りんご病(伝染性紅斑)の原因、感染、治療法、妊婦さんへの影響など
更新日:2017年05月07日
目次
りんご病(伝染性紅斑)とは
りんご病は、正しくは「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」といい、ヒトパルボウイルスB19による感染症です。
主要症状の一つとして「赤いほっぺ」が現れることから、りんご病という通称がつけられました。
子ども、大人ともに感染する病気で、基本的には重症となるようなものではありませんが、妊婦さんが感染した場合、胎児へ感染することがあり、感染した場合は胎児の命にかかわってきます。
りんご病の原因・感染
りんご病はヒトパルボウイルスB19が原因となる感染症です。
主な感染経路は、感染者の咳やくしゃみなどから感染する飛沫感染と、手すりなどについたウイルスから感染する接触感染になります。
数年に一度感染流行が報告されており、保育園や幼稚園などで集団感染例や看護学生の間で報告例もあります。
りんご病は夏期に流行し、5歳〜9歳の子どもに多くみられる傾向があります。
りんご病のウイルスは、終生免疫ができるため、一度かかれば生涯りんご病にかかることはないと考えられています。
りんご病の潜伏期間、症状
りんご病は感染してから、およそ10日〜20日程度の潜伏期間を経て発症します。
発症すると、発熱(微熱程度)、頭痛、関節痛、倦怠感などの症状が出てきます。初期症状は風邪と大きくかわりません。
軽い風邪のような症状が出てから、7日〜10日くらいして、頬を中心に赤い発疹が出てきます。この発疹を「びまん性紅斑」といいます。
紅斑は頬に現れた後に手足に出てきます。紅斑はレース状、綱目状、地図状などの発疹で、1週間程度して消えますが、その後も3〜4週間程度の期間は、紅斑が出たり消えたりすることがあります。また、感染しても紅斑の症状が出ない人もいます。
感染してからの流れを簡単にまとめると、次のようになります。
感染してからの流れ
- 潜伏期間:感染から発症までの期間 10日〜20日程度
- 発 症 :感冒症状 数日程度
紅斑 1週間程度 - 回復期 :症状はほとんどないが、場合によっては2〜3週間くらい発疹が出たり治ったりする。
この中で、最も感染力が強いのが、風邪のような症状が出ているときであり、りんご病の特徴である「紅斑」が出てきたときには、ほとんど感染力がありません。このことは感染予防の観点からは非常に重要です。
また、赤い発疹は風疹や麻疹など、他の病気に感染している可能性がありますので、発疹が現れた段階で、医療機関を受診しましょう。
りんご病の合併症
りんご病の主な合併症は次のものとなります。
- 関節炎を引き起こすことがあります。
- 溶血性貧血の人は、りんご病に感染することで急激に貧血が進み「貧血発作」が起こることがあります。※溶血性貧血とは、赤血球の寿命が通常より短いことにより貧血となる病気です。
- 血小板、白血球が減少することがあります。血小板が減少すると、血が止まりにくくなり、白血球が減少すると免疫が低下します。
りんご病の予防
りんご病にはワクチンがなく、予防接種を受けることはできません。
また、感染者にりんご病に特有の赤い発疹が出ているときには、感染者はすでにウイルスを排出していないので、予防することは難しいといえます。
したがって、妊婦さんはりんご病に特徴的な「赤いほっぺ」の人に近づかないことはもちろん、りんご病の前駆症状である感冒症状(もっとも感染力の強い時期)を呈する人に近づかないよう、注意しなければなりません。
りんご病の検査
りんご病は、頬の赤さや手足の紅斑の状態で診断されます。したがって、りんご病の初期症状の状態では、りんご病と診断されることは、ほとんどありません。
また、赤い発疹だけでは、風疹や麻疹、溶連菌など、他の感染症の疑いもありますので、他の感染症の検査も行うことがあります。
なお、りんご病だと判明した時点では感染力が弱いこともあり、りんご病であることを確定する検査はあまり行いません。
ただし、妊婦さんについては、胎児への影響等を考慮して、確定診断を行うこととなります(妊婦さんへの影響については、後段に記載します)。
りんご病の治療
りんご病に対する特別な治療法はありません。対症療法を行って発疹や熱が引いて、自然に治癒していくのを待ちます。
学校などへの登校について
りんご病は、学校保健安全法で指定されている伝染病ではないため、出席停止期間などの規定はありません。
また、通常はりんご病と判明した時点(=ほっぺが赤い時期)ではウイルスの感染力がほとんどないため、学校を休む必要はないと言えますが、りんご病も感染症ですので、医療機関を受診した際に学校への登校について医師と相談してください。
大人の感染
りんご病は免疫がなければ、子どもだけでなく大人にも感染します。大人が感染した場合、頬に紅斑は出ずに、手足だけに発疹が出ることがあります。
大人の場合、発熱、関節痛、倦怠感を伴い、発疹が出ている期間は子どもより長く(3週間くらいに)なることもあります。
主な症状には次のようなものがあります。
大人が感染したときの主な症状
- 発熱
- 関節痛
- 発疹(手、腕、太腿など)
- かゆみ
- 強い倦怠感
妊婦さんへの影響
妊娠中にりんご病に感染すると、流産や胎児貧血などの恐れがあるため、早期に確定診断をすることになります。
妊娠20週未満の妊婦さんが、りんご病に感染した場合、20−30%程度は妊婦さんから胎児に感染します。
感染するとさらに一部の胎児は深刻な貧血状態となり、胎児水腫(胎児が水ぶくれ状態となる)を引き起こすことがあり、場合によっては死亡することもあります。
りんご病の感染による胎児への影響は、妊娠の初期の方が、その危険度は高いといわれています。
りんご病によって胎児が深刻な事態に陥る可能性は100%ではありませんが、医師の診察のもと、赤ちゃんを経過観察しながら適切な治療を受けていくことが必要です。
胎児へ感染し胎児貧血の兆候が見られる場合、治療は胎児に対して行うこととなります。つまり、お腹の赤ちゃんに対して治療することとなります。
妊娠中は、りんご病を予防することが大切です。周囲にりんご病の人がいたら、その人のみならず、その周囲の人への接触も避けることが必要です。
また、りんご病は5歳〜9歳ころの子どもが夏に感染することが多いです。こうした流行年齢・時期を知っておくことも、未然に感染を予防する観点からは大切なことです。
看護師からひとこと
りんご病は、風邪症状がみられ、その後、主に顔に紅斑がでる病気です。
治療法もないため、子どもの体力が低下しないように、症状に応じたケアが必要です。
また、流早産をさせないためにも、風邪症状がある際には妊娠初期の女性の近くには寄らないことが大切です。
まとめ
- りんご病は、正しくは「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」といい、ヒトパルボウイルスB19による感染症です。
- 感染経路は、飛沫感染と接触感染が主なものです。
- 一度感染すると終生免疫ができるため、その後はりんご病にかかることないと言われています。
- りんご病の潜伏期間は10日〜20日程度で、その後風邪のような症状が数日間出て、赤い発疹(紅斑)が出てきます。
- 感染しやすい期間は、赤い発疹が出る前の風邪のような症状が出ているときです。
- りんご病にはワクチンがなく、予防接種を受けることはできません。
- りんご病は子どもだけでなく大人にも感染します。
- 大人に感染した場合、発熱、関節痛、倦怠感を伴います。
- 妊娠20週未満の妊婦さんがりんご病に感染した場合、胎児に感染する可能性があり、胎児に重大な影響を及ぼす可能性があり、とても危険です。
- 妊婦さんは、周囲にりんご病の人がいたら、その人や周囲の人への接触を避けることが必要です。
参考文献・サイト
- 国立感染症研究所
- 小児内科増刊号2008
- 神戸大学医学部産科婦人科学教室