ロタウイルスの原因・症状・予防接種・家庭での予防法など
更新日:2017年06月27日
目次
ロタウイルス胃腸炎(ロタウイルス感染症)とは
ロタウイルス胃腸炎とは、ロタウイルスが原因で起こる急性の胃腸炎のことをいいます。
ロタウイルスの症状はノロウイルスと似ていますが、ノロウイルスと異なる点は、乳幼児に感染しやすいということです。
最も感染しやすいのは、0歳から2歳までの乳幼児です。
通常、5歳くらいまでに、ほとんどの子どもが感染します。
日本においては、毎年80万人程度の人が感染し、感染者のうち15人から40人に1人くらいが入院治療を受けています。
流行する時期
ロタウイルスの流行時期は12月くらいから始まり、2月から3月くらいにピークとなります。
12-1月にピークを迎えるノロウイルスの流行が終わった後にロタウイルスの流行が始まります。
ロタウイルスの感染・感染経路など
強力な感染力と増殖力
ロタウイルスはとても感染力が強いウイルスです。少量のウイルスが体内に入るだけで感染するといわれていて、外国では発展途上国などで感染者が多くなりますが、日本のような先進国で、衛生環境のいいところでも、感染者が多くなります。
また、増殖力も強く、感染者の便1グラムあたりに、1億から100億個のロタウイルスが含まれているといわれています。
これは、ノロウイルスのウイルス量の約100倍となります。増殖力が強い上に、少量のウイルスでも感染するほど感染力が強いため、予防が非常に難しいといわれています。
感染経路
主な感染経路は経口感染です。
ウイルスの付着した食器、食べ物などを通じて感染します。特に感染者の便の中に大量に含まれていますので、感染した乳児のおむつを取り替える際に手や爪にウイルスが付着してしまい、それが口に入るケースが多くあります。
おむつ交換時に手や爪には数億ものウイルスが残っていることがあるので、次のことに気をつけてくっださい。
- おむつ交換の際には使い捨てのゴム手袋などを使用する。
- 交換したおむつは、ポリ袋などに入れて処分する。
感染者の便には、下痢の始まる2日程度前からロタウイルスが含まれ、症状が治まった後でも7日から10日間ほど、長いと数週間程度はウイルスが検出されることがあります。
また、乾燥した嘔吐物からウイルスが空気中を漂って、それを吸い込むことで感染する可能性もありますので、注意が必要です。
ロタウイルスに感染した際の症状
ロタウイルスに感染すると、2~4日の潜伏期間を経て症状が現れます。
ロタウイルスに感染した際の主な症状は、嘔吐、下痢、腹痛です。症状が重い場合があり、下痢や嘔吐が激しくなり、発熱することもあります。
通常は、嘔吐から始まって、その後に腹痛、下痢と続きます。発熱する場合も嘔吐した後に発熱することになります。発熱は2日程度で治まります。
感染するのは、ほとんどが乳幼児となり、特に初めて感染したときに症状が最も重くなります。感染を繰り返すごとに身体が防御するようになり、症状は軽くなります。
下痢などの症状は1週間から2週間程度は続く
ロタウイルスの下痢は白い水の状態になることがあります。
熱が下がった後も、下痢などの症状は1週間から2週間程度続き、その後自然に治癒していくのが普通です。
ただし、症状が重い場合や脱水症状がひどくなると、最悪の場合、死亡するケースもありますので、医師の診察を受けるようにしてください。
また、合併症を伴うこともあります。合併症の例として、けいれん、肝機能異常、急性腎不全、脳症、腸重積などがあり、重症化すると死に至ることもあります。
意識が不安定になったり、低下したり、けいれん等の症状が現れた際には、すぐに医療機関を受診してください。
ロタウイルスの予防
ロタウイルスは、非常に感染力が強く増殖力もあるため、予防は難しくなりますが、感染、二次感染の予防に努めてください。
特に、子どもさんに感染すると症状が重くなりますので、小さなお子さんがいる家庭では特に気をつけてください。
なお、ノロウイルスと同様に、ロタウイルスもウイルスの構造上、消毒にアルコールは効果が薄いことが特徴です。
手洗いは石けんなどを使ってしっかりと行い、衣類などの消毒には次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)を使用してください。
次亜塩素酸ナトリウムは強い塩素ですので、ドアノブなどを消毒する目的で使用する場合には、200ppm(0.02%)に薄めたものを使用するといいでしょう。
嘔吐物に直接浸す場合は1,000ppm (0.1%)程度に薄めたものが適しています。次亜塩素酸ナトリウムに容器等に記載されている使用上の注意事項を守って使用してください。
キッチンハイターやキッチン泡ハイターなどは次亜塩素酸ナトリウムを含んでいて、消毒に有効です。薄め方などが花王のHPに記載されていますので、参考にしてください。
→ 次亜塩素酸ナトリウムを含む花王の塩素系漂白剤について(花王)
予防についての留意点
- 石けんで手洗いをしっかりとします。特に食事や料理の前、排便の後は気をつけます。
- 子どもさんの排泄後には、自分はもとより、子どもさんについてもしっかりと手洗いをします。
- 赤ちゃんのおむつを交換する際は特に気をつけて行い、交換後にしっかりと手洗いを行います。
- 感染者の便や、嘔吐したものは、細心の注意を払って処理してください。消毒には次亜塩素酸ナトリウムなどを使用するといいでしょう。また、処理後は手洗いを念入りに行います。
- 家族に感染者がいる場合などは、便座、ドアノブ、手すりなどの共通で触る部分を、できるだけ次亜塩素酸水溶液などで消毒するようにします。また、タオルの共用なども避けてください。
- 衣類が便や嘔吐したもので汚れてしまった場合は、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)でつけ置き消毒して、その後に他の洗濯物と別に洗濯するといいでしょう。
ロタウイルスのワクチン・予防接種
日本では、2種類のロタウイルスのワクチンが承認されていて、任意で予防接種ができます。これにより症状の重症化を9割程度は防ぐことができるといわれます。
2種類のワクチンは、いずれも乳児を対象としたものです。接種期間は、次の通りとなります。
- 生後6〜24週の間に2回接種するもの(ロタリックス)
- 生後6~32週の間に3回接種するもの(ロタテック)
どちらも、生後14週までに1回目を行うことが推奨されます。受けられる時期が短く、受けなければならないものではありません。接種する場合は早めに医師に相談するようにしましょう。
ワクチンの費用
ワクチンの接種は任意ですので、費用は基本的に自己負担になります。
具体的な金額は、病院によって異なりますが、1回の接種で1万円から1万5千円といったところです。
ロタリックスが1回1万5千円程度、ロタテックが1回1万円程度ですので、どちらも合計3万円程度と考えておけばいいと思います。
市町村によっては、接種費用の一部を負担してくれるところもありますので、お住まいの市町村のホームページを確認するといいでしょう。
ワクチンの副作用について
ロタウイルスのワクチンは日本で承認されてから、多くの子どもが接種しています。
主な副作用は鼻水、咳、発熱、下痢、嘔吐、腸重積などがあります。
0歳の時期は他にも予防接種を受けるものがありますので、他の予防接種のことも含めて、医療機関で相談するといいでしょう。
なお、腸重積を起こしたお子さんなど、接種できない場合もありますので、その点についても医師にきちんと相談してください。
ロタウイルスの検査
医療機関では、患者さんの症状や家族などの感染状況などから、ロタウイルスであるかを推定して診断することが多いのですが、医師の判断によっては、ウイルスを確定させる検査を行うことがあります。
便を使用して検査する「迅速診断検査(イムノクロマト法)」というものがあり、30分とかからずに結果がでます。
その他にもウイルスを増殖させて、遺伝子を検査するといった手法もありますが、これは正確な反面、検査の結果が出るまでに一定の時間がかかります。
ロタウイルス胃腸炎の治療
ロタウイルスの胃腸炎に対しては特別な治療法はありません。基本的には安静にして、水分補給を行うことが大切になります。
また、発熱がある場合には寒気などを感じることがありますので、暖かくすることも必要です。症状がひどくない場合は、このまま自然治癒に向かっていきます。
下痢の症状がありますが、ウイルスを排泄することが必要ですので、通常は下痢止めなどの薬は使用しません。
症状が重くなると医療機関で点滴を行うことも必要となります。小さいお子さんは症状がひどくなりますので、症状によっては入院治療を受けることも必要となります。
家庭では、経口補水液・経口補水ゼリーを少しずつ、多くの回数で与えるといいでしょう。受け付けない場合は、塩分を含む味噌汁やコンソメスープなどを与えます。
食べ物については、胃に負担をかけないよう、りんごを擦りおろしたものや、おかゆなど、消化にエネルギーを使わないものを与え、体力の回復とともに少しずつ、本来の食事に戻していくといいでしょう。
お風呂はいつから入れる?
症状がきつい時はお風呂に入れてあげるのも難しいと思いますが、ある程度回復してくれば、お風呂も可能になってきます。
ただし、感染力の強いウイルスですので、お子さんと一緒に湯船につかるようなことはせず、軽くシャワーをしてあげる程度がいいでしょう。
この時に次のことに気をつけるようにしましょう。
- タオルなどは使用したら、他の人はそのタオルを使用しない。
- お風呂を使用したあとには、次亜塩素酸ナトリウムで消毒する。
保育園や幼稚園、学校への登園・登校の時期について
ロタウイルスやノロウイルスと同様に、学校保健安全法で第3種の感染症と定められています。
ただし、「いつまで出席してはいけない」、「いつから登園してよい」という具体的な規定はありません。
法令の規定はありませんが、厚生労働省は登園や登校について次のような基準を公表しています。
嘔吐・下痢等の症状が治まり、普段の食事ができること
「保育所における感染症対策ガイドライン」抜粋
登校(園)基準:症状のある間が主なウイルスの排泄期間なので、下痢、嘔吐症状が消失した後、全身
状態のよい者は登校(園)可能であるが、手洗いを励行する。
「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」抜粋
症状や状態を考慮して、医師と相談してその時期を決めるといいでしょう。
大人の感染
大人になっても感染すれば嘔吐や下痢を伴う症状が出てきます。免疫力の弱っているときや高齢者は特に注意が必要です。
妊婦への影響
妊婦さんがロタウイルスに感染したことで、胎児に影響を与えたという事例はなく、過度に心配する必要はありません。
ただし、ロタウイルスに感染して下痢などの症状が重くなった場合は、脱水症状などを起こしますので、そういった状態が胎児に影響を与えることは考えられます。
母体に負担がかからないよう、ロタウイルスだけでなく、ウイルスや細菌に対する予防をすることが必要と思われます。
看護師からのひとこと
感染性の腸炎は、その原因がノロウイルスであってもロタウイルスであっても、またその他のウイルスであっても対応は同じです。
適切な水分・塩分補給をして脱水を予防し、周囲への二次感染を防ぐことです。
ロタウイルスのまとめ
- ロタウイルス胃腸炎とは、ロタウイルスが原因で起こる急性の胃腸炎のことをいいます。
- 症状はノロウイルスと似ていますが、乳幼児に感染しやすい点でノロウイルスと異なります。
- 0歳から2歳までの乳幼児が最も感染しやすく、5歳くらいまでに、ほとんどの子どもが感染します。
- 感染力が強く、少量のウイルスでも感染します。
- 主な感染経路は経口感染で、おむつの取り替え時などに子どもの便などから感染することが多くあります。
- 感染すると、2~4日の潜伏期間を経て症状が現ます。主な症状は、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などです。
- 症状は1〜2週間程度で治まりますが、重症化することもあります。通常は、初めて感染したときが最も重い症状となり、その後は感染するごとに症状が軽くなります。
- 予防には、手洗いなどが重要です。ただし、アルコール消毒は効果がなく、嘔吐物の処理などの消毒には次亜塩素酸ナトリウムを使用します。
- ワクチンの接種によって、症状の重症化を抑えることができます。
- 治療には特別なものはなく、安静にして下痢などによる脱水症状を起こさないよう、水分補給を行うことが大切になります。
- 妊婦さんがロタウイルスに感染したことによる胎児への影響については、事例がなく過度な心配は不要です。ただし、感染した場合、下痢による脱水症状などが生じることがあり、胎児に影響を及ぼさないよう注意が必要です。
- 厚生労働省がQ&Aを出していますので、参考してください。
→ ロタウイルスに関するQ&A(厚生労働省)
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