水疱瘡(水痘)の原因や予防接種、妊婦さんへの影響などについて

水疱瘡(水痘)は、多くの子どもがかかる病気です。予防接種の普及により感染者は少なくなっていますが、大人も感染することがあり、特に妊婦さんが感染した場合、胎児への影響が大きくあらわれることがあり、妊娠する前に予防接種を受けておくことが大切です。

  [感染症]

更新日:2017年07月29日

この記事について

監修:山浦真理子医師(上用賀世田谷通りクリニック)

執筆:当サイト編集部

水疱瘡とは

水疱瘡は水痘ともいい、水痘帯状疱疹ウイルスによる急性の感染症です。世界中でみられ、日本では冬から夏頃にかけて流行し、2年から5年周期で大きな流行が発生しています。

10歳以下の子どもに多く感染し、感染すると赤い小さな発疹が出てくるのが特徴で、お腹やお尻、おでこなどに多く出てきます。

水痘ウイルスは感染力が強く、保育園や幼稚園、学校などで感染が拡大していきます。

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水疱瘡の近年の状況

水痘・風疹患者の報告数の推移 出典:国立感染症研究所

水痘・風疹患者の報告数の推移 出典:国立感染症研究所

例年、冬から夏頃にかけて感染者が増加し、秋頃から減少していきます。毎年、子どもを中心として多くの人が感染しています。感染者の8割程度は4歳以下の子どもでしたが、近年では予防接種を受ける人が増えた頃ことから減少傾向にあります。

以前は任意の予防接種でしたが、平成26年10月から定期接種となっています。

予防接種については後で説明します。

水疱瘡の原因・感染

水疱瘡の原因となるウイルスは水痘帯状疱疹ウイルスで、帯状疱疹の原因となるウイルスと同じウイルスです。

このウイルスはヘルペスの仲間で、他のヘルペスウイルスと同様に、水疱瘡が完全に治っても体内の神経に残り、長期間存在することになります。

疲れがたまって体力が落ちていたり、長期のステロイドの使用などで免疫力が落ちていたりするときに、ウイルスが活性化してしまい、帯状疱疹があらわれることがあります。

感染経路について

感染経路は、くしゃみや咳などでうつる飛沫感染、手などについたウイルスに触れることでうつる接触感染、空気中を漂うウイルスからうつる空気感染があります。空気感染により感染の拡大が早く、集団感染に繋がります。

水疱瘡の潜伏期間、症状(初期症状など)

感染してから10日〜20日程度の潜伏期間を経て発症します。

発症すると、発熱、頭痛、腹痛、倦怠感などの初期症状があらわれます(人によっては明らかな症状がない場合もあります)。

こういった症状が2〜3日続いてから、頭皮に赤い発疹が出てきます。この発疹は1日くらいすると水ぶくれになります。水ぶくれは5mm程度の大きさになり、そこに白い膿がたまります。

白い膿がたまってから3日くらいたつと、かさぶたになります。発疹は少しずつ全身へ広がっていくため、発疹が現れてから、全ての発疹がかさぶたになるまでは1週間程度かかります。

周囲へ感染する時期

水疱瘡に感染してから治癒するまでの期間で、他人へ感染させてしまう期間などは、概ね次のようになります。

潜伏期間(10日〜20日程度)

潜伏期間の間は感染力は弱いと考えられています。水疱などの症状が現れ始める2-3日前から感染力が強まっていきます。

発症(2日〜1週間程度)

発熱や頭痛から始まり、発疹が全身に広がってかさぶたになるまでの期間です。他人へ感染させてしまう可能性があります。

回復期

全身の発疹がかさぶたになれば、回復期となります。この期間になれば、他人への感染はほとんどなくなります。

潜伏期間と発症している期間は、他人へ感染させてしまう可能性は少ないです。ただしあくまで感染の可能性が少ないだけで、完全に感染しないとは言いきれません。また、水疱瘡は空気感染するので、予防は難しい部分もあります。

特に免疫の弱い赤ちゃんなどは重症化することがありますので、危険です。兄弟が感染した場合は、接触しないよう注意を払ってください。

また、水疱瘡にかかった人の400人に1人が重症化して入院が必要となり、死亡する人もいます。大人の場合で、10万人に30人、赤ちゃんが10万人に7人、1〜19歳まででは10万人に1人程度が死亡しているという調査結果があります。

水疱瘡は簡単な病気ではありません。そのことをしっかりと認識しておく必要があります。

学校、保育園などへの登校、登園の時期について

水疱瘡は学校保健安全法で第二種伝染病に指定されています。このため、すべての発疹が痂皮化するまで(すべての発疹がかさぶたになるまで)は、学校などへ出席することはできません。

もちろん、ディズニーランドなどへ出かけるのも同じと考えましょう。具体的に登校する日については、医師と相談して決めてください。

学校安全保健法施行規則第19条(出席停止の期間の基準)
第2号 令第六条第二項 の出席停止の期間の基準は、前条の感染症の種類に従い、次のとおりとする。
ヘ 水痘にあつては、すべての発しんが痂皮化するまで。

水疱瘡の治療

水疱瘡かもしれないと思ったら、必ず医療機関を受診してください。早期に受診して治療を開始すれば、症状を軽く抑えることができます。

また、病院に行く際には電話や受付で、水疱瘡かもしれないと伝えると、病院の方も他人への感染に配慮した対応をしてくれます。

医療機関で処方される薬としては次のようなものがあります。

ウイルスに対する薬

抗ウイルス薬などを使用します。

発疹が出てから2日以内に使用すると、より効果があります。この薬により発疹が軽くなり、水ぶくれがかさぶたになるまでの時間が短くなります。

発疹、かゆみに対する薬

発疹を保護するために軟膏を使用します。水ぶくれをつぶさないように、丁寧に塗ります。また、かゆみに対しては抗ヒスタミン薬を使用します。

発熱に対する薬

脳症を起こす可能性があるので、アスピリンの入っている薬は避けます。(市販のものなどで、アスピリンの入った薬を飲んでしまった場合は、必ず医師に伝えてください。)

水ぶくれ(化膿してつぶれたもの)などに対する薬

必要に応じて抗生剤を使用します。二次感染を防ぐためにも有効です。

水疱瘡の合併症

合併症は、水ぶくれを汚れた手で掻きむしり、細菌感染してしまうことで起こることがあります。黄色ブドウ球菌などの感染があります。

水ぶくれはかゆみを伴いますので、子どもの爪は短く清潔にしておいた方がいいでしょう。また、掻きむしることで、傷跡が一生涯残ってしまうこともあるので、注意が必要です。

その他に、肺炎、無菌性髄膜炎、脳炎、脱水などが報告されています。ぐったりしている、息ぐるしそう、顔色が悪い、反応が鈍いなどの異変を感じたら、すぐに医師に相談してください。

水疱瘡の予防、予防接種

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水疱瘡にはワクチンがあります。最も効果的な予防法は水痘ワクチンを接種すること、つまり予防接種を受けることにあります。

ワクチンを接種することにより、90%以上の人がウイルスに対する抗体を持つことができます。

予防接種をしても感染してしまう人はいますが、重症化を防ぐことでき、合併症が起こる可能性が低くなります。

緊急接種について

また、水疱瘡に感染(感染者に接触)してから3日以内に予防接種を受けることで、症状が軽くなったり、発症自体の予防も期待できます。

なお、妊娠している人は予防接種はできません。また、予防接種を受ける1か月前から予防接種後の2か月は避妊することが必要となります。

予防接種の副反応

予防接種した後には、接種した部分が赤く腫れることや、発熱することがあります。また、予防接種後の1〜2週間程度の間は、発疹ができることもあります。水ぶくれができることはほとんどありません。

平成26年10月1日から定期予防接種へ

水疱瘡の予防接種は平成26年10月1日から定期予防接種となりました。

定期接種の対象は、生後12か月から生後36か月まで(1歳の誕生日の前日から3歳の誕生日の前日まで)となります。

3か月以上の間隔をおいて2回接種を行います。定期接種として受ける場合の費用は無料になります。

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大人の感染

水疱瘡は大人でも感染します。しかも、大人の方が重症化しやすく、子どもの場合と比べて入院治療となることが多く、肺炎や脳炎などの合併症にもなりやすくなります。特に喫煙者には肺炎が多くみられますので、注意が必要です。

抗体の検査

「水痘帯状疱疹ウイルス」の抗体を持っているかどうかは、抗体検査(IAHA法など)を行うことで分かります。

ただし、検査結果はすぐにでませんので、周囲に感染者がいて、自分の抗体を知りたいという場合には検査をすることはお勧めしません。そういう場合であれば、水痘ワクチンの緊急接種をした方がいいでしょう。

妊婦さんや赤ちゃんへの影響

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妊婦さんが水疱瘡にかかったときの影響としては、次のような可能性がありますので、十分に注意してください。

先天性水痘症候群

妊娠28週以前に感染した場合、2%以下の胎児に先天性水痘症候群が発症するという研究があります。

先天性水痘症候群になると、低体重出生児、四肢の形成不全、皮膚瘢痕、部分的筋肉萎縮、脳炎、小頭症、白内障等の異常を生じる可能性があります。特に妊娠13-20週に感染した場合に最もその可能性が高いといわれていますが、日本では報告例はないようです。

乳児期帯状疱疹

妊娠20週〜出産の21日前までに水疱瘡になってしまうと、出産した子どもに帯状疱疹が発症することがあります。

ウイルスが胎盤を通して胎児へ感染し、そのウイルスが活性化して子どもに帯状疱疹が発症すると考えられています。

周産期水痘

出産の前後に妊婦さんが水疱瘡を発症すると(ウイルスには潜伏期間があるので、妊婦さんは発症する前にウイルスを持っていることになります。)、出産した子どもが水疱瘡になる可能性があり、注意が必要です。

出産の6日以上前にお母さんが発症した場合

新生児は生後0〜4日後に水疱瘡を発症します。この場合、通常はお母さんの抗体が新生児に移っているので、新生児が重症化することは、ほとんどありません。

出産の5日前〜出産の2日後にお母さんが発症した場合

新生児は生後5〜10日後に水疱瘡を発症します。この場合、お母さんから新生児へ抗体が移ってないので重症化する可能性が高くなります。また、肺炎や脳炎などを合併することも多くなります。

出産の3日以後にお母さんが発症した場合

お母さんは出産の前からウイルスを持っていることになりますが、発症する前であればウイルス量は多くないので、胎盤を介して新生児に感染していることはないと考えられています。ただし、出産後にお母さんから感染する可能性は十分にあります。

妊婦さんへの影響全般について

出産直前に発症すると非常に危険なため、この場合は、子宮収縮抑制剤などで出産の時期を調整することもあります。

出産の時期を伸ばして、お母さんから胎児に抗体が移行するのを待つことになります。

妊婦さんの水疱瘡は甘く見てはいけません。妊娠する予定のある方や、その周辺の人も含めて、予防接種を受けることをお勧めします。

なお、妊娠している人は予防接種はできません。また、予防接種を受ける1か月前から予防接種後の2か月は避妊することが必要となります。

看護師からひとこと

発疹が出たときには既に感染力が強く、知らないうちに周囲に広がっていることがあるのが水痘です。

流行する前に対象のお子さんはワクチン接種を済ませておきましょう。対象年齢から外れている場合も自費となりますが、その場合でも接種しておくことをお勧めします。

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まとめ

  • 水疱瘡は水痘ともいい、水痘帯状疱疹ウイルスによる急性の感染症です。
  • 10歳以下の子どもに多く感染し、その8割程度は4歳以下の子どもです。
  • 最近では、予防接種を受ける人も増えたことから感染者は減少しています。
  • このウイルスは水疱瘡が完全に治っても体内の神経に残り、免疫力が落ちているときに、ウイルスが活性化してしまい、帯状疱疹があらわれることがあります。
  • 感染してから10日〜20日程度の潜伏期間を経て、発熱、頭痛などの症状が現れます。さらに2〜3日後に、体や顔に赤い発疹が出てきます。
  • 感染すると、すべての発疹がかさぶたになるまでは、学校などへの出席することはできません。
  • 予防には予防接種が効果的です。ただし、妊娠している人は予防接種はできません。
  • 水疱瘡は大人も感染します。症状が重くなることや、合併症が多くみられるようになります。
  • 妊婦さんが水疱瘡になると、その感染の時期により、胎児に影響を与えることがあります。
  • 特に出産前後にお母さんが水疱瘡を発症した場合、新生児が水疱瘡を発症して重症化する可能性がありますので、注意しなければなりません。
水疱瘡について質問や回答が多く寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

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