子どもの夜中の発熱はこう対処!看護師からアドバイス
更新日:2017年12月12日
目次
夜中の発熱、救急受診はちょっと待って!
こんにちは。当サイト編集部の看護師まさ姉です。
小さな子どもを抱えているお母さんが、必ずといっていいほど突き当たる問題。それは、夜中に起こる子どもの体調不良です。
夜中にぐずって起きるから何かと思ったら、既に38~39℃といった急な熱を出している。夜中に救急外来へ駆け込んだ経験のあるお母さんもいるでしょう。
でも、ちょっと待ってくださいね。
夜中に急に熱が出ても、すぐに受診しなければいけないかというと、そうとは限らないんです。
特に、第1子の場合にはわからないことも多く、育児に熱心なお母さんにとっては心配だと思います。真夜中にはママ友にも自分の親や兄弟姉妹にも相談できません。夜間の救急外来にはそうしたことで、困りかねて多くのお母さんが飛び込んでくるのです。
夜中の救急外来に駆け込む理由は「お母さんの不安や心配」
けれど、すぐに受診することが賢明なのでしょうか?結論から言ってしまうと、「多くの場合は、翌朝の受診を待った方が良い」と言えます。
「こんなに子どもの体が熱いのに!」「熱でフーフーしてるのに!」
と思うかもしれません。しかし、それが自分だったらどうでしょう?夜中にわざわざ受診せず、翌朝を待つということが多いでしょう。ではなぜ、子どもの発熱だけは夜中に受診するのでしょうか?それは、
- 子どもは言葉で伝えられないから不安
- 身体が小さいから、熱に耐えられるか心配
- 大人よりも高熱が出るから心配
そう、全てお母さんの「不安」なり「心配」がもとになっているのです。だから夜中であろうと、とにかく病院に行かなくちゃ!!となるのです。
子どもを大事に思う親御さんからしたら当然の親心です。でも、それが子どもにとっていい結果をもたらすかどうかは別なのです。
朝まで自宅で大丈夫?チェックリストで確認!
子どもが夜中に急に熱を出したら心配になってしまうのは、当然です。でも、発熱だけなら、翌朝の受診で大丈夫なことが多いのです。
そんなお母さんのために、チェックリストを作りました。まずは一呼吸おいて、次のチェックリストで確認してみましょう。
なお、あくまでも一般的な症状としてのチェックリストですので、心配な場合や判断ができない場合は後段の「#8000」へ電話して確認するようにしてください。
これなら朝まで待ってよし!
次のような状態であれば、夜中に救急外来に連れていくよりも、朝まで家で様子を見ていいことも多いです。
- 熱以外の症状がない
- 声をかければ、焦点が合う
- 顔色(唇の色)が良い
- 水分が摂れる
- おしっこが出ている
- 自力で座ることができる(年齢にもよります)
ちょっと心配! 要受診!?
次のような状態であれば、救急受診が必要かもしれません。
- ぐったりしていて、反応が乏しい
- 焦点が合わない
- 顔色が悪い、呼吸が辛そう
- 水分が摂れない
- おしっこが何時間も出ない
- 過去に熱性痙攣の既往があり、現在手持ちの抗痙攣薬がない、もしくは発熱時の対処を指示されていない
ただし、子どもは自分の痛みや苦しさを言葉で言えないことが多いですね。また、夜の熱だと、眠くてぐったりしているのか、熱のせいなのか判断できないこともあると思います。
そんなときにはまず、小児救急電話相談「#8000」で相談しましょう!
小児救急電話相談「#8000」で相談しよう!!
小児救急電話相談「#8000」を、知っていますか?
上のチェックリストを参考にしても不安という場合には、どうしたらよいでしょうか?そんなときのために、医師や看護師が電話で相談を受けてくれる制度があるのです!
夜間や休日に子どもが突発的な熱を出した場合など、医師か看護師が電話に出て相談にのってくれるのです。心強いですね。
全国一律、短縮番号#8000をプッシュすることで、都道府県の窓口に自動転送されます。
詳しくはこちらをご覧ください。
- ○厚生労働省ホームページ
小児救急電話相談事業(#8000)について
いざという時にすぐかけられるよう、#8000をスマホの電話帳に登録しておきましょう。
また、「こどもの救急」のサイトにも、熱が出たときに急いで受診すべきかどうかなどなど、対処方法や判断方法が載っています。スマホの「お気に入り登録」に入れておくと安心ですね。
受診までに、家庭でできる対応は?
チェックリストや#8000の電話相談で、翌朝の受診で大丈夫と判断できた場合は、翌朝まで何をしたらよいでしょうか?
家庭にあるもので、子どもが少しでも楽になるものをご紹介します。
1. 氷枕やアイスノン、保冷剤で冷やす
首・腋窩(脇の下)・鼠径(足の付け根)を冷やします。
大きな血管が通っているので、効率よく冷やすことができます。直接肌に当たらないように、ガーゼや薄いタオルでくるんであげましょう。
頭の下にアイスノンを置くと、気分的に気持ちよくなります。
2. かけもの・室温を調節する
熱が上がり始めるときには、悪寒(寒気)を訴えることがあります。その間は寝具のかけものを厚くし、温めてあげましょう。
子どもの場合は気が付いたときには既に高熱があった・・・というケースの方が多いと思います。
子どもの体も熱くなっていたら、かけものを薄くしてあげましょう。汗をかいたらタオルで拭いて、肌着とパジャマを交換してあげましょう。
3. 水分を摂取させる
発熱時には身体の水分が喪失されます。脱水になると、それだけでぐったりしてしまいます。むしろ、熱そのものよりも脱水の方が身体には悪い場合があります。
かといって一度に大量に飲むと戻してしまって逆効果ということがありますので、水分は少しずつあげるようにしましょう。小さい子の間はスプーンで少しずつあげてもいいかもしれません。
嘔吐や下痢がなく、熱が始まったばかりであれば麦茶でも翌朝までの対応としては問題ありません。急な発熱や嘔吐下痢のときのために、OS-1などの経口補水液やアクアライトなどのイオン飲料の買い置きをしておくようにしましょう。
一度にごくごくと飲む必要はありません。数口ずつを繰り返して、量をとるようにしましょう。
まだ母乳やミルクという月齢の赤ちゃんは、母乳やミルクで問題ありません。一番身体にとって自然な水分ですから。
4. 解熱薬を使う
もし以前にかかりつけ医で処方してもらった解熱薬の残りがあったら、使うことで楽になる場合もあるでしょう。ただし、古い薬は効果が無い可能性もあり、また解熱薬は治すものではなく、あくまでもそのときの熱を下げるだけの働きしかないことは覚えておきましょう。
高熱のせいで水分が摂れない、ぐったりしてしまっているという場合には、解熱薬を使うと楽になります。熱がある割にピンピンしていれば、無理に使う必要はありません。残っていた薬を使う場合には、
- 薬が古くないか
- 本当にその子のものか
を確認しましょう。とくに粉薬の場合、体重によって量を調整してされています。同じ解熱薬でも兄弟で体格が違えば必要量も違いますので、くれぐれも兄弟の物で代用してはいけません。
5. 冷えピタをする
熱が出た!!となると、まずするのが実は冷えピタのような冷却シートではないでしょうか?そのために、冷蔵庫に常にストックしてあるご家庭も多いですね。
実は、おでこというのはそんなに冷却効果が高いわけではありません。
また、冷蔵庫から出した直後に貼るとひんやりして気持ちがよいのですが、そのあとの冷却効果については保冷剤を正しくあてて適宜交換してあげるのとどのくらい違うのか・・・定かではありません。
ただ、子どもって冷えピタ好きなんですよねぇ。おでこに貼ってもらうだけで、なんか良くなった気がしてしまうものです。
ですから、子どもを安心させる意味もこめて、貼ってあげてもよいですね。
なんとか夜を乗り切った!翌朝の対応は?
とりあえず、朝まで様子を見たところ、熱も下がってきてひと安心。でも、その後はどうすればいいのでしょうか。
熱が下がっても、受診は必要
朝になったら熱が下がった!そういうことは、よくあります。
しかし、ここまで説明したとおり「翌朝には医療機関(かかりつけ医)を受診する」つもりで夜間を過ごしていますから、朝熱が下がっても受診した方が無難でしょう。
通常、熱というのは朝が低く、夕方から上がってきます。これは体内のホルモンによってそのような仕組みになっているのです。翌夕方に再度熱が上がって夜間外来に駆け込むよりは、日中に行く方が賢い受診の仕方と言えるでしょう。
もし食欲があるのなら、軽く食べてから受診してもいいでしょう。ただ、熱の出ている時というのは消化機能も落ちていますから、いつもよりは消化にいいものを選んであげてください。
もし食欲がない、やっと朝になって寝ついたというのであれば、無理に朝食を摂る必要はありません。その代り、水分だけはちょこちょことあげるようにしましょう。
熱が下がっても保育園はNG!丸1日は安静にするのが理想
よくあるのが、「朝になったら熱が下がったから保育園に行きました」というケース。働くお母さんは、「助かった~」と保育園に預けて仕事に行ってしまいがちです。
私自身も子どもがハイハイをする前から看護師に復帰していたので、働くお母さんの気持ちはよーくわかります。でも、これでは何の解決にもならないし、余計に長引かせてしまいます。
不思議なもので、人間は夜熱が出ても、朝には下がるものです。しかし、それはただ朝になって下がっただけであって、治ったわけではありません。いきなり38〜39℃の熱を出した原因が、一晩寝ただけで解決するとは、考えにくいです。
そしてハラハラしながら保育園に送り出すと・・・
- 「給食を食べない。」
- 「お昼寝から起きたら熱があった。」
と、やっぱり呼び出されてしまうわけです。
本当は、熱が出たときには、朝から夜を通して丸1日熱が出なくなるまで自宅安静、といのが理想です。
まずは翌朝に病院を受診して、園に相談する
病気を治すのは、基本的に自分の体です。体力の消耗を防ぎ、薬の力を借りて早く治すのが目標です。お母さんが出勤するのなら、いつ子どもが熱を出してもいいように、頼める人を確保してから働きに出たいところです。
と言っても、核家族化が進んでいる上に自分の親世代も現役を長く続けている現代では、なかなかそうも言っていられません。私の場合は母親がちょうど定年退職した年だったから本当に助かりました。
- 実家から離れている
- 熱のある子どもを託せるような知り合いや親戚もいない
そういう家庭もあるでしょう。ですから、まず翌朝受診をした上で、園に事情を説明して相談してみましょう。場合によっては、昼の投薬をお願いできたり、多少の熱なら様子をみて預かってくれたりする園もあります。逆に、昼の薬は責任がもてないので投与しない、昨晩熱が出たのなら登園お断り、というところもあります。他のお子さんにうつしてしまわないかといった観点も含めて、よく相談して考えましょう。
それぞれの託児事情によるところが大きいので、まずは相談をすることが大切です。
夜中の救急受診をしないほうがいい理由とは?
夜中の発熱のほとんどは、翌朝の受診で大丈夫とお伝えしてきました。でも、
- 夜中に開いている救急病院があるのに、なぜ飛び込んではいけないのか?
- そのための救急外来なのでは?
そう思いますよね?どうして夜中の受診は必要ないのでしょうか。
夜間の救急外来は「緊急の治療をする場」
夜間の救急外来は、本当に緊急の治療が必要な人のためにあります。つまり、命に関わるとか、後遺症を残してしまうとか、翌朝まで待ったら状態が悪化してしまう状態のときに受診するべき場なのです。
親は自分の子どもが大切です。けれども、翌朝の受診でも全然大丈夫という子ども達の受診のせいで、本当に緊急の患者さんにまわすべき手をまわせなくなってしまうのです。
救急外来では「さしあたっての対応」しかできない
いくら救急外来があるとはいっても、夜間は十分な医療スタッフがそろっていません。平日の日中と同じだけの人数はいないのです。まだ経験の少ない先生であっても、夜間の救急当番ということで院内に待機している・・・そんな状態です。
ですから、夜中に受診したところで、日中と同じ対応はとれません。「さしあたっての対応」と思っていただいた方がよいでしょう。処方する薬は1日分としている病院もありますし、検査も薬も最小限のものになります。
夜間救急で受診した際は、その場で入院となるか、翌日以降に日中の外来を受診して診断してもらうように勧められるかになります。夜、受診してそこで1週間分の風邪薬をもらって帰る・・・そういう対応は望めません。
熱が出た直後に検査はできない!
子どもの熱の原因はたくさんありますが、原則として救急外来では熱の原因を特定することはできません。
ただし、冬場のインフルエンザは別です。インフルエンザなら15分程度で結果の出る迅速検査がありますし、もう一度医療機関へ行くことで感染拡大してしまう恐れがあることから、救急でも検査することが多いです。
ただし、インフルエンザであっても熱が出た直後はできません。熱が出た直後に検査してしまうと、本当は陽性であっても陰性と出てしまうことがあるのです。
もし熱が出た直後に受けてもその時点で陽性と出たら陽性ですが、陰性と出た場合は疑いが晴れないままグレーとなります。熱が出て12~24時間後くらいを目安に検査を受けるとよいでしょう。
救急外来で検査して陰性だったからと、翌日にかかりつけ医でまた検査を受けるというのは、大変な苦痛です。鼻に綿棒を入れるのはとても痛いので、検査を繰り返すと病院嫌いになってしまう子どもさんもいます。
「インフルエンザに限って言えば、熱が出てから少なくとも12時間あけてからの検査が望ましい」と言われています。
ですから、熱が出たばかりのタイミングで救急外来を受診しても、とりあえずの解熱剤処方だけで帰されることもあります。夜中に救急外来に行って、さらに翌朝かかりつけ医にかからなければならないのなら、労力や身体の負担からしても、最初からかかりつけ医にいくべきということになるのです。
(但し、超迅速インフルエンザ検査システム(富士ドライケム IMMUNO AG1)で検査されますと、3~6時間の超早期でインフルエンザの確定診断がなされています。しかし、この超迅速検査は、一部の病院・クリニックでしかできない検査です。救急病院であっても出来ないところが多いです。)
だから、外来受診は翌朝でいい
つまり夜間救急にかかっても、こうなります。
- 緊急で必要な対処しかしない。
- 検査や処置はほとんどせず、間に合わせの薬だけになる。
- 診察は初対面の若手医師が多い。
- 薬の処方日数は1~3日分程度。
- 結局、かかりつけ医に受診しなければならない。
救急外来というのは、明日の朝まで様子をみて死なないかを判断するだけの場です。それなら、朝まで自宅でできることをして、翌朝1番にかかりつけ医にかかる方がよいということになるのです。
また、「経過をみる」というのは多くの病気に対して有効な優れた診断手法です。放っておけない病気というのは、たいていの場合、次第に悪くなっていきますので、数時間でもよく経過をみてから診察を受けた方が結果として正確な診療につながる場合もあるのです。
救急外来を受診することになったら!?
子どもが急に発熱しても、まずは慌てずに上記のチェックリストで救急受診が必要なのかを確認しましょう。「救急受診が必要!」となったら、すぐに病院に駆け込むのではなく次のことを確認してください。
救急外来へ電話しよう
- 上のチェックリストで、「ちょっと心配!要受診かも!?」にあてはまる症状がある
- 小児救急電話相談「#8000」で、救急外来受診を勧められた
こうなった場合は、あなたのお子さんも「緊急」ということ。そうなったら、夜遠慮せずに救急外来を受診しましょう!!
救急外来に受診することにしたら、夜まずやってもらいたいことは、電話です!いきなり救急外来に行くのは、ちょっと待ってくださいね。
すぐに駆け込んでも医師が対応できない時間帯というものもありますから、まずは今からの受診が対応可能か、確認してから病院に向かいましょう。
救急受診に、必要な持ち物は?
夜電話の次に大切なのは、持ち物です。救急外来は、かかりつけ医とは違います。初対面の医師が多いので、お子さんの情報となるものを全てそろえて受診しましょう。
<受診に必ず持って行くもの>
- 保険証
- 受給者証
- 診察券(持っていれば)
- お薬手帳
- 母子手帳
<必要な場合、持っていくもの>
- オムツ
- おしりふき
- オムツを捨てるビニール袋
- 飲み物 (待ち時間が長い場合や、のどが渇いたときのため)
- かけもの (待合が寒い場合や、車内での待機のため)
電話と荷物。これらを確認してから、救急外来に向かいましょう。
最後に
子育てには夜間の急な発熱はつきものです。
もし夜中に急に高熱を出しても、慌てず「救急外来の受診の必要があるか?」を判断し、遠慮なく小児救急電話相談「#8000」を使いましょう。そして、必要があれば夜間救急外来を受診し、翌日は必ずかかりつけ医に診てもらいましょう。
登園(登校)は医師や保育園(学校)と相談してからにしましょう。