水腎症は、その名の通り、腎臓に尿がたまる病気です。腎臓は、血液をろ過して尿をつくる臓器ですが、その流れが悪いと腎臓に尿が蓄積して、水腎症になります。水腎症が続くと気付かぬうちに腎臓の働きが弱まってしまい、元に戻らなくなる恐れがあります。水腎症についてまとめましたので、参考にされてください。

更新日:2017年10月23日

この記事について

監修:豊田早苗医師(とよだクリニック院長)

執筆:当サイト編集部

水腎症とは

まず、腎臓は体の中の血液をろ過する働きをしています。血液が腎臓の糸球体というろ過装置において、物理的または化学的なフィルターを通ります。

その後、不要なものはそのまま廃棄され、必要なものは再吸収されます。そうした仕組みを経て、作られた廃液が尿です。

この尿は、尿細管、集合管といった管を通って、腎盂(じんう)・腎杯(じんぱい)というところに集まります。ここからさらに尿として尿管を下行し、腰の少し上あたりにある腎臓から、骨盤の前下方にある膀胱に向かって流れていくのです。

水腎症は、尿管が狭くなり、尿の流れが悪くなることによって起こります。尿が腎臓から膀胱へスムーズに流れないと、腎臓の中の腎盂(じんう)・腎杯(じんぱい)という部位に尿が溜まり、拡張してしまいます。この状態が続くことで、拡張に伴う腎血流量の減少から腎実質が薄くなったり、萎縮が生じて腎機能が低下していく疾患です。

尿は本来腎臓から下に向かって川の流れのように尿管→膀胱→尿道と流れていきますが、その途中の尿路が途絶され、正常に流れることができなくなった尿がうっ滞し、腎臓にかかる圧が上昇することで腎盂・腎杯が拡張するわけです。


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この水腎症が悪化していくと、腎臓のフィルターとしての機能が低下してしまい、数か月の経過によって腎臓そのものがほとんど機能しなくなってしまうこともあります。

通常は腎臓が2つありますので1つの機能が完全に失われても多くの場合は問題ありませんが、尿路の閉塞を起こす疾患は時に両側性に起こりますので、水腎症によって両方の腎機能が低下してしまった場合には、血液透析を受けなければ命が維持できない状態になってしまいます。

ちなみに、小児における水腎症は先天性のものが多く、成人においては何からの原疾患をもとにした後天性(二次性)の水腎症である場合が多いのが特徴です。

水腎症の症状

発熱

症状として多いのは腰痛です。

尿路の閉塞がゆっくり進行していく場合は無症状なこともありますが、結石の嵌頓(かんとん)などによって急性に水腎症に陥った場合は激しい腰背部痛がおこり、肋骨脊柱角(CVA)をたたいた時に飛び上がるような痛みが走ります。

また、尿がうっ滞していることで細菌が繁殖し、尿路感染症を起こして38℃をこえる熱が出ることもしばしばあります。

尿路感染症の特徴として、非常に急な経過をとることがよく見られ、「1時間前くらいから寒気がすると思っていたら急に40℃の熱が出ていた」といったことも臨床的によく経験されます。

小児の水腎症は生まれつきのものであることも多く、感染症を合併しない限りは無症状なことがほとんどですが、ふとしたきっかけで閉塞が強くなると腰痛が起きることや、ある日尿路感染症が起こって急な発熱を呈することもあります。

水腎症の原因

診断

成人の水腎症の原因として多いのは、下記の疾患です。

尿路結石

成人の水腎症の原因としては最も多いものです。腎臓でできた結石が尿管に落ちてつまることで水腎症を呈するものです。

概ね5㎜をこえると閉塞するリスクが高くなり、10㎜をこえると自然に出ていくことが少なくなります。結石には菌が付着していることもしばしばあり、尿路感染症(腎盂腎炎)を起こす原因になることも多いのが特徴です。

腫瘍

尿管がん、膀胱がん、前立腺がんなどの泌尿器がんによって尿管が閉塞してしまうことがあります。

また、胃がん、大腸がん、子宮体がん・子宮頸がん、卵巣がんなどの他臓器の腫瘍によって尿管が圧迫されると、水腎症を呈することもあります。

神経因性膀胱

神経疾患によって、膀胱からきちんと尿を出しきれなくなることで、膀胱内に尿が残り、膀胱内圧が高い状態が続く疾患です。

膀胱の内圧が上昇することによって、膀胱が変形し、膀胱から尿管への逆流をきたし、水腎症を起こすことがあります。糖尿病、脳血管障害、パーキンソン病、多発性硬化症、脊髄損傷など、神経に異常が出る疾患において起こります。

前立腺肥大症

前立腺肥大症がひどくなると尿管から膀胱への出口が圧迫されて、水腎症を呈することがあります。

また、前立腺肥大症による排尿障害が慢性化すると、膀胱が異常な圧によって変形して、膀胱から尿管に尿が逆流するようになり、水腎症を呈することがあります。

腎のう胞

腎臓に、のう胞という水たまりができることがしばしばあります。のう胞自体はさほど悪さをしないものがほとんどですが、傍腎盂のう胞といって、腎盂近くにできた場合に、圧迫して尿の流れを妨げる場合があります。

尿管狭窄症

結石や手術によって尿管に傷がついた際に、その治癒過程において尿管が狭くなってしまう場合があります。また、生まれつきもっている腎盂尿管移行部狭窄症という病気が成人してから発見される場合もあります。

その他、小児では、先天性尿管狭窄症、腎盂尿管移行部狭窄症、膀胱尿管逆流、後部尿道弁、先天性神経障害などの疾患が水腎症を引き起こすことが知られています。

検査・診断

CT検査

水腎症に対する検査としては、下記のようなものがあります。

超音波検査

最も多く用いられる検査が、超音波検査です。超音波検査によって腎盂の拡張の程度や、腎臓の厚みなどを評価します。

所見として、専門用語でCentral Echo Complex ; CECの解離が見られるのが水腎症です。CECというのは腎臓の内側、皮質ではなく腎盂腎杯や動静脈、脂肪組織が見られる部位のことで、この部位は皮質と比べて高エコー(白っぽい)です。

水腎症に伴う腎盂腎杯の拡張が生じていると、CECが解離してしまい、CECが2つに分かれて、中央部が低エコー(黒くなる)になります。このような特徴的所見があるため、水腎症を疑った場合の検査に超音波検査が用いられます。

痛みや放射線の被ばくが無いため、患者さんの負担が少ない検査ですが、尿管そのものを全て描出することは困難であり、多くの場合、閉塞の原因まで突き止めることはできません。

CT検査

水腎症の診断において最も用いられている検査です。

超音波検査と異なり客観的な画像が得られます。尿管も全て評価することができるため、閉塞の原因を診断する際によく使用されます。

場合によっては造影剤というコントラストをつける薬を血管内に注射し、それが尿路に排泄される様子を撮影する、といった方法をとる場合もあります。

最近は、後に述べる造影検査よりも、CTを用いた検査(CT Urography)の方が精度が高く、よく用いられています。

MRI検査

CTのように、体の輪切り画像を作ることができます。放射線ではなく磁気を使っているので、比較的体にも優しい検査です。

CTと比べて、構成成分が何であるかを診断する能力(質的診断能力)に長けています。

反面、撮影に時間がかかること、広い範囲の撮影には向かないこと、体の中に金属があったり、閉所恐怖症があったりすると撮影できないなどといったデメリットもあります。

静脈性尿路造影法

経静脈的に造影剤を注入して、腎盂・腎杯・尿管・膀胱を造影剤が流れていく様子を適宜レントゲンで撮影する方法です。排泄性尿路造影とも呼ばれます。

たとえば尿管結石による閉塞が生じたケースだと、造影剤の流れが途中でとまっている像を確認することができます。

逆行性腎盂尿管造影

逆行性腎盂尿管造影は、「逆行性」という名の通り、尿路をさかのぼって管を入れ、そこから造影剤を注入しつつ流れを観察する検査です。

医師が任意の場所まで管(カテーテル)を入れて、任意の量の造影剤を入れることができますので、よりリアルタイムに評価することができます。


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順行性腎盂尿管造影

順行性腎盂尿管造影は、「順行性」という名の通り、尿路の流れと同じ方向に管を入れて、造影剤を注入して流れを観察する検査です。

とはいえ、腎臓は皮膚とつながっていませんので、腎臓に針を刺す必要があります。

腎臓は血流豊富な臓器であり、また呼吸によって上下に動きますので、穿刺する際にはやや合併症のリスクが高い検査手技です。他の方法で検査が行えない場合に選択されます。

尿検査/尿細胞診検査

尿検査によって膿尿、血尿、血糖などの有無を確認します。また、尿細胞診といって、尿中にがん細胞が浮遊していないかを顕微鏡で確認するという検査です。

血液検査

尿素窒素(BUN)やクレアチニン(Cre)の値が上昇していないか、ミネラルのバランス(特にカリウム K)が異常になっていないかといったことを調べます。

水腎症の治療法

手術室

水腎症の治療としては、その原因となる疾患の治療をして、尿路の狭窄や閉塞を解除することが重要です。

結石であれば石を割る手術を行い、膀胱がんによる閉塞であれば手術によって腫瘍を切除することを行うといった形です。

ただし、急性の水腎症である場合や腎機能低下、尿路感染症が併発している場合には腎瘻造設術や尿管カテーテル留置術などを行って、早急に尿路の確保をして急場をしのいでから、後日根本的な治療を考えることもしばしばあります。

先天性の尿路閉塞症による水腎症の場合は腎盂形成術や、尿管吻合術と呼ばれる手術を行うことがあります。

合併症としては再狭窄が懸念されるところですが、これは医師の技量の良しあしだけではなく腎臓と尿管、尿管と尿管をつないだ場所の血流が悪かったり、組織の損傷が強かったりすることにもよります。

膀胱尿管逆流症の場合は、内視鏡手術で尿管口に拡張剤を注入して狭くする方法や、おなかを切って尿管をくりぬいて膀胱内の別の場所に植えなおす手術などが一般的です。

まとめ

水腎症(尿路閉塞)が認められたら、その裏にさらに重大な疾患が隠れている可能性があります。

前立腺肥大症などの良性疾患であればまだ幸いですが、悪性腫瘍の可能性もあります。

血尿、腰痛、腹部膨満感など気になることがあったら泌尿器科を受診することが必要なのは言うまでもありませんが、無症状で進行する場合もありますので、定期的に腹部超音波検査を受けることも大切です。

水腎症に関する質問や回答が寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

[カテゴリ:腎臓]

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