子どもの胃腸炎 感染性(ウイルス・細菌など)胃腸炎の症状、原因、予防法
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更新日:2017年06月15日
目次
感染性(ウイルス・細菌など)の胃腸炎について
子どもの胃腸炎でもっとも数が多いのが、ウイルス性胃腸炎や細菌性胃腸炎など、感染性の胃腸炎で、胃腸炎の9割を占めています。
以下代表的なものをご紹介します。
ノロウイルス胃腸炎
ノロウイルスは、毎年、多くの人が感染する胃腸炎の代表的存在です。
11月から1月の冬場に多くみられますが、年間を通じて見られる病気で、乳児から高齢者まで幅広く誰でも感染します。
ここでは、ノロウイルスを簡単に説明しています。
ノロウイルス胃腸炎の感染・原因
2枚貝(特に牡蠣)や井戸水などにいるウイルスを口にすることで感染します。
また、感染した人との接触や飛まつ感染による感染リスクが非常に高い感染症です。
牡蠣などからうつるため、誤解されやすいですが、ノロウイルスは食品で増殖することはありません。
人の腸内で増殖をするため、人から人への感染が多く、広がりやすいといえます。
また、少量の菌でも感染力が強く、便や吐しゃ物を放置するとその中で1か月以上菌が生きています。
ノロウイルス胃腸炎の症状
潜伏期間は1~2日、主な症状は「嘔吐→発熱→腹痛→下痢」という流れが多いですが、熱は出ないこともあります。
嘔吐の症状が多いですが2、3日で症状が弱くなり、1週間程度で治るのが一般的です。
また、大人の場合は、子どもより病気の期間は短いが症状が多くなる傾向があり、下痢も多いと言われます。
逆に子どもの場合は、軽めの症状が長く続くことが多くなります。
ノロウイルス感染の診断法
確定診断をする場合は、15分ほどでわかる迅速検査キット(インフルエンザのような)で行います。
ただし、診断をつけても対処法は変わらないので、夜間の救急外来ではあえて検査をしない場合もあります。
ノロウイルス感染の予防法
原因になりやすい2枚貝などを食べる際にはしっかり加熱をすることが大切です。
WHOなどが設立した、食品の国際基準を作る国際機関であるコーデックス委員会は二枚貝の加熱調理でウイルスを失活させるには中心部が85~90℃で少なくとも90秒間の加熱が必要と言っています。
また、人から人、特に患者の吐しゃ物や便などから感染することが非常に多く、ウイルスは空気中にも舞ってしまいます。
排せつ物などを処理する場合は、手袋だけでなく、マスクや使い捨てのビニールエプロンをして、完全に密閉して捨てるなど、極力触れないようにすることが大事です。洗濯物も分けると良いでしょう。
ノロウイルスは一般的な消毒薬が効かないため、患者の服や室内の除菌は「塩素系」の物で消毒するようにしましょう。
衣類の場合は煮沸も効果があります。
手洗いも感染防止には重要です。
ノロウイルス胃腸炎の治療法
嘔吐や下痢などでウイルスを体外に追い出すので、自然治癒を待ちます。
ただし、嘔吐がひどい場合は、脱水防止に吐き気止めを使うこともあり、乳児の場合は特に吐しゃ物がのどに詰まることがあるので、注意して見守りましょう。
脱水には、塩分を含む経口補水液や味噌汁・コンソメスープなどを使用すると良いでしょう。
お茶や水だけだと、余計にだるくなって力が入らなくなってしまうことがあります。
水分補給は少量ずつ小まめにするとよいです。脱水がひどい場合は、点滴をすることもあります。
学校への登校、登園の時期について
子どもの場合、感染防止のため、2週間程度は登校、登園はしない方がいいと言われます。
ただし、症状などによっても異なることがありますので、医師と相談して決めた方がいいでしょう。
その他
妊婦が感染した場合、母子感染などの心配はないですが、脱水には気を付けましょう。
ロタウイルス胃腸炎
5歳以下の子どものほとんどがかかると言われる胃腸炎です。
ロタウイルス胃腸炎の感染・原因
患者の経口感染、飛まつ感染、吐しゃ物などからの感染です。予防や対策、妊婦の注意事項はノロウイルスとほぼ同じになります。
ロタウイルス胃腸炎の症状
白い水のような下痢便が出るのが大きな特徴です。
潜伏期間は2~4日、症状は嘔吐、発熱、腹痛、下痢となりますが、熱が出ることが多くなります。
また嘔吐よりは下痢が長く、症状は1〜2週間程度続きます。
大人の症状
抗体が出来ているため、感染しても症状が出ないことが多く、症状が出ても、高熱、倦怠感など普通の風邪に近いことが大半です。
ロタウイルスの合併症
脳炎、けいれん、肝機能障害、心筋炎、腎不全、腸重積などを起こすことがあります。
診断法
確定診断をしないことも多いですが、確定診断をする場合は、便の検査(迅速診断検査(イムノクロマト法)を行います。15分〜20分程度で結果が出ます
治療法
ノロウイルスの治療法と同様に、脱水に気を付けながら自然治癒を待ちます。
ロタウイルスの場合はワクチンがあるため、子どもの場合は受けておくのが望ましいです。
ただし予防接種を受けれる期間が限られていることには注意しましょう。
アデノウイルスによる胃腸炎
主に夏に多くプール熱と呼ばれるもので、多くはのどや扁桃腺に症状が出ますが、胃腸に症状が出る場合があり、免疫が出来ず何度も発症する病気です。
アデノウイルスの感染・原因
飛まつ感染、直接感染者に触れたときや、便からも感染します。感染力は強いです。
アデノウイルスの症状
潜伏期間は5~6日程度、扁桃腺の腫れや40度近い高熱が出るのが特徴ですが、乳幼児や学童期の子どもは嘔吐や下痢などの症状が出ることもあります。
嘔吐や下痢といった症状はノロウイルスやロタウイルスに比べて弱いですが、比較的熱が長く続きます。
アデノウイルスの合併症
子どもの場合重症化して腸重積を起こすことがあるので注意しましょう。
アデノウイルス感染の診断法
検査は綿棒を使って喉にウイルスがいるかを確認します。
迅速キットで調べますので、15分程度で結果がでます。
治療法
安静にして、脱水に気を付けながら自然治癒を待ちます。
アデノウイルスの感染予防
手洗いをしっかりすること、また嘔吐物などには塩素系薬剤の消毒が効果的ですが、ノロウイルスやロタウイルスに比べ吐しゃ物、排泄物からの感染力は弱いです。
粘膜に感染するため、体の粘膜を強くするたんぱく質、ビタミンA、C、Eを日頃からしっかり取るようにしましょう。
大人の症状
大人の場合、症状は軽くて済みますが、体力が落ちるため、他のウイルスの二次感染に注意しましょう。
細菌性胃腸炎について(いわゆる食中毒)
細菌性の胃腸炎は食中毒ともいい、主に夏に多くなります。急性の腹痛や嘔吐を生じるものが多くあります。
主な細菌性胃腸炎・食中毒については、次のようなものがあります。感染予防などに努めてください。
カンピロバクター感染症
カンピロバクターに感染した家畜の肉から感染する感染症で、胃腸の細菌感染症としては、もっともポピュラーなものであり、近年増加しています。
アウトドア志向の趣味が増えたことが原因と言われていますので、屋外での調理では意識しておきましょう。
カンピロバクターの感染原因
カンピロバクターに汚染された家畜(鶏、豚など)や井戸水から感染します。
また、肉や井戸水をに触れた調理器具からも感染することも多いです。
菌を持つ動物(ペット)との接触や糞からも感染します。
カンピロバクター感染症の症状
潜伏期間は1~7日で、初期症状は頭痛や筋肉痛などいわゆる風邪に近い症状ですが、やがて、腹痛、下痢(水便、血便)発熱、おう吐などが起きてきます。
胃腸の症状は3日程度で治まり、延べ5日程度で、だいたい治ります。
カンピロバクターの診断法
確定診断には便の培養検査をしますが、多くは問診などで病名を決め、検査をしないことが多いです。ただし合併症が疑われる場合は、血液検査を行います。
カンピロバクター感染症の治療法
一般的には大事にならないため、特に何もせず安静にしましょう。
安静にしているのに症状が治まらないとき、食品に関わる仕事をしてるときなどは医療機関で診察を受けるようにします。
合併症
稀に髄膜炎、骨髄炎、感染症関節炎、心内膜炎などを起こすことがあります。また1000人に1人、ギランバレー症候群を発症することがあります。
カンピロバクター感染症の予防法
なるべく肉類を生で食べないこと、特に子どもの場合は生ものに慣れていないのでより注意が必要です。
肉は中が白くなるまで(65℃以上)しっかり加熱すると良いです。
調理器具や食器は70度以上の熱で消毒しておく、漂白剤に1分漬け置きしたり、日光消毒をしたりするのも効果があります。
手洗いは必須で、液体せっけんで2度洗いするのが良いでしょう。液体の理由は、洗い残しが少なくなるからで、泡と効果に違いがあるわけではありません。
備考
子どもは感染症に対する免疫が少なく、重症化して入院することも珍しくはないため、極力生食を口にするのは避けましょう。
高齢者や妊婦も同じです。妊婦の場合、中期の流産の可能性が増すとも言われています。
サルモネラ感染症・食中毒
サルモネラ感染症の原因
サルモネラ菌に汚染された食品から感染します。
食品を扱った人の手が食品に触れ感染することもあり、ペットからも感染します(カメなど爬虫類、両生類が多い)。
夏に多く見られる病気です。
サルモネラ感染症の症状
子どもの場合、潜伏期間は半日~2日(長い場合は3〜4日の場合もある)となります。
嘔吐などの症状から始まり、その後腹痛、下痢を起こします。下痢は血便となることもあり、3〜4日程度続き、長いと1~2週間に及ぶこともあります。その他、38度を超える発熱、おう吐などの症状がみられることも多いです。
サルモネラ感染症の診断法
便の検査を行う場合や、食べたものからの推測により診断します。
サルモネラ感染症の治療法
自然に治ることが多く、治療はあまり行われません。
抗生剤を処方されることもあります。重症の場合、脱水を防ぐため、点滴をすることもあります。
水分補給を小まめに行うとよく、乳児の場合は、母乳を飲ませると良いです。
サルモネラ感染症の予防法
サルモネラ菌による感染症・食中毒は、食品の加熱不足によって起こることが多くなります。
加熱用の肉や魚などの食品は、十分に加熱することが大切です。まな板なども、漂白して清潔にしておきます。
また。手洗いも大事ですので、特に動物に触れた後は必ず手を洗いましょう
合併症
菌が血管に入り「菌血症」という症状が、骨、関節、肺、尿路や大動脈の内側に起こることがあります。
症状が現れず、知らずに菌が体の外へ排出されることもありますが、重症化することもあります。
子どもの場合手術と抗生剤で治療することが多くなります。また、成人の場合、3割程度が関節炎を起こすとも言われています。
その他の細菌性胃腸炎(食中毒)
その他の食中毒には、下記のものがあります。原因と症状を簡単に書いておきます。
症状が現れた場合は必ず病院へ行くようにしてください。
O-157
牛肉、乳製品が原因で起き、症状は水様便(血便)熱、子どもは重症化しやすいので注意が必要です。
腸炎ビブリオ
カキや魚介類を口にすることによって感染します。
原因菌であるビブリオは、真水や熱には弱いため、食材をよく洗浄することや、加熱して調理することが予防になります。
症状としては、腹痛、水様便、熱、嘔吐、頭痛が主なものとなります。
ボツリヌス食中毒
ハム、ソーセージ、缶詰などが原因で、食中毒となり、下痢や嘔吐が起きます。
封詰で酸素のない状態で保存されている食品が原因となることが多いので、ポツリヌス菌が増殖していると、開封の際に臭いがすることがあります。
稀に神経麻痺を起すこともあり、また乳児は呼吸困難を起こす可能性もあります。
特にはちみつにはボツリヌス毒素が含まれることがあり、1歳未満のお子さんに与えないようにしましょう。
現在では、食品に対する規制が進んだこともあり、日本での感染者は極少数にとどまります。
感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎・細菌性胃腸炎・食中毒のまとめ
子どもの胃腸炎の大半は、感染性の胃腸炎
子どもの胃腸炎のほとんどは、感染性の胃腸炎(ウイルスや細菌の感染)になります。
この場合の治療は、自然治癒によることが多くなります。自分の判断で薬を飲むことは避け、病院へ行くことが大切です。
また、ウイルス性胃腸炎は、ある程度流行る季節があるため、ニュースに注意しておきましょう。
脱水症状が最も危険
嘔吐や下痢が激しい場合は、脱水を起こすことがあるので、必ずすぐ病院へ行きましょう。
胃腸炎で最も危険なのは脱水症状だと思っておきましょう。
脱水症状は、顔色が悪い場合や尿の出が悪い、涙が出ない、皮膚の乾燥なども目安になります。
嘔吐が激しい場合は、水を飲ませると逆効果になることも多く、注意が必要です。
経口補水液が最適
脱水対策には、お茶やジュース、スポーツドリンクではなく、経口補水液が最適です。
また、子どもさんや高齢者にはゼリータイプの経口補水液が飲みやすいようです。
経口補水液はドラッグストアやネット通販で売られているので、子どもや高齢者がいる家では買い置きをしておくと良いでしょう。熱中症の水分補給にも重要なものです。
急な腹痛、嘔吐の連続は要注意!
急な腹痛や、嘔吐が連続する場合は食中毒を疑ってください。
急性の症状が起き、食べ物に心当りがある場合や、また明らかに顔色が悪い、吐血などの場合もすぐ病院へ行ってください。
熱があるときは?
熱の高い時でも、解熱剤を自己判断で飲むのは、好ましくありません。熱が細菌やウイルスを退治するからです。
薬を飲む際には、自己判断せず、病院で医師と相談してください。
看護師からひとこと
感染性胃腸炎かも!?と思う症状が家族に出た場合、感染拡大をまず予防することが大切です。
トイレ付近(ドアノブも)や洗面所などを次亜塩素酸で拭き取りましょう。家庭では、キッチンハイターが有効です。
泡タイプのものなら、そのまま使えますから、いざという時のために常備しておくとよいですね。