脂漏性皮膚炎の原因や予防法、治療法、家庭での過ごし方など

脂漏性皮膚炎は、生後3か月くらいまでの赤ちゃんと成人に多く見られる病気で、皮脂の分泌の多い頭皮などを中心に発症します。赤ちゃんの場合は4か月を過ぎると落ち着いてきますが、成人の場合は慢性化することもあり、日常生活を見直すことなどが必要となります。脂漏性皮膚炎の原因、予防法、治療法などをまとめました。

  [生活習慣病, 皮膚の病気]

更新日:2017年09月17日

この記事について

監修:大見貴秀医師

執筆:当サイト編集部

脂漏性皮膚炎とは

赤ちゃん

脂漏性皮膚炎とは、脂漏性湿疹とも呼ばれ、皮脂の分泌の多い頭皮や鼻の周り、耳の後ろ、わきの下などに発症します。

生後3か月くらいまでの赤ちゃんと成人に多くみられます。赤ちゃんの場合は自然治癒することが多いのに対し、成人では慢性化するケースが多くみられます。

発症すると、かゆみを伴い、赤くなり、皮膚が荒れてカサつき、皮膚がはがれてくることもあります。赤ちゃんの場合、頭部(前頭部から頭頂部)に黄色がかったうろこ状の皮膚炎が生じます。

成人の場合、頭皮にできると、皮膚がはがれてくるためフケ症と勘違いしてしまう人も多いようです。放置すると皮脂が酸化し、加齢臭のようなニオイを放つ原因にもなります。

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脂漏性皮膚炎の原因

脂漏性皮膚炎の症状は、赤ちゃんと成人では異なります。

赤ちゃんの脂漏性皮膚炎の原因は皮脂

赤ちゃんは、生後2〜3か月くらいまでは、とても皮脂の分泌が盛んです。その上、毛穴が発達していないため、分泌された皮脂が毛穴に詰まりやすくなります。

こうしたことから、皮膚にトラブルが起こってきます。生後4か月を過ぎてくると、しだいに減少してきます。

成人の脂漏性皮膚炎の原因はカビ

成人の場合、原因はいくつかありますが、主な原因は「マラセチア」という真菌(カビ)です。

マラセチアはヒトの皮膚に普段から存在する常在菌ですが、皮脂を好むため、皮脂が多い環境下で異常増殖し、その代謝物が肌に炎症を引き起こすと考えられています。

男性ホルモンは皮脂分泌を促進するため、脂漏性皮膚炎は女性よりも男性に多く発症します。ただし、女性もホルモンバランスの乱れなどから、皮脂の分泌が多くなることがあり、女性でも脂漏性皮膚炎になることは珍しくありません。

また、他の原因としては、ストレス、ビタミンBの不足、不適当な洗顔や洗髪(すすぎ不足や洗いすぎ)、生活習慣の乱れなどがあげられます。

脂漏性皮膚炎の症状

症状も、赤ちゃんと成人では異なります。

赤ちゃんの脂漏性皮膚炎の症状

赤ちゃん

頭部(前頭部から頭頂部)に黄色がかったうろこ状の皮膚炎が生じ、やや乾いた感じで拡大していくことがあります。

頭部以外にも、額やまゆげ、鼻にもできることがあります。かゆみはありますが、通常はあまり強くはありません。中でも皮脂腺の多い髪の毛の生え際、まゆ毛、頭の中にできて、かさぶたがべったりと付いています。

見た目はアトピー性皮膚炎と似た湿疹の状態となり、見た目にわかって短期間に広がっていきます。アトピー性皮膚炎の可能性もありますので、医師の診断を受けるようにしてください。

成人の脂漏性皮膚炎の症状

脂漏性皮膚炎は、皮脂が多く分泌される場所に起こります。頭皮、顔(特に鼻の周辺)、口の周囲に発症することが多く、冬に悪化しやすくなります。

皮脂には、皮膚を保護する役割があるのですが、分泌量が多くなると炎症を起こすことがあります。場合によっては皮脂に含まれる脂肪酸が酸化し、加齢臭のような臭いを発することもあります。

成人の場合もアトピー性皮膚炎と似たような症状を示すことが多く、区別が付きにくい場合があります。医師の診断を受けて原因をはっきりさせた方がいいでしょう。

脂漏性皮膚炎の治療・対処法

治療についても、赤ちゃんと成人では異なってきます。

赤ちゃんの治療法

赤ちゃんのお風呂

赤ちゃんの場合は、皮脂腺の働きが活発なため、皮脂の分泌がとても多くなり脂漏性となることが、主な原因です。

そのため、安易にステロイドを塗るということではなく、かさぶたの様になった皮膚のカスに、ワセリンなどをやや厚く塗り、柔らかくしてからオリーブ油でしめらせて、入浴で洗い流すといった方法があります。また、石けんを使用しても良いです。

医療機関を受診して、脂漏性皮膚炎と診断された場合、家庭におけるケアは、次のように行うといいでしょう。

頭はシャンプーで洗います。

頭の中に湿疹ができている場合は、石けんやベビー用のシャンプーをよく泡立てて、その泡で洗うようにしましょう。力を入れて洗ってはいけません。円を描くように、やさしく洗います。

まゆ毛はガーゼで丁寧に洗います。

まゆ毛に湿疹ができている場合は、ガーゼにせっけんの泡をつけて、かさぶたをこするような感じで洗います。洗った後は、濡らしたガーゼで、石けんをきちんと流します。

かさぶたはワセリンを使用して取ります。

貼り付いたかさぶたは無理に剥がしてはいけません。自然に剥がれるまで待ちましょう。

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成人の治療法

脂漏性皮膚炎は、初期の症状は軽い炎症による赤らみやかゆみ程度なので、多くの人が市販の軟膏薬などを使用したり、保湿クリームを使用したりすることがあります。

この方法で、一時的には症状が軽減されることもありますが、原因はマラセチアという菌ですので、その増殖がおさまらないと、すぐに再発してします。

また、クリームを使用することによって、刺激を与えてしまい、逆に症状が悪化することもあります。したがって、軽度の症状であっても、炎症やかゆみ、かさつきが続く場合には、早めに医療機関を受診する必要があります。

マラセチアには抗真菌薬が必要

脂漏性皮膚炎の治療には、マラセチアの活性を抑える塗り薬(抗真菌薬)を使用します。

その他、症状の程度によっては、荒れた皮膚の回復のために尿素入りのローション、ビタミンB、C、ステロイド剤などが処方されることがあります。

また、頭皮が脂漏性皮膚炎になった場合には、シャンプーにも気を配る必要があります。抗真菌剤の入ったシャンプーもありますので、医師や薬剤師に相談するといいでしょう。(マラセチア菌に効果のある「硝酸ミコナゾール」を含むものが良いでしょう。)

薬やシャンプーは合わないこともありますので、使用した経過を医師に伝えるなどして、合う薬を処方してもらうようにしましょう。

成人が日常生活で気をつけること

大人の洗髪

脂漏性皮膚炎はひどくなると、症状が長期に渡ることがあります。周囲からフケが出ているように見られることもありますので、ツライこともあると思います。

薬だけでなく、日常生活の一つ一つに気を配って、丁寧に治療を続けていくことが大切です。

中でも次のことには気を配るといいでしょう。

脂の多い食事は避ける

脂っこい食事は皮脂の分泌を増やし、マラセチアの増殖に繋がります。

ビタミンB群、Cを取る

ビタミンB群(特にB2、B6)とビタミンCは、皮膚の代謝を改善して、皮膚の回復を助けます。
ビタミンB群を含む食べ物には、レバー、しじみ、牛乳、卵、ホウレンソウ、トマト、キャベツ、シイタケなどがあります。積極的に取り入れることが大切です。

やさしく洗顔する

刺激の少ない石鹸を使用し、よく泡立て、泡でそっとなでるように顔を洗います。拭くときも、タオルを軽く顔に押し当てる程度にとどめましょう。

洗髪に気をつける

抗真菌剤入り、または刺激の少ないシャンプーを使い、爪を立てず、指の腹で頭皮をそっとなでるように洗います。シャンプーの洗い残しがないように、頭皮をこすらないよう、よくすすぎます。

紫外線をさける

紫外線は、皮膚のダメージを促進します。紫外線の強い日は、日に当たらないよう気をつけましょう。帽子をかぶる際は、風通しがよく、むれにくい帽子を選びましょう。

睡眠をしっかりとる

睡眠不足は、皮膚の抵抗力を低下させます。十分な睡眠時間を確保しましょう。

その他、乳児湿疹について

赤ちゃん

赤ちゃんの皮膚にできる湿疹を総称して、乳児湿疹と呼びます(脂漏性など原因のわかるものについては脂漏性皮膚炎などの病名がつきます)。

症状としては、皮膚がカサカサしたり、ジュクジュクしたり、ベタベタしたりと様々です。

アトピー性皮膚炎に移行することもあるようですが、この時期ではまだ判断できないようで、様子をみていく必要があります。

皮膚に異常がみられた場合、医療機関を受診して治療を受けてください。

家庭でできる乳児湿疹のケア

やさしく石けんの泡で洗う

赤ちゃんは非常に汗をかきます。特に生後2〜3か月ころは皮脂の分泌も多くなります。お風呂では石けんを使って洗いましょう。

ゴシゴシと洗うのではなく、せっけんの泡を使って汚れを包み込むように洗います。

汗はこまめにふきとる

赤ちゃんが汗をかいているときには、ガーゼやタオルなどで拭き取ってあげます。病気などでお風呂に入れないときは、濡れたガーゼなどで顔を拭きます。

朝起きた時も、湿疹がひどいときには、拭いてあげるといいでしょう。

洗った後の保湿

石けんで洗った後は、低刺激のベビー用ローションやクリームなどを使用して保湿してあげましょう。

洗いっぱなしにすると、肌がカサカサになってしまいます。皮膚が乾燥すると更に肌のトラブルを招くこともあります。

爪を短く切ります

湿疹にかゆみを伴う場合は、赤ちゃんが自分で皮膚を掻いてしまい、肌を傷つけてしまいます。そこに細菌が感染すると、様々な感染症へ発展することも考えられます。また、化膿することもありますので、爪は短く切っておきましょう。

看護師からひとこと

赤ちゃんの場合、ミトンをつけてあげることで、掻きむしりや感染を予防する方法もあります。また、寝具を清潔にすることで臭いや感染の予防につながります。

毎日入浴し、局部を清潔に保つようにしてください。

大人の場合は規則正しい生活と食生活にこころがけてください。皮膚に刺激や分泌を促進させる脂肪、糖分、コーヒー、アルコール、香辛料などの取りすぎには注意しましょう。

自己診断によって症状を悪化させてしまうこともありますので、皮膚科を受診し正しい治療を受けるようにしてください。

まとめ

脂漏性皮膚炎とは

脂漏性皮膚炎とは、脂漏性湿疹とも呼ばれ、皮脂の分泌の多い頭皮や鼻の周りなどに発症します。

脂漏性皮膚炎は、生後3か月くらいまでの赤ちゃんと成人に多くみられます。赤ちゃんの場合は自然治癒することが多いのに対し、成人では慢性化するケースが多くみられます。

脂漏性皮膚炎の原因

赤ちゃんの場合、その時期に限定してみられる皮脂の分泌量です。成人の場合は、主にマラセチアという真菌(カビ)です。

脂漏性皮膚炎の症状

赤ちゃんの場合、頭皮などにかさぶたが多くみられます。成人の場合も、頭皮にかさぶたができますが、それに加えて、慢性化すると加齢臭のような臭いを発します。

脂漏性皮膚炎の治療

赤ちゃんの場合は薬を使用しなくても、家庭のケアで自然に治癒していくことがほとんどです。

成人の場合は、抗真菌薬などの薬を使用します。慢性化することもあり、日常生活においても様々なことに気をつける必要があります。

脂漏性皮膚炎についてみなさんから質問や回答が多く寄せられています。こちらも参考にしてください。

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