手足口病の症状や予防法、感染経路、登園の時期、妊婦さんへの影響など
更新日:2017年05月23日
目次
手足口病とは
手足口病は、コクサッキーウイルス、エンテロウイルスなどのウイルスが原因となって発症するウイルス性疾患です。
手の平や足の裏、口の中に水疱性の発疹が生じるもので、水疱が出現する好発部位を総称した病名にもなっています。
主に乳児や幼児によく見られる疾患で、感染者の9割程度が5歳以下の幼児です。
なお、手足口病の発生数報告は基本的に小児科医療機関においての調査内容がベースになっています。そのため、成人においてどの程度の感染者数があるかについては、正確な動向を把握することは困難な面もありますが、大人でも感染することは知られています。
原因となる主なウイルスが湿気や高温に強いという特徴があるため、特に夏に流行が見られます。
基本的には風邪の一種として数日の経過で後遺症を来すことなく回復しますが、まれに急性髄膜炎、急性脳炎など、神経が集中しているところに対して合併症が起こることがあります。
手足口病は、ヘルパンギーナと似ていますが、ヘルパンギーナは通常、突然の高熱を伴い、発疹は口の中にのみできますが、手足口病は高熱を伴わない場合があり、発疹は口の中だけでなく手足などにもできる点で異なります。ただし、医師であっても判断が難しい場合があるようです。
手足口病の感染・感染経路
感染者の鼻水や唾液、便の中に排泄されたウイルスなどに直接接触したり、口に入ることで感染が成立します。
中でも便は、2〜4週間程度にわたってウイルスが排出されるので、他人にウイルスを移す期間が長期に渡ることとなります。
保育園や幼稚園などでは、乳幼児が集団でふれあう時間が多く、子ども自身に衛生的な意識がないことなどから集団感染が生じやすい場となっています。
また、乳幼児は原因となるウイルスに感染した経験がないため、ウイルスに接触した子どもの多くが発病することとなります。
手足口病の感染予防
手足口病のウイルスは感染力が強く、感染症に共通の予防策を含めて、次のことに留意することが必要です。
基本的な感染症の予防策
- こまめに手洗いをする。
- 特に帰宅時や食事の前には、必ずうがいと手洗いをする。
- タオルや箸などを共用しない。
- おむつ交換に細心の注意を払う。(症状がおさまった後も2〜4週間、便などにウイルスが排泄されます。)
- 咳やくしゃみの際に、ティッシュなどで鼻や口を押さえる。
- 咳が続くときにはマスクをする。
保育園、幼稚園、学校への登園、登校について
手足口病は、麻疹(はしか)や水疱瘡(みずぼうそう)のように、学校保健安全法で定められている「出席停止」の対象とはなっていません。
したがって、基本的には本人の状態や医師との相談によって判断することになります。
また、厚生労働省のホームページによれば、次のような記述があります。
手足口病は、発病しても、軽い症状だけで治ってしまうことがほとんどであるという意味で、感染してはいけない特別な病気ではありません。これまでほとんどの人が子どもの間にかかって、免疫をつけてきた感染症です。
手足口病に関するQ&A(厚生労働省)
予防接種について
手足口病の原因ウイルスに対する有効なワクチン(予防接種)はありません。
しかしながら手足口病が疑われる状況では、ほかの予防接種の効果に影響を来す可能性も危惧されます。そのため、他の予防接種を受ける場合にも注意が必要です。
予防接種は基本的に健康なときに受けることがいいとされています。
他の予防接種を受ける場合
手足口病を含めた感染症が疑われる状況では(回復期や感染者と接触したとき)、1〜2週間程度、元気であることを確認してから予防接種を行うことがあります。
しかし、乳児期の予防接種スケジュール非常にタイトであり、この数字を厳格に守っていると予防接種が予定通りに終わらないことも懸念されるのも事実です。
そのため、1〜2週間という数字にこだわりすぎることなく、お子さんの体調や周囲の感染流行状況、予防接種の進み具合などを勘案しながら、最終的にはかかりつけの先生としっかり相談しましょう。(日本小児感染症学会「小児感染免疫」)
手足口病の検査
ウイルスは唾液や便の中などに存在していますが、ウイルスを検査にて確認することはあまり行わず、基本的には症状から手足口病の診断を行います。
合併症の発症が疑われる場合においてなどは必要に応じて血液検査を併用することもあります。
手足口病の症状
ウイルスの潜伏期間は2〜5日程度です。
初期症状は発熱、のどの痛みなどから始まります。
発熱は微熱程度の場合も多いのですが、場合によっては40度近くの高熱が出るケースもあります。また、初期に口の中に軽い発疹ができることもあります。
感染してから約2〜4日経つと、手足に発疹が出始め、足や口内にも広がっていきます(おしりなどに出来ることもあります)。
見た目には2〜3mmの白や赤っぽい発疹が確認できます(画像を参照)。発熱の症状は約3人に1人程度であり、高熱が続くようなことは通常はありません。
基本的には軽度の症状でおさまりますが、口内の発疹が破裂してしまうことなどで強い痛みを伴うことがあり、それが原因で食欲が減退することがあります。
ひどい場合、何も食べ物を受け付けなくなってしまいます。食べられない日が何日も続くと、脱水状態となり、体力も消耗し栄養状態も悪くなるので、病院で点滴などの処置をとってもらう必要があります。
手足口病のウイルスは1種類ではないため、1回かかっても2回目、3回目と発症してしまうこともあります。
また、手足口病の典型的な症状がみられずに重症になることもありますので、注意が必要です。手足口病の症状がなくなってから、一時的に手足の爪が剥がれるようなこともありますが、自然に治るとされています。
合併症について
基本的に一定の期間を経過していくと、病状は回復し、のちに問題や病気を起こすことはほとんどありませんが、稀に合併症を起こすことがあります。代表的なものは次のものになります。
- 髄膜炎
- 小脳失調症
- 脳炎
- 心筋炎
- 神経原性肺水腫
- 急性弛緩性麻痺
中でも、特にエンテロウイルス71というウイルスによる手足口病の場合は、他のウイルスと比べて脳などの神経に合併症を引き起こす可能性が高いと言われています。
また記憶に新しいところでは、エンテロウイルスD68というウイルスが2014年アメリカで大流行し弛緩性麻痺を呈するお子さんが多数発生したことあります。
日本においても同ウイルスと重症呼吸疾患との関連性が指摘されるようにもなっており、注意が喚起されています(日本小児科学会)。
手足口病の治療
ウイルスに対して特異的な治療法はないため、対症療法が中心になります。
発疹についても、水疱中のウイルスを広げないためにもかゆみが出た際にはかきむしらないように気をつけなければいけません。症状に応じた軟膏を使用して炎症を抑えることもあります。
その他は発熱・口内等については適宜解熱鎮痛剤を使用しながら症状が改善するのを待つのが通常です。
通常は抗生剤は使用されませんが、水疱が破れた後に細菌感染を起こすこともあるため、この場合においては抗生剤が処方されることもあります。
また、元気がない、顔色が悪い、頭痛、嘔吐、などの場合には髄膜炎、脳炎などへの進展を注意することが必要です。
手足口病に感染した場合の食事について
口の中に発疹ができた場合、口内の痛みから食欲減退を起こすことがありますので、食事はなるべく噛まなくても飲み込めるような、喉越しのいいものを食べさせるといいでしょう。
酸味の強いもの、熱いもの、辛いものなどの刺激が強いものは避けて、牛乳やバナナ、ジュースを飲ませてあげることなども、栄養補給の方法としていいでしょう。
また、口内の痛みで水分をとらず、脱水症状を引き起こすことがありますので、イオン飲料、スポーツ飲料などで水分を少量ずつ何回も与えるようにしましょう。
脱水がひどい場合には、経口補水液を飲ませることも必要です。
お風呂について
お風呂に入ってはいけないということではありませんが、周囲に感染を拡大させないように気をつけることが大切です。
熱が下がってお風呂に入れるようになったら、家族と一緒にお風呂に入ることはせず、軽くシャワーをするなどして、感染しないように気をつけた方がいいでしょう。
また、タオルなどを通じて感染することもありますので、一度使ったタオルはすぐに洗濯するなどの配慮も必要です。
大人への感染
感染者のほとんどは5歳以下の乳幼児となりますが、大人が感染することもあります。中には40度近くの高熱を伴うこともあり、注意が必要です。
子どもと同様に手や足、口の中を中心に発疹ができて強い痛みを伴うことが多く、かゆみがでることもあります。
口の中に多くの発疹ができると、痛みで食事もままならない状態になり、この状態は1週間から10日程度続きます。手足の発疹もあるため、非常につらい状態になる人が多いです。
口の中に刺激がないようなゼリー状のものや、バナナなどで栄養補給をすることが重要になります。
あまりにひどくて食べることができない場合は、病院で栄養補給の仕方や点滴の必要性等について相談してみるといいでしょう。
子どもさんなどから感染することもあり、先に述べた感染予防策に加えて普段から免疫力を持てるような健康的な生活をすることが大切です。
妊婦への感染、影響
現在のところ、手足口病による流産・胎児異常との明確な関連性を示すような報告はありません。(WHO(英語))
感染した妊婦に対しては妊娠経過および出生した児について通常より慎重に観察を行う必要はありますが、過度に不安感をもつ必要はないと考えられています。いずれにしても、医療機関へ受診して医師と相談することが大切です。
2013年に手足口病が大流行したことがあり、感染に伴う胎児への影響について一般に広く周知するために日本産婦人科医会から文書が出ていますので、その抜粋を掲載します。
妊婦に感染することはまれですが、罹患した場合についての詳細かつ広範な症例の分析報告はありません。
しかしながら、胎児異常との明らかな因果関係を証明した報告はありません。
まれに流死産症例、胎児水腫などの報告はありますが、ほとんどの罹患例では対症療法を行い、慎重な経過観察等で対応することで済まされるものと考えられています。
市町村のHPで流行の確認ができる
お住まいの都道府県や市区町村において、注意喚起するお知らせが出ている場合があります。ホームページなどをチェックしておくと流行の状況などがわかります。
看護師からひとこと
手足口病は水疱瘡の初期やヘルパンギーナ・ヘルペスなどとの鑑別が難しい感染症です。
中でも水疱瘡は特異的な治療法を受けることが可能であったり、学校保健安全法にて出席停止基準に設けられているなど、手足口病とは対処法が異なる部分が多いです。
手足口病そのものを検査で確定診断を行うことはほとんどありませんが、脱水の有無を評価したり水疱瘡などとの除外は必要ですから、早めに医療機関を受診しましょう。
まとめ
- 手足口病は5歳以下の幼児に感染することが多く、特に夏に流行が見られます。
- 基本的には軽い症状で済みますが、まれに急性髄膜炎等の合併が見られることがあります。
- 鼻水や唾液などの分泌物、便から感染し、中でも便は2〜4週間程度にわたってウイルスが排出されるので、感染を周囲に拡大しうる期間が長期に渡ることになります。
- 感染予防には、こまめな手洗いとうがい、タオルや箸を共用しない、おむつの交換に気をつける、マスクをする、などに留意する必要があります。
- 手足口病は、学校保健安全法の「出席停止」対象の病気ではありませんが、医師と相談し一定期間は登校しないようにします。
- 感染した場合は、口の中が痛くなるので、噛まなくても飲み込めるような食べもの、牛乳とバナナでジュースなどが、栄養補給の方法として適しています。
- 口の中の痛みから水分を取らず、脱水症状を起こすことがあるので注意が必要です。
- 大人に感染した場合、高熱を伴うことがあります。
- 妊婦への感染に関する影響については、明らかな強い関連性を示す調査結果はなく、感染しても必要以上に不安になる必要はありません。