子どもの膀胱炎は繰り返す!その原因や症状、治療法や予防法などを説明します。
更新日:2017年08月18日
膀胱炎とは
膀胱炎とは、膀胱が細菌に感染するなどして、炎症を起こしている状態をいいます。成人では主に女性に多くみられる病気で、特に性的活動度の高い年齢でよくみられます。
また、繰り返し膀胱炎になってしまう人も多く、これは、女性の尿道が短いことや、外部から細菌が入りやすいことが原因と考えられます。
子どもについては成長段階であることから、2歳頃までは男女ともに膀胱炎になりやすい状況にあります。赤ちゃんの頃は男子に多く、1歳を過ぎる頃から女子に多く見られるようになります。
膀胱炎の原因
膀胱炎の原因は、外部から膀胱に細菌が入ってしまうことにあります。尿道は肛門の近くにあるため、排便後にキレイに拭きとっていないと膀胱へ細菌が入ってしまうことになります。
また、子育ての本にはよく書いてあることですが、排便後にふき取る際には前から後ろに向かって拭くようにすると、菌が尿道に入りづらく膀胱炎の発症率を下げることができます。(成人のデータですが、外尿道口と肛門の距離が近いと膀胱炎になりやすいという報告もあります。)
また、尿を出すことにより、尿道や膀胱の細菌を洗い流して、キレイに保つことができるのですが、トイレに行くのを我慢していると、細菌が膀胱で繁殖してしまいます。適切に水分をとってためすぎずにしっかり排尿することは、体を健康に保つために大切なことです。
膀胱炎の検査
膀胱炎の検査は、尿の中の細菌確認により行います。尿道の出口付近には、常在菌(普段の健康な状態でも存在している菌)がいるため、検査では常在菌が混ざらないように尿を採取する必要があります。
トイレに行くことのできない乳幼児では、採尿パックという小さなビニールパックをおしっこの出口に付けて尿を採取します。再尿パックを使用する前に、尿道の付近を清潔にします。
トイレに自分で行ける子どもは、自分でトイレにいって尿を採取することになります。尿は出始めではなく、途中の尿を採取すると常在菌が混ざりません。
場合によっては、細い管(カテーテル)を尿道へ挿入して、直接膀胱の尿を採取することもあります。
採取した尿に存在する細菌を調べるには培養検査が必要となるため、結果が出るまでに数日かかります。ただし、尿内の白血球を調べることにより、炎症が起こっているかどうかは判断することができますので、診察当日はその結果をみて膀胱炎があるかどうか判断します。(後日、どの種類の菌が原因であったか、またその菌に対してはどの薬が有効かについて、培養検査の結果で分かります)
膀胱炎の症状
赤ちゃんの膀胱炎では発熱や機嫌が悪いといった程度の症状がみられることが多いです。症状を訴えられないこともあるため、膀胱炎であることに気付くのが難しいこともあります。赤ちゃんのちょっとした変化を見逃さないよう注意が必要です。
幼児になると、おなかや背中の痛み、排尿時の痛み、日中にパンツを濡らすといった症状が現れるようになります。場合によっては尿が臭ったり、尿に血液が混じったりすることもあります。
小学生以上になると、トイレが近くなることや、排尿時に強い痛みや血尿が出たりすることもあります。膀胱尿管逆流症や水腎症があって、高熱を伴う場合は腎盂腎炎に至ってしまっている可能性もあります。
放置しておくと腎臓に障害を起こすことがあるので、きちんと検査をしてもらうことが大切です。検査はエコー、排尿時膀胱造影などを行います。医師と相談して早めに検査をしてもらいましょう。
参考として、膀胱尿管逆流症と水腎症について、簡単に説明をしておきます。
膀胱尿管逆流症
尿は、腎臓から尿管を通って一方通行で膀胱へ流れていきます。尿管の出口には逆流防止機構が備わっていて、通常は膀胱から腎臓へ尿が逆流することはありません。尿管の下端が膀胱の筋層を通過して膀胱内に開口しますが、膀胱に尿がたまって膨らむとその影響で尿管の出口が閉塞するので逆流しないという仕組みです。
しかし、膀胱尿管逆流症は尿管の出口の異常で、尿が膀胱から腎臓へ逆流してしまうのです。尿管の下端は斜めに膀胱内を横切りますが、その距離が生まれつき短い場合に逆流防止機構が働きづらく、逆流しやすくなります。
膀胱尿管逆流症では、膀胱内の細菌が腎臓に侵入するため腎盂腎炎といわれる腎臓の感染症を起こしやすくなります。腎盂腎炎を繰り返すと、腎機能の低下に繋がっていきます。
膀胱尿管逆流症は小児の1%程度に発生するといわれていて、その約75%は女児です。成長とともに膀胱や尿管が正常に機能するようになり、自然治癒していくこともあります。
自然治癒が見込まれれば、膀胱炎や尿路感染症の予防などを中心に治療することとなりますが、自然治癒が見込めない場合は手術を行うこととなります。特に腎臓に障害を起こすような状態の場合は、早急な手術が必要になります。
水腎症
水腎症は、腎臓と膀胱をつなぐ尿管が何かの原因で腫れてしまった状態をいいます。尿管の通りが悪くなり、治療を行わないと腎臓の働きが次第に落ちてしまいます。
小児の水腎症はほとんどの場合、先天性のものです。症状としては、腹痛や高熱を伴い、まれに腎不全となることもあります。
軽度の水腎症であれば、子どもの成長とともに自然治癒していきますが、腎臓の状態、尿管の通りの状態、痛みなどを考慮して、手術を行うこともあります。
膀胱炎の治療
発熱がなく、軽度の膀胱炎であれば、抗菌薬を3日間程度服用することで治癒していきます。たいていは抗菌薬を服用してから24時間くらいで症状は改善していきます。
高熱を伴い腎盂腎炎の疑いがある場合は、約2週間は抗菌薬を服用する必要があります。症状の出始めは食欲がなくなり、進行すると脱水も伴ってきますので、点滴で輸液を投与する場合もあります。
回復後も膀胱炎を繰り返す場合は、腎臓、尿管、膀胱、尿道の形態や機能に問題がある可能性があります。
特に小学生以降の女子で膀胱炎を繰り返す場合は排尿習慣に問題があったり、排尿障害を伴っていたりすることあります。小児専門の泌尿器科で検査を受けることが必要です。
膀胱炎の予防
膀胱炎は、繰り返すことが多い病気ですので、膀胱炎にならないよう、普段から気をつけて生活することが大切です。主に次のことに気をつけましょう
水分を摂取する
水分を十分にとることが大切です。摂取する水分の目安としては、3~5才で500~800ml/日、小学生で800~1,000ml/日程度となります。なお、病気などで水分量が制限されている場合は医師と相談してください。
トイレを我慢しない
おしっこを我慢すると膀胱と尿道から細菌を排除できません。
便秘をしないようにする。
便秘が尿路感染症と関係するとの報告があります。便秘をしないよう、食物繊維など摂取しましょう。
清潔にする。
女子はウンチの後に前から後へと紙でふくようにしましょう。そして、外陰部を清潔にします。石鹸だとかぶれることもあるので、注意してください。温かいシャワーで洗うようにしましょう。
女子中学生や女子高校生などの場合、膀胱炎の症状があっても、恥ずかしくて、親御さんに言い出せず我慢してしまうことがあります。
膀胱炎は恥ずかしい病気ではありませんので、症状が進行してしまう前に病院へ行くようにしましょう。
妊婦さんの膀胱炎
妊娠中は、お腹が大きくなってきますので、子宮からの圧迫によって膀胱が押され、膀胱に溜めることのできる尿の量が減り、頻尿になります。また、トイレにいっても残尿感を感じるようになります。
膀胱の容量が小さくなっているので、トイレにいってもあまり尿が出ません。しかし、どうせあまり出ないのだからと我慢していると、膀胱炎になってしまいます。
何回もトイレに行くのは面倒かもしれませんが、こまめにトイレに行くようにしましょう。
排尿の際に痛みを感じたり、尿が濁っていたりする場合は、膀胱炎の可能性がありますので、かかりつけの医師に相談しましょう。
心因性頻尿について
幼稚園から小学校低学年くらいの子どもで、10分〜20分ごとにトイレに行くといった頻尿の症状が出ていることがあります。
膀胱炎の症状や、発熱などもなく、検査しても異常がない場合、心因性頻尿が考えられます。これは、子どもの頻尿で多いものとなります。
尿意を感じると誰でもトイレに行きたくなりますが、この感覚はかなり敏感で、緊張やちょっとしたストレスなどから頻尿が生じることがあります。
心因性頻尿は、周囲の人が頻尿のことを気にかけると、本人はさらに緊張して頻尿になるという傾向がありますので、過度に気を使わずに普段通りの生活をすることが大切なようです。それでも改善しないようであれば、小児科などの医師に相談してみるといいでしょう。
看護師からひとこと
乳幼児の膀胱炎は、発見が遅れることが多く、悪化したり、繰り返したりすると慢性化してしまうことが多い病気です。
「薬で治せばいい」というものではなく、乳幼児期に膀胱炎を繰り返すと、尿路に負荷がかかり、腎臓の成長を妨げることになります。悪化や再発が起こりやすいことを念頭におき、素早い対応をしていきましょう。
まとめ
- 膀胱炎とは、膀胱が細菌に感染して炎症を起こす病気です。
- 子どもは尿道が短いため、膀胱炎になりやすい状態です。
- 膀胱炎は赤ちゃんの頃は男の子に多く、1歳を過ぎたころからは女の子に多くみられるようになります。
- 尿道は肛門の近くにあるため、排便後にキレイに拭きとっていなかったりすることで膀胱へ細菌が入ってしまいます。
- トイレに行くのを我慢していると、膀胱や尿道へ細菌が入ってしまい、膀胱炎の原因となります。
- 赤ちゃんは膀胱炎になっても、あまり症状が出ないことがあり、膀胱炎に気付くのが遅れてしまうことがあるので注意が必要です。
- 発熱がなく、軽度の膀胱炎であれば、抗菌薬を3日間程度服用することで治癒していきます。
- 回復後も膀胱炎を繰り返す場合は、腎臓、尿管、膀胱、尿道の形態や機能に問題がある可能性があります
- 膀胱炎の予防には、水分をとって、こまめにトイレに行くことや、尿道へ細菌が入らないよう清潔にすることなどが大切です。