ADD(注意欠陥障害)の原因や症状、チェック方法についてまとめました。
更新日:2017年06月04日
ADDとは
ADDとは、Attention Deficit Disorderの略で、日本では「注意欠陥障害」と呼ばれる脳機能障害のことを言います。
年齢に不釣り合いな注意力の欠如が見られるのが主な症状で、その症状が6ヶ月以上継続し、且つ症状の原因に他の病気が考えられない場合にADDと診断されます。
ただし、症状の出方や程度には個人差があり、特に幼少期においては、単に年齢による落ち着きのなさなのか、ADDなのかの判別が難しい面があります。
そのため、小学校入学を機に「人の話を聞けない」「忘れ物が多い」「時間が守れない」「こだわりが強く、周囲と馴染めない」など、集団生活において支障をきたして初めて疑われるケースも少なくありません。
ADDと区別が難しいADHD
なお、ADDとよく似た言葉にAHDHがありますが、これはAttention Deficit Hyperactivity Disorderの略で、注意欠陥多動性障害と呼ばれています。
現在の日本では、ADDとADHDの明確な定義づけはなされていない状況ですが、一般的には次のように区別されています。
- ADD 不注意の症状が多く、多動性(例:じっとしていられずに、授業中に立ち上がったりしてしまう)や衝動性(例:順番を待つことができない、思ったことをすぐ実行してしまう)がない
- ADHD 多動性や衝動性が見られる
ただしこれも、医師によって見解が異なり、中にはADDやADHD以外の病名を付けられることもあります。
クラスの2〜3人に発達障害の可能性
2012年(平成24年)の文部科学省の調査によると、小中学生の6.5%に何らかの発達障害の可能性があると言われています。
【参考】通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について(文部科学省)
これは、1クラスに平均して2~3人は、発達障害の可能性がある子どもが在籍しているという割合になりますが、そのうちの1~2人に、ADDの症状が見られると言われています。
なお、発達障害とは、脳の発達段階において一般と比較して発達遅延が見られる疾患の総称を指しています。
主な疾患として、自閉症やアスペルガー症候群、AHDH(ADDを含む)、LD(学習障害)などがあります。
大人になってから気づく場合も
最近は、大人になってから、実は自分がADDであったと発覚するケースも増えてきました。
その理由として挙げられているのが、ADDという病気の認識が広まったことで、子どもの時から〝自分は人とどこか違う〟という、ある種の生きづらさを抱えながら生活をしていた方が、自らADDを疑って病院で検査をしてもらうことが増えたからだと言われています。
長い間、自分がADDと知らずに生きてきた方の中には、「人との関わりが極端に苦手で、会社でも上手く人間関係が築けないことをずっと自分のせいだと思ってきたが、病気が原因だとわかってホッとした」という声も多く聞かれます。
ADDの原因
ADDの発症原因は、現時点でははっきりとわかっていませんが、以下のようなことが原因として考えられています。
1. 脳の前頭前野の機能不全
脳の前頭前野には、相手の表情や声から気持ちを推測したり、やる気を起こす、物事を記憶する、自分の行動を抑制するなどの働きがあるため、この部分に先天的な異常があると、神経伝達物質であるドーパミンやセロトニンの分泌不足によって情報が上手く伝わらなくなり、前頭前野の働きが低下して注意が散漫になったり、状況の判断能力が落ちてしまうのではないかと言われています。
なお、ADDにおける前頭前野の機能不全は、多くの場合は先天性と考えられていますが、最近は事故などによって脳に強いダメージを受けることや、脳炎などによってもADDを発症する可能性があるとして、必ずしも先天性の疾患と断定されているわけはありません。
2. 情報の錯綜
脳は目や耳からあらゆる情報を取り込んだ後、取捨選択して必要なものだけを残すように働いていますが、ADDによって前頭前野に支障をきたしていると、その作業が上手く行われないため、脳にはたくさんの情報が入ってしまい、混乱を起こしやすくなるのではないかとも考えられています。
3. 遺伝によるもの
ADDの原因としては、遺伝による影響が指摘されています。親が何らかの発達障害を持っている場合、持っていない親と比べて、その子どもが発達障害と診断される確率は高くなると言われています。
なお、この場合ADDの親からは必ずADDが遺伝するという意味ではなく、他の発達障害を持つ親であっても、子どもがADDを発症するケースもあります。
以前は親の育て方の問題や愛情不足、本人のやる気のなさが原因という見方をされていましたが、現在はそのようなことは直接的な原因ではないことがわかっています。
二次的な障害も
ADDを発症した子どもの中には、家庭や学校で「真面目にやりなさい」「ミスが多い」などの指摘を受け続けることで、自分は何をやっても駄目な人間なのだと自己否定に陥って、ひきこもりや不登校になるケースが多くあり、その結果、鬱病や摂食障害といった精神疾患を発症する方が多くいます。
これは、二次障害と言われるもので、二次障害の原因はADDに対する周囲の理解のなさや親や学校の接し方にあると言われています。
ADDは、先天的な脳の機能障害と言われているため、現段階ではそれ自体を防ぐ方法は確立されていませんが、二次障害は親を始めとした周囲の温かいサポートによって、十分に回避することができると考えられています。
症状・特徴
ADDには、主に次のような症状があると言われています。
- 忘れ物が多い
- ケアレスミスが多い
- 整理整頓が苦手
- 集中力がない、続かない
- 計画を立てられない
- 金銭の管理ができない
- 不器用
- 思い付いたらすぐ行動に移さないと気が済まない
- 同時に2つ以上のことをこなすことができない
- 物事を最後までやり遂げることができない
- 順番を待つのが難しい
- 相手の話を聞かずに、質問に答えたり話を遮ってしまう
- 話をしている途中にも関わらず、ボーッとして聞いてないことがある
- マニュアル通りに動くのが苦手
- 気分がころころ変わる
- 物事を後回しにすることが多い
- しゃべりすぎるところがある
- 飽きっぽい
- 他人の気持ちを読み取るのが苦手
- 決めた時間に外出することができない
- 急ぎなさいと言われても、急ぐことができない
- 思っていることと正反対の行動をとったりする
- 誤字脱字が多い
- 単純な作業ができない
- 聞き間違いが多い
- 我慢ができない
これらの症状を見てみると、誰にでも1つ以上当てはまることがあるのではないかと思います。
中には、複数該当するという方もいらっしゃるかも知れませんね。ではその場合、自分にもADDの可能性があるのでしょうか。
ADDの最大の特徴は、上記のような症状が一時的なものではなく、幼少期から今日に至るまで継続している(6ヶ月以上)、と言うことにあります。
つまり、一度や二度、忘れ物やミスをしたからと言って、それがすぐADDと判断されるものではないということです。
特に子どもの場合は、社会性に乏しい年齢のため、自己中心的に物事を考えてしまうのはよくあること。それゆえに、ADDは診断が難しいと言われているのです。
しかし、例え幼少であっても、上記の症状によって日常生活に支障をきたしている場合は、ADDを疑う必要があると言えるでしょう。
診断は病院の何科で行うのか
ADDの診断は、子どもの場合は児童精神科や小児精神科の医師が行いますが、それ以前のステップとして、まずは地域の保健センターや発達障害者支援センター、保育園、幼稚園、学校などに相談するのがよいでしょう。
大人の場合は、精神科や心療内科で検査を受けることができます。
ただし、どちらの場合でも、発達障害を専門に診ることができる医師がいることが条件です。
専門的な知識が少ない医師の場合、ADDであることが見過ごされ、違う病名を付けられてしまう可能性や、中には「それくらい誰にでもあること」として取り合ってくれないこともあるようです。
そのため、病院を受診する時は、必ず診療内容に発達障害(ADDを含む)が含まれているかどうかを確認して下さい。
ADDを疑い病院を受診すると、最初に医師からの問診を受け、検査が必要と判断された場合に限り続いて検査が行われます。
接する上で大切なポイント
ADDは脳機能の障害であり、その発症原因もまだ特定できていないことから、病気を完治させるための治療方法は確立していません。
そのため、症状を抑える薬の服用や、認知行動療法といって、ADDの方に多い思考の偏りや癖を矯正していく方法によって、症状の緩和や改善に努めます。
しかし、ADDの方が最もつらいと感じるのは、ADDの症状そのものよりも、「自分は人よりも劣っている」と言う、強い自己否定感に襲われることだと言います。
他の子どもと同じようにできない我が子を、つい頭ごなしに怒ってしまうこともあると思いますが、ADDは決して本人が怠けているわけでも、ふざけているわけでもありません。
では、子どもがADDと診断された場合、親や周囲はどのように接するのがよいのでしょうか。
1. 小さなことでも誉める
ADDの子どもは、自分のことを低く評価する傾向にあるため、ちょっとしたことでも誉めてあげることでそれが自信に繋がり、鬱病などの二次障害の発症を防ぐことができます。
2. 怒鳴ったり、叩いたりしない
頭ごなしに怒鳴られたり、叩かれたりすることが続くと、ADDの子どもは自尊心を育てることができなくなり、自己嫌悪を募らせていきます。親とは言え、つい感情的になってしまうこともあると思いますが、冷静に対応するようにして下さい。
3. 決めたことに対しては一貫性を持つ
無碍に怒ってはいけないという反面、子どもと決めたルールを破った場合はきちんと叱る必要があります。
そこはADDだからと言って甘やかすことなく、毅然とした態度で注意をします。
4. 一つのことに集中しやすい環境を作る
テレビがつきっぱなしの部屋や、視界に様々な物が飛び込んでくる環境では、なかなか集中することができません。
そこで、勉強など集中力を必要とすることを行う時は、周囲の様子が目に付きにくい場所を与えるのがよいでしょう。
例えば、部屋の真ん中ではなく隅に机を置くことで、目に刺激が入りにくくなり集中力が高まると言われています。
5. 指示は具体的に行う
ADDの子どもは、耳で得る情報(言葉)よりも目で得る情報(視覚)の方が伝わりやすいと言われています。
そのため、「〇〇をしなさい」と口で言うよりも、紙などに「〇〇をすること」と書いた方がより確実に指示が伝わります。
また、忘れ物が多い子どもに対しては、チェックリストを作成することも、忘れ物を減らすよい方法になります。
6. 着かず離れずの距離で見守る
ADDの子どもに、必要以上に過保護になる必要はありません。問題行動を起こしたらと言ってすぐに注意するのではなく、時にその行動を無視しても構いません。
このような接し方により、子どもはADDの症状を落ち着かせることができたり、心に掛かるストレスを軽減できたりすると言われています。
ADDの子どもと接する上で最も大切なことは、注意力散漫な状態はADDという病気が引き起こしていることであり、その症状に一番苦しんでいるのは本人だということを理解してあげることだと言われています。
しかし、いくら親と言っても、いつも上記のような冷静な対処できるかと言われたら、そうではないですよね。
そのような時のために、知っておきたいのが「ペアレントトレーニング」です。
子どもとの関わり方を学べるペアレントトレーニング
ペアレントトレーニングとは、保護者の方が子どもとの接し方や悩みを解消できたりする場です。一般的に発達障害の子どもを持つ家族のためのトレーニングとなりますが、その手法は発達障害の子どもさんのいる家庭以外へも広がっています。
例えば、一口に子どもを誉めると言っても、どのように誉めてあげると効果があるのかよくわからない点もあると思います。
こういったときにペアレントトレーニングによって子どもの長所を見出すコツや上手な指示の出し方、褒めるコツなど、具体的な方法などを学ぶことができるのです。
子どもとの関わり方を知ることで、発達障害児の成長を促すことができますが、同時に「子育てがつらい」「どうしていいかわからない」といった不安を抱えている親や周囲の方にとっても、その不安が解消されて気持ちが楽になるという大きなメリットがあります。
ペアレントトレーニングを学びたいという方は、主に講座やセミナーを受講する方法と、本を活用する方法があります。
まとめ
ADDは周囲から誤解を受けることも多く、周囲の接し方や関わり方が大切です。接し方は難しいと思いますが、ペアレントトレーニングなどを活用して身につけるといいでしょう。
また、ADDの疑いがあると思われれる場合には、早期に地域の保健センターに相談するなどして、専門家のアドバイスを受けることが大切です。