てんかん(小児てんかん)について、発作の種類、原因、治療法、日常生活の留意点など
更新日:2017年06月10日
目次
てんかんとは
てんかんは、繰り返し発作を起こす脳の病気で、年齢や性別に関係なく発病します。
発作は、手足のけいれん、手足の硬直、意識の消失など、その他にも様々なものがあります。ただし、一人でたくさんの症状を示すことはなく、同じものとなることがほとんどです。
子どものてんかん(小児てんかん)
子どもに発症するてんかんにも、様々な種類や症状があります。成長とともに治癒していくものもあれば、完治することが難しいものもあります。
子どものてんかんについては、1歳までに発病することが多いといわれています。
子どものてんかんに対する治療は、家族の協力がとても大切となります。
長期にわたって治療を行うこととなりますので、医師や学校と協力しながら、子どもが普通に日常生活を送れるような環境を作ってあげることが必要です。
てんかんの原因・種類
てんかんは、原因と発作の型によって、大きく4つに分類されます。
原因の分類として、次の2つがあります。
- 特発性てんかん(原因が特定できないもの)
- 症候性てんかん(なんらかの原因が特定できるもの)
また、発作型の分類として、次の2つに分類されます。
- 全般てんかん
- 部分てんかん
それぞれの組み合わせがあり、次のように呼ばれます。
- 症候性全般てんかん
- 症候性部分てんかん
- 特発性全般てんかん
- 特発性部分てんかん
子どものてんかんにおいては、症候性全般てんかんが最も多く、その他に特発性全般てんかんや特発性部分てんかんがみられます。
てんかんの原因による分類
原因の分類である「症候性てんかん」と「特発性てんかん」の特徴は次のようになります。
症候性てんかん
子どもの症候性てんかんは、先天的な脳の損傷や先天性代謝異常、先天性奇形などが原因となって起こるてんかんです。
お母さんのお腹の中にいる間や、分娩時などに大脳の一部が損傷し、それが原因となって発作を起こすことが多いといわれています。この場合、多くは3歳くらいまでに、てんかん発作が生じます。
なお、乳幼児に多く発症しますが、先進国では医療の進歩により減少しています。成人以降の症候性てんかんは、脳腫瘍、アルツハイマー病などが原因となります。
症候性てんかんは、脳の一部の異常により発作が起こる「部分てんかん」が多くなります。中でも、脳の運動を担う部分から発する運動発作、感覚を担う部分から発する感覚発作などが多くなります。
特発性てんかん
特発性てんかんは、赤ちゃんの時期に発症するものや、5歳から10歳ころに発症するものがあります。特発性てんかんは適切な治療により、早期に回復していくこともあれば、治療が遅れて長期間続いてしまうこともあります。
特発性てんかんの原因は不明で、CTなどで脳の検査を行っても、異常は発見されません。
発作が起こりやすいことや、遺伝的な要素が関係していると考えられ(てんかんそのものが遺伝するわけではありません)、ある年齢で発作が出現し、一定の年月がたつと発作回数が減少し、発作が起こらなくなることもあります。
てんかんの発作型による分類
発作型の分類である「全般てんかん」と「部分てんかん」の特徴は次のようになります。
全般てんかん
発作のはじめから、脳全体に異常が現れるもので、発作が現れると最初から意識がなくなるという特徴があります。
部分てんかん
部分てんかんとは、脳のある部分から始まる発作を伴います。けいれんなどが身体の一部で始まり、それが他の場所へ広がっていくこともあります。また、腹痛・下痢などの自律神経症状が発作として現れることもあります。
てんかんの症状
てんかんの発作には、手足の激しいけいれん、体の一部分がぴくぴく動くもの、意識がぼんやりするなど、様々なものがあります。
てんかんについて、主な症状を記載しておきます。
部分発作
部分てんかんの発作のことで、脳の一部の限定された場所に過剰な電気的興奮が起こる発作です。
部分発作は、意識障害が伴う複雑部分発作と、意識がはっきりしている単純部分発作に分けることができます。
また、部分発作の中には、脳の限定された場所から始まって、大脳全体に広がっていくものもあります。
単純部分発作
発作の間も意識があり、本人は自分の発作の症状を憶えています。
脳の興奮状態が起きる場所によって、運動機能の発作(手足や顔がつっぱり、ねじれ、けいれん、回転する等)、視覚や聴覚の発作(光や色が見える、虫が飛んでいるように見える、話し声が聞こえる等)、自律神経の発作(頭痛や吐き気等)などがみられます。
複雑部分発作
複雑部分発作では、全身のけいれんは起こりません。意識がしだいになくなり、周囲の状況がわからなくなります。
また、記憶障害がみられますが、意識障害中に倒れることはほとんどありません。
急に動作が止まったり、ボーっとなったり(意識減損)や、フラフラと歩き回ったり、手を叩いたり、口をモグモグさせるといった症状がみられます。
発作が出ている時間は短いのですが、回数が多くなります。
全般発作
大脳の両側に渡って過剰な興奮が起こる発作です。発作時には、ほとんどの場合、意識がなくなります。
強直間代発作
突然発症して、意識を失い、大きな声を上げて強直けいれんを起こします。
その後、一定の間隔でがくがくと身体を動かす発作へと移行します。
発作は1分程度で、発作後は、自然睡眠と呼ばれる1時間程度の睡眠をすることや、頭痛や嘔吐などの症状が見られることもありますが、その後は正常に戻ります。
また、発作直後は意識がもうろうとしますので、その間に転んだり、何かにぶつかったりするなどの事故に注意する必要があります。
脱力発作
全身の筋肉の緊張が低下して倒れてしまう発作です。
発作時間は数秒以内と短いため、発作が起きていることに気づかないことがあります。
欠神発作
けいれんや、倒れたりする発作ではありませんが、数十秒間にわたり意識がなくなる発作です。
話をしたり、何かをしているときに、突然意識がなくなりますので、注意力や集中力がないと周囲から誤解されることがあります。
小学生以降の子どもにみられ、特に女児に多い発作です。
ミオクロニー発作
全身や手足の一部分の筋肉が一瞬ピクッとする発作です。瞬間的な症状のため、自覚することが少ない発作です。
症状が大きい場合は、転倒したり、持っている物を投げたりすることもあります。
光で誘発されたり、寝起きや寝入りに起こりやすい傾向があります。
てんかんの診断・検査
脳の活動をみるために脳波の検査を行います。
頭につけた電極で、脳の中で発生している電気の流れを確認します。
頭にいくつかの電極をつけて寝ているだけでの検査なので、小さな子どもでも検査を受けることができます。
脳波の検査は30分間ほどかかります。検査中はじっとしてなければいけません。
検査の間は寝ている方がいいので、昼寝をさせないで検査を受けるなど、工夫するといいでしょう。
検査の恐怖心から動いてしまう場合、眠り薬を使うこともあります。
また、脳波の検査と併せて、脳の奇形や血管の異常を見る検査や、頭部のCT検査、脳の血管を見る「MRI血管撮影」などにより、てんかん以外の病気の可能性についても検査していきます。
診断において最も大切なのが問診です。
正しく医師に診断してもらうためには、発作の様子を詳しく把握して説明することが大切です。
子どもに発作が起きているときに、冷静にその症状を把握することは難しいかもしれませんが、できるだけ正確に把握するようにします。
てんかんの治療
てんかんの治療は、基本的に抗てんかん薬により、けいれんや意識の消失などの発作を抑えるものとなります。
抗てんかん薬は、てんかんの種類によって、使用する薬が異なります。
また、有効な薬の量は、採血で血液中の薬の濃度をはかることによって判断することになります。
血中濃度にもとづいて医師が判断しますので、医師の指示に従い、発作の型に適した薬を、適切な分量だけ使用することが大切です。
一般に子どもは薬の分解・排泄の速度が早いため、成人よりも薬の量は多くなります。
子どもは成長に伴い身長や体重が増えていくため、体重や血中濃度を定期的に測定しながら、医師に薬の量を調節してもらう必要があります。
また、風邪薬などと一緒に飲むと血中濃度が変化することがあります。
血中濃度が下がると発作が起こりやすくことがあり、血中濃度が上がると副作用が出やすくなるので、他の薬を飲むときには、必ず医師に相談してください。
てんかん治療の終結(抗てんかん薬をやめられる場合)
子どもの特発性の強直間代発作や欠神発作、側頭部に発作波をもつ良性てんかんなどは、ある年齢(思春期頃)になると発作がなくなり、抗てんかん薬をやめることが可能なこともあります。
しかし、症候性の部分てんかんでは、長期に渡って抗てんかん薬を続けることが多くなります。
抗てんかん薬をやめる目安
発作が3年以上なく(成人で5年以上)、脳波検査で2年以上の間に異常がない場合、抗てんかん薬の中止を考慮します(てんかんの種類で目安となる年数は異なってきます)。
医師が薬の中止が可能であると判断すれば、3か月から6か月かけて、薬の量を減らしていきます。
抗てんかん薬をやめた後の再発
抗てんかん薬を中止した後に、発作が再発する可能性は、中止後3年以内が多いといわれています。
したがって、抗てんかん薬を中止した後も定期的に、検査する必要があります。
薬を中止した後に、発作の再発がなければ、てんかんが治癒したといえます。
てんかんに対する医療費等の補助
てんかんの人は、その状態などによって、医療費等の補助を受けることや、身体障害者手帳、療育手帳などの交付を受けることができます。
お住まいの市町村へ問い合わせて確認してください。
日常生活で気をつけること
ある刺激や出来事によって、てんかんの発作が起きる場合、その刺激や出来事を発作の誘発因子といいます。
また、発作が起こりやすい状況を、発作の助長因子といいます。
生活の上では助長因子を減らすことが大切になります。
助長因子
- 小学生の低学年 : 発熱、入浴など
- 小学生高学年以降: 睡眠不足、疲れ、ストレス、感情の変化、月経など
てんかんの子どもさんに対して注意すること
てんかんだからといって、発作ばかりに目を奪われないよう、育てていくことが大切です。
てんかん治療や発作などを優先すると、その他の多くの成長や発達の部分がおろそかになってしまいます。
てんかん発作への注意は必要ですが、過保護にはせず、てんかんのない子と同様に育てていくことが必要です。
学校生活について
毎日の生活を規則正しく、早寝・早起きをすることで発作は起こりにくくなるといわれています。
学校などにおいては、クラス替え、運動会、学習発表会、試験などの精神的な緊張や疲れが出やすい時期には注意が必要です。
学校へは事前にてんかんのことを相談し、てんかん発作が起きた場合の対処などについて備えておく必要があります。
テレビゲーム・テレビについて
テレビゲーム、テレビをみている最中に発作を起こすことがあります。
ほとんどの場合、点滅する光に対して光過敏性がありますので、脳波検査でチェックすることが可能です。
光過敏性のない場合は、テレビゲームやテレビに神経質になることはありませんが、睡眠不足や疲れは発作の助長因子にもなりますので、テレビゲームはほどほどがいいでしょう。
光過敏性があってもテレビ見る際に、部屋を明るくして、TV画面より3m以上離れ、短時間の視聴にすれば、あまり問題はありません。
また、抗てんかん薬による光過敏性の抑制も可能です。
看護師からひとこと
てんかんは主に、けいれんが起こる病気ですが、中には間違えられやすい病気があります。
例としては、泣き入りひきつけ(乳幼児が激しく泣いたあとに、息が突然とまり、顔色も真っ青になり、意識を失い、手足のふるえがみられる)、熱性けいれん(発熱時、38度以上の熱で、全身をこわばらせたけいれんがおよそ5分みられ、小児に最も多いけいれん)があります。
これらと混合しないように、注意深い観察が必要となります。
まとめ
- てんかんは、発作を繰り返す脳の病気で、年齢や性別に関係なく発病します。
- 原因と発作の型によって、症候性全般てんかん、症候性部分てんかん、特発性全般てんかん、特発性部分てんかんの4つに分類されます。
- 子どものてんかんにおいては、症候性全般てんかんが最も多くなります。
- 子どもに多いてんかんの発作は、症候性全般てんかんの一種である欠神発作となります。
- 欠神発作は、倒れるようなことがありませんが、突然数十秒間にわたり意識がなくなります。小学生以降の子どもにみられ、特に女児に多い発作です。
- 診断には、問診が重要となります。発作の状況などをきちんと医師に伝える必要があります。
- 治療は基本的に抗てんかん薬により行います。
- 抗てんかん薬は、てんかんの種類や本人の体重などにより、薬の種類や薬の量が決まります。医師の指示に従い、適正に薬を使用しなければいけません。
- 医療費の補助や、てんかんの重度により療育手帳などの適用をうけることができます。(詳しい内容は、お住まいの市町村へ問い合わせてください。)
- 日常生活においては、てんかん発作を助長させる助長因子を減らすことが大切です。
- 子どもの特発性てんかんは、ある年齢(思春期頃)になると発作がなくなり、抗てんかん薬をやめることが可能な場合があります。