風疹は予防接種が重要!費用や注意事項、風疹の状況について説明します。

風疹は妊婦さんが風疹に感染すると、赤ちゃんに感染して先天性風疹症候群を起こす可能性があります。先天性風疹症候群は非常に重い病気ですので、妊娠する前や、妊婦さんの周囲の人は予防接種を受けるおくことが大切です。予防接種や抗体検査の費用や副作用、最近の風疹の状況や先天性風疹症候群についてポイントをまとめました。

  [感染症]

更新日:2017年07月17日

この記事について

監修:医師(小児科専門医)

執筆:当サイト編集部

風疹とは

By CDC/Dr. Erskine Palmer [Public domain], via Wikimedia Commons

風疹ウイルス By CDC/Dr. Erskine Palmer [Public domain],via Wikimedia Commons

風疹とは、風疹ウイルスによって引き起こされる急性の感染症です。症状は麻疹(はしか)に似ていますが、麻疹(はしか)より軽く、一般的に「三日はしか」といわれています。小学生から高校生くらいにかけて感染が多く、季節では春から初夏にかけて感染が多くなります。近年では、成人の感染が多く、職場などにおける集団感染なども起きることがあります。

風疹の症状は基本的には軽く、ほとんどの人が問題なく回復していきますが、場合によっては、合併症を起こすこともあり、注意が必要です。また、ウイルスに感染しても症状がほとんどでない場合もあります。通常、一度感染すると抗体を獲得します。

また、「先天性風疹症候群(CRS:Congenital Rubella Syndrome)」といって、妊婦さんが風疹にかかると胎児に影響する可能性があることを意識しなければいけません。

感染者は女性より男性の方が多く、男性では20代から40代、女性では20代に多くなっています。

妊娠中の風疹で赤ちゃんに影響が・・・先天性風疹症候群(CRS)とは

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先天性風疹症候群とは、胎児に風疹ウイルスが感染して起こるもので、妊婦さんが妊娠中(妊娠初期)に風疹に感染してしまうと、胎児に感染する可能性があります。

先天性風疹症候群は、白内障、先天性心疾患、難聴が三大疾患といわれます。他にも網膜症、肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育遅滞、精神発達遅滞、小眼球などがあり、子どもはこれらの疾患を先天的にもって生まれてくることになります。

先天性心疾患は手術を要することも多く、白内障については、患部摘出し、人工水晶体を使用することもあります。また、難聴は高度難聴になることもあり、人工内耳の使用などもあり得ます。先天性風疹症候群の症状は重いものが多く、風疹の予防は非常に重要となります。

先天性風疹症候群に関する研究も進んでいる

最近では、東京の国立成育医療研究センターが、最大生後30年以上たったヒトのへその緒から風疹ウイルスの遺伝子を検出することに成功したと報告されています(国立成育医療センタープレスリリース)。

本手法を用いることで、先天性風疹症候群と気付かれていなかったお子さんに対して、時間が絶った後からも遡って先天性風疹症候群と診断できる可能性が示されています。

その結果、より多くの方が医療費の助成を受けることができるようになったり、先天性風疹症候群の社会的な広がり具合をより正確に把握できるようになったりすることなどが期待されています。

先天性風疹症候群の感染について

風疹は、経胎盤感染により母子感染が起こります。したがって、お母さんが風疹に感染すると、胎児に風疹ウイルスが感染し、先天性風疹症候群が引き起こされることがあります。

経胎盤感染

経胎盤感染とは、胎盤を通る血液を通じて感染するもので、風疹ウイルスやヒト免疫不全ウイルス(HIV)などがあります。

先天性風疹症候群は「妊娠の初期」ほど生じる可能性が高い

先天性風疹症候群が生じる可能性は、妊娠の初期に風疹に感染すると高くなります。その確率については、国立感染症研究所によると、次のようになります。

  • 妊娠1か月 … 50%以上
  • 妊娠2か月 … 35%
  • 妊娠3か月 … 18%
  • 妊娠4か月 … 8%

【参考】国立感染症研究所 先天性風疹症候群とは

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まずは無料の抗体検査を受けましょう

風疹を予防するには、まずは自分が抗体を持っているかを確認することが重要です。この検査を抗体検査といいます。抗体検査は血液を調べることで簡単にできるものです。

これから妊娠を予定している女性などを対象として、多くの市町村で無料の抗体検査を行っています(通常は5,000円程度)。

お住まいの市町村、もしくは厚生労働省のHPからお住いの地域の保健所を検索できますので確認にしてください。

お住まいの地域の保健所検索(厚生労働省)

風疹の予防接種で妊婦さんを守りましょう

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抗体を持っていない人が、風疹を予防する方法は、予防接種を受けることです。先天性風疹症候群の子どもを増やさないようにするには、なによりも重要なことです。

麻疹(はしか)・風疹の今後ワクチンが一般的な予防接種

予防接種には二種類あり、風疹単独のワクチンと、麻疹(はしか)・風疹の混合ワクチン(MRワクチン)があり、どちらも同様の効果があります。予防接種として現在一般的なのは、混合ワクチンになります。

妊婦さんの周囲にいる人は受けましょう

次の人は特に予防接種をすることが大切です。

  • 妊婦さんの夫、子ども、その他家族など、妊婦さんの周辺の関わりの深い人
  • 10代後半から40代の女性(妊娠の予定がある人や、可能性の高い人など)
  • 産褥早期の女性(子どもを出産して間もない女性。この時期には妊娠している可能性がないため、予防接種の時期としては最適です。)

過去に予防接種を受けたことのある人でも、予防接種による抗体は生涯継続するとは限りません。したがって、風疹に感染しない、又は感染させないようにするには、みんなが意識して予防接種を受けるべきです。

特に次の人は注意してください。

  • 昭和37年4月2日から昭和54年4月1日生まれの男性

    この年代は女性だけ、中学生のときに集団予防接種が行われていました。

  • 昭和54年4月2日から昭和62年10月1日生まれの人

    男女ともに予防接種を受けることとなりましたが、医療機関へ行く必要があり、予防接種を受けた人が激減しています。

  • 昭和62年10月2日から平成2年4月1日生まれの人

    幼児期に予防接種する機会があり、多くの人が予防接種を受けていますが、受けていない人や1回のみ予防接種した人がいて、抗体が不十分な人がいます。

風疹の予防接種による副反応、安全性について

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妊娠中または妊活中の人は接種できません

混合ワクチン、単独ワクチンのどちらにしても、妊娠中は接種できません。

また、生理の周期にもよりますが確実に妊娠していないワクチン接種後の2ヶ月は妊娠してはいけません(その間は避妊することになります。)。したがって、現在妊活中に人などは接種できませんので、その前に予防接種することをお勧めします。

1割の人には発熱などの副作用がある

風疹・麻疹混合ワクチン(MRワクチン)では、接種後に発熱する人や発疹が出る人もいます。その他、アレルギー反応なども少数に見られます。

風疹単独ワクチンでも成人女性に関節炎などがみられることがあります。まれに重大な副反応を起こす場合がありますので、予防接種を受ける際には副反応やアレルギーなどについて、医師と相談してください。

予防接種の費用は1万円前後。ただし市町村から助成金が出ます。

風疹の予防接種は、単独のワクチンでも、麻疹・風疹混合ワクチンでも、近くの内科や小児科などで受けることができます。

ただし予防接種には保険の適用はなく、費用は医療機関ごとに異なります。大体の費用は「単独ワクチン」で5,000〜6,000円前後、「混合ワクチン」では1万円前後になります。事前に医療機関に確認してください。

また、多くの市区町村で、接種費用の助成を行っているところもあります。お住まいの市町村のホームページを確認してください。

子どもの予防接種

現在、風疹の予防接種は定期予防接種となっています。子どもさんについては、次の2回の時期に予防接種を受けます。通常は無料接種となりますので、お住まいの市町村のホームページを確認してください。

  • 1歳児(生後12か月〜24か月未満)
  • 小学校入学の1年前

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風疹の原因・風疹ウイルスの潜伏期間、感染

風疹は、風疹ウイルスによるもので、感染経路は飛沫感染、接触感染となります。飛沫感染とは、咳やくしゃみによって感染するもので、接触感染とは、咳やくしゃみによって手などに付いたウイルスが、接触することによって感染してしまうものです。

風疹ウイルスの潜伏期間は2〜3週間程度で、感染力はインフルエンザよりも強いといわれています。人へ感染させてしまう期間は、発疹が出る前後の1週間程度です。この期間は注意が必要となります。

風疹は感染しても症状のない人が15%〜30%程度います。この場合、自身が感染していることに気付きませんので、知らないうちに周りへうつしてしまうことがあります。

通常、一度感染すると抗体がつくので、その後は感染することがほとんどないようです。ただし、症状が出ないことや軽いことがあるため、医師が他の病気と誤診しやすいと言われています。したがって、過去に本当に感染したかどうかを、本人が把握しきれていないことがあります。

症状は熱、発疹、リンパ節の腫れ

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風疹ウイルスに感染すると2〜3週間程度の潜伏期間を経て、発熱、赤い発疹(顔から始まり全身へ広がっていきます。)、リンパ節の腫れ(耳や首のあたりのリンパ節が腫れます)が症状として現れます。

発熱は高熱となることもあり、またリンパ節の腫れは痛みを伴うことがあります。通常は、1週間程度で症状がなくなりますが、中には脳炎などの合併症を起こす場合があります。主な合併症は次のものになります。

  • 関節炎
    成人の女性に多く、5~20%の人に起きます。通常は一過性のものです。
  • 脳炎(急性脳炎)
    風疹に感染した人の4,000~6,000人に1人に起きるといわれています。通常は後遺症もなく、一時的なものですが、重症化すると死亡する例もあります。
  • 血小板減少性紫斑
    風疹に感染した人の3,000〜5,000人に1人に起こるといわれています。血小板が少なくなり、血が止まりにくくなります。通常は一時的なものですが、慢性化することもあり、入院治療を必要とすることもあります。

大人は重症化に注意

大人の場合は、子どもと比べて高熱や発疹の期間が長期に渡ることや、関節痛が出やすいといわれています。

単なる風邪と思っていたら、他人へ風疹を感染させてしまったということにもなりかねませんので、早期に医療機関を受診し、感染予防も含めて、医師と相談することが大切です。

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風疹の治療

風疹については、特別な治療法はありません。症状を軽減するための処理(対処療法)が行われることになります。

安静にすることを心がけましょう。また、高熱が出た場合は、熱を下げるために大量の汗をかくので、脱水症状になることがあります。積極的に水分補給を行うことが大切です。

その他、合併症がある場合は、その治療を行うことになります。

学校などへの登校について

風疹は、学校保健安全法で第二種伝染病に指定されています。このため、発疹が消失するまでは、学校、会社などへ出席することはできません。具体的な出席可能日については、医師と相談して決めてください。

学校安全保健法施行規則第19条(出席停止の期間の基準)

第2号 令第六条第二項 の出席停止の期間の基準は、前条の感染症の種類に従い、次のとおりとする。

ハ 風しんにあつては、発しんが消失するまで。

看護師からひとこと

風疹で一番問題となるのは、先天性風疹症候群です。

これを予防するために、自治体では無料で風疹の抗体検査などを行っていますが、実はワクチン接種までに何度か医療機関を受診しなければならない場合もあります。

妊娠を希望する若い世代は働いていて時間がないという人も多く、実費で構わないという場合は、抗体検査をせずに自費でワクチンを接種するのも一つの方法です。(抗体がついているかついていないかは、絶対的にワクチンを接種してはいけないという判定項目にはなりません。)

まとめ

厚生労働省ポスター

厚生労働省のポスター

2013年に流行した後は、感染者の数は落ち着いているようです。ただし、妊婦さんが妊娠すると胎児に影響が出てしまうことに変わりはありません。感染しても症状が出ない人もいますので、やはり注意が必要です。

以前に感染したから平気だと考えている人も、実は風疹ではなかったということがあります。予防接種を受けた人でもその効果が薄れている可能性がありますので、一度は抗体検査を受けるなどして自分の体の状態を確認しておくといいでしょう。

抗体検査は無料の場合が多く、予防接種についても自治体が費用を負担してくれるところがあります(子どもは無料)。これからお子さんが欲しいという人も、周囲に妊婦さんがいる場合も、しっかりと意識しておきましょう。

参考文献・サイト

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