クループ症候群の症状、予防策、治療など
更新日:2017年05月27日
目次
クループ症候群とは
クループ症候群とは、主に上気道(声を出すための声帯や喉の周辺)が、ウイルスや細菌に感染して炎症を起こす病気です。
炎症により気道が腫れて狭くなってしまうため、呼吸がゼーゼーいったり、ひどい場合は呼吸が困難になったりしてしまいます。
小さい子の場合は、気道が狭く、気道の組織自体も弱いことから、クループ症候群になりやすいといわれています。
特に特徴的なのが、犬吠様咳嗽といって、犬が低めの声で吠えているような(またはオットセイが鳴いているような)咳が出ることです。
クループ症候群にかかるのは3か月~5歳のお子さんがほとんどで、生後2年以内のお子さんによく見られます。
一般にクループ症候群の発症は男子に多く、時期としては冬期の発生が多いのが特徴です。
3~6歳までのお子さんには再発することが多くありますが、成長に伴って気道が発育し発症数は減少します。
ただし、クループ症候群のうち、急性喉頭蓋炎については、2〜6歳くらいのお子さんに多くみられ、成人になっても発症することがあります。
クループ症候群の種類
クループ症候群にはいくつか種類があり、真性クループと仮性クループに大きく分けることができます。
真性クループはジフテリアの感染によるもので、現在はワクチン(予防接種)の普及により、ほとんど発症することがないため(【参考】ジフテリア(厚生労働省))、通常クループ症候群という場合は、仮性クループのことをいいます。
仮性クループとは、ウイルスや細菌の感染によるもので、急性喉頭蓋炎といった症状も現れることがあります。
ここでは、クループ症候群として発症しやすい感染性の仮性クループについて、大切な事項を説明していきます。
クループ症候群の症状
クループ症候群は、かぜの症状から始まりますが、それから1日〜2日程度で38度〜40度の熱が出て(発熱しない場合もあります)、その後に犬の遠吠えのような独特の咳(犬吠様咳嗽)が出ます。
クループ症候群の咳の特徴
- 乾いた感じの咳(ケンケンいう感じ)
- 犬の遠吠えのような咳
- オットセイの鳴き声のような咳
また、怒ったり泣いたりすることで悪化することがありますので、安静にさせることが大切です。数日は咳の症状を繰り返しますが、通常は1週間程度で軽快していきます。
症状が軽いうちはいいのですが、顔面蒼白な状態や意識障害などとなることもあり、症状が重くなりそうなときは、すぐに医療機関を受診するようにしてください。もちろん、顔面蒼白な状態やチアノーゼの状態があらわれたら、すぐに救急搬送してください。
急性喉頭蓋炎の場合は救急搬送を
細菌によるクループ症候群では急性喉頭蓋炎になることがありますが、こちらは、2歳〜6歳くらいまでのお子さんに多く見られる(成人にも見られます。)もので、突然、高熱と喉の痛みが出ます。
さらには、よだれがでたり、呼吸困難や窒息感を伴ったりすることもあります。
病院で挿管チューブ(気道を確保するために気管に挿入するチューブ)も入らなくなるくらいの気道閉塞が急激に進行することがり、窒息することもあります。
息苦しそうだったり顔色が悪かったりしたら、119番に連絡することも考えましょう。
クループ症候群の原因
クループ症候群の原因として最も多いのは、ウイルスによるもので、中でもパラインフルエンザウイルスが最も多く、クループ症候群の原因の約75%をしめるといわれています。
その他のウイルスでは、アデノウイルス、RSウイルス※などによるものが多くなります。また、細菌ではインフルエンザ菌、溶連菌などが主な原因です。
中でもインフルエンザ菌については特に注意しなければいけません。インフルエンザ菌b型(Hibといいます。インフルエンザウイルスとは別物です。)を原因とする場合、急性喉頭蓋炎を発症することが多く、主に2~6歳までのお子さんにかかります。
急性喉頭蓋炎は、急に喉が腫れてしまうことにより、気道がつまってしまい、症状がひどい場合は息ができなくなってしまいます。
あっという間に喉が腫れあがってしまうので、場合によっては入院治療により速やかに気管を切開する必要があります。
クループ症候群の予防
クループ症候群については、その原因となるウイルスや細菌に対する予防が必要となります。中でも急性喉頭蓋炎を起こすインフルエンザ菌b型(Hib)については、予防接種がありますので、接種について医師と相談して決めるといいでしょう。生後2か月から7か月の間に初回の接種を行い、その後、何回か接種する必要があります。詳しくは、お住まいの市町村のホームページなどで確認してください。
また、厚生労働省のページも確認してみてください。
クループ症候群の治療
クループ症候群は、喉の奥の声の出る辺りに炎症が起きています。その辺りはとても敏感な部分で、炎症が起きているときは、外気や刺激のあるニオイなどによって咳が出やすくなっています。したがって、咳を抑えるため、家では加湿することなどが必要です。
寝る時は背中にクッションを置いて上半身を高くして呼吸を楽にしてあげます。そして、とにかく安静にしておくことが大切です。
軽症の場合は、1週間程度で治ります。医療機関を受診した際には症状によって、喉の腫れを取る薬を吸入することや、ステロイドの内服や注射を行います。
また、急性喉頭蓋炎の場合は、ほとんどが入院治療になります。呼吸困難な状態でなければ抗生剤で細菌の感染に対処し、喉頭蓋の腫れについては、ステロイドホルモンの点滴などを行います。
呼吸困難が心配される場合は、呼吸を確保できるよう気管に管を通しておくことや、気管の切開を行うこととなります。呼吸困難や窒息の危険がなくなれば、抗生剤により次第に回復していきます。
クループ症候群の感染
クループ症候群は、ウイルスや細菌が原因となりますので、ウイルスや細菌が人から人へ、うつることはあります。ただし、そのウイルスや細菌がうつったからといって、必ずしもクループ症候群が引き起こされるということではありません。うつるのはウイルスや細菌であって、クループ症候群ではないということです。
もちろん、ウイルスや細菌に感染すると、様々な感染症が発症しますので、周囲にクループ症候群の人がいたら、感染予防をすることが大切です。
成人が発症するクループ症候群について
クループ症候群のうち、特に急性喉頭蓋炎は大人でも発症することがあります。
喉が痛い程度の症状から始まるのですが、大人の場合は単に風邪だと思ってしまい、急性喉頭蓋炎であると気付くことは難しいようです。
急に喉の痛みが出て子呼吸困難のような症状がみられるときは、医療機関を受診した方がいいでしょう。
看護師からひとこと
クループの咳は、犬の鳴き声やオットセイのような鳴き声と表されますが、まさにその通りです。
朝になって良くなったからといって様子を見てはいけません。翌日の夜にはさらにひどくなることがあります。翌朝には必ず小児科を受診しましょう。
まとめ
- クループ症候群とは声帯の周辺がウイルスや細菌に感染して炎症を起こす病気です。
- 小さい子どもは気道が狭く気道の組織自体も弱いため、クループ症候群になりやすいといわれています。
- クループ症候群にかかるのは3ヶ月~5歳のお子さんがほとんどです。
- クループ症候群のうち急性喉頭蓋炎の場合は2歳〜6歳くらいまでのお子さんの発症が多く見られます。
- ウイルスを原因とするものが多く、中でもパラインフルエンザウイルスが最も多くなります。
- 症状が軽症の場合は安静にすることなどにより1週間程度で軽快していきます。
- 急性喉頭蓋炎は喉頭蓋(喉の奥の辺り)が腫れてしまうため、ひどい場合は窒息することがありますので注意が必要です。
- クループ症候群はそれ自体が人へうつることはありませんが、原因となるウイルスや細菌は感染する可能性があります。