胃のX線検査では通常バリウムが使用されます。バリウムはおいしくないし、飲みにくいものです。飲んだ後に排泄されたかも気になります。そして、トイレで流れないなんてこともあります。バリウム検査が苦手な人、これから検査を受ける人に、飲み方のコツ、排出までの注意事項、トイレの上手な使い方などのポイントをアドバイスします。

更新日:2017年11月03日

この記事について

監修:大河内昌弘医師(おおこうち内科クリニック院長)

執筆:当サイト編集部

バリウムとは

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胃のX線検査で用いられる「バリウム」は、正式名称を「硫酸バリウム」と言い、硫酸イオンとバリウムイオンからなる化合物(化学式はBaSO4)です。

バリウムという名称はバリウムを含む鉱石が高密度で重かったことから、ギリシャ語のbarys(=重い)が由来と言われており、現在ではバリウムと言うとこの硫酸バリウムを指します。

硫酸系とバリウム系の化合物の中では唯一、毒物及び劇物取締り法から除外されており、無味無臭の白色で粉状もしくは無色の柱状で、水に溶けにくい性質を持っています。

また、硫酸バリウムは自然界にも存在し、硫酸バリウムを含んだ鉱石は「重晶石」と呼ばれています。


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なぜ胃の検査でバリウムを使用するのでしょうか

会社の健康診断などで胃の検査を行う時、バリウムを飲むのが苦痛だという方は多いのではないでしょうか。

味が美味しくない上に粘着質で、なかなか飲めないというのが主な理由のようですが、ではなぜ胃の検査にバリウムを使用するのでしょうか。

胃の検査でバリウムを使用する理由

バリウムにはX線を透過しない性質があるため、X線を当てた時にブロックされ、その陰影をみることで食道、胃、腸の様子を映し出すことができます。

バリウムを使用せずにX線検査を行うと、これらは透過してしまい映りません。

また、バリウムは胃液や腸液に溶解しない性質も持っており、飲み込んでも消化器官から吸収されず、全てが便となって排出されるため基本的には無害です。

これらのことから、胃のX線検査ではバリウムが使われています。

なお、バリウムの前に飲む発泡剤には胃を膨らませる作用があり、これによって診断がしやすくなります。

検査前には胃を正常な状態に保つように注意しましょう

バリウム検査を受けるにあたっては、胃の中の状態を検査しやすい状態に保っておく必要がります。そのためにいくつかの注意事項があります。

  • 検査の2日前からアルコール類は飲まないようにしましょう。
  • 検査の前日は消化によい食事を心がけ、夜9時以降は絶食が必要です。
  • 検査当日は、タバコやアメ、ガムなども口に入れないようにしましょう。

バリウム検査は前日から始まっているといっても過言ではありません。胃の中を空の状態にするには、前日から何も食べないようにしなくてはならないからです。胃の中に何かが残っていては胃の中の変化が食べ物の残りものなのか、病気なのか区別できないのです。

また、アルコールは胃壁の状態を悪くさせてしまう原因にもなりますので、前日はもちろん、できれば検査の2日くらい前から控えた方がいいでしょう。

なお、以前は飲食と同様、前日の夜9時以降には水を飲むことも禁止となっていました。近年は会社の健康診断や人間ドックは8月の暑い時期に行うところが多いことから、熱中症のリスクがあるため水分に限って夜12時まで(もしくは就寝時まで)は摂取を許可している場合や、検査当日であっても検査の2時間前までなら飲んでもよいというケースが増えています。

ただし、現在でも前日から水分の摂取を禁止しているところもありますので、脱水などが心配な場合は事前に相談してみましょう。

検査の流れ

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上記の注意事項を守って当日の検診に望みます。まずは、服を脱いで下着のみ、または所定の検査着の姿になります。胸部のレントゲン検査などと同様に貴金属類は外します。その後は次のような流れになります。

  • 発泡剤を飲む。
  • バリウムを飲む。
  • 検査台へ行ってレントゲンを撮る。
  • 検査が終了したら水と下剤を飲む。

簡単なようで難しい部分もありますので、飲み方のコツや注意点などを説明していきます。

発泡剤は一度舌の上に乗せてから飲むのがコツ!

検査台でレントゲン撮影を行う直前に、発泡剤を渡されますので、これを飲みます。この発泡剤がなかなか飲みにくいのです。発泡剤は粉状になっていて、水分が発泡剤に触れると泡になってしまうのですが、胃の中で発泡させないと意味がありません。

したがって、少しの水で飲むかバリウムで胃の中に流し込むかになります。(水かバリウムかは検査する医療機関で異なります。)

口の中のあちこちに発泡剤が散らかると、口の中で発泡してしまって、うまく胃の中に入っていきませんので、一度、舌の上(少し奥の方)に乗せて、その後すぐに、水かバリウムで流し込みます。水分も制限されている中で検査になりますので、口の中が乾いているため、とても飲みにくいのですが、一瞬ですのでがんばりましょう。

うまく飲めてもげっぷが出てしまっては大変!

発泡剤を飲んでからは胃の中に空気が溜まってきますので、げっぷが出そうになります。胃を膨らませてレントゲンを綺麗に撮るために発泡剤を飲んでいるのですから、げっぷをしては意味がありません。

げっぷについて、検査を行っている放射線の技師さんは以下のように話しています。

  • げっぷは、唾を飲み込んだり、少し下を向いたりすることで比較的我慢できる。
  • 発泡剤を飲んですぐにげっぷする人もいるが、一度軽く出たくらいなら、もう一度飲んでもらうことはない。

げっぷするともう一度飲むことになったりするのです。とにかく、検査が終わるまでは我慢しましょう。

バリウムはイッキに飲んでしまう!

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検査で飲むバリウムの量は120ccと、およそ牛乳瓶一本分くらいです。

バリウムは苦手意識のある方が多く、つい少量ずつ口に含んでしまいがちですが、バリウムを上手に飲むコツは味わわないこと。

イメージとしては、夏の暑い日にジュースを飲む感覚で「ゴクゴク」と一気に飲み干すのがよいでしょう。

水分を制限されていて検査の時には喉が乾いているはずですので、「やっと水分が摂れる!」くらいの気持ちになって、イッキに飲み込むのです。当サイトの編集部にもそうやって、嬉しい気持ちでバリウムを飲み込むというのがいます!

また、病院によってはストローを一緒に渡される場合もあるようです。ストローで飲む利点は、バリウムの味を感じにくくなることと、口元が汚れにくくなることです。(検査が終わって口の周りが白くなっている人をよく見かけますので、注意しましょう)

さらに最近は、バニラや抹茶、バナナ、ストロベリー、チョコなど味をつけて飲みやすく工夫されているところもあります。

病院によって味の種類が違うため、気になる方は問い合わせてみるのがよいでしょう。

バリウムを飲んだら検査台へ。検査中にもゲップに注意!

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バリウムを飲んだ後は検査台にのって、検査を受けます。検査台はいろいろな角度に傾いたり、回転したりします。検査技師さんが検査台を動かしながらレントゲンの撮影をしていくのです。

動くのは検査台だけではなく、自分自身も検査技師さんの指示通りに動いていきます。横を向いたり、うつ伏せになったりと、かなり動かされます。

動くことで、げっぷが出そうになりますので、出さないように注意しなければなりません。

ゲップしてしまった時のために、検査台の横に発泡剤とバリウムが用意されているところもありますが、2回飲むのはかなりツライので、唾を飲み込んでグッとこらえてください。

検査後は下剤と水を飲んでしっかりと排泄しましょう!

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バリウムは検査が終われば不要なものですので、便と一緒に排泄させる必要があります。

検査が終われると下剤を渡されますので、すぐに飲んで、水分もたっぷりと取ります。心配な人は下剤を余分にもらいましょう。もう一つほしいといえば、もらえます。

しかし、バリウムはそもそも排泄しにくいもので、なかなか出ない人もいます。

バリウムが排出されにくい理由

バリウムには、硫酸バリウムの他、水と粘着剤が含まれています。このため、どうしても便が固まりやすくなってしまいます。

また、バリウム自体の比重が通常の便に対して約4倍と重いため、腸の中をスムーズに移動しづらくなります。

以上のことから、バリウムを含む便は排出されにくいと言われています。

バリウムをうまく排出させる方法

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バリウム検査後は、便秘を予防するために下剤が処方されます。

しかし、中には下剤は苦手だからと飲まない方がいらっしゃいますが、バリウムを含んだ便はできるだけ早く排出させるべきなので、病院の処方通りに飲むようにしましょう。

そして、便を出やすくするには多くの水を飲むことが大切です。

人は通常1日に1.5~2リットルの水分を必要としますが、バリウムの検査を受けた後は2~3リットルの水を摂るのがよいと言われています。ただし、心臓疾患のある人は水分摂取の制限を指導されていると思いますので、事前に主治医に相談するようにしてください。

アルコールはダメ!牛乳も注意!

ただし、水分なら何でもよいわけでありません。特にアルコールには利尿作用があるため、アルコールを飲むことで腸内の水分が少なくなってしまい返ってバリウムが出にくくなってしまう恐れがあります。

また、牛乳には排便を促す効果があると言われていますが、下剤の種類によっては牛乳を飲むと効果が薄れるものもあるため、検査を受けた時に確認するのがよいでしょう。

食事は消化のいいものが好ましい

食事については特段の制限はありませんが、心配であれば、胃腸にやさしい消化のいいものを選んで食べることをお勧めします。

何時間くらいでバリウムが出て行くのか。

下剤を飲んでから排泄されるまでに時間は人それぞれです。早い人であれば2〜3時間ほどで出ますが、遅い人だと10時間以上かかる人もいます。丸1日たっても出ないようであれば、病院に相談するようにしてください。

バリウムが排出されないとどうなるか。

バリウムの検査をした後、できるだけ早く便を出して下さいと言われるのは、以下のような理由があるからです。

  • バリウムは元々、重晶石という鉱石です。そのため、排出までに時間が掛かってしまうと腸内で石のように固まってしまいます。こうなると通常の腸の蠕動運動ではなかなか排出されなくなります。
  • 腸にバリウムが残ってしまうと、腹痛や便秘の症状が現れます。
  • 重症化すると腸閉塞を招き、手術をする必要があります。

下剤を飲んで、しっかりと水分を摂取しないと、検査しただけなのに病気になることもあるのです。

バリウムはいつ出し切ったことになる?腹痛が出た時には要注意!

バリウムを含んだ便は、通常の便とは違い、白い便ですので見分けがつきやすいと思います。白い便が何度か出た後、通常の便の色に戻ればバリウムを含んだ便は全て出切ったことになります。

ただし、大腸に憩室(けいしつ)がある人は要注意です。憩室とは大腸の壁にできた窪み(くぼみ)のことを言います。この窪みの部分にバリウムが入ってしまい炎症(憩室炎)を起こすことがあるのです。

大腸の憩室は、それだけでは病気というわけでなく、痛みなどもありません。バリウム検査によって病気を引き起こすことがありますので、バリウムを出し切ったのに腹痛があるという場合は医師の診察を受けるようにしてください。

これで流れる!トイレでうまくバリウムを流す方法

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バリウムを出した後に、バリウムが流れないということを経験した人もいるのではないでしょうか。

バリウムを含んだ便は粘着力が高いため、便器の底面に付着して流れにくくなってしまいます。ここでは、バリウムを飲んだ後のトイレの使用方法についてご紹介します。

使用前に便器にトイレットペーパーを敷く

便器メーカーが推奨している方法です。トイレットペーパーを敷くことで便器に便が付着するのを防ぎます。

便を出すタイミングでトイレを流す

便が出切ったタイミングで水を流すのではなく、便が出たらすぐに流すようにします。

残ったらブラシでかき混ぜる

もし便器に便が残ってしまった場合は、トイレブラシなどで溜水(たまりみず)とかき混ぜるようにすると、分解されて流れやすくなります。


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バリウム検査の留意事項

以下に該当する方は、バリウム検査を受けられない場合があります。検査を受ける前に必ず医師に相談をして下さい。

  • 妊娠している方やその可能性がある方
  • 以前にバリウム服用によってアレルギー反応があった方
  • バリウムをうまく飲み込むことができない方
  • 潰瘍性大腸炎などの消化器系疾患で治療中の方
  • 消化管の手術歴のある方
  • 胃に強い痛みがある方
  • 腸閉塞の既往のある方
  • 便秘症の方、もしくは検査前に5日以上排便のない方
  • 腎臓病で水分の摂取制限を受けている方
  • 脳梗塞などによって麻痺がある方
  • 全身状態が悪い方
  • ペースメーカーを使用している方

ペースメーカーの種類によって誤作動が起こる可能性があるため、必ず申告するようにしましょう。

また、バリウムによる副作用には、便秘、胃の膨満感、頭痛、吐き気、発疹やじんましん、アナフィラキシー症状、腸閉塞、消化管穿孔などがあります。

検査後に少しでも体調がおかしいと感じたら、なるべく早く病院へ行きましょう。

バリウム検査と胃カメラの比較

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胃の痛みや不快症状を感じたら、バリウム検査と胃カメラのどちらを受けるべきか悩まれる方もいらっしゃると思います。

ここでは、バリウム検査と胃カメラを比較してみたいと思います。

バリウム検査の長所

胃全体の形や大きさを把握でき、胃の病変だけではなく口腔から食道・胃・腸に至るまでの通過障害の有無を発見しやすい。

バリウム検査の短所

やはり、検査においてバリウムを飲む苦痛や排便の心配が短所としては大きいです。また、早期癌の発見率が胃カメラより劣ることや、検査による被ばくや便秘などの心配があります。

ただし、X線の被ばく線量はただちに人体に影響が出るようなものではありませんので、過度な心配は不要です。

胃カメラ(内視鏡)の長所

粘膜をしっかり見ることができるので、胃潰瘍や胃炎、早期の胃ガンなどを発見しやすい。

また、検査中に組織の一部を採取することができるため、より確実な診断が行えます。

これまでに胃癌の手術を受けた人や、胃の疾患になったことのある人は、胃カメラの診断も必ず受けた方がいいでしょう。

胃カメラの短所

カメラを飲み込む違和感があるため、嘔吐反射がひどい方にはとっては大変な苦痛になってしまいます。

ただし、麻酔を使って眠っている間に胃カメラの検査を行ってくれる医療機関もあります。この場合は検査自体に痛みを感じることはありませんので、これから胃カメラを行う人にはお勧めです。

バリウム検査と胃カメラにはそれぞれ一長一短があります。胃の検査を受ける場合は、バリウム検査と胃カメラのどちらを受けるべきか、医療機関でよく相談するようにしましょう。

バリウム検査についてのまとめ

バリウムによる胃の検査を好きな人はいないと思います。前日から絶食となる上に、発泡剤やバリウムを飲まされて、ゲップを我慢しなければならないし、検査の後もちゃんと排泄されるかを確認しなければなりません。

最近では苦痛なく胃カメラの検査を受けられるところもありますし、可能ならばバリウム検査より胃カメラを受けた方がきちんと診断できるためよいと勧める医師もいますが、会社などの健康診断ではまだバリウム検査を採用しているところも多いのが現状です。

一定の年齢になると毎年の恒例行事になってきますので、慣れてしまうことが必要だと思います。

また、検査後のトイレではバリウムが流れなくなることもありますので、上手に排泄することが大切です。

バリウム検査に関する一連のことを身につけて、うまく検査を受けられるようにしましょう。

[カテゴリ:胃腸, 食道]

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