RSウイルス感染症の症状や潜伏期間、治療(入院期間)、登園時期など

多くの子どもが感染するRSウイルス。秋から冬にかけて流行します。1歳未満の赤ちゃんが感染すると症状が重くなることもあります。症状、感染、予防、治療などについてまとめましたので、参考にしてください。

  [感染症, 肺・呼吸器の病気]

更新日:2017年06月07日

この記事について

監修:山浦真理子医師(上用賀世田谷通りクリニック)

執筆:看護師(当サイト編集部)

RSウイルス感染症とは

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RSウイルス感染症は乳幼児の代表的な呼吸器感染症です。RSウイルスは世界中に存在するウイルスで、一度感染しても再発することが多く、1歳までに50%、2歳までにはほとんどの乳幼児がRSウイルスに感染するといわれています。

症状は、風邪のように軽い場合もありますが、生後6か月頃までに初めて感染した場合は、重くなりやすく、細気管支炎、肺炎になることがあります。

したがって、重い症状が出やすい期間は感染しないように気をつけなければなりません。

生後6か月を過ぎるころから免疫機能が働くようになり、重症化しづらくなっていきます。

なお、細気管支とは、空気が肺へ送られる通り道の一部で、太い場所を気管支と呼びその先の細い部分が「細気管支」です。

この細い部分が炎症を起こすことを細気管支炎といいます。

空気が流れづらくなり、ゼーゼーとした呼吸になり、とても苦しくなります。重症になると呼吸ができなくなる(すなわち、命に危険が及ぶ)こともあります。

流行について

RSウイルス感染症は、冬場に流行する感染症です。通常は秋から増加し12月頃にピークを迎え、年明けは徐々に減少し3月ころに落ち着きます。

流行すると、多い週には、1週間あたりの報告件数が5,000件以上になることがあります(報告数は、医療機関を受診して、かつRSウイルスの検査を受けて診断された人のみとなります。

検査に保険適用されるのは1歳未満であるため、実際の感染者は報告数よりもかなり多い可能性があります)。

年齢別に見ると、次のように、基本的に乳幼児がかかる疾患であることがわかります。

  • 0歳〜1歳まで 全体の7割
  • 0歳~2歳まで 全体の9割以上

RSウイルス感染症の感染経路・潜伏期間

感染経路は通常のウイルスと同様、鼻粘膜や眼瞼結膜(がんけんけつまく。目蓋の裏側の部分)からとなり、次のようなときに感染しやすくなります。

  • 咳、くしゃみ、会話などによるしぶきを吸い込む(飛沫感染)
  • 感染している人と直接触れたりして接触する
  • ウイルスがついた指、物(家の中で誰もが触れるようなドアノブ、スイッチ、食器等)を触ったり、なめたりする

麻疹や水痘、結核のように空気感染(飛沫核感染ともいい、感染している人から比較的離れていても感染するもの)するという報告はありません。

RSウイルスは感染力および増殖力が強く、発症前の潜伏期間(2日から1週間程度)にも周囲の人を感染させませす。

また、症状が消えてから1〜3週間後まで感染力が持続します。

このため保育園や学校、病院の入院病棟、老人ホーム、家庭内などでの集団感染が生じやすいので注意が必要です。

眼および鼻などの粘膜からも容易に感染するので、マスクをしていても感染する場合があります。

汚染された場所では6時間、手についたウイルスは約30分感染する力を持っていて、比較的感染力が強いウイルスといえます。

感染について主なものをまとめると、以下のようになります。

  • 感染経路 …… くしゃみ、会話などによる飛沫感染、手指等を介した接触感染。最初に鼻に感染することが多い。
  • 潜伏期間 …… 感染してから発症するまでの潜伏期間は2日から1週間程度
  • 感染期間 …… 症状が消えてからもウイルスは1〜3週間程度の排泄期間があり、感染が広がりやすい。

RSウイルス感染症の症状

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RSウイルスに感染すると潜伏期間を経て症状が出てきます。咳や鼻水、発熱など、通常の風邪と同じ症状がでてきて、軽い場合はこの程度で回復に向かいます。

症状が重くなる場合は、ゼーゼーという雑音を含む呼吸が見られたり、むせるような咳が出たりすることもあります。

重症化すると、先に説明した細気管支炎に進展し、呼吸困難など伴うことがありますので、十分に注意してください。

また、発熱はするものの、39度以上の高熱を伴うことはそこまで多くはありません。

最初の感染時には重症化することが多くありますが、この場合、全体の約3割程度が咳や呼吸が苦しいといった症状が出てきます。

さらに入院して治療を受けるほどの重症となるのは、全体の3%以下と言われています。また、感染力が非常に強く、再発もよく見られます。

また、生後6か月までの期間にもっとも重症な症状を起こし、1歳未満の乳児は入院となるケースが多くなります。

したがって、このようなお子さんに感染させないよう、周りの大人たちの注意が必要です。

感染の回数が増えるほど症状は軽くなる傾向にあり、2歳以上の子どもについては「鼻かぜ」程度の症状で済むことが多くなります。

上記の症状の説明の他にも、大切な事項がありますので、以下にまとめておきます。

主な症状

  • 咳、鼻水、発熱(39度以上の発熱は少ないが、咳がひどい)
  • 喘鳴がある(ゼーゼーいう喘息のような苦しそうな呼吸)

留意点

  • RSウイルスは乳児(1歳未満の赤ちゃん)が感染すると重症化する恐れがあるので、症状の変化などには注意が必要。
  • 2歳以上の子どもや大人が感染しても風邪のような軽症でRSウイルスと気が付かずに乳幼児にうつしてしまうことがあるので、2歳以上の子どもや大人も感染には気を付けることが必要

重病化しやすいリスク要因といわれているもの

  • 早産児もしくは在胎期間が35週以下
  • 気管支肺異形成症(BPD)
  • 先天性心疾患(CHD)
  • 免疫不全
  • 染色体異常

日常生活における感染要因

RSウイルスが接触感染・飛沫感染することや、免疫力の低下などが背景にあることから、日常生活においては次のことが感染などの要因となると言われています。

  • 兄弟姉妹がいる
  • 保育施設を利用している
  • 家族に喫煙者がいる
  • RSウイルス流行期前半に出生している
  • 母乳保育期間が短い

下痢や嘔吐について

RSウイルスの直接的な症状には下痢や嘔吐はありません。ただ、薬や他の原因によって下痢が起こることはあり得ます。

嘔吐については、咳によって食べ物や水分を戻してしまうことがあり、食事もとれないような場合によっては入院して点滴を受けることが必要になります。

どちらも、病院を受診した際に必ず医師に相談するようにしてください。

発疹について

発疹は直接的な症状ではありませんが、突発性発疹などが一緒に出ている場合などには発疹が起こることが考えられます。

発疹が出てくる病気は様々ですので、診察時に医師に相談しましょう。

合併症では中耳炎がよく見られる

重篤な合併症として注意する必要があるものには、無呼吸発作、急性脳症等があります。

初めて感染した場合は症状が重くなりやすく、低出生体重児や先天性心疾患、慢性肺疾患、免疫不全などを持つハイリスク児は要注意です。

また、中耳炎もよく見られます。特に2歳未満に多いと言われます。通常は細菌が原因となる中耳炎ですが、RSウイルスまたは細菌との混合感染も考えられます。

【参考】RSウイルス感染に伴う小児急性中耳炎の臨床像

RSウイルス感染症の検査と診断

冬に乳幼児が鼻水、咳に続いて呼吸が「ゼーゼー」してきた場合、その30〜40%がRSウイルス感染症によると言われています。

検査は鼻水で行うもので、インフルエンザの検査に似ています。

検査はRSウイルスの抗原検出キットが使用して30分程度で結果が出ます。ただし、保険適応は1歳未満、または入院している患者さんとなります。

また血液検査でRSウイルスの検査を行うこともできますが、結果が出るまでに数日を要します。

細気管支炎の診断は、聴診と胸部X線で行います。肺に空気がたまり気味になるので、肺が黒くうつります。気管支炎も肺炎も、聴診や胸部X線で診断します。

RSウイルス感染症の予防

予防

RSウイルス感染症の感染経路は飛沫感染と接触感染で、0歳〜1歳のお子さんが多いです。

一方、再感染の際には風邪のような感冒様症状や、気管支炎症状のみである場合が多いことから、2歳以上のお子さんや大人の感染は、RSウイルスの感染に気づかないことがあります。

したがって、自分自身や配偶者など、または2歳以上の子どもが風邪のような症状のときには、なるべく0歳〜1歳児には近づかないようにすることや、家族全員で手洗いなどをすることが感染予防に繋がります(家族が感染ルートになることがほとんです。)。

また、0歳児と1歳児に日常的に接する人は、RSウイルス感染症の流行時期はもちろん、流行時期でなくとも、咳などの呼吸器症状がある場合は飛沫感染対策としてマスクを着用するなどして接することが大切です。

接触感染対策として、子どもたちが日常的に触れるおもちゃ、手すりなどはこまめにアルコールや塩素系の消毒剤等で消毒することや、石鹸による手洗いや、アルコールによる手の消毒を徹底することが重要です。

特に、RSウイルス流行期(10月頃から2月頃)には、できる限り次のような場所へ近づかない方がいいでしょう。

  • 人の出入りが多い場所
  • 受動喫煙の環境

タバコの煙は、子どもの気道を刺激するため、咳が悪化し、呼吸が苦しくなってしまいます。

また、感染後の症状悪化だけでなく、健康時にも気道の状態を悪くしてしまうため、感染するリスクも高くなると考えられます。

室内を適度な温度(26~28度)、湿度(40%以上)に保ち、こまめに換気・掃除をして清潔を保つことも重要です。

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予防接種について

RSウイルスは抗体を作りにくいため、現在、有効なワクチンはなく予防接種はありません。

予防薬の注射

注射器

RSウイルスに対する有効なワクチンはありませんが、早産未熟児、慢性肺疾患児、さらに血行動態に異常がある先天性心疾患児に対しては、予防薬(抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体。商品名は「シナジス」)を注射することによって、RSウイルスの感染を予防し、重症化を防ぐことができます。

予防薬の注射にかかる費用は1回で8〜25万円程度(体重により使用量が異なる)かかります。

ただし、以下の条件を満たす場合は、保険の適用が受けられます。健康保険を用いると自己負担分を2割として約1.6〜5万円となります。

注射の効果は1ヶ月程度ですので、流行期には6か月間、毎月投与することになります。

また、乳児医療の適用がある場合は無料となります。

地域によって健康保険制度には差があるので、その場で健康保険の適用ができず一時的に立て替える場合などもあります。

また医療費や保険の適用条件は変更になることがありますので、医療機関や公的機関(役所)などで最新の情報を得るようにしてください。

予防薬(抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体「シナジス」)の注射に健康保険が適用される条件

早産未熟児
  • 在胎週数(お母さんのお腹の中にいた期間)が28週以下で、RSウイルス流行開始時に生後12か月以下の乳児
  • 在胎週数が29~35週で、RSウイルス流行開始時に生後6か月以下の乳児
慢性肺疾患がある
  • 過去6か月以内に気管支肺異形成症などの呼吸器疾患の治療を受けたことがあり、RSウイルス流行開始時に生後24か月以下の小児
先天性心疾患がある
  • RSウイルス流行開始時に生後24か月以下の先天性心疾患児で、心臓や血流(血行動態)に異常がある小児
免疫不全
  • RSウイルス流行開始時に生後24か月以下で、免疫不全がある小児
ダウン症
  • RSウイルス流行開始時に生後24か月以下で、ダウン症の小児

※ 条件に当てはまっていても、医師の診察・診断によっては、注射をしない場合があります。医師の指示に従ってください。

なお、注射の副作用として、咳や鼻水、発疹が出たり、お腹の調子が悪くなったりすることがあります。

また、アナフィラキシーショックにならないとも言えません。接種前に医師から説明を受けるようにしてください。

RSウイルス感染症の治療方法

治療

RSウイルス感染症には特効薬はありません。治療は基本的には対症療法(症状を和らげる治療)を行います。咳や発熱などの辛さを和らげてあげることや、水分補給が重要となります。

発熱に対しては冷却とともに解熱薬を用い、呼吸器症状に対しては気管支拡張薬などを用います。また、脱水を起こすと腎機能の悪化などで命に関わることもあります。

細菌感染の合併等が疑われる場合は抗生剤を使用します。ミルクの飲みが悪い場合は輸液をしたりします。呼吸状態が悪くなると、人工呼吸器をつけて、呼吸を助けてあげる必要があります。

入院する場合の入院期間など

肺炎、呼吸状態の悪い場合、高熱が続く場合、脱水傾向にある場合など、症状が重くなると入院治療を受けることになります。

入院期間は症状にもよりますが、3日程度から長くても10日程度となることが多く、入院中は点滴による水分や栄養の補給、肺炎の場合は酸素マスクなどを使用しての治療になります。

保育園、学校などへの登園、登校の時期について

RSウイルス感染症の場合、学校や保育園への出席停止の基準などに関する法令の定めはありません。

ただし、感染症ですので、文部科学省によれば、次のような解説がされています。

急性細気管支炎 (RSウイルス感染症など)
登校 ( 園 ) の目安
発熱、咳(せき)などの症状が安定し、全身状態の良い者は登校 ( 園 ) 可能だが、手洗いを励行する。
引用元:学校において予防すべき感染症の解説(文部科学省)

また、厚生労働省ではガイドラインで次のように公表しています。

登園の目安
重篤な呼吸器症状が消失し全身状態が良いこと
引用元:「保育所における感染症対策ガイドライン」(厚生労働省)

症状、状態などをみて、良くなっていれば登校、登園が可能となります。具体的な登校、登園の日については、家庭で判断するのが難しい場合もあると思いますので、医師と相談の上で判断するといいでしょう。また、保育園や幼稚園などで基準を作っているところもあると思いますので、そちらも参考にして考慮しましょう。

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保育園で気をつけること

保育園では多くのお子さんを同時に預かっています。また、子どもを預けている保護者への支援は保育者の役割の一つです。

こういった観点から、保育園における感染が広まらないよう、また園児の重症化を未然に防ぐよう、RSウイルス感染症が疑われる子どもの保護者に受診を勧めることが大切です。

そのためには保育士の方もしっかりと感染症の知識を持ち、RSウイルス感染症の予防などについて、保護者へ伝えることとが大切です。

大人への感染について

大人の感染

前述のとおり、2歳以上児や大人が感染しても風邪のような軽症でRSウイルスと気が付かずに乳児にうつしてしまうことがあるので、乳児だけではなく保育園の年中以上の子どもや大人も感染には気を付けなければいけません。

小学生以上、または成人への感染は、鼻から感染し、風邪程度でおさまることが多くなりますが、気管支炎や肺炎を起こすこともあります。また、38度以上の発熱が数日続くこともあります。

RSウイルスに感染したお子さんを看護する保護者や医療施設の職員は、一度に大量のウイルスに感染して、症状が重くなる場合があります。

高齢者が感染した場合、急性で重症の下気道炎を起こすことがあり、特に長期療養施設内での集団発生には注意が必要です。

看護師からひとこと

乳児のRSウイルスの感染は重症化しやすく、入院対応となることも多くなります。

実は、外出頻度の低い乳児が感染してしまう経路は、兄妹であることが多いのです。

赤ちゃんに手がかかってしまいがちではありますが、上のお子さんのうがい・手洗いをしっかりみてあげるようにすることも、感染予防となりますよ。

参考サイト

RSウイルス感染症に関する質問や回答が寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

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