は脱水を起こすこともあります。
顔色が悪い場合は脱水を起こしている可能性がありますので、すぐ病院へ行きましょう。
機能性・ストレス性胃腸炎の診断法
レントゲン、CT、内視鏡、採血などで器質的な異常が見つからない場合に、機能性疾患と診断されます。
機能性・ストレス性胃腸炎の治療法
胃腸の機能改善薬や、胃酸分泌抑制薬、消化剤などの薬で治療をします。
また、不眠や抑うつなど精神症状が見られる場合は、抗不安薬や、抗うつ剤などを使用して、精神症状の改善を図ることもあります。
機能性・ストレス性胃腸炎の原因は、ストレスです。ですが、子どもさんの多くは、何がストレスになっているのか?自分ではっきりと分かっていないことも多いですし、上手く伝えられなかったり、両親には言いにくいこともあります。
ですので、カウンセラーなど第3者が間に入り、ストレスの原因を明確にしたり、ストレス緩和の対策を立てることが重要になってきます。
機能性・ストレス性胃腸炎の予防法
ストレスを溜めないことが大事で、子どもの場合は無理やり学校に行かせないようにするなど、あまり追い詰めないようにすることです。脱水以外は、急に命に関わることではないため、大人が温かく見守る姿勢も必要です。
胃、十二指腸潰瘍について
子どもの場合、ストレス性の胃腸炎から高じて、胃潰瘍や十二指腸潰瘍が起こることも多いです。
胃腸の壁が炎症を起こし、ただれてくる病気です。程度はさまざまですが、稀に胃腸に穴が開くこともあり、急激な腹痛や大量吐血をした場合はすぐ病院に行ってください。
胃、十二指腸潰瘍の原因
胃や十二指腸は、胃酸をはじめとした強力な酸性の胃液に常にさらされおり、この強力な酸性の胃液から粘膜を守るための防御機能が働いています。
しかし、ストレスが過度に加わると、胃液と防御機能のバランスが狂い、粘膜が胃液によって傷つけられることで起こります。また水なしで薬を飲んだり、急に胃腸に負担をかけたりすることで起きることもあります。
ステロイドや消炎鎮痛剤などの薬の内服も、胃潰瘍の原因になります。
また、別の感染症の合併症として起きることもあります。大人の場合はピロリ菌保持者に多いため、除菌は予防に効果的です。
胃、十二指腸潰瘍の症状
胃の場合は、吐き気、吐血や嘔吐、十二指腸の場合は、腹痛、下血などが多いですが、子どもの場合、漠然とした腹痛を訴えることが多く見られます。
また、大人の場合、空腹時に腹痛を起こすこともありますが、子どもの場合ははっきりしないことが多くなります。
診断方法
詳しく検査する場合は、内視鏡検査を行います。
治療
胃酸分泌抑制剤の服用などにより治療を行います。
血液検査や内視鏡の検査でピロリ菌による感染があった場合は、抗生物質の投与により除菌を行います。
また、食事に気を付けることも大切で、食べ過ぎや、消化の悪いもの、辛いもの、熱すぎる、冷たすぎるなどの刺激物を避けるようにしましょう。
その他、胃腸炎とまぎらわしい病気
その他にも、逆流性食道炎、腸閉塞(イレウス)、寄生虫など、胃腸炎以外に注意すべき消化器疾患がありますので、以下に説明していきます。
逆流性食道炎
大人にもよく見られますが、一度胃に入った食べ物がのど元まで戻ってきてしまう病気です。
慢性的になると、胃酸などが食道を傷め炎症を起こします。
逆流性食道炎の原因
乳児や子どもでは食道の筋肉がしっかりできていない場合が多く、胃腸の働きが落ちることで起きます。その他、ストレスにより胃腸の働きが落ち、逆流する胃酸が増えることで起こることもあります。
また食べ過ぎや、肥満による胃腸の圧迫も原因になります。
逆流性食道炎の症状
乳児ではミルクの嘔吐や、はき戻しがよく見られます。
また、子どもの場合は、咳が多くなり、咳の途中で戻したりします。(ぜんそくがこの病気を起こす引き金になるケースもあります)
他には胸痛や腹痛が多く、大人に多い胸やけは多くはありません。
逆流性食道炎の治療法
乳児の場合は、哺乳の姿勢やげっぷをきちんと出させることで解決することがあります。哺乳後に身体を立てた状態に保つことも効果的です。
子どもでは制酸薬や 消化機能改善薬を使う治療が多くなりますが、消化の良い食事をすることも大事です。
また、成長に伴う消化機能の改善を待ち、改善がなく成長に支障が出たり、食道狭窄が起こったり、誤嚥性肺炎などを繰り返したりする場合は、外科的な手術を行います。
腸閉塞(イレウス)
いわゆる腸閉塞と呼ばれ、放置すると命に関わる病気です。便やガスなどが腸に詰まる単純性と、腸がねじれる絞扼性の2パターンがあります。
ここでは、腸閉塞(イレウス)を簡単に説明します。詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
腸閉塞(イレウス)原因
大人の場合は、腸の手術後の癒着などが多いですが、子どもは異物の誤飲や消化の悪いものを大量に摂取して、腸に詰まるケースが多いです(こんにゃくなど)。
また、先天性のものや壊死性腸炎が原因となるものもあります。壊死性腸炎は授乳や感染症などが原因と考えられていますが、明らかな原因はわかっていません。
腸閉塞(イレウス)の症状
腹痛と腹部膨満感を感じる、そして嘔吐が突然現れます。特に子どもの場合、嘔吐症状が多く、だんだんと腸の内部のものの臭いがしてくるのが特徴です。
命に関わるためすぐに病院へ行きましょう。飲食をさせていけません。
腸閉塞(イレウス)の診断法
状態に応じて、レントゲン、腹部エコー、CT、内視鏡、血液検査などをします。
腸閉塞(イレウス)の治療方法
鼻から管を腸まで通して、腸の中身を出す方法や、重症化した場合は手術を行うこともあります。脱水対策として点滴も行います。
腸閉塞(イレウス)の予防法
排便の習慣をつけ、運動をして腸の動きをよくすること、また、消化の悪いものを一度に大量に食べないことが大切です。
腸閉塞(イレウス)の合併症
放置すると血行障害を起こし、腸の中で毒素が発生して血液に回り腹膜炎や敗血症が起きたり、他の臓器を圧迫したりして、呼吸不全や腎不全を起こすこともあります。
また脱水になることもあり、いずれの場合も命に関わる状況です。
寄生虫などが原因となる胃腸炎
その他、物理的な原因の胃腸炎には、原虫・寄生虫によるものなどがありますが、最近数が減っている病気であまり数は多くありません。
看護師からひとこと
子どもはある程度の年齢になっても、自分から正確に症状を伝えることができません。食事を受け付けないとき、活気がないとき、嘔吐や下痢を繰り返すとき、など、何か少しの変化でも周囲の大人が注意して、早めに受診することが大切です。
訴えがあいまいだからと、大人が本気にしないと、本人も訴えることをやめてしまい、ますます症状が深刻化することもあります。子どもの訴えがあいまいでも、やさしく耳を傾けましょう。
また、受診して何もなかった時にも本人を責めず、不安を取り除くようなケアがしてあげられると良いですね。
機能性、ストレス性などの胃腸炎のまとめ
ストレス性の病気を筆頭に、子どもは症状をうまく伝えられないことが多いです。
腹痛などを訴えたら、便、顔色、熱などの症状をきちんと見ておくこと、体の症状を日々チェックしておくことが大切です。
健全な胃腸の働きは、体の免疫機能の維持など、体調全般に関わることが多いので、胃腸に不具合がある場合は、無理をせず感染症に注意して、消化の良いものを食べ、しっかり休みましょう。
また、日頃から暴飲暴食を避け、濃い味の食品も避け、規則正しい生活と睡眠を取り、自律神経が乱れることが無いよう、心がけましょう。
特に子どもの場合、暴飲暴食や、生活習慣が乱れることにより、メタボリックシンドロームになってしまうこともあります。健康のためには生活習慣から見直していくことも大切です。