腸閉塞(イレウス)の原因、治療法、予防法など
更新日:2017年06月25日
腸閉塞(イレウス)とは
腸閉塞とは、腸の一部が狭くなることなどにより、腸内に入ってきた食べ物などが詰まってしまい、肛門の方へ流れていかなくなる病気で、イレウスともいいます。
乳幼児においては、先天的に胃や十二指腸などが閉塞している場合もあります。
腸閉塞は、非常に重い疾患ですので、必ず医療機関で治療してもらう必要があります。
腸閉塞の種類
腸閉塞は原因などによって、機械的腸閉塞と機能的腸閉塞に分類されます。
機械的腸閉塞
腸の内側が物理的な原因によって、狭くなっていたり、繋がっていなかったりすることによって、腸の中のものが通過できなくなっている場合を、機械的腸閉塞といいます。
機械的腸閉塞は、さらに「単純性腸閉塞」と「絞扼性(複雑性)腸閉塞」に分類されます。
単純性腸閉塞(単純性イレウス)
腸管の内側が物理的な原因によって狭くなり、腸の中の物が詰まっている状態を、単純性腸閉塞といいます。
癒着のために腸が折れ曲がることが原因となります。癒着性腸閉塞(癒着性イレウス)や、閉塞性腸閉塞(閉塞性イレウス)などがあります。
また、便秘により腸の中が詰まり腸閉塞となってしまう、糞便性イレウスというものもあります。
子どもに多く発症するものではありませんが、便秘は乳幼児でもなります。
絞扼性腸閉塞(絞扼性イレウス)
腸管に血流障害が起こっているものを「絞扼性腸閉塞」といいます。
腸と腸の癒着に巻き込まれて、腸がねじれたりすることで血流障害が起こります。
腸重積などにより、血流障害が起きると、腸に血液がいかなくなってしまい、腸が壊死してしまうことがあります。
機能的腸閉塞
機械的腸閉塞のように、腸の内側が狭くなっているなどのことはありませんが、腸自体が正常に動かなくなり、腸の内容物が通過できなくなるものを機能的腸閉塞といいます。
麻痺性イレウス
麻痺性イレウスは、腹部の手術後や脳梗塞後などにより、腸が正常に動かなくなり、腸の中にあるものが流れなくなってしまうものです。
腸閉塞の原因
生後すぐに腸閉塞を発症する場合と、そうでない場合でその原因が異なってきます。
生後すぐに腸閉塞を発症する場合
生後すぐに腸閉塞を発症する場合には、先天的な病気に伴い機械的腸閉塞となるもので、「先天性小腸閉鎖・狭窄」などが原因となります。
また、小腸の閉鎖・狭窄以外にも、「先天性食道閉鎖・狭窄」、「先天性十二指腸閉鎖・狭窄」などの閉塞を伴う先天性疾患があります。
もう一つは、機能的腸閉塞を伴うもので、腸管はしっかりできているのに、腸が正常に動かずに閉塞の状態が生じるものです。ヒルシュスプルング病などが原因となります。
先天的に腸閉塞を伴っている場合は、出生前に診断される場合があります。
生後すぐの発症でない場合
壊死性腸炎、腸重積などの消化器疾患が原因となることが多いです。
この場合、年齢によって発症しやすい病気が異なってきます。壊死性腸炎はミルクを飲み始めてしばらくして発生することが多く、腸重積は、生まれて半年から2歳頃までの発生が多くなります。
また、小学生以降の子どもでも、腸重積やその他の原因により、腸閉塞となります。
その他の原因
その他、手術でお腹を開いたことが原因で腸の癒着が起こってしまい、腸閉塞になることがあります。これを術後の癒着性イレウス、術後イレウスといいます。
腸閉塞の原因となる病気について
腸閉塞の原因となる主な病気について、参考までにその内容を簡単に記載しておきます。
先天性十二指腸、小腸閉鎖・狭窄
先天的に十二指腸又は小腸などの一部が途切れている(閉鎖)ものと、狭くなっている(狭窄)ものがあり、それぞれ腸閉鎖症、狭窄症といいます。
新生児に手術が必要な病気としては、多く見られるものです。ダウン症や他の消化管奇形などを合併することがあります。
ヒルシュスプルング病
消化管の蠕動運動をつかさどる細胞が先天的にないため、慢性の便秘や腸閉塞、腸管拡張が引き起こされる病気です。
壊死性腸炎
壊死性腸炎は腸管が未熟であるために発症する消化管の疾患です。広範囲の腸管に出血や壊死が起き、死亡率も高くなります。
新生児医療においては重病のひとつとされています。
原因は不明ですが、腸管に血流障害、感染症、授乳、薬剤などの誘因が加わって発症すると考えられています。また低出生体重児に多く見られます。
腸重積
腸の一部が重なり合ってしまい、腸の中に腸の一部が入り込んでしまう病気です。
放置すると腸の内側に血液が行き届かなくなり、壊死を起こしてしまいます。
発症後24時間以内であれば、手術以外の方法でもとに戻すことが可能なことがあります。
腸閉塞の症状
腸閉塞の症状は、腹痛やお腹が膨れ、嘔吐を繰り返すことが主なものとなり、場合によっては下血を伴うこともあります。
これに加えてひどい脱水症状となることがあり、点滴などの適切な治療が必要となります。
小学生以降の子どもにおいては、腹痛やお腹の膨れなどの症状がありますが、嘔吐が最も顕著な症状として現れます。
嘔吐を伴う疾患は多くありますので、家庭においては他の病気と判別するのは難しくなります。
腹痛は、強い痛みと、痛みが和らぐことの繰り返しとなります。
これは「疝痛(せんつう)発作」というもので、腸閉塞の特徴となる腹痛の症状です。
嘔吐の内容物は、初期は胃液(白または透明の色で酸っぱい液)か胆汁(黄色で苦い液)となりますが、進行していくと小腸や大腸の中のものが逆流して嘔吐物となります。
小腸や大腸から逆流してくるものは、下痢のような色合いで便の臭いを発します(便を嘔吐することを吐糞症(とふんしょう)といいます)。
嘔吐の直後は、一時的に腹痛や吐き気が軽くなることがあります。
特に絞扼性腸閉塞では、腸がねじれている状態となりますので、激しい腹痛が続きます。
時間とともに顔面蒼白、冷汗、冷感がみられるようになり、脈や呼吸も弱く速くなり、ショック状態になりますので、緊急な手術を要することがあります。
腸閉塞の診断
腸閉塞の検査は、腹部のX線検査、血液検査、超音波検査、CT検査などにより、腸閉塞の状態を確認します。
原因が確認できれば、その原因に対する治療を行っていきます。
特に絞扼性腸閉塞の場合などは、手術を要することとなりますので、手術の要否を決定する意味でも、医師は原因の特定が重要になってきます。
先天性の病気が原因で、出生直後から腸閉塞が分かっている場合は、すぐに治療にとりかかっていきます。
腸閉塞の治療
絞扼性腸閉塞でない場合
絞扼性腸閉塞でなければ、手術以外の方法(保存的治療)で治癒することが多々あります。
食事や飲水を中止し、胃腸を休め、脱水とならないよう十分な補液を行います。
病状が進行して、腸が張り、腸の詰まりがひどくなった場合は、鼻から胃や腸まで管(イレウス管、チューブなどといいます。)を入れ、詰まっている内容物や溜まっているガスを体の外へ出します。
このことで、腸の中の圧力が減り、腸の張りが少なくなりますので、腸の状態が正常に戻ることが期待できます。
おならや便が出れば、腸閉塞の状態から回復したと判断できますが、腸が詰まった原因となる部分(腸が癒着した部分など)が、正常な状態になっていない場合は、再発の危険は残ります。
絞扼性腸閉塞の場合
一方、絞扼性腸閉塞の場合は、手術を行う必要があります。まずは腸の癒着した部分を剥がし、腸の血流が回復することを確認します。
血流が回復せず、すでに腸の一部が壊死している場合などは、その部分を切除して、正常な腸の部分とつなぎ合わせることになります。
また、先天性の病気が原因で腸閉塞を伴っている場合については、原因となる病気の治療を行っていくこととなります。
腸閉塞の予防
腸閉塞を繰り返す場合は、生活習慣などに気をつける必要があります。主な留意点は次のようなものになります。
きちんと排便の習慣をつける
排便習慣をつけて、腸の中の流れを保つことが大切です。また、便秘になるだけでも大変ですので、毎日、トイレに行くことを習慣にしましょう。
食事療法について
不溶性の食物繊維が多いものは食べ過ぎないようにします。
ゴボウ、おくら、ぜんまい、たけのこ、さつまいも、里芋などを過剰に摂取するのは避けたほうがいいでしょう。
また、噛みにくいものや消化しにくいものも避けましょう。他の食べ物でも同じですが、よく噛んで食べることが大切です。
鍋物など、野菜、豆腐、白身の魚などを使用したものを食べると良いです。シチューやおでんなど、煮込むものは消化がよくなります。
適度な運動をする。
運動は血液を循環させますので、大腸などの動きが活発になります。医師と相談して、いろいろな運動をしてみるといいでしょう。
看護師からひとこと
子どもが嘔吐、腹痛などで苦しんでいる様子をみるのは、親にとってとても辛いものです。
また、突然、目の前で嘔吐すると、親はビックリして、しどろもどろになってしまうこともあると思います。ですが、誤嚥・窒息の危険性があることを理解していただきたいと思います。
新生児・乳児は、吐物を口だけでなく、鼻からも吐き出します。そのようなときは、側臥位にして、できる子には口ゆすぎをしてもらい、口の中の気持ち悪さをとってあげることが大事かと思います。
まとめ
- 腸閉塞とは腸の一部が狭くなり腸内に入ってきた食べ物などが詰まってしまい、肛門の方へ流れていかなくなる病気です。
- 腸閉塞には大きく2種類あり、一つは機械的腸閉塞といい、腸の内側が物理的な原因によって、繋がっていなかったり、狭くなっていたりするものです。
- もう一つは、機能的腸閉塞といい、腸の内側は正常な状態ですが、腸の動きが悪く腸の内容物が通過できなくなるものをいいます。
- 原因の一つとして、先天的な病気により腸が詰まってしまうものがあり、出生直後に手術を行うことがあります。
- 先天的な病気が原因でない場合は、腸重積や壊死性腸炎などの消化器疾患の病気などが原因となって腸閉塞が起こります。
- 腸閉塞の主な症状は、激しい腹痛やお腹が膨れ、繰り返す嘔吐になります。
- 嘔吐は、初期は胃の内容物を吐き出すこととなりますが、ひどくなると小腸などの内容物(便)を嘔吐するようになります。
- 絞扼性腸閉塞でなければ、手術以外の方法(保存的治療)で治癒することも多くなります。
- 絞扼性腸閉塞の場合は、手術をして腸内の血流を回復する必要があります。場合によっては腸の一部を切除することになります。
- 腸閉塞の予防としては、排便の習慣をつけること、食事療法、適度な運動が大切となります。