中耳炎(急性中耳炎)の原因や症状、治療法、家庭で気をつけることなど
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更新日:2017年11月18日
目次
中耳炎(急性中耳炎)とは
中耳炎(急性中耳炎)とは、中耳に細菌やウイルスなどが入って炎症を起こす病気です。
中耳とは、耳の鼓膜の内側の部分です。
この部分に膿がたまり、痛みや耳垂れが生じます。年齢に関係なく発症しますが、5歳くらいまでの子どもに多くみられます。赤ちゃんにもよく起こりますので、症状を見逃さないように注意しなければいけません。
中耳炎の種類
中耳炎にはいくつかの種類がありますが、代表的なものは以下のとおりです。(このページでは主に急性中耳炎について説明します。)
急性中耳炎
通常、「中耳炎」という場合は急性中耳炎のことをいいます。
急性中耳炎は、細菌やウイルスが中耳に入って、急性の炎症を起こしている状態を指します。子どもに多く発症する一般的な中耳炎です。
滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)
鼓膜の奥にある部分に滲出液という液体が溜まってしまい、それが原因で弱い痛みや難聴の症状がでてきます。
滲出液は、弱い炎症が起きたときにそれを治そうとして血管からしみ出てくる液体で、傷口から出てくるジクジクした液体です。鼓膜の奥で滲出液が出てくると、その液体は外へ排出されず、耳の聞こえが悪くなります。また、自分の声が耳に響く自家強声という症状もみられます。
慢性中耳炎
急性中耳炎や滲出性中耳炎が治らないまま、慢性化してしまった中耳炎を慢性中耳炎といいます。
急性中耳炎の場合、膿がひどくなると鼓膜に穴があいて中の膿を出し、鼓膜が再生されるのですが、これを繰り返していると、鼓膜が再生されなくなり、外から菌が入ることなどにより中耳炎を繰り返したりします。また、鼓膜の穴が閉じていない状態ですので、難聴を伴います。こういった状態を慢性中耳炎といいます。
真珠腫性中耳炎
真珠腫性中耳炎は慢性中耳炎の一つで、鼓膜の一部が中に入り込んでしまい、その部分に炎症が起きてしまう病気です。中耳炎を繰り返していたり、鼻をすすったりする癖のある人に見られることがありますが、はっきりとした原因は分かっていません。
症状としては、難聴や耳垂れなどが主なものとなりますが、顔面麻痺を起こすこともあり、腐敗したような悪臭が出ることもあります。
進行すると、耳の骨の組織などを壊していくことがあり、ひどくなると髄膜炎や頭蓋内膿瘍といった病気に至ることがあるので、注意が必要です。
航空性中耳炎
航空性中耳炎とは、飛行機やビルのエレベーターで急に圧力が変化するような際に、耳に外と中の圧力がうまく調整されない状態で起こるもので、耳の痛みを伴ったり、場合によっては鼓膜が破れたりします。
耳の圧力の調整は耳管が行っているのですが、そこがうまく機能しないことが原因となります。
子どもは耳管が短く太いこともあり、航空性中耳炎になりにくいと言われていますが、飛行機やエレベーターの下降時にはアメなどをなめさせると、うまく圧力が調整されて航空性中耳炎になりにくくなります。
中耳炎(急性中耳炎)の原因
中耳炎(急性中耳炎)の主な原因はウイルスや細菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌、ブドウ球菌など)です。
耳は鼓膜の奥側を中耳といい、この部分の先には鼻に繋がる耳管と呼ばれる部分があります。
鼻と耳を繋ぐ耳管という場所は、普段は閉じているのですが、ものを飲み込むときや、咳、くしゃみをする時に開きます。
細菌やウイルス感染による風邪をひいているときは、鼻水などに細菌がいますので、それが咳やくしゃみのときなどに、耳管から中耳の方へ入ってしまいます。この細菌によって中耳が炎症を起こしてしまいます。
小さい子どもは、大人と比べて耳管が太くて短い上に耳管の傾斜が大人より緩く、ほぼ真っ直ぐのため、中耳炎になりやすいのです。
特に、赤ちゃんは耳管が短い上に太いため、注意が必要です。
近年、細菌が抗生物質に対して耐性を持つようになっているため、中耳炎などにもかかりやすくなり、治癒するまでの期間が長引く傾向があります。
また、習慣的に鼻をすすっているような子どもは、細菌を吸い込みやすく、中耳炎にかかりやすいといわれています。
中耳炎(急性中耳炎)の症状
主な症状は、耳の痛み、発熱、聴力の低下、耳だれ(鼓膜に穴があいて、膿が外へ出てくる)などです。
小さなお子さんの場合、症状が発熱のみのこともあります。耳の痛みの強さは様々ですが、2、3日程度で治まっていきます。
ただし、痛みが治まっても鼓膜の奥に膿がある場合は、膿を出す必要がありますので、医療機関の受診が必要です。
赤ちゃんの場合、耳が痛くても「痛い」と伝えられないので、機嫌が悪くなったり、耳のあたりに手を持っていく動作が増えたりと、いつもと異なる動作をすることがあります。また、TVの音量をいつもよりも大きくするなどの行動にも注意が必要です。
赤ちゃんのサインを見逃さず、おかしいと思ったら医療機関を受診しましょう。
また、中耳炎(急性中耳炎)は放置すると、滲出性中耳炎や慢性中耳炎に移行することがあります。必ず医療機関を受診して治療を受けてください。
中耳炎(急性中耳炎)の主な症状
- 耳の痛み
- 耳だれ
- 耳が詰まった感じ
- 聞こえが良くない
- 発熱
中耳炎(急性中耳炎)の検査
中耳炎は、通常、鼓膜を観察することにより診断します。
また、中耳炎が長引いた場合には、次のような検査を行うことがあります。
- 細菌・ウイルスの検査(感染した細菌・ウイルスがに何であるか)
- 聴力の検査(難聴の度合の検査)
- レントゲン(耳の中の炎症がどの程度広がっているか)
- ティンパノメトリー検査(鼓膜の状態の検査)など
中耳炎(急性中耳炎)の治療
症状が軽い場合は、2〜3日程度で自然治癒していきます。この場合、抗生物質は不要です。
中程度の症状の場合は、抗生物質を投与することや、鼓膜を切開して膿を取り出すことが必要となります。
鼓膜に2〜3ミリ程度の穴をあけますが、切開した鼓膜は数日で再生し、元に戻ります。したがって、難聴などの後遺症が残ることはありません。
中耳炎(急性中耳炎)になる患者さんは、細菌やウイルスに感染して、喉の奥のあたりについても治療が必要となる場合があります。鼻水が多かったり詰まったりするときは、吸引したり、鼻の洗浄を行ったりします。
高熱が続くような場合や、難聴、顔面神経麻痺などの合併症がある場合には、別途治療が必要となります。
中耳炎(急性中耳炎)の予防
中耳炎(急性中耳炎)の主な原因は風邪(細菌やウイルス)ですので、通常は入浴、シャンプー、プールなどによって中耳炎(急性中耳炎)になることはありません。
また、お子さんの鼻の通りが悪いようなときは、こまめに拭き取ったり、ノーズクリーナー(鼻水を吸い取る専用のスポイトのようなもの)で吸い取ってあげたりしましょう。鼻の通りを良くしておくことで、中耳炎(急性中耳炎)の予防になります。
その他、市販されている吸引機もあります。粘度の高い鼻水はこちらの方がうまく吸えます。
中耳炎(急性中耳炎)になっていても、痛みが少ないこともあり、中耳炎に気づかないこともあります。お子さんが風邪をひいたときは、耳鼻科にも受診してチェックしてもらうと安心です。
大人の中耳炎(急性中耳炎)
大人は子どもと異なり、鼻と耳をつなぐ耳管が細く長いことから、耳へ細菌が入りづらく、中耳炎(急性中耳炎)にはなりにくいです。とはいえ、中耳炎にならないということではありません。
大人の場合は基本的に重症化することは少ないですが、症状を我慢して放置してしまうことがあるので悪化することがあります。
また、急性中耳炎を放置しておくと、慢性中耳炎や滲出性中耳炎へ移行することがあるので注意が必要です。慢性中耳炎や滲出性中耳炎になると、難聴などの後遺症が残ることがあります。
高齢者の場合、認知症で痛みの訴えができなかったり、耳が聞こえづらくても、加齢のせいだと放置していたりすることもありますので、注意が必要です。
妊婦への影響
中耳炎(急性中耳炎)自体が妊婦さんや、胎児へ影響を及ぼすことはないようですが、中耳炎のもととなるウイルスや細菌、処方される薬については、胎児へ影響するものもあります。医療機関を受診する際には、必ず妊娠している旨を伝え、適切な治療を受けてください。
看護師からひとこと
お子さんが中耳炎を長引かせると、成長発達・学業にも影響します。黄色い鼻水が出てきたなと思ったらすぐに耳鼻科を受診しましょう。
また、普段から鼻をすする癖がついている場合は、マメに声をかけて鼻をかむようにしましょう。
まとめ
- 中耳炎(急性中耳炎)とは、中耳に細菌やウイルスなどが入って炎症を起こす病気です。
- 中耳とは、耳の鼓膜の内側の部分で、この部分に膿がたまり、痛みや耳垂れが生じます。
- 5歳くらいまでの子どもに多くみられ、赤ちゃんにもよく起こります。
- 主な症状は、耳の痛み、発熱、聴力の低下、耳だれなどです。
- 通常2〜3日で自然治癒しますが、膿がひどくなると、鼓膜に穴をあけて膿を外へ出すことになります。この場合、鼓膜は自然に再生されます。
- 鼻のとおりを良くしておくことが、中耳炎の予防になります。