更新日:2017年05月26日
ストレートネックとは
通常、頚椎(首の骨)は生理的前彎(ぜんわん)と言って、弓なりに曲がっています。
しかし、この曲がりが消失し骨の配列が直線的になってしまうことを、ストレートネックと言います。
頚椎が元々曲がっている理由
人の頭の重さは、体重の10%前後にもなると言われており、体重が50kgの方なら5kg相当の重さになります。
この重さを首や肩だけで支えようとすると、当然ながら大きな負担が掛かってしまいますが、頚椎が前方に緩く湾曲することで、頭の重心が前になるのを防ぐことができ、体全体でバランスをとることができます。
診断基準
正常な人の場合、最も頭に近いところにあるC1頚椎と、首と背中の境目にあたるC7頚椎までの角度は30~40度と言われています。
しかし、ストレートネックの方はこの角度が30度以下のため、レントゲンを撮ると文字通り〝まっすぐな首〟として映ります。
なお、ストレートネックは、正式な病気(病名)ではなく、このような首の状態を示す言葉として使用されているものです。
簡単なチェック方法
壁を背にした状態で立ち、かかと、骨盤、肩甲骨、後頭部が壁に付くかどうかを試してみて下さい。
通常は、この4か所がぴったり壁に付きますが、ストレートネックの方は後頭部が離れたりするので、無理をしないと4か所を付けることができません。
原因はパソコンやスマホ、猫背など
パソコンやスマホの長時間使用
パソコンやスマホで作業をしていると、気が付かないうちに画面を覗き込むような前屈みの姿勢になってはいないでしょうか。
今、この記事を読んで下さっている方も、改めてご自身の姿勢を確認してみて下さい。
首が前に出て、背中が丸まっていませんか?
このような姿勢は、本来湾曲している首の形にそぐわないため、筋肉や骨に大きな負担となってしまいます。
このような姿勢が癖になってしまうと、凝り固まった筋肉によって骨に少しずつ歪みが生じ始め、やがてストレートネックを招いてしまいます。
近年、ストレートネックが注目されるようになった背景には、パソコンやスマホの普及によって症状に悩む方が増えているためと言われています。
そのため、ストレートネックは現代病とも言われています
猫背・巻き肩
パソコンやスマホの使用時に限らず、日頃から猫背の方はストレートネックを発症しやすいと言われています。
ただし、猫背には背中が丸くなっているというイメージが強いため、背中が丸なっていなければ自分は猫背ではないと、自覚がない方も多くいらっしゃいます。
しかし、肩巻き猫背(巻き肩)と言われる姿勢は、一見すると背中はそれほど丸まって見えないため、本人や周囲が猫背だと気が付かないことがあります。
両手の力を抜いた状態で立った時、手の平が少しでも体の前方を向いている方は、肩巻き猫背の可能性があります。
姿勢がよすぎる
猫背や前屈みの姿勢がストレートネックの主な原因なら、背筋がピンと伸びている人はストレートネックにならない・・と考えてしまいがちですが、実はそうではありません。
社交ダンスやバレエダンサーなど、背骨をまっすぐにすることで体の軸を築いている人は、背中の生理的湾曲(正常なS字の曲がり)が失われ、それに付随するように首もまっすぐな人が多いと言われます。
とは言え、社交ダンスやバレエダンサーの方全てがストレートネックによる症状に悩んでいるわけではありません。
首の骨がまっすぐであっても、体全体の筋肉が整っているため症状が出ない人も多いのです。
先天的なもの
生まれつき背骨の生理的湾曲が小さい方や、臼蓋形成不全(股関節が上手くかみ合わない病気)などの場合は、骨盤が前傾しやすくなるため、頭の重さを支えるために、首の前彎が失われてしまうことがあります。
外反母趾などが原因の場合も
浮き指や外反母趾の方は、体重が足のかかとに片寄ってしまいがちなため、体のバランスをとろうと背骨や首の生理的湾曲が失われてしまうことがあります。
症状は頭痛、めまい、肩こりなど
- 頭痛
- 頭が重い
- めまい
- 吐き気
- 耳鳴り
- 食欲不振、胸やけ
- 肩こり
- 眼精疲労
- 首が痛い、動かない
- 上を向きにくい
- 腕の痺れや脱力感
このような症状は珍しくはないため、ストレートネックが原因だと気が付かないケースがほとんどです。またストレートネックであったとしても症状がないことも珍しくありません。
自律神経失調症や鬱病の原因になることも
ストレートネック自体は病気というわけではありませんが、首や肩の筋肉が常に緊張している状態から生じるため、首の後ろを通っている自律神経にも大きな影響を及ぼします。
上記の症状は、自律神経失調症や鬱病を診断する時の目安として確認されるものですが、人間関係や仕事などのストレスだけがこのような病気を引き起こすわけではなく、首や肩の異常が原因で起こる可能性があることも認識しておくことが大切です。
まずは整形外科にかかりましょう
病院へ行くか整体へ行くかを迷った場合、まずは病院へ行くことをお勧めします。病院では整形外科を受診しましょう。
整体院は通常柔道整復師が施術を行っていますが、正しく診断するための検査機器などもありませんので、まず医師の診察が必要です。最も確実にストレートネックを検査できるレントゲンは医療機関でしか行うことができません。
薬物治療
痛みが強い時は、病院で非ステロイド系の鎮痛剤を処方されることがあります。
ただし、痛みの緩和には繋がりますが、薬物治療はあくまでも対症療法であり、ストレートネックの根本の解決にはなりません。
手術
ストレートネックでは基本的に手術に至ることはありませんが、ストレートネックが原因で頚椎椎間板ヘルニアや頸椎症などを引き起こし、日常生活において次のような支障が生じている場合は、手術を行う場合があります。
- 箸を使っての食事ができない
- 上着のボタンを掛けることができない
- 字が書けない
- 冷たいものや熱いものに触れても感覚がない
- 足がもつれる、歩きにくい
- 尿意を感じなかったり、尿が出にくかったりする場合
このような症状がある場合は、ストレートネックではなくほかの疾患が原因となっていることがあります。
症状を放置してしまうと、例え手術をしても完全に回復することが難しくなるため、早めに病院を受診するようにしましょう。
整体について
ストレートネックは首だけを治せばよいという話ではありません。
なぜなら、ストレートネックを発症している多くの方が、不良姿勢(猫背など)によって背骨や腰などにも問題があるからです。
そのため、首だけを治療しても根本的な解決とはなりません。ストレートネックを改善するには、適切な運動を行い、全身のバランスを整えることが必要な場合があります。
看護師からのアドバイス
自己判断でストレートネックだと判断して、整体や間違った対症療法を行ってしまうと、場合によっては状態が悪くなることも考えられます。
まずは整形外科で検査と診断を受け、その上で日常生活において注意することやストレッチについて相談することをお勧めします。