腹痛・下痢・嘔吐・発熱などの症状を引き起こす食中毒にはいろいろな病原菌が存在します。食中毒の原因菌として、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、ノロウイルス、病原性大腸菌O157など、いろいろな菌が知られています。
今回は、その中でも、比較的よく発生する、カンピロバクターについてまとめてみました。カンピロバクターに関して、感染経路・潜伏期間、症状、治療法、予防法などについて解説致しますので、ご参考にされてください。

更新日:2017年12月16日

この記事について

監修:豊田早苗医師(とよだクリニック院長)

執筆:当サイト編集部

カンピロバクターとは

カンピロバクターという名前の由来は、ギリシャ語のcampylo(カーブした)という言葉と、ラテン語のbacter(細菌)という言葉から、カーブした螺旋状の細菌という意味合いでカンピロバクター(campylobacter)と名前がつけられました。

カンピロバクターは、単一の菌を指すものではなく、代表的には下記のような種類があります。

カンピロバクターの種類

  • Campylobacter jejuni(カンピロバクター・ジェジュニ)
  • Campylobacter coli(カンピロバクター・コリ)
  • Campylobacter fetus(カンピロバクター・フェタス)
  • Campylobacter sputrum(カンピロバクター・スピュータム)

この中で最も多いのが、Campylobacter jejuni(カンピロバクター・ジェジュニ)です。

作者 De Wood, Pooley, USDA, ARS, EMU. [Public domain], ウィキメディア・コモンズ経由で

家畜(ウシ、ブタなど)、家禽(ニワトリなど)および、家庭で飼っているペット(イヌやネコなど)などの動物の消化管の中にカンピロバクター菌が住みついている場合があり、これら動物の糞便からも検出されることがあります。

カンピロバクター菌は、昔から獣医師の間ではウシやヒツジなどにおいて腸に炎症を引き起こす菌として知られていたのですが、1970年代には人にも感染して腸に炎症を引き起こすことが判明し、世の中に知られるようになりました。

日本においても1982年には法律(食品衛生法)で食中毒の「原因物質の種別」としてリストに加えられており、現在では17菌種・6亜種・3生物型のカンピロバクターが同定されています。

トリに住み着くことが多い

カンピロバクターは、家畜(ウシ、ブタなど)の腸管に住みついています。

特にトリには非常に高い確率でカンピロバクターが住みついていることがあります。トリの処理工場での各工程において、皮の表面などにこのカンピロバクター菌がついてしまうことが原因と考えられます。

カンピロバクター腸炎を起こすパターンとして最も多いのが、生焼けの鶏肉を食べた時です。

「トリの刺身を食べたらお腹が急に痛くなった」という場合、医師はまずカンピロバクターの感染を疑います。ちなみに、カンピロバクターは流通・市販されている鶏肉の4割から6割に付着していているといわれています。

肉の中で生き続けることがある

カンピロバクター菌は、微好気性または嫌気性であり、酸素濃度の低い環境が繁殖するのに適しています。しかし、少々の時間、空気中にいても、肉のなかに潜りこめば生き続けることができます。したがって、新鮮な生肉(刺しみ、ささみ)であってもカンピロバクターが生きている場合があるのです。

また、増殖できる温度の範囲は30~40℃程度ですが、低温環境でもすぐ死ぬわけではなく、4℃位の低温でも長期間生存することができることに注意が必要です。

カンピロバクターの感染経路および潜伏期間

カンピロバクターはウシやブタなどの家畜や鶏などの家禽の腸管に生息しています。カンピロバクターは、鶏肉から感染することが最も多いという報告がなされています。

具体的な感染経路

  • トリの刺身やささみを生で、または過熱が不十分な状態で食した場合
  • 鶏肉に触れた手で、食器や調理器具に触れそれを介して他の食品に触れてしまい、うつってしまった場合

カンピロバクターの菌に汚染された食物を食べ、感染して症状が出るまでの期間は、他の食中毒菌に比べて比較的長く、2日~7日位と幅があります。

症状

主な症状としては、腹痛、下痢や嘔吐、発熱が起こります。初期症状は風邪と同様なので間違われることもあります。

これらの症状の他に頭痛、めまい、倦怠感などが起こります。

特に下痢は、日に10回を超える場合もあり、それが1~3日間続きます。下痢が続いて動くのもつらい状態になってきた場合は、医療機関を受診しましょう。

カンピロバクター感染で多い、ギランバレー症候群とは?

カンピロバクターによる食中毒を発症してから2週間くらいして、急に体が動かせなくなることがあります。この場合、ギランバレー症候群という病気が疑われます。

ギランバレー症候群は、急性かつ多発性の根神経炎で、身体の筋肉が動かせなくなる病気です。重症だと寝たきりになったり、呼吸筋麻痺で人工呼吸管理が必要になったりすることもあります。

カンピロバクターに対する抗体が自分の体を攻撃してしまうために起こるとかんがえられており、治療としては免疫グロブリン大量療法や、血漿交換療法、免疫吸着療法で有害な抗体を除去することを試みます。

ほとんどの場合は、数週間の間に徐々によくなり完治します。しかし15~20%は重症化し、2%程度の死亡率がありますので注意する必要があります。

カンピロバクター感染後に特異的に起こるものではなく、他の感染症の後や、感染症がはっきりしない場合でも起こることはありますが、カンピロバクター感染との関連は医師の間では有名で、腸炎の診察の際には常に頭の片隅にある病気です。

カンピロバクター菌による食中毒の治療方法

カンピロバクター菌により発症した食中毒の初期の症状である腹痛や下痢・嘔吐・発熱などに対しては、他の食中毒菌で発症した場合と同様に、全身状態が悪くならないように症状、水分・栄養の管理を行います。

症状によっては、安易に下痢止めを服用することで症状が悪化する場合もあります。下痢・嘔吐、腹痛が我慢できないほどつらい場合には、医療機関を受診して適切な判断・治療を受けるようにしましょう。

カンピロバクター食中毒の予防方法

カンピロバクター食中毒にかからないようにするためには、以下のことに気を付けましょう。

予防をする上での注意点

  • 生肉や加熱不十分な鶏肉料理を避けること
  • 二次汚染防止のために、食肉は他の食品と調理器具や容器を分けて調理や保存を行うこと
  • 食肉を取り扱った後は手やまな板や包丁を十分に洗ってから他の食品を取り扱うこと
  • 食肉に触れた調理器具等は使用後洗浄・殺菌を行うこと

ちなみに、食中毒菌が食中毒を起こすときのメカニズムとしては3種類あります。

  1. 食品の内部で菌が作った毒素による場合
  2. 菌が腸管に入りこんでからその食中毒菌が作った毒素による場合
  3. 菌自身が繁殖して腸管に炎症を起こす場合

カンピロバクター菌は3番目の機序で下痢などを起こすとされています。

また、カンピロバクターの特徴として、菌の数が少しであっても食中毒を発症してしまうことがあります。

カンピロパクター菌以外の、食中毒を発症させる原因菌の多くが、相当多くの量を摂取しないと発症しないといわれていますが、カンピロバクターは、数百程度の数でも発症しうると報告されています。

まとめ

今回はカンピロバクター食中毒についてまとめました。一般的な食中毒のイメージとして、あたたかい環境に放置していることで菌が増殖して、食中毒を起こすものと考えられがちですが、カンピロバクターは少数でも感染しますので、鮮度がよくても鶏肉にカンピロバクターがついていれば食中毒を発症する可能性があります。

基本的には数日耐えればよくなる食中毒ではありますが、稀にギランバレー症候群という怖い病気を引き起こすこともあるため、軽く見てはいけません。

予防するために最も有効なのはとにかく加熱することが重要です。どうしてもトリを生で食べたい場合には、カキを食べるのと同様の覚悟が必要でしょう。

[カテゴリ:胃腸]

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