夜尿症の治療とは?小学生のおねしょ状況や原因、家庭での判定方法を説明します。
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更新日:2017年07月23日
夜尿症(おねしょ)とは
夜尿症(おねしょ)とは、寝ている間におしっこをしてしまうことをいいます。原因は、主に寝ている間に作られるおしっこの量と、それを溜めておく膀胱の大きさ、トイレに行きたい時に目覚めることができるかが問題となって起こります。
男子は女子の2倍程度の夜尿症のお子さんがいると言われていますが、男女ともに成長に伴い、夜に作られるおしっこの量が少なくなり、膀胱が大きくなってくるので、おねしょはなくなってきます。
ただし、小学校に入学してからも続く場合は、対策を考えはじめます。
なお、日本泌尿器科学会によると、子どもの夜尿症は次のように定義されています。
5歳を過ぎて週に2回以上の頻度で、少なくとも3か月以上の期間において夜間睡眠中の尿失禁を認めるもの
夜尿症の見られる年齢
通常、1歳〜2歳にかけての時期は毎日のように、おねしょを繰り返しますが、2歳〜3歳にかけては50%くらい、5歳では20%くらいに減っていきます。
そして、小学生の低学年になると10%程度、小学生の高学年では5%くらい(20人に1人ほど)のお子さんが、おねしょをしています。
小学校を卒業する頃にはかなり少なくなりますが、成人になっても、おねしょをする人もいます。
夜尿症の原因
3つの主な原因
- 夜間にたくさんの尿が作られてしまう。
- 膀胱が十分に発達していないため、多くの尿を溜めることができない。
- おしっこをしたい時に目を覚ますことができない。
これらはどれか一つが原因となるわけではなく、複数の原因が合わさって見られることも多くあります。以下にそれぞれを簡単に説明します。
1. 夜間にたくさんの尿が作られてしまう。
夜間のおしっこの量を調整するのは、抗利尿ホルモン(ADH)というホルモンです。赤ちゃんは昼夜の区別がない生活をしていますが、しだいに昼は起きて夜は寝るという習慣ができてきます。昼と夜の区別が習慣として身に付いてくると、睡眠中に分泌される抗利尿ホルモンが増えてきます。
この抗利尿ホルモンにより、夜間に作られる尿の量は少なくなるのですが、この分泌量が少ないと、夜間にたくさんのおしっこが作られてしまいます。
2. 膀胱が十分に発達していないため、多くの尿を溜めることができない。
膀胱は成長とともに大きくなり、昼間1回分のおしっこの量の2倍程度は溜められるようになります。しかし、膀胱の発達が不十分だと、寝ている間に作られるおしっこを溜めておくことができません。
3. おしっこをしたい時に目を覚ますことができない。
これを覚醒障害とも呼びます。お子さんですから、眠りが深く、尿意があっても気づかずに朝になってしまうという捉え方もあります。
その他、ストレスや病気も
ストレス
今まで、おねしょをしてなかったのに急にするようになったり、一旦は改善された夜尿症が再び始まったりする場合は、ストレスが原因となっていることがあります。
寝ている間のおしっこの量の調節は、抗利尿ホルモンが行いますが、ストレスが溜まると制御が効かなくなり、夜尿症に繋がることがあります。
腎臓などの病気
膀胱や腎臓に病気があり、その影響で夜尿症となっている場合もあります。
夜尿症の種類
原因となる3つのうち、3番目の「目を覚ますことができない」というのは、共通の要素になりますので、1と2の要素に基づいて、大きく3つに分類することができます。この違いによって、治療方法も変わってきます。
1. 夜間多尿型
夜間のおしっこの量が多く、膀胱の大きさは正常な場合です。夜間のおしっこの量が多いことが原因となります。
2. 膀胱未熟型
夜間のおしっこの量は正常で、膀胱が小さい場合です。膀胱の大きさが原因となります。
3. 混合(夜間多尿と膀胱未熟の両方)
夜間のおしっこの量が多く、膀胱も小さい場合です。
夜尿症の種類の判定方法
上記の3つのタイプは、家庭でも判定することができます。気になる方はお試しください。
夜間に作られる尿の量の測定方法
- 寝る前にトイレにいって、膀胱の中のおしっこを出します。
- 紙おむつをして寝ます。(寝る前に紙おむつの重さを測っておきます。)
- 起きたときに、濡れたおむつの重さを測り、紙おむつの重さを差し引いて、おしっこの重さを測定します。
- 朝起きたら、トイレへ行き、おしっこの量を計量カップなどを使用して測定します。
紙おむつに含まれるおしっこの量と、朝のトイレのおしっこの量を足したものが、夜間に作られたおしっこの量になります。(重さのグラムと、計量カップのccは同じ単位と考えてください。例えば100グラム=100ccとなります。)
正常なおしっこの量は、計測した尿の量が「体重(kg)×睡眠時間×0.9」以下です。目安としては次のとおりです。
- 小学校1〜3年生 200cc以下
- 学校4年生以降 250cc以下
この量より多い場合は、夜間に作られる尿の量が多いため、抗利尿ホルモンの分泌低下が考えられます。
膀胱容量の測定手順
おねしょがなかった日の、起床時のおしっこの量(または、昼間におしっこを我慢したときの排尿量)を測定します。
この場合の正常な尿の量は、「排尿量(cc)÷体重(kg)」が5cc/kg以上となります。目安としては次のとおりです。
- 小学校1年生 150cc以上
- 小学校2年生 200cc以上
- 小学校3年生以降 250cc以上
この量より少ない場合は膀胱が小さいと考えられます。また、昼もパンツが濡れるような場合は泌尿器科へも相談した方がいいでしょう。
夜尿症を治す生活習慣について
本格的に治療を始める前に、まず生活習慣を見直すことが大切です。次のことに注意して生活をしてみましょう。
水分を多く取らないようにする。
無理に水分を取らないようにするのではなく、必要以上に水分を取らないようにします。夏は夜に大量の汗をかくこともありますが、冬は夏ほど汗をかきませんので、その辺のことも考えながら、水分の摂取量を見てあげましょう。
ただし、極端に水分摂取を控えてしまうと便秘になることもあります。
また、就寝する前の2時間は水分を取らないことも大切です。特に寝る前に水分摂取の習慣がある場合は、見直していきましょう。
正しい食生活を心がける
食事のバランス、食事の時間など、規則正しい食事を心がけます。食後にすぐ寝ると抗利尿ホルモンの分泌がうまくいかなくなることがあります。また、塩分を控えめにするといいでしょう。
ストレスをためない。
おねしょのことについて、過度に子どもさんに言ってしまうと、子どもさんのストレスになってしまいます。怒ったりするのではなく、親子でおねしょのことを、きとんと話すことも大切です。
また、本人が治そうという気持ちになることが大切ですが、決しておねしょをしたことを責めないようにして、前向きな気持ちを持てるようにしてあげましょう。
睡眠をしっかり取る。
寝る前にお風呂に入り、早く寝たり、一緒に寝てあげたりして、毎日安心して眠りにつけるようにしましょう。また、寝る前にトイレに行く習慣をつけます。
夜中に無理にトイレに起こすと、かえって夜におしっこをする習慣がついてしまうことがあります。
アレルギーなどがある場合は、まずそちらを治療してみる。
鼻が詰まっていたり、夜にいびきをかいていたり、アレルギーなどがある場合は、こちらを治療することで夜尿症がなくなることがあります。安定した睡眠を取れることなどで、改善する可能性が出てきます。
夜尿症の治療
夜尿症は年齢とともに治っていくものですが、中学生、高校生になっても治らない人がいます(多くの人はさらに年齢がいくにつれて治っていきます)。前述した生活習慣に注意しても治らない場合は、医師のもとで治療を受けることも検討しましょう。
学年が上がるにつれ、修学旅行があったり、友人と泊まりに出かけたりする機会も増えてきます。また、夜尿症自体がストレスになり、心や生活に影響が出てきます。したがって、恥ずかしがらずに医療機関を受診して早めに治すことが重要だと思います。
また、自然治癒よりも治療を受けた方が早期に治癒するというデータもあります。夜尿症の専門外来を設けている病院もありますので、受診することをお勧めします。
医療機関における治療には、次のようなものがあります。
夜尿アラームによる療法
夜尿アラームといって、夜尿症を治療するための機器です。機器といっても大げさなものではありません。
使用法としては、おむつなどにセンサーを取り付け、そのセンサーが水分を感知したら、バイブや光や音などが鳴り、残りのおしっこをトイレでするといったものです。アラームによって、寝ているときにおしっこがしたくなったら、起きるということを習慣づけることができます。
「夜尿アラーム」という名前から抵抗がある人もいるかもしれませんが、アラーム療法という確立された治療法です。アラーム自体は保険の適用がないので、通販などで購入するのが一般的です。
効果はかなり期待できるようですが、アラームだけでは本人が起きないため、家族の協力が必要になってきます。アラームが鳴ったら家族が本人を起こしてあげて、トイレに連れて行くことになります。
夜尿アラームの使い方の例として次の動画を参考にしてみてください。
薬を使用した治療
原因やタイプ(種類)で説明したとおり、その内容に応じて薬なども異なってきます。
夜間に作られる尿の量が多い場合
デスモプレシン(ミニリンメルトOD錠など)が国内で承認されています。抗利尿ホルモンと同様の働きをして、夜間のおしっこの量を減らします。ただし、ホルモンそのものに働くのではなく、ホルモンの補助としての役割を果たす薬ですので、薬をやめると夜尿症が再発することも多くなります。
ただし、就寝2時間前の水分摂取は控えることが大切です。水分をとっているにもかかわらず、抗利尿ホルモンによって尿を作らないようにすると、腎臓などに大きな負担がかかってしまいます。
その他にも、膀胱に多くのおしっこを溜められるようにする薬や、抗利尿ホルモンの分泌を促進させる薬があります。薬は副作用を伴うものもありますので、医師の処方により使用します。
膀胱が十分に発達していないため、多くの尿を溜めることができない場合
抗コリン薬という薬があります。膀胱の容量を増加させるために、膀胱の緊張を緩和するなどの効果があります。
大人の夜尿症
大人にも夜尿症があります。大きく分類すると、子どもの頃から継続している場合と、大人になって再発した場合があります。
睡眠剤を使用していて夜に尿意を感じることができなかったり、アルコール摂取なども原因となることがあります。
大人の夜尿症であっても、原因はいくつかあります。恥ずかしがることなく、病院で医師に相談することをお勧めします。
看護師からひとこと
小学校高学年になってもおねしょをしていると、「うちの子大丈夫かしら?」と不安になるお母さんが多いですね。
でも、実は皆口に出さないだけで、小学校高学年でもクラスに数人はいるものです。
夜尿症は年齢とともに改善されることが多いですが、その治療には親・本人療法の理解と治そうという気持ちが必要です。とくにアラーム療法は、親も一緒に寝る必要があるし、夜中に起きてしまいますので、なかなか続けられないという人が多いのも事実。
ただ、根気よく付き合ってあげることで改善していきますし、夜尿症が治るということは子どもさんの自尊心にも大きな影響を及ぼします。夏休みなどの長期休みを利用して治療を開始すると、続けやすいですよ。
まとめ
- 夜尿症の原因は、主に寝ている間に作られるおしっこの量と、それを溜めておく膀胱の大きさにあります。
- 小学生の高学年であっても5%(20人に1人)くらいは、おねしょをしています。
- 夜尿症にはタイプがあり、夜間のおしっこの量が多い、膀胱が小さい、その両方の3つに分類されます。
- おしっこの量、膀胱の大きさの判定は家庭でも行うことができます。
- 治すためには、まず生活習慣の改善を行うことが大切です。
- 生活習慣を改善しても治らない場合は、医師の診察のもとで薬を使用することや、夜尿アラームを使用することで治療することができます。